呪術の子 作:メインクーン
あかね「クリスちゃんの秘密、簡単に打ち明けて良いのかな……」
クリス「もう隠し通せないし開き直るよ!」
アクア「お前……一体どういう事だ?」
ミヤコ「お願いクリス、無事に戻ってきて」
クリス「この改造人間強いな……良いね、戦いが楽しくなってきた」
────午後20時26分、JR渋谷駅新南口前。
「もうすぐダ虎杖悠仁!急げ!」
「ああ、分かってる!このままじゃ五条先生どころかクリス先輩まで……!」
虎杖は現在、五条が封印されたという情報を届けるべく、渋谷に降ろされた帳に向かって全速力で駆けていた。
その理由は数分前に遡る。
「────つまり五条先生が封印された事と、クリス先輩も封印される予定なのを今すぐ皆に知らせないと、日本全体がヤバいってわけか」
「そういう事ダ。だから頼む、虎杖も冥冥も俺の指示に従ってくレ。この保険だってあまり持たなイ」
代官山駅に突如降ろされた帳に対処すべく向かった虎杖達は、そこで嘱託式の帳を守る呪霊達を難なく撃破して解決した後、冥冥の言う通り代々木公園に向かっていた。
だが、そこで虎杖の耳にメカ丸の分身が突如出現し、彼から持たされた情報で今の状況を知る事になる。
メカ丸自身は既に真人に殺されている事、たった今五条悟が呪霊達によって獄門疆に封印された事、そして今度は代々木公園に閉じ込められたクリスの封印を画策している事。
これらの情報を伝えられた虎杖達は最初警戒したが、状況証拠からメカ丸の発言の信憑性を評価し、あっという間に耳を傾けるようになった。
「分かった、何をすれば良いのか言ってごらん」
「虎杖はこのまま渋谷の帳に入り、五条封印を術師全員に伝達。五条奪還と星野クリスの封印阻止をこちらの共通目的に据えロ。どちらも達成したいが、優先順位は星野クリスの封印阻止が好ましイ」
「おうっ!」
「冥冥は虎杖のサポートをしてくレ。もうすぐここへ敵が寄越した呪詛師がやって来るから、まずはそいつらを撃退。その後は再び代官山駅に戻って渋谷行きの線路を抑えてほしイ。相手の出方次第で臨機応変に対応ヲ」
「了解、任せて頂戴。ところで君の口座はまだ凍結されていないね?」
「……えっ?」
冥冥のぶれない金銭欲にメカ丸は一瞬戸惑いを見せるが、すぐに気を取り直して2人に言った。
「五条悟が封印された今、この状況を打破できる希望は星野クリスだけダ。だが彼女まで封印されてしまえば今度こそ日本の終わりダ。今より更に多くの術師・非術師が犠牲になるだろう。悪いが命懸けで頼ム」
「よし、それじゃあ行くか!」
「好きに動いていいよ、合わせるから」
────というようなやり取りがあり、今に至る。
「見えた!あそこだ!」
「五条悟が封印されて時間が経ってル!今はまだ全員地下5階にいるが、いつ動き出すか分からン!何としてでも阻止するんダ!」
走り続けて数分、ようやく見えた帳の縁に向かって更にスピードを上げて走る虎杖。メカ丸の急かす声を聞き流し、帳の中へ入ろうとしていた。
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一方その頃、渋谷駅地下5階では五条を封印した羂索が獄門疆を片手に、特級呪霊達と一堂に会していた。
「全員目を覚ましたね。それじゃあ今度は星野クリスの封印に向かおうか。ちょっと時間オーバーしてるから巻きで行くよ」
「ふん、どこぞの誰かがちんたらしていたおかげでな」
「落ち着いて漏瑚。たった今裏梅から、私と真人が作った改造人間を星野クリスにぶつけたって連絡が来た。心配しなくてもまだ十分間に合う範囲だよ」
「だとしても早く行くぞ。いつまで持つか分からん」
「分かってる。さて、地下通路から……ん?」
「どうした?」
予定より長引いてしまった五条封印の時間分を巻き返すため、羂索は仲間と共に急いで次の計画にシフトしようとした。だが、代々木公園に向かおうとしたタイミングで、右手に奇妙な違和感を覚えた。
目を向けると、つい先程五条を封印した獄門疆が急にカタカタと小刻みに震え始めていて────
「────ッッ!?」
「なっ……!?」
「なんて奴……!!」
瞬間、獄門疆が地面に勢いよく落下した。
唐突に凄まじい重量が右手に伸し掛り、流石の羂索も耐えられず落としてしまったためである。
地面に落ちた獄門疆はコンクリートを砕き、小さなクレーターを作り上げる。これには全員が思わず目を見開いた。
「……何これ、どういう事?」
「封印は完了している。恐らく獄門疆が五条悟という情報を処理しきれていないんだと思う。暫くは動かせないね」
「マジで?それってヤバくね?」
「ああ、結構ヤバいね」
静まり返った空間内で、真人の問いに羂索は冷静に返した。獄門疆を複製し、試験として万に使用した時は1度も起きなかった事態を前に、一周回って落ち着いていた。しかし、そんなマイペースな会話に付き合ってられない者が1人。
