クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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ピッコロ大魔王(9)

<シロナ>

 悟空とピッコロ大魔王の戦いは、まさに激戦だった。

 両者が力の全てを出し切り、最初は加勢するつもりだった天津飯も動きが追えない。

 まったく手が出せないのだ。

 

 しかし途中で悟空が足を負傷してしまい、如意棒を杖代わりにして戦いだしてから流れが変わった。

 全力全開状態のピッコロ大魔王がさらに気を高めて、棒を吹き飛ばして素早い動きを完全に封じて、トドメを刺そうとする。

 

「終わりだーっ!」

 

 爆力魔波を放ち、悟空諸共周囲の物をまとめて吹き飛ばしたのだ。

 キングキャッスルがあった場所には荒れ果てた荒野しか残らず、勝利を確認したピッコロ大魔王は笑い声をあげる。

 

「ふふふっ! はーっはっはっはっ! 終わった! とうとう終わったぞ!

 粉々に消し飛んだーっ! 見たか! シロナよ!」

 

 だか、ピッコロ大魔王はここであることに気づいた。

 慌てて周囲を見回し始める。

 

「シロナ! 何処だ! 出てこんか! まっ、まさかっ! 爆発に巻き込まれて!?」

 

 普通に考えれば当たり前だ。

 私めがけてピッコロ大魔王が吹っ飛んできたときには、危ないところで避けた。

 だがピアノは巻き添えになって、下敷きになって死んでしまう。

 

 とにかくあれだけの爆発を受ければ、普通の人間なら塵も残りはない。

 実際には本体が操縦する小型ジェットに便乗させてもらっているのだが、私も咄嗟に瞬間移動しなければ危ないところだった。

 

「んっ? 気を感じるぞ! まさかシロナか!

 今助けに……いやっ! これは奴か!

 ばっ、馬鹿な! あの怪我では避けられるはずはない!」

 

 余程焦っているのか、私と悟空を間違えてしまったようだ。

 そして確かに避けられるはずはないが、五体満足の天津飯の舞空術を借りれば可能である。

 

 だがここで原作とまたズレたようで、ピッコロ大魔王は爆力魔波を使わずに格闘戦で悟空を倒そうとする。

 それでも最後は天津飯を人質に取って、悟空の残りの手足をへし折っていく。

 

「天さんごめんな! オラ、ピッコロを倒すぞ!」

「きっ、貴様! こっこいつが死んでもいいと言うのか!」

「やれよ! ドラゴンボールで、また生き返らせてみせらあっ!」

 

 悟空は気力を振り絞ってピッコロ大魔王に反論すると、彼は誰にも聞こえないような小さく呟く。

 

「……そうだったな。ドラゴンボールに願えば、シロナも生き返るか」

 

 そしてピッコロ大魔王は、勝ち誇った笑みを浮かべる。

 悟空に堂々と告げた。

 

「馬鹿め! 神龍はこの俺様が、片付けてやったわ!」

「なっ、何だと! デタラメを言うな!」

「でたらめだと思うか? このオレにあんな龍を殺すことなど、わけはない!」

 

 ピッコロ大魔王は神龍は死んだと嘘をつくことで、二度と生き返らないと思い込ませることに成功したのだ。

 余計なことを喋ろうとした天津飯は暴力で黙らせ、そのせいで悟空は見殺しにすることができなくなり、最後には両足を折られてしまう。

 

 

 

 もはや立ち上がることもできない。

 イモムシのように地面を這いずる彼に止めを刺すべく、ピッコロ大魔王は空中に飛び上がる。

 

 そして悟空は一本だけ残った腕に全ての気を集めて放出し、空に向かって勢い良く飛び上がった。

 

 まさに原作通りの流れで、私はこの展開を望んでいたはずだ。

 しかし、気づいたらピッコロ大魔王の前に立ち塞がるように、瞬間移動していた。

 そのまま両手を広げて悟空を見据え、大声で叫ぶ。

 

「待ちなさい! 悟空!」

「ねっ、姉ちゃん!?」

「シロナ!? 生きていたのか!

