クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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地球のサイヤ人

 中古の宇宙船に長旅の荷物を山ほど積み込んで、ヤードラット星をあとにする。

 もちろん今までお世話になった人たちに、お別れの挨拶をするのも忘れない。

 

 ちなみにしばらく前に風の噂で惑星ベジータが崩壊したことを知り、両親や数少ない知り合いの冥福を祈った。

 ブロリーは全く記憶に残ってなくても、そんな私に付き合ってくれたので、良い弟だなと感心する。

 

 噂では隕石が落下したということになっているが、やったのはフリーザで間違いないだろう。

 彼がどのぐらい強いかは不明ではあるけれど、私もブロリーも超サイヤ人にはなれないので、きっと十中八九勝てない。

 

 そんな危険極まりない存在は近寄らずでスルーが安定であり、やはり原作主人公に倒してもらうのが一番だろう。

 

 なので私たちはフリーザの軍団に気づかれないように、多少遠回りで時間がかかっても安心安全を重視し、地球へこっそり向かったのだった。

 

 

 

 なお、男と女が狭い宇宙船の長旅で何も起きないはずもなく、……とはならない。

 何しろ私はともかく、ブロリーはまだ子供だ。

 そういった感情や行動に無自覚であり、こっちもその気は毛頭ないので、相変わらず二人共清いままである。

 

 だがそれでも二人っきりなのには違いなく、宇宙船もあまり広くはない。

 毎日ずっと顔を合わせている状態で、慣れてはいるけどやっぱり距離が近い。

 

 ブロリーが姉に向ける感情は、ラブではなくライクなのだ。

 何もやましいことはないはずなのに、やっぱりそういう常識がないのは問題だと思う。

 

 自分は前世が日本人なのでシャワーではなく風呂派で、お湯も創造できるので毎日入浴している。

 だがそのたびに弟が一緒に入ろうとしてくるため、何歳まで男女一緒に入るのかなと思いつつ、彼に正しい性の知識を教えるかどうかと悩む。

 

 しかしもし変な方向に勘違いしたら、ラブとライクを勘違いして暴走状態になりかねない。

 

 具体的にはブロリーが教えたばかりの技を使いたがり、私をベッドに押し倒したあとに、超サイヤ人のように闘争本能で怒涛のラッシュを叩き込み、最後は元気玉を発射されてフィニッシュKOになりそうでちょっと怖い。

 

 

 

 そもそも、ブロリーは私にとっての弟だ。

 そういった目で見る対象ではない。

 できれば地球で誰か良い人と結ばれて、幸せになって欲しい。

 

 だからと言って、サイヤ人と地球人が上手くいくとは限らない。

 原作では問題なかったが、あれは相当なレアケースだろう。

 

 何にせよ弟はまだ子供であり、自身の気持ちや行動が良くわかっていない。

 なので取りあえず独り立ちするまでは、姉としてブロリーの心の支えになるつもりだ。

 

 彼のほうが依存度は日に日に高まってはいるが、今のところは問題は起きていない。

 やけに距離が近くても家族仲が良いと考えれば不自然ではないし、前世では一人っ子だったので良くわからないが、そうに違いなかった。

 

 とにかく地球にブロリーが同行してくれるのは心強く、これからも姉と弟で仲良くやっていければ、それが一番良いのだった。

 

 

 

 

 

 

 フリーザに気づかれないように遠回りしてきたので、到着までかなりの時間がかかった。

 それでも問題なく辿り着けたが、誰かに見られると大変だ。

 

 着陸地点には気を配り、大気圏を抜けたあとは人里離れた山奥を目指して飛ぶ。

 

「ブロリー、くれぐれも満月は見ないようにね」

「わかった」

 

 

 原作では大猿化を防ぐために尻尾を切断していた。

 しかし自分の体の一部を、切り落とすなどとてもできない。

 滅多に泣かない主人公が涙を流して痛がっていたので、きっと想像を絶する苦痛に違いなかった。

 

 そういうわけで私もブロリーも尻尾がついたままだが、満月の危険性を説明し、全力で回避しているので現時点では問題は起きていない。

 

 

 

 しかし迂闊に直視すると危険なことには違いなく、宇宙船は満月に背を向けるように進ませる。

 そして山間部で、何処かに着陸できる場所を探した。

 

