クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい 作:DB原作無印勢
<シロナ>
西の都を破壊しに行くために小型艇に乗り込んだところで、天津飯が飛行機に乗ってやって来た。
彼はピッコロ大魔王の前に姿を見せていないので、警戒されてはいない。
なので若さを取り戻して慢心している彼なら、不意打ちで魔封波を成功させることができるかも知れなかった。
他には同じく顔が見られていない私の本体が小型ジェットを運転しつつ、ブロリーにも万が一に備えて超遠距離で気を抑えて、いつでも動けるように待機してもらっている。
私は本体からの連絡を受けて、いよいよ時が来たと気を引き締めて成り行きを見守る。
「ピッコロ! 下に降りるんだ! とんでもない目に遭わせてやるぜ!」
「早速命知らずの馬鹿がきおったか」
「いるんですよね。ああ言う頭の悪い奴が」
ピッコロ大魔王とピアノは完全に見下しているが、私はノーコメントで黙っている。
「良かろう。ちょっとだけ遊んでやるか。
いい見せしめだ。ズタズタに引き裂いた姿をテレビで流してやる。
国王に逆らった者の、哀れな結末を」
お茶の間にグロ注意の映像が流れるなどマジ勘弁だ。
しかしこれも原作通りなので、特に言うことはない。
「シロナ、やけに静かだな」
私が黙っているのが気になったのか、ピッコロ大魔王が尋ねてきた。
「いえ、戦いの結果は見えているので、別に騒ぐほどでもないかなと」
「うむ、シロナは良くわかっているようだな」
私は何とか上手く調整できないかなと考えつつ、やけに上機嫌なピッコロ大魔王に抱えられて、慣れた様子で地上に降りていくのだった。
ちなみに電子ジャーが壊れてなかったので、出発前に本体がこっそり穴を開けておいた。
おかげで魔封波を使えなくなったのだが、それでも天津飯が酷い目に遭うのは避けたい。
しかし引き返すつもりはないようで、武道家の誇りなのか一度戦うと決めたらとことんやる気のようだ。
なので原作通りに、魔封波なしでピッコロ大魔王を倒すために、飛行機から飛び降りてゆっくりと地上に降下していく。
「ほう、舞空術が使えるのか。少しは腕に覚えがありそうだな。
しかし、その中途半端にかじった武道のおかげで、命を落とすことになるのだ」
先に地上に降りていたピッコロ大魔王に、天津飯も降下してきて互いに向かい合う。
そして私は少しだけ離れて、安全な場所で様子を伺う。
「気の早いやろうだぜ。もう勝った気でいやがる」
「近頃のやつは、口の聞き方を知らんな。それが国王に言う台詞か?」
今の若返ったピッコロ大魔王は、この程度でブチ切れたりはしない。
なので彼がまだ舐めてかかっているうちに、私は強引にでも横槍を入れさせてもらう。
「ピッコロ大魔王様が、自ら手を下すまでもありません。
彼の相手は私がしましょう」
「おい待てシロナ」
しかし、私は待つつもりはない。
ピッコロ大魔王よりも前に出て、さあ来いとばかりに構える。
天津飯も驚いていたが本体が念話を送り、悟空が近づいていることに気づいたようだ。
なので後ろの上司をそっちのけで、合意で戦う流れになる。
「ふん、子供が相手とはな。俺も舐められたものだぜ」
「その発言は、すぐに撤回させてあげます」
実際に私と天津飯の戦闘力を比較すると、天と地の差がある。
どっちがどっちかは言うまでもないが、素の身体能力しか使えなければ負け確定だ。
それでも何とか時間を稼がないといけないので、今からプロレスを行うことになる。
(天津飯が乱入しないと、西の都が吹き飛んでたしなぁ。
ピッコロ大魔王に戦いを挑むのは、無駄じゃないんだよね)
とにかく今は、悟空が駆けつけるまで引き伸ばす。
原作とは少し違うが殆ど無傷の天津飯と共闘して、ピッコロ大魔王と戦う作戦に変更である。
弱らせたあとに魔封波を使うようにに切り替わったが、本当のところはどうなるかは知らない。
現状は高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処するしかない。
行き当たりばったりは今に始まったことではないし、結果良ければ全て良しだ。
ただし上手くいくかは不明なため、ぶっちゃけ不安しかなかった。
「行きます!」
「こいっ!」
まずは私から天津飯に突っ込んで、どのぐらいのパワーやスピードなら対応できるかと拳で伝える。
すぐに激しい打ち合いになったが、彼は地球人の中では天才的な才能を持っているのだ。
こちらの意図を読み取って、上手い具合に合わせてくれた。
『悟空が来るまで、時間を稼いでください!』
『わかった! あとどれぐらいで着くんだ!』
『数分以内には!』
本体からの念話が、私にも届いた。
不審に思われた困るので返事はせずに、そのまましばらく打ち合いを続ける。
するとやがて後ろで見ていたピッコロ大魔王が、痺れを切らして大声を出す。
「もういいっ! シロナ! 下がれ!」
「ですが、まだ勝負が!」
「下がれと言っておるのだ!
それ以上続ければ、大怪我では済まんぞ!」
どうやら数分の打ち合いで、私と天津飯の実力差を正確に見抜いたらしい。
全てピッコロ大魔王の言う通りのため、渋々後方に跳躍して距離を稼ぐ。
天津飯は涼しい表情をしていて呼吸も乱れていないが、私は全身汗だくでぜえはあ言っている。
「奴を倒して一仕事終えたら、まずは体力作りから始めるぞ」
私は苦虫を噛み潰したような顔になり、何とか返事をする。
「お手柔らかにお願いします」
「……努力はしよう」
少し考える素振りをしたので、これは厳しく指導されるやつだと察した。
私のために色々してくれるのは嬉しくても、クソ雑魚サイヤ人は全然上達しないのだ。
多分、そっちの才能がないのだろうが、ピッコロ大魔王としてはとても不満らしい。
「そして今後は、新しい部下をシロナの護衛につける」
そう言ったピッコロ大魔王の顔が膨らんで、やがて大きな卵を口から吐き出した。
それは地面に転がりヒビが入り、質量保存の法則とかどうなってるのかと言わんばかりの、巨大な魔族が生まれる。
「お前の名はドラムだ。我が魔族の戦士の強さを、思い知らせてやれ!」
「ばっ、化物め! こっちこそ、てめえらに思い知らせてやるぜ!」
私はこのまま、天津飯とドラムの戦いが始まると思った。
だが突然横から蹴りを食らい、巨大な魔族がふっ飛ばさて地面を転がる。
「きっ、貴様!」
「そっ、孫悟空! 来てくれたのか!」
「やっぱ天津飯だったのか!」
ピッコロ大魔王と天津飯は二人共驚きの声を出す。
そして悟空は、久しぶりの友人との再会に嬉しそうである。
「こいつは驚いた。確かに息の根を止めたはずだったがな」
「オラ、運がいいんだ」
あれはサイヤ人でなければ死んでいてもおかしくない。
それに普通に即死すると思ったが、少しだけ力を貸したにせよやはり主人公は強い。
続いて悟空は、ピッコロ大魔王が若返っていることに気づく。
そして蹴り飛ばされたドラムが起き上がって怒り出すが、何と蹴り一発で顔面が吹き飛んでしまう。
これには天津飯もピッコロ大魔王もびっくりして、ついでも私もちょっと引いた。
自分がクソ雑魚なのはわかっているが、いつの間にやらとんでもなく差がついてしまったものだ。
短期間に超絶パワーアップした原作主人公を目の当たりにして、思わず身震いするのだった。