クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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第二十三回天下一武道会(1)

 ピッコロ大魔王が倒されて、世界に再び平和が戻った。

 分身体であるシロナは、大農場から少し離れた山奥に新居を構える。

 そこで彼の息子であるマジュニアを育て始めた。

 

 子育ての経験はブロリーや悟空の面倒を見たぐらいだが、親である私に向ける感情は悪くはなかったようだ。

 血は繋がらないし少々ぶっきらぼうではあっても、母として慕ってくれている。

 

 ただし他の人間のことは、虫けら同然と思っていた。

 特に父親と戦って封印の原因を作った孫悟空のことを、深く恨んでいる。

 

 ちなみに彼を封印した電子ジャーだが、神様に頼んで保管してもらっていた。

 

 元は彼の半身なのだ。

 いつの日か封印を解くときに、許可は取らないと不味いと思った。

 いきなり持ち込まれて凄く困惑していたけど、ただ倉庫に置いておいてもらうだけだし、問題はないだろう。

 

 

 

 それはともかく、私は悟空とピッコロの二人を会わせるのはまだ時期尚早だと考えている。

 なので彼とは極力顔を合わせずに、今日も実家の屋敷で家族三人で食事をしていた。

 

「なあ、姉ちゃん」

「何ですか? 悟空」

 

 悟空にしては珍しく悩んでいるようで、少し食事のペースが遅い。

 難しい顔をして私に尋ねてくる。

 

「ピッコロって、本当に悪い奴だったのかな?」

「私から見た彼は、我が強くて頑固なお爺さんでしたね」

 

 分身体とはネットワークで繋がっていて、シロナも私である。

 なのでそれなりに付き合いのあるピッコロ大魔王のことは、良く知っていた。

 

「ですが彼の善悪はともかく、悟空のおかげで大勢の人の命と世界が救われました」

 

 ピッコロ大魔王を倒して、悟空は世界を救った。

 良心の呵責に苦しむよりも堂々と胸を張って欲しいのだが、最後は抵抗せずに潔く封印される光景を見てしまったのだ。

 

 簡単に割り切れるものではないが、弟には原作通りに進めて欲しい。

 どう説得したものかと考えていると、ふとあることを思い出す。

 

「そんなに気になるなら、神様に尋ねたらどうですか?」

「神様?」

 

 悟空は何のことかわからないようだ。

 はてと首を傾げながら、料理をモグモグと食べている。

 

 そんな弟に、私は簡単に説明していく。

 

「神様は、カリン塔の上にある神殿に住んでいます。

 彼からピッコロ大魔王について詳しく聞けば、悟空の疑問も晴れるでしょう」

 

 何しろピッコロ大魔王との付き合いは私よりも古いし、神は半身なのだ。

 自分よりも詳しく教えてくれるだろうから、原作的にも任せて安心だろう。

 

「へえー、そーなのか! オラ! ちょっと行ってくる!

 サンキュー! 姉ちゃん!」

 

 料理を急いで飲み込んで立ち上がり、礼を言って駆け出す弟を微笑みながら見送る。

 

 

 

 なおブロリーは悟空ほど活発ではないし、基本的には必要最低限のことしか喋らない。

 彼が飛び出していったあと二人で食事をしながら、神に会いに行った弟はきっと驚くだろうと他愛もない話に花を咲かせる。

 

 すると何故か慌てた様子で悟空が帰ってきて、私に大声で尋ねてきた。

 

「なあ! なあっ! 姉ちゃん!

 オラの如意棒! どこだっけっ!」

「悟空の自室に、立てかけてありますよ」

「サンキュー!」

 

 弟はそのまま自室に駆け込んで、如意棒を持ってすぐにまた飛び出していく。

 そして再び筋斗雲に乗って、カリン塔を目指して飛んでいった。

 

「慌ただしいですね」

「いつものことだ」

「ええ、しかし少しだけ懐かしいです」

 

 悟空は世界中を飛び回って修行しているので、最近は実家に帰ってくることは少ない。

 原作では次の天下一武道会が終われば落ち着くが、未来とは不確定なものである。

 

 その通りに進むとは限らず、私的にはどうなることやらだ。

 

「しかし桃白白だけでなく、天津飯とチャオズも従業員になるとは思いませんでした」

「賑やかだ」

「静かすぎるよりは、良いでしょう」

「ああ」

 

 ブロリーも修行相手が増えて喜んでいるし、悪くはないのではないのだろう。

 ついでに西の都から重力室も持ってきたので、自主トレーニングの私はともかく、弟はとても嬉しそうに見える。

 

 

 

 ちなみにクリリンとヤムチャは、定期的にお土産を持って家にやってくる。

 私お手製の重い服を購入するためだが、世界を巡って厳しい修行をしてれば破れるのも早い。

 

 なので天下一武道会が近くなってきたら、それぞれの亀の道着もサービスするつもりだ。

 

 

 

 しかしその代わりに、彼らには世界中に散らばったドラゴンボールを集めてもらう。

 

 目的は、ピッコロ大魔王や魔族に殺された人たちを、過去に遡って悪人を除いて生き返らせるためだ。

 さらに様々な事情で無理な方々は、永遠に現世を彷徨うのではなく魂だけでもあの世に逝けるようにと、サービス精神旺盛な神龍にお願いしておいた。

 

