「ん~!美味しい~!やっぱりお肉は牛だよねー!」
「ソウデスネ……」
肉を口の中に入れる度に幸せそうな表情をする先生
……結局この人が何の目的で俺に会いに来たのかまだ聞いてないな、本当に会いに来ただけっていうのは考えられないし
「……ねえ、先生」
「ん?何かな?」
「そろそろ本当の目的を教えてよ、何か理由があるんでしょ?」
「……何のこと?」
すっとぼけるように首を傾げてくる……誤魔化そうったってそうはいかない
そう簡単に化かされるとは思わないでほしい
「とぼけないでよ、理由がなきゃこんな危険な所に一人で来る訳ないでしょ」
「………?」
「………え?まさか本当に会いに来ただけなの?」
「そうだけど?」
何を当たり前のことをと言わんばかりの態度で答える先生
……開いた口が塞がらない
「実は景和のこと、ずっと心配してたんだよね」
「……俺を?」
「そっ、バシリカでの戦いからずっと音沙汰無かったからさー……ここに住んでるって聞いた時、すぐに飛び出したよ」
「……ほっといても良かったのに」
「そうはいかないよ、まだあの時のお礼も出来てないしさ!」
そう言って胸を張る先生
……あの時、か
「……俺は別に先生の為に戦った訳じゃないよ、あのままだと自分が後戻り出来なくなりそうだったから───」
「でも結果的に私は助けられたよ?」
「───っ………」
俺の言い分なんて気にせずに笑顔で話しかけてくる先生
……駄目だ、この人の善性と笑顔を見ていると姉ちゃんを思い出してしまう
食べ終わったら早く帰ってもらって────
「……ゲマトリアドライバー?」
「っ!?」
────そう考えていると、彼女がテーブルの下に置いておいた紙に気づいた
「これ……何?」
「……先生には関係ないよ」
「あっ!?」
咄嗟にバッ!と紙を取り上げるが、そのせいでむしろ怪しまれてしまう
「もしかして……また危険なことやろうとしてる?」
「………だから関係ないって言ってるでしょ」
ジト目で見られ続けるのがむず痒くてそっぽを向いてしまう
しかし先生はそんなことなどお構い無しに聞いてくる
「関係あるよ、ゲマトリアは何度も私の生徒達に手を出してきたんだから……もし彼等がまた何かやろうとしているなら生徒に被害が出る前に私が止めないと」
「………」
「ベアトリーチェは言わずもがな、黒服って奴だってカイザーを利用して生徒を誘拐しようとしてたし……」
「……カイザー?」
カイザーの名前が出た瞬間、ピクリと反応してしまう
……あいつ等が関わっているんだとしたら、もしかしたら────
「………景和?」
「っ!とにかく、食べ終わったら早く帰ってよ?俺も送るからさ」
怪しむ様な視線をぶつけられるが、話を強引に切り上げて米をかっ食らう
……その後も見つめられ続けたせいであまり味を堪能できなかったけど
結局、その日先生が帰ったのは食後に少しグータラしてからだった
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「ゲマトリア……か」
次の日、ブラックマーケットでの仕事をこなした俺は少し〝表〟に出てカイザーコーポレーション本社前まで来ていた
彼等とは何度かぶつかってきた……とはいっても先に仕掛けて来たのは向こうからだけど
もしもゲマトリアとカイザーが繋がっていたのなら………俺の持つデザイアドライバーを下っ端に狙わせていたことが関係しているのかもしれない
会社の前に警備兵が4人立っているが、そんな事は気にせずに歩き出す
此方に気づいた警備兵が慌てたような様子で何者かと連絡をとっているが、相手が誰であろうと関係ない
「……通してもらうよ」
デザイアドライバーを取り出して装着する、が───
「あいつが標的か!」
「報酬はちゃんと払うんだな?」
「ヘイローもないたった一人の人間相手にアタシ等の力が必要なんてな……カイザーってのも大したことねえなあ!?」
「……っ!?あれは確か……」
建物の中から出てきたのはいつも自分にちょっかいを出してくるカイザー兵達………ではなく、ブラックマーケットではよく見かけるただの不良生徒達だった
「ヘルメット団………ではなさそうだね」
自分の事を勝手にアニキと呼び、後ろをヒョコヒョコとついてくる彼女達の事を思い出してしまい一瞬躊躇うが、相手が全く関係の無い赤の他人だと分かるとすぐに戦闘準備に入る
「……彼女達には悪いけど、大人しく眠ってもらおうかな」
相手がカイザー兵ならまだしも、ただの生徒相手にライダーの力を使うのは少し心が痛むため、デザイアドライバーをしまおうとし────
「へへっ……それじゃ、依頼通りこの〝玩具〟の力を試してやるか!」
「おい!全部終わったら本当に〝コイツ〟をアタシ達にくれるんだろうな!?」
「この力で……今まで散々私達を見下してきた奴等に復讐してやる……!」
《ライズカイザー・承認》
「─────は?」
突如、デザイアドライバーのような物を取り出した彼女達を見て体が固まってしまう
いや……よく見るとデザイアドライバーとは若干異なる、バックルをセットする箇所が一つしかない、あれではリボルブオンもデュアルオンもできないだろう
《SET》
「変身!」
「変身っと……これでいいのか?」
「へ、変身っ……うおっ、すげえ……!」
《SOLDIER》
《GO》
簡素な音声と共に何処かで見たようなデザインの装甲が出現する……迷彩柄の上から所々黒い縦線が入った、どこかカイザーのPMC兵士を思わせるような装甲が
彼女達はそれを身体中に纏い、腰に出現したカイザーのロゴ入りの銃を取り出してクルクルと回す
「まずは一発目……っとお!」
「……っ!?」