 すると近くで気が急激に高まるのを感じ取り、私たちは警戒を強める。

 

「この気は!」

「……近い!」

 

 感覚を研ぎ澄ませて出処を探すと、前方に大きな猿が突然現れた。

 木々に隠れて対象が見えなかったようで、驚きつつも何とか宇宙船を操作して緊急回避する。

 

「今から後部ハッチを開けるから、彼を止めて! でも、殺しちゃ駄目だよ!」

「わかった!」

 

 素早くコンソールにタッチしつつ、私はブロリーに呼びかける。

 

「あと、満月にも気をつけ──」

 

 弟のことが心配な私は、さらに言葉を続けようとした。

 だがその前に宇宙船の後部ハッチが開いて、ブロリーがそこから勢い良く飛び降りた。

 

 続いて目にも留まらぬ速さで空を飛び、大猿に接近する。

 土手っ腹に手加減をしたパンチを、叩き込んだ。

 

 瞬間、巨大な質量が宙を舞って、背中から地面に落ちた。

 盛大な土煙が周囲に舞い、少しの間は何も見えなくなる。

 

 やがて視界が晴れて地面に横たわる大猿が、ピクピクと痙攣している姿が現れた。

 気を感知すると弱ってはいるが生きてるし、完全に気を失ったのか起き上がってはこない。

 

「流石はブロリー。一撃で沈めちゃったよ」

 

 もしこれが原作でも起きた展開だとしたら、目の前の大猿は孫悟空で間違いないだろう。

 

 そしてまだ物語が始まる前とは言え、ブロリーは主人公をワンパンで沈めたのだ。

 薄々気づいてはいたが、やっぱり裏ボスレベルの戦闘力かもと思った。

 

 しかしそれでも、この先の強敵たちに勝てる保証は全くないため、油断は禁物である。

 

「あっ、そうだった。急いで着陸しなきゃ」

 

 私はちょうど大猿が足で踏みつけて平地になった場所を見つけて、急いで宇宙船を降下させた。

 すると開いたままの後部ハッチから、一仕事終えたブロリーが戻ってくる。

 

 微笑みながら素直に労いの言葉をかけた。

 

「お疲れさま」

「大したことはしてない」

「それでもだよ」

 

 私が頼んだ通り、命を奪わずに倒してくれたのだ。

 優しいブロリーに感謝を伝えて、私はエンジンを停止させた宇宙船から降りる。

 

 続いて気を感知すると、目的の人物はすぐに見つかった。

 

「急激に小さくなってる。あまり時間はないかも」

 

 もしかしたら助かるかも知れないと、そんな淡い期待をしていた。

 

 とにかく急いで消えかけている気の元に向かうと、大猿の足で踏み潰されて虫の息になっている一人の老人を発見する。

 

「……あぁ」

「ミズナ姉、この人は?」

「あの大猿を、育ててくれた人かな?

 でも、私じゃもう助けられない」

 

 私は戦闘力はクソ雑魚だが、代わりに様々な特技を幅広く修得している。

 神や界王様が使うモノは大抵扱えるけど、それでも彼を助けられそうにはなかった。

 

「せめて、痛みぐらいは」

 

 孫悟飯は、まだ生きているのが不思議なぐらいだった。

 私は手をかざして傷を癒やして、自らの気を分け与える。

 

 だがまるでヒビ割れたコップのように、流れ落ちて失われるほうが早い。

 もはや肉体も魂も限界を迎えており、生き続けられる状況ではないのだ。

 

 なのでせめて老人の痛みを止め、耳を近づけて静かに語りかける。

 

「助けられなくて、ごめんなさい。

 最後に何か、言い残すことはありますか?」

 

 彼は死の間際で意識も朦朧としているので、私の声が聞こえているかはわからない。

 しかし孫悟飯は、ふらつきながらも手を虚空に伸ばしてきたので、私は少し冷たくなった手を静かに握り返した。

 

「ごっ……悟空を、……悟空を、お願──」

 

 その後は血を吐く音が混じり、上手く聞き取れなかった。

 

「わかりました。孫悟空のことは、私に任せてください」

「ありが……」

 