 だが、その姿は! しかも、姉だとぉ!?」

 

 両者が動揺して勢いが削がれたとはいえ、悟空はつらぬけーをしたばかりだ。

 真っ直ぐこっちに突っ込んでくるので、やむを得ずピッコロ大魔王に触れて天津飯の元に瞬間移動して避ける。

 

 決死の攻撃が空振りに終わり、今度は地面に落ちてくる弟を気を操作して擬似的な舞空術をかけ、ゆっくりと降下させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 私は悟空と天津飯の傷を癒やし、念のためにブロリーも呼ぶ。

 本体と合流すると説明が余計にややこしくなるので、一足先に実家に帰ってもらった。

 

「ええと、……何から説明したものか」

「全てに決まっておろう。

 シロナは、このピッコロ大魔王様を謀りおったのだぞ」

 

 彼は私のことを愛玩動物程度には気に入っていたのに、実は裏切っていたと判明してご立腹のようだ。

 それでも、すぐに殺そうとしないのはありがたいし、取り押さえるのが面倒だし話を聞いてくれないのは本当に困る。

 

 そんな彼の傷は癒やさないが、水の入ったペットボトルは実体化させて渡しておく。

 ついでに人数分の椅子も用意して座ってもらい、溜息を吐きながら説明に入る。

 

「私がピッコロ大魔王様の部下になったのは、貴方を救いたかったからです」

「救いだと? 人間の助力など必要ないわ!」

「……それでもです」

 

 原作で死んだからと殺して良いとは思っていないし、そのためにいらない苦労まで背負い込んでる。

 

「シロナはとんだお人好しだ。反吐が出る」

「すみません。性分なので」

 

 困った顔をしながら頬をかいて、続きを話していく。

 

「私はピッコロ大魔王様に、人間たちと仲良くして欲しいのです。

 なので少しずつでも、意識改革をしていけたら良いなと考えていたのですが」

 

 結局、時間が足りなかった。

 個人的な友好関係を築けたのは良いが、結局は目的を達成する前に悟空に倒されたのだ。

 

 それに計画も暴露してしまったことで、今の私への信頼度はマイナスに振り切れていることだろう。

 

「結果はご覧の有様で、私のやっていたことは何の意味もありませんでした」

 

 私は大きな溜息を吐いて項垂れる。

 原作を守りつつ彼の人間への印象が変われば、行き当たりばったりの方針でも生き残りの芽があるかと思ったが、やっぱりそれは無理だったようだ。

 

 すると意外なことに、怒っているはずのピッコロ大魔王から声がかかる。

 

「ああ、お前がやったことに、何の意味もない。無価値だ。

 だがまあ、少しは楽しめたぞ」

「それは、……どうも?」

 

 褒めているのか貶しているのかわからないお言葉をいただき、私は困惑してしまう。

 

「それで、どうするのだ?」

「どうするとは?」

「ピッコロ大魔王様の元に戻るか、そこのガキにつくかと聞いているのだ」

 

 正体がバレた以上、もはや今まで通りの関係ではいられない。

 ピッコロ大魔王が裏切った私を受け入れるとは思わないし、原作通りに進めるには彼の存在は好ましくはなかった。

 

 やはり退場してもらうのがベストだ。

 しかし一度は親しくなった知人に、死んでくれなどとは言えない。

 

 色々と悩んだ末に、私は真面目な顔になってピッコロ大魔王に声をかける。

 

「ピッコロ大魔王様。

 まだ貴方がほんの少しでも私のことを信じてくれるなら、最後のお願いをしても良いですか?」

「……言ってみろ。聞くだけ聞いてやる」

 

