クソ雑魚サイヤ人は原作通りに進めたい   作:DB原作無印勢

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摩訶不思議アドベンチャー

 やがてお茶の準備ができたので、茶菓子も一緒に机に運べていく。

 

「あのー、貴女は仙人様でしょうか?」

 

 ブルマがおずおずと尋ねてきたので、私は微笑みながら首を振って否定する。

 

「いいえ、山奥に住んでいる一般人です」

「……そっ、そうなのね」

 

 ブルマが、お前ような一般人がいるかという目で見ている。

 ブロリーも右に同じであるが、彼の秘めた気も大概だと思うのだ。

 

 ちなみに悟空が過去に接した人は、孫悟飯と私たち家族だけで、姉と兄が普通だと信じている。

 この世間知らずも少しずつ直していかないといけないが、まだ子供だし焦ることはないだろう。

 

 

 

 とにかく各々の目の前にお茶を置き、手作りクッキーも運び終わった。

 少し汚れて汗を吸った濡れタオルを消して、三人揃って私もよっこらしょと席についた。

 

 そして互いに簡単な自己紹介をしたあとに、コホンと咳払いをする。

 次に真面目な顔をして、悟空に声をかける。

 

「悟空に重要な話があります」

「急に何だ? 姉ちゃん」

 

 悟空は小腹が空いていたのか、ブロリーと一緒にクッキーを小さな口に運びながら、何の気なしに返事をした。

 

「孫悟飯さんの形見の四星球ですが、ブルマさんに預けてください」

「うええっ! 姉ちゃん! 急に何言ってんだ!

 あれはじっちゃんの形見だぞ!」

 

 確かにあれは孫悟飯の形見だが、別に譲れと言っているわけではない。

 

「しばらく預けるだけですし、用が終わったら返してもらいます」

 

 話題に出されたブルマも困惑しているが、私は彼女の目的を知っている。

 

 だが今のは、いきなり本題に入りすぎたのかも知れない。

 なので反省して、最初から話していく。

 

「孫悟飯さんの形見である四星球はドラゴンボールの一つで、同じ物を七つ集めると何でも一つだけ、願いが叶うと言い伝えられています」

 

 私はそう言いながら、家の奥に安置されている四星球に気を送り、浮遊させてテーブルまで運んでくる。

 それを悟空の前に、ゆっくり置いた。

 

「じっちゃんの玉が、そのドラゴン何ちゃらなのか?」

「はい、同じような玉が世界中に散らばっています」

 

 ここまでは理解したようだが、本題はこれからだ。

 正直悟空をその気にさせられるかわからないけど、とにかくやるしかない。

 

「そして悟空は、ブルマさんのドラゴンボール探しの旅に同行するのです」

「ええっ! 何でオラが!?」

「落ち着いてください。今から説明します」

 

 私はその辺りについて、子供にもわかりやすいように、なるべく簡単に伝えていく。

 

「悟空は昔と比べて、格段に強くなりました。

 しかし山奥から出たことなく、外の世界を知りません」

 

 私とブロリーはヤードラット星で数年過ごしたので、最低限の一般常識は身についている。

 しかし悟空は、生まれてから山奥から一度も出ていない。

 

 本人にその気がなく、話をするのは家族だけだ。

 彼は気楽な性格なので、今の環境に不満はない。

 

 一応私が簡単な教育はしているが、彼もブロリーも座学は苦手だ。

 実践的な修行を好む傾向があるし、逆にそっちは自分はあまり得意ではない。

 

 なので今の悟空は戦闘力は高くても、知識や一般常識などは原作と殆ど変わらないのだ。

 

 そして私はブルマに顔を向けて、にっこりと微笑みかける。

 

「先程言いましたが、ブルマさんはドラゴンボールを探して、世界中を旅するのですよね?」

「えっ? ええ、まあ……そうなるわね」

 

 何でそれを知ってるのかと、ブルマは疑問を持っているようだ。

 原作知識ですとは言えないので、私は話題をそらすために悟空に続きを話していく。

 

「悟空はブルマさんと一緒に世界を巡り、己を今一度見つめ直しなさい。

 四星球は願いを叶えたら返して、……それは今は良いでしょう」

「じっちゃんの形見だし、返してもらうに決まってるだろ?

