呪術の子 作:メインクーン
この話は推しの子と呪術廻戦が融合した世界となっています。
よろしくお願いいたします。
三つ子の末っ子は呪術師
────日本国内、某所。
とある町の近くに連なる山々の奥地。
深夜、その山間部に位置する荒れ果てた神社の近くで、1人の女性が息を切らしながら必死に走っていた。
「ハア、ハア……何で、何でこんな事に……!」
生い茂る草木を掻き分け、雨でぬかるんだ地面だろうとお構いなしに全速力で神社を後にする。
その表情は恐怖と絶望で酷く歪んでおり、涙も一切堪える様子がない。
どうして辺鄙な場所で女性がそのような行動を取っているのか。その理由は女性の後を追う存在にあった。
「ネェ、マッテ……マッテヨオネエサン……アソボウヨ!!」
女性の背後から木々を薙ぎ倒しながら出てきたモノは、とてもこの世の物とは思えないほど醜い異形。
正に化け物と呼ぶに相応しい何かが、逃げる女性を捕まえようとしていたのだ。
「事前に貰った情報じゃ、2級呪霊……高くても準1級程度だって聞いたのに!」
現在進行形で女性を追いかけている化け物の正体は『呪霊』と言い、恐怖や恨み等の人間から漏出した負のエネルギーの『呪力』が蓄積し、形を成した呪いである。
呪いであるため基本的にコミュニケーションは不可能で、総じて人間を情け容赦なく殺しに来る。これら呪霊が原因で、日本では毎年1万人を超える怪死者・行方不明者が出ており、その被害は年々留まるところを知らない。
そして、この化け物共に対抗するために存在するのが『呪術師』と呼ばれる、呪力を操り呪霊と戦う人間達。
大多数の人間は呪力を殆ど持たないため、呪霊と戦うどころか視認すら出来ない。そんな一方的に殺される存在でしかない一般人に代わり、生まれつき呪霊が見えて呪力を操れる呪術師達が、人々の平穏を守るために日々呪霊と戦っている。
今回、神社に訪れた女性もまた呪術師で、町の近くにある廃れた神社に出現したという呪霊を祓うため、仲間である他の呪術師数名と行動を共にしていたのだが……。
「ううっ、先輩も後輩も皆やられた……あんなあっけなく殺されるなんて! 先輩なんて準1級だから大丈夫だと思っていたのに……あんなのが現れるとか聞いてないよぉ!!」
神社に訪れた女性を含む4名の呪術師の内、先輩1名と後輩2名の3名は既に現れた巨大な呪霊によってそれぞれ一撃で潰され、血や臓物を辺り一面に撒き散らす現代アートと化した。
残る女性もなけなしの呪力を振り絞り、自身を呼び掛けながら追って来る呪霊から必死に逃げるが、走る場所に適していないためか徐々に距離を詰められている。
既に応援は呼んだ。真っ先に先輩が殺された時点で想定以上の呪霊である事を理解し、至急応援を寄こすように連絡はしておいた。
だが、残念ながらここは山奥に位置する森の中。いくら町から大して離れていないとはいえ、生い茂る草木を掻き分けながら逃げる女性の元まで駆け付け、尚且つ準1級の呪術師を瞬殺する呪霊を祓うのは簡単な事ではない。
つまり何が言いたいかというと、女性は絶体絶命の窮地に陥っていた。
「逃げなきゃ……もっと遠くへ、速く逃げないと殺され────あっ」
4人が神社に訪れる前日まで、周辺地域一帯では3日に渡り雨が降り続けていた。それによって地面はぬかるんでおり、ただでさえ走り難い山中の地面は輪を掛けて酷い状態となっている。
そんな場所で追いかけて来る呪霊を気にしながら全速力で走り続けた結果、女性は地面のぬかるみに足を取られ、派手に転んでしまったのだ。
転んでしまった女性のすぐ後ろには当然……。
「ヤットオイツイタ! モウニガサナイヨ、オネエサン! イッショニアソボウヨ!!」
「あっ、ああ……」
徐々に距離を詰めていた巨大な人型の呪霊が、転んだ女性の目の前で醜悪な顔を歪ませながら残酷に嗤う。
それを見た女性はこれから自身に訪れるであろう惨劇と死を目前に、ただ呻き声の様な小さな音を口から発する事しか出来なかった。
(ああ、私ここで死んじゃうんだなぁ……今からこの化け物に玩具みたいに弄ばれて、ゴミみたいに殺されるんだ。……皆さん、後は任せます。殺された先輩達の為にも、必ずこいつを祓ってください)
そして、色々と悟った女性は後から来る応援に呪霊の討伐を託し、静かに目を閉じた。
その時だった────。
「術式順転────『
突如として耳に入った快活な高声と共に、何かが上空から超高速で飛来してきた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!?」
直後に響き渡る呪霊の甲高い叫び声と、目の前で爆弾が爆発したかのような大気を震わす轟音。周辺一帯の山々は地震の如く大きく揺れ、呪霊がいた場所は広範囲に渡って土煙に包まれている。
呪霊の目と鼻の先にいた女性は謎の物体の飛来による衝撃で吹き飛ばされ、何度も地面を転がりながら飛ばされた先の大木に激突する。
幸い、間一髪でどうにか受け身を取る事に成功したが、大木にぶつかった衝撃で猛烈な痛みを背中から感じていた。