 いつになく真剣な表情の私に彼は何も言わず、腕組をしたまま鼻を鳴らす。

 本当に聞くだけなんだろうなと思いつつも、ここで言わないと一生後悔しそうなので口を開く。

 

「息子に希望を託してください」

 

 私はピッコロ大魔王に訴えるように、続けを話していく。

 

「ピッコロ大魔王様では無理でした。

 ……でも」

 

 時間さえあれば、息子は人間たちと仲良くできる。

 少なくとも原作では、それなりに上手くやっていた。

 

「息子に託すか。考えたこともないな」

 

 ピッコロ大魔王は、一代限りでしか考えていなかった。

 長命な種族なので、やっぱり人間とは違うようだ。

 

 そして彼は少しだけ考えて、つまらなそうに鼻を鳴らす。

 

「シロナの最後の頼みだ。

 気まぐれで聞いてやらんこともないが、このオレはどうする?」

 

 まさか頼みを聞いてくれるとは思わずに、驚いた。

 しかし気を取り直して、彼の処遇を考える。

 

 人間たちにとって、ピッコロ大魔王は悪や恐怖の象徴だ。

 あれだけのことをしたので無罪放免とはいかないし、自分も悪事に加担した大罪人なので、責任は取らなければいけない。

 

 そこで決意を込めて彼を見つめ、真面目な顔で告げる。

 

「封印します」

「……何だと?」

「ピッコロ大魔王様、お忘れですか?

 こう見えて私も、武道家の端くれなのですよ?」

 

 実力は全然大したことはないが、一応は武道家である。

 私は椅子から立ち上がってホイポイカプセルを投げ、念のためと持ってきていた電子ジャーを実体化させた。

 

 ピッコロ大魔王は条件反射的に椅子から立ち上がって後方に飛び退き、驚いた顔でこちらを見ている。

 

「止めろ! シロナ! それを使えば、お前は!」

 

 彼は亀仙人が魔封波を使ったあとに、どうなったかを知っているのだ。

 

「大丈夫です。私は死にません。

 それにピッコロ大魔王様も、死なせません」

 

 私が言っていることは本当だ。

 笑顔で返事をして、気を集中する。

 

「これは、私がやらないといけないのです!

 ピッコロ大魔王様と、人間たちを今まで騙していた私が!

 最後の幕を引いて、責任を取らないと!」

「シロナ! オレは──」

 

 ピッコロ大魔王が何か言おうとしたが、私はもう術の準備に入っていた。

 

「いつか貴方の息子が、人間たちと仲良くなれたら!

 また会いましょう! それまで、少しだけお別れです!」

 

 殺すよりはマシだが、封印も酷いことには違いない。

 こういうのは勢いでやらないと踏ん切りがつかないので、決意が鈍る前に術を発動する。

 

「では、いきますよ! 魔封波ーっ!!!」

 

 彼は魔封波の奔流に巻き込まれたが、逆らう様子はなかった。

 そして、最後のお願いもちゃんと聞いてくれるようだ。

 

 ピッコロ大魔王はとても悲しそうな顔で私を見て、やがて巨大なタマゴを吐き出した。

 

「はあーっ!!!」

 

 その後、寸分違わずに電子ジャーに封印して蓋が閉まる。

 タマゴは私の目の前に落ちて、コロコロと足元まで転がってきた。

 

 彼が無抵抗なのと転生チートのおかげで、気の消耗は殆どなく、力尽きて命を失うこともないのは幸いだ。

 

 しかし少しだけ疲れて、大きく息を吐く。

 

「ゆっくり休んでください。ピッコロ大魔王様」

 

 私はマジュニアが入っていると思われるタマゴに視線を向けて、しゃがみ込んで優しく抱きかかえる。

 次に何処で育てたものかと考えたが、やはり人里離れた実家の近くが良さそうだ。

 

 そして今までの流れ的に自分が面倒を見ることになりそうだけど、子供を育てるのは慣れているので問題なしと割り切るのだった。

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