 何いってんだ。姉ちゃん?」

 

 ブルマは願いを叶えるとボールが世界中に飛び散り、一年は石ころになることを知っている。

 なので私がネタバラシをするのではないかと、冷や汗をかいていた。

 

 けれど微笑みながら視線を送ると、今は話すつもりはないことを察してくれたようだ。

 彼女が大きく息を吐いたのを見て、私もお茶を飲んで渇いた喉を潤しながら、一息ついて悟空に声をかける。

 

「それと、道着で力を抑えるのも良いですが、手加減を覚えるのも大切です。

 私もいつも一緒に居られるとは限りませんし、悟空が一般人を全力で殴ると死にますよ」

「そっ、そうなのか!?」

「一般人は、岩や大木より脆いのです」

 

 人里離れて暮らしていた悟空は、私がある程度の知識を教えてはいるが、未だに常識を知らないようだ。

 やはりDBは、ギャグ補正がないと一般人は生き残れない厳しい世界なのかも知れない。

 

 それはそれとして重い道着は私のお手製なので、旅の道中で破れたり破損したら修復は容易ではない。

 

 もし何らかの理由で軽装で戦うことになり、一般人を全力で殴ってしまったら、セルにふっ飛ばされるミスターサタンのようになりかねないのだ。

 

 

 

 そんな面倒な状況は避けたいので、私はもう一度悟空に尋ねる。

 

「悟空は山奥から出たことはないでしょう?」

「そう言えばないなー」

 

 畑で取れた野菜を売ったり食材の買い出しは、全部私がやっている。

 悟空もブロリーも山奥から出たことがなく、その必要もなかった。

 

 しかし、これからは違う。

 彼は多くの人々や仲間たちと出会い、原作主人公として大きく成長していくのだ。

 

「この機会に世界を旅して、一般常識を身につけなさい。これも修行です」

「うーん、修行なら仕方ねえか。……でもなぁ」

 

 だが悟空は、渋々だった。

 ここで私は、もう一押しするべく声をかける。

 

「外の世界には、強い人がたくさんいますよ」

「本当かっ! オラ! ワクワクしてきたぞ!」

 

 急に元気になった悟空だが、ブロリーはそんな弟を心配そうな顔をして見つめている。

 そして何を思ったのか、私に声をかけてきた。

 

「ミズナ姉、俺も一緒に」

「ブロリーが付いて行ったら、修行になりません。

 貴方は弟に甘いですし、地球じ……いえ、外の世界の強者では戦いにならないでしょう」

 

 今の地球には、ブロリーと並び立つ者がいない。

 それに弟を甘やかしているのも、心当たりがあったようだ、

 難しい顔で黙り込む。

 

 兄弟仲が良いのは美点ではある。

 しかし今回に限っては、もう全部コイツ一人でいいんじゃないかなになるのは困るのだ。

 

(やっぱり原作通りに進めたいしね)

 

 ブロリーは現時点では、裏ボス的な超パワーを持っている。

 もし彼が大暴れすれば、原作が破壊し尽くされるのは間違いない。

 

 そうなれば未来も不安定になるし、さらなる厄介事が舞い込んでくる可能性もある。

 悟空が成長する機会や、仲間の加入フラグも当然へし折れるだろう。

 

 それは避けたいし、ここで私はあることを思い出して悟空に顔を向ける。

 

「それと悟空」

「何だ? 姉ちゃん」

 

 私は真っ直ぐ悟空を見つめて、真面目な顔で告げる。

 

「どうしても勝てない強敵が現れたら、道着を脱ぎなさい。

 命あっての物種です」

「おっ、おう、わかった」

 

 一瞬答えに迷ったことから、弟は絶対にギリギリまで舐めプするつもりだ。

 

 サイヤ人は戦闘民族で、命がけの真剣勝負が好きである。

 相手に全力を出させて勝つか、わざと敵と同程度のパワーまで落として勝つかの戦いが燃えるらしい。

 そして相手が強ければ強いほど、ワクワクして楽しいようだ。

 

(ううん、やっぱり私にはわからないなぁ)

 

 前世が平和な日本の一般女性だった私は、戦いは極力避けたい。

 痛いのも、死ぬのも嫌だ。

 

 必要に迫られれば正当防衛はするし、もしものときに備えてイメージや自主トレーニングはしている。

 

 しかし体を動かす修行はあまり好きではなく、続けてもあまり伸びないことがわかると、たまに二人を指導する以外は必要最低限しかやらなくなった。

 

 相変わらず戦闘力は全然上がらないクソ雑魚のままだが、これに関しては諦めている。

 

 悟空は最初は私よりも弱かったが、今は重い道着を着用して互角の有様だ。

 

 姉の威厳はとっくに崩壊しているが、幸いなことにブロリーと同じように私のことを慕ってくれている。

 

 

 

 私はそこで一息ついてお茶を飲み、静かに息を吐く。

 

(まあでも原作通りに進めるなら、服は脱がないほうが都合がいいかな)

 

 着用時の悟空は力を抑えられるので、これなら原作が崩壊することはないはずだ。

 

(確か少年時代の悟空は、滅多に服を脱がなかったはず)

 

 それに服がボロボロになることも滅多になく、これなら原作通りに進むかも知れないと、少しだけ希望が見えてきた。

 

(しかし、だからと言って目を離すわけにはいかないしなぁ)

 

 悟空は仲の良い家族で、大切な弟だ。

 もしもがあっては困るうえに、原作も守らなければいけない。

 

 当然、そんな覚悟はできていないが、いよいよドラゴンボールの壮大な物語が始まってしまう。

 

 私としてはどうにか原作通りに進んでくれるのを、心の中で切に願うことしかできないのだった。

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