一体何事だと、状況に全くついて行けない女性は背中を抑えながら恐る恐る目を開ける。
「いやー、呪霊をすぐに祓ったのは良いけど、勢い余り過ぎて周りがとんでもない事になっちゃってるね! 僕の悪い癖だよ本当に! アハハハハ!」
そこには、巨大なクレーターの中心で朗らかに笑う美少女がいた。
女性らしい丸みを帯びながら、それでいてしっかりと筋肉も付いているアスリートの様な引き締まった体型。サイドテールの様に束ねている紫がかった黒髪のロングヘア―。
何よりも特徴的なのは、見る人を惹き付けて止まない
女性は、その美少女に見覚えがあった。
「私達が束になっても敵わなかった呪霊を、たったの一撃で…………あれが『五条悟に次ぐ最強』の実力……!」
「アッハハハハハハハハ!」
特級呪術師・星野
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ちょっとした昔話だが、星野栗栖多留改めクリスの生まれは少々どころかかなり特殊だ。
クリスが生まれた場所は宮崎の山奥にある病院。そこでクリスは三つ子の末っ子として生まれた。
父親は不明。母親は当時一世を風靡した伝説的アイドルにしてアイドルグループ『B小町』の絶対的センター、星野アイ。16歳という驚異的な若さで身籠りながらも世間には公表せず、所属事務所の社長や担当の産婦人科医の協力の下、極秘出産という流れに至った。
子供を出産している事が世間に知れ渡れば、アイはおろかB小町のメンバー、ひいては事務所の苺プロダクションまで共倒れしてしまう。そんなギリギリの綱渡り状態の中、クリスはこの世で
「おーよしよし、クリスは今日も可愛いでちゅねー! そろそろお腹空いた頃だと思うし、飲む?」
「馬鹿、そっちはクリスじゃなくてアクアだ! クリスはこっちだっつーの! ……ったく、どうして性別も髪色も違うのに何度も呼び間違えるんだ? もうちょっと母親としての自覚を持て」
「……………………」
母親のアイと苺プロの社長の斎藤壱護が日々ボケツッコミの様なやり取りをする傍らで、当時のクリスはそれはもう大人しく過ごしていた。
一言も喋らない、口も開かない、泣きもしないし表情も大して変化しない。赤子なのに赤子らしくない様子に、当時三つ子の世話を押し付けられていた壱護の妻、斎藤ミヤコはクリスに対し得体の知れない不気味さを感じていた程だ。
様々な経緯を得て同じく
その一貫した態度に、兄のアクアと姉のルビーも思わず……。
「なあルビー、俺達どっちも転生した身だからさ、もしかしたらあいつも同じなのかなって思ってたけど……あれで俺達と一緒は流石に無理があると思わないか?」
「……確かに、もし私達と一緒で普通に喋れるなら、一言も喋らないって逆に凄いストレスだろうし……。でもそうだとしたら全然泣かないのも変じゃない?」
「いやまあ、それはそうなんだが……でも赤ん坊の中には生まれた時からあまり泣かないって子もある程度は存在するから、クリスもその類じゃないのか? 何というか、これに関しては深く考えても無駄に思えてきた」
「それもそうね」
この始末である。
だが、アクアの考えはあながち間違っていない。というのも、確かにクリスは前世で1度死を迎え、アイの子供として2度目の人生を歩む事になったのだが、前世の記憶という物がクリスには無かった。
前世のクリスの享年はなんと1歳。丁度1歳になった誕生日祝いにプレゼントを買おうと喜ぶ両親と出かけた結果、非常に運が悪い事に道中で上位の呪霊と遭遇し、そのまま為す術もなく全員呪い殺されたのだ。
このような経緯から、クリスは転生している身だが実質人生1週目であり、殺されたショックによる影響からか、いつも泣かない物静かな子として今の家族に認識されていた。
そして、前世で呪霊に殺され転生したという特殊な生い立ちから、2度目の人生では生まれた時から見えないモノが見えるようになっており、それに伴って呪力も自然と扱えるようになっていた。
加えて…………。
「ギギ……ウギ、ウギャギ────ギャッ!?」
クリスは呪力の精密操作が群を抜いて上手かった。
定期的に家に侵入してくる最下級にも満たない呪霊に向かって、自身の呪力を塊にして飛ばすという遊びを、生後1年を過ぎた頃には感覚で行っていた。
その時のクリスは表情にこそ出ていないが、得も言われぬ爽快感があった。前世の記憶は覚えていないが、呪霊に殺された意趣返しが出来てご満悦だったのだろう。
こうしてクリスは、前世とは全く異なる環境下でも自然と順応し、自分なりに2度目の生を謳歌していたのだった。
────クリスの運命が大きく変化したのは、ここから更に数年後の事である。
呪術廻戦と推しの子で原作タグどちらにしようか迷いましたが、アイドルの子として産まれるから推しの子の方が適切かもしれないと判断しました。
ちなみに、アイとクリスの容姿で明確に違うのは身長です。
アイの身長は151cm、クリスの身長は165cm。アクア(172cm)とルビー(158cm)を足して2で割った数値。
黒川あかねとほぼ同じ。
あとボクっ娘(誰かさんの影響で)