 そこで老人の命は完全に尽きた。

 握っていた手に力がなくなり、心の中で冥福を祈ったあとで地面に静かにおろして息を吐く。

 

 すると悲しそうな表情をしたブロリーが、私に声をかけてくる。

 

「ミズナ姉、孫悟空とは?」

「多分、あの大猿のことだと思う。

 きっとこの人が今まで、親代わりになって面倒を見てくれてたんだろうね」

 

 ブロリーは倒れたまま動かない大猿に視線を向けて、ポツリと呟く。

 

「俺にとっての、ミズナ姉と同じ?」

「全く同じではないけど、保護者という点では近いかな?」

 

 私は子育てできるほど、人生経験が豊富ではない。

 今もそうだが、ブロリーの育児や世話は完全に手探りだ。

 

 サイヤ人でありながら性根が真っ直ぐに育ってくれたのは、本人が元々穏やかな性格をしていたからだろう。

 

「取りあえず夜が明けたら、悟空に事情を説明しないと。

 あとは、この人のお墓も作らないとね」

 

 そこでブロリーが少し考えて、真面目な表情で私に声をかける。

 

「育ての親を踏み潰したことも、伝えるのか?」

「それは、……黙っておこうか」

 

 悟空はまだ小さい子供だ。

 もし自分がお爺さんを殺したことを知ったら、きっと凄く傷ついてしまう。

 

 幼い少年にとって、孫悟飯こそが世界の全てだった。

 そんな大切な人を壊してしまったことを受け入れ、乗り越えていくには心も体も弱すぎた。

 

 下手をすれば原作とは、性格が変わってしまうかも知れない。

 

(私たちが介入するのも大概だけど、放ってはおけない。

 原作通りに進めるのは、なかなか大変だけど仕方ないか)

 

 孫悟空がいなければ、世界が滅亡してもおかしくないのがドラゴンボールだ。

 今は強いブロリーがいるが、できる限り主人公に解決してもらいたかった。

 

 地球を守る戦力はどれだけあっても困らないし、そもそもフリーザやセルやブウといった強敵がどのぐらいの戦闘力かを、私は良く知らないのだ。

 

 スカウターは持っていないし、原作で正確に測ったのはフリーザだけだ。

 そんな未知数な相手のため、ブロリーよりも強い可能性は十分にあった。

 

 なのでいずれ来る激戦に備えておくに越したことはなく、主人公や他の仲間が成長する機会を奪いたくはない。

 

(あとは未来が予想できないと、対処が難しくなるしなぁ)

 

 何が起きるか知っていれば対処もできるが、下手に介入することによって予想外の事態が発生する場合がある。

 藪をつついて蛇どころか、化け物を出したくはなかった。

 

 それに原作主人公なら確実に解決してくれるだろうし、任せて安心だ。

 

(まあ被害が出ても、ドラゴンボールで何とかなるでしょ)

 

 悟空もドラゴンボールを事後処理に使っていたので、最後はめでたしめでたしになるなら、それでも良い。

 だがなるべくなら人は死んで欲しくないし、被害も抑えるに越したことはないため、その辺りをどうするかが悩みどころだ。

 

 あとは主人公や仲間たちの成長の機会を奪ったり加入フラグをへし折ると、絶望の未来編に突入しないとも限らない。

 そういう意味でも、やっぱり原作通りに進んで欲しいのだった。




アンケートに答えていただき、ありがとうございました。
次回からは、投稿ペースを二日に一度にさせていただきます。
その際に一話辺り、大体二千から三千文字ぐらいになるかもです。

本当に毎日投稿できる作者さんは凄い。神ですね。


現時点での各キャラの最大戦闘力

ミズナ 50
ブロリー 1億~3億
悟空 10

公式さんが初登場で10だと表記しているので、悟空の戦闘力はきっと10なんでしょう。
なお、まだ旅立っておらず幼児なので、これでも盛ったほうという現実。

悟空はまだそこまで強くはなく、現時点では姉が一歩リードしているが、追い抜かれるのも時間の問題。悲しいね。バナージ。

投稿ペースについての質問です。切りの良いところまででも、必ず2000文字以上とは限りません

  • 2000文字以下で良いので毎日投稿
  • 切りの良いところまでで二日に一投稿
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