 その際に、今から生き返りますよと全世界に念話で伝える。

 だが本命は別にあり、私はピッコロ大魔王の側について、裏で色々やっていたことまで正直に告白する。

 

 ただし、神の株を暴落させないために繋がりに関しては黙っておく。

 

 完全に一方通行だが言うべきことを言い終わり、念話を切る。

 苦情は受け付けないし、自分が動かないと状況はもっと酷くなっていたのは明白だった。

 

 だがそのことを知っているのは私しかおらず、いらぬ苦労や大罪を背負い込んでいる。

 善も悪も貫き通す気概はなく、目に映る範囲で助けたいとあっちもこっちもと手を広げ過ぎた末路だが、性分なので仕方がない。

 

 早く魔人ブウ編が終わって強敵と戦わずに、原作の悲劇が全部終わった平和な世界になって欲しいと、強くそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

<シロナ>

 子育ての経験は多少はあるが、何で結婚してもないのに三人目ができたのやらだ。

 幸いナメック星人はあまり手がかからず、生まれたときからある程度の知識を持っていて助かる。

 

 なので、実際に私がやることは殆どない。

 せいぜい重い服を与えたり、気の使い方や強くなるための修行方法を教えたりするぐらいだ。

 

 今日も修行で無理をしたせいで、怪我をして家に帰ってきた小さなマジュニアを癒やしていると、何やら難しい顔をして尋ねてくる。

 

「母は、何故俺にここまでしてくれる?」

「似たような質問は、マジュニアの父親にもされましたね」

 

 あの時はなんと答えたんだろうかと考えながら、治療を終えた私は静かに離れる。

 

「一言でいうなら、世話を焼きたいからですね。

 難しい理由なんて、必要ありませんよ」

「……そうか」

 

 少しだけ柔らかい笑みを浮かべたマジュニアは、ゆっくりと立ち上がった。

 

「私はマジュニアと血は繋がっていませんが、父親とは少しだけ親しかったです。

 生まれたときに近くにいただけですし、無理に母親扱いしなくてもいいですよ」

 

 別にたまたま面倒を見る、近所のお姉さんAでも良かった。

 しかしマジュニアは、何故か私のことを母と呼ぶのだ。

 

 父は間違いなくピッコロ大魔王だろうし、自分は出産などしていないので色々おかしい。

 感情的にも柔らかいのは、きっと彼の記憶の一部を引き継いでいるからだろう。

 

「それでも俺にとっては、母は母だ」

「そうですか。まあ、別にいいんですけどね」

 

 ピッコロ大魔王を封印したのは私なのだが、マジュニアに話していない。

 彼は最後は納得して魔封波を受けたし、その辺りを説明するの何だか妙に小っ恥ずかしかった。

 

 私とピッコロ大魔王は、一般的な父と母の関係ではない。

 上司と部下や飼い主と飼い猫とか、なかなか当てはまる例が出てこないが、少なくともお互いの関係に納得はしていたと思う。

 

 それに賢いマジュニアならその辺りのことにも薄々感づいているだろうし、わざわざ説明して恥を晒したくはなかった。

 

 

 

 とにかくピッコロ大魔王は何者かに封印されて、キングキャッスル以降は消息不明というのが一般的な情報である。

 

 天界の神殿に保管されているのを知っているのは、私と神様とミスターポポだけだ。

 

 最後は大人しく封じられたとは言え、二度も全世界を恐怖に陥れた悪の象徴である。

 現時点では厄ネタでしかなく、ピラフ一味のように利用しようとする者が現れないとも限らない。

 秘密を知る者は、少ないほうが良かった。

 

「では私は仕事に行ってきますので、マジュニアは──」

 

 冷たい水の入ったペットボトルを渡すと、彼はニヤリと笑って受け取ってくれた。

 

「修行に戻るさ。

 封印された父を探すためにも、世界征服の野望を阻止した孫悟空は邪魔だからな」

 

 完全に目の敵にしているが、この辺りは原作通りだ。

 しかし世界征服を阻止して封印に追い込んだということで、少しだけ態度が柔らかくなっていた。

 

「私としては、あまり危ない真似はして欲しくないですね」

 

 もう少し、人間たちへの態度を軟化させてもらいたい。

 

「大丈夫だ。母の弟を殺しはせん。

 二度と武道家を名乗れんように、ボロ雑巾になるまで叩き潰すだけだ」

「それはそれでどうかと思いますけど、……まあいいでしょう」

 

 マジュニアも父に似て頑固なので、私が何を言っても聞きはしないだろう。

 そもそも原作を知っている身としては、現時点でこうして普通に話せるだけでも奇跡だ。

 

 なので一朝一夕では人間を相手に打ち解けるのは無理だと判断し、静かに息を吐く。

 

 そして気持ちを切り替えて、生まれたばかりのナメック星人に声をかける。

 

「マジュニアも、たまには農場に遊びに来たらどうですか?」

「人間たちと馴れ合う気はない。

 たとえ孫悟空がいなくてもだ」

 

 そのあとに小声で、母は別だがと言ってくれた。

 こうして話している私は、本当に例外のようだ。

 

 悟空を次の天下一武道会で叩き潰す気満々らしいので、取りあえず彼の修行を邪魔をせずに、本体が経営する大農場に出勤するのだった。

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