唖然としている俺に彼女達は容赦なく発砲してくる、それを咄嗟に横に飛び退くことで回避する
「どうしたどうしたぁ!戦わねえと生き残れねえぜえ!?」
「ぐっ……!やるしかない……!」
敵の銃撃を回避しながらデザイアドライバーを再び取り出し、ブジンソードバックルに手を伸ばす────
『関係あるよ、ゲマトリアは何度も私の生徒達に手を出してきたんだから……もし彼等がまた何かやろうとしているなら生徒に被害が出る前に私が止めないと』
────瞬間、彼女の言葉を思い出す………思い出してしまう
「………っ…」
「なに休んでやがる!ああ!?」
その隙を敵が見逃すはずもなく、容赦なく殴り飛ばされる
「がはっ……」
「んだよ……折角楽しもうと思ってたのによ……」
「この調子じゃアタシ等が生身でも大して変わんなかったな!」
「な、なあ!さっさとトドメ刺しちまおうぜ!?」
此方が息を整えてる間にも敵がゆっくりと近づいてくる
……仕方ない、か
《SET》
モンスターレイズバックル〝だけ〟を取り出し、デザイアドライバーの右側にセットする
「なるべく手加減はするけど……それなりに覚悟はしておいてね────変身」
《MONSTER》
《READY FIGHT》
上半身に青と黄色の装甲を纏う
正直、このバックルには………というよりもこのバックルの使い手にはあまり良い思い出がないから単独で使いたくなかったんだけど………
「ハッ!なんだその似合わねえ格好はよぉ!?」
「くたばれえ!」
敵二人が銃を放ちながら此方に走ってくる、それを腕でガードしながら二人が近づいてきた瞬間
「ぐあっ!?」
「がっ……!?」
軽く腕を振るって二人を殴り飛ばす
……このフォームで思いっきり攻撃すると相手を大怪我させてしまう可能性がある、かといってバックルを使用してくるヘイロー持ちのライダー三人相手にエントリーフォームで簡単に勝てるとも思えない
だからこのフォームで慎重に手加減しながら戦うしかない
一応ブジンソードにも剣技を使いこなせるようになる力が備わっているが……それらはどちらかと言うと敵を倒す為の能力だ、手加減する為のものではない
「てめえ……よくもやってくれやがったな!?」
そう叫びながら殴りかかってきた最後の一人を軽く蹴り飛ばしてモンスターバックルを2回押し込む
《MONSTER STRIKE》
拳にエネルギーを貯め、それをさっきぶっ飛ばした三人………から少し離れた場所に放つ
「ぐあああっ!?」
「っっ……!?」
「いった……!」
その爆発と衝撃で吹っ飛ばされた三人は変身が解除され、少し転がってから前のめりの状態で止まった
次はカイザーの本社に乗り込もうと後ろを向いたが───
「いたぞ!あいつだ!」
「態々ターゲットの方から来てくれるなんてな……」
「確保しろ!」
「あいつ等は失敗したのか……所詮はチンピラだな」
───気が付くとカイザーの援軍が来ていた
「おい!今度はアタシ等がやるぞ!」
「報酬は私達の物だ!」
………さっきと同じく不良生徒らしき人物を連れて
このまま手加減しながらカイザー兵とも戦うのは正直面倒だ
「………しょうがないか、仕切り直そう」
そう言って俺は
「……っ!?あいつ、逃げたぞ!」
全力で後ろを向いて走り出した
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────────
──────
敵を完全に巻いた俺は近くのコンビニの路地裏で座っていた
それにしても……
「仮面ライダー……なんで三人も……」
さっき使っていたのは間違いなくレイズバックルとドライバーだった
この世界にデザグラ運営は存在しない、となると………
「まさか……IDコアを必要としないドライバー……?」
まずい、もしそんな物が量産されたらこの世界は世紀末ゲームの時みたいに……
「………させるか、元はと言えば俺がこの世界にライダーの技術を持ち込んでしまったんだ」
なら俺がケリを付ける
「ライダーの力で争いが起きる前に、俺が量産元を潰して、残った全てのライダーも────」
『全てのライダーをぶっ潰す!』
『ライダーになったことなんて忘れろ、そうすれば、これ以上不幸にならなくて済む』
『ライダーにならなきゃ生命の危険も無い、それ以上何を望む?』
「────え?」
そう決意しようとした瞬間、前の世界での出来事が頭の中を過る
「……まさ、か……彼、も?」
身体が震えてくる
「……っ!違うっ!あいつは姉ちゃんを殺しただけだ!あいつはただの人殺しなんだ!」
その震えを誤魔化すように必死に腕を振るう
………結局その場から動けたのは、しばらく呆然としてからだった
・ライズカイザー
桜井景和の持つデザイアドライバーの情報を元に作り出された兵器、IDコアを必要としない……というよりも現状のカイザーの技術力では作り出せなかった
さらにバックルを一つしかセット出来ず、リボルブオンやデュアルオンも不可能
・ソルジャーレイズバックル
カイザーが作り出したバックル、景和の前の世界のバックルよりも比較的容易に量産出来る
サイズは小型バックルよりもほんの少しだけ大きい程度
・仮面ライダーハンター
パンチ力・2.2t
キック力・4.7t
ジャンプ力・6.5t
走力・6.8秒(100m)
頭部の装備〝カイザーメット〟には各隊員と通信できる機能がついてるが、今回使用したのはカイザー兵ではないただの不良生徒だったため、使う機会は無かった
戦闘能力事態はそこまで脅威ではなく、必殺技のようなものを使う事も出来ない為、別にライダー以外でも対処は可能である
……しかしこのシステムの恐ろしいところは戦闘能力ではない
〝誰でも〟変身でき、〝誰でも〟戦えるというところである