「呑気にそんな事言っとる場合か!我々は今から星野クリスの封印に向かわねばならんのだぞ!?一分一秒たりとも無駄に出来んというのに、こんな事で足止めを食らうわけにはいかんじゃろうがぁーっ!!」
漏瑚が怒髪天を衝く勢いで激怒し、耳や頭の穴から荒れ狂う炎を噴き出す。
たった今、時間オーバーしているから急いで行こうと話したばかりでこの始末。クリスの強さを恐れている漏瑚が、焦りのあまり怒鳴り散らすのは至極当然の反応だった。
しかし、その焦りは羂索とて同じ事である。まさかこんな事になるとは思っていなかったからだ。
「だからと言って、このまま獄門疆を放置するわけにもいかないだろう?いつでも持ち運べるように誰かがここで見張っている必要がある。それが可能なのは獄門疆の管理ができる私だけ。尚更ここから動くわけにはいかないよ」
「そんな事言って、星野クリス封印の作戦指揮も貴様だろうが。どう考えても後者の方が重要に決まってる。見張りはここにいる他の誰かに任せればそれで良いじゃろうて」
「駄目だよ。この獄門疆が呪術師に渡る可能性を1%でも排除しないといけない。こういう時だからこそ、より慎重に行動すべきなんだ」
「だが、それでは星野クリスの封印は敵わんぞ。どうするのだ?」
「そうだね……」
五条悟を封印した獄門疆の見張りか、思い切ってこのまま星野クリスの封印に行くか……どちらを選ぶかで漏瑚と言い争っていると、不意に背中に妙な視線が届いているのを感じた。
不思議に思って感じた方向へ顔を向けると、そこには天井に張り付くミニサイズのメカ丸がこちらをじっと見つめていた。
それに気付いた途端、急いで真人が破壊するが時すでに遅し。今ので五条悟の封印や当分ここから獄門疆を動かせない事などが術師全体に知れ渡るだろう。
「やられたね……!!」
これにより、事態は更に切迫したものになる。予想外の事態が立て続けに起こり、計画に更に大きなズレが生じたのだ。
「不味いぞ、こちらの状況が向こうにバレた!術師共が総力を上げてここへ来る!急げ夏油、今は一刻を争う時じゃぞ!」
漏瑚の怒号がホームに響き渡る。興奮しすぎて周囲の気絶した人間が数人焼け死ぬが気にしない。
ここから移動できないだけでも異常事態なのに、相手に状況がバレてしまったとなれば、当初の封印計画が成功する可能性はかなり絶望的である。
仮に仲間の1人がクリスと合流し、今の状況と自分が狙われている事を伝えたら、きっと彼女は封印されないように警戒するだろう。
それ以前に封印するための準備時間が足りず、もたもたしている間に自由になったクリスに妨害され、五条を奪い返されるのがオチになってしまう事は想像に難くない。
はっきり言って、このままでは『詰み』になるのは確実だった。呪術師側は五条が封印されて窮地に陥りかけているが、呪霊側もまた計画が全て白紙になりそうで窮地を迎えている。
「……繰り返すけど、私はここで獄門疆を見張る必要があるから移動はできない。漏瑚達も、これからここへやって来る術師達を撃退してもらいたい。この獄門疆を再び持ち運べるようになるまでね」
「……どうしてもか?」
「ああ、そうだ」
「「…………」」
両者の間に重苦しい沈黙の時間が過ぎる。そんな中、何時までも平行線を辿る2人の言い争いに割り込む者が1人。
「話は聞かせてもらったわ。上の階で後片付けしている間に、何だか面白い事になってるじゃない」
「「────ッ!!」」
「もう良いわ2人とも……私が行く」
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────午後20時28分、渋谷ストリーム前。
「ナナミーン!!ナナミンいるーっ!?五条先生が封印されたんだけどぉーっ!!」
精一杯叫んだ虎杖の声が、帳内の渋谷全体に木霊する。
帳に入ってすぐの建物の屋上に掛け登った虎杖は、メカ丸の指示通り、渋谷に集った術師全体に今の状況を伝える事に成功した。
「よし、ひとまず伝達は完了しタ。後は皆がここへ来るのを待とウ。1人で突っ込むわけには行かんからナ」
「じゃあそれまでナナミンコール続けとくよ。大事な事は何度も言った方が良いしな」
「好きにしロ」
それからしばらく七海のあだ名を大声で連呼し続けていると、虎杖の下へ意外な人達がやって来た。
「虎杖君!」
「ッ!?その声、もしかして……順平!」
「よーう虎杖、俺達も来たぞー。凄ぇデカい声だったから良く聞こえたぜ」
「パンダ先輩まで!」
「クソッ……何で俺までこんな所に……」
「ごめん誰!?」
七海ではなく、先に来たのは順平達を率いる日下部のチームだった。日下部達は帳に入るまでJR渋谷駅の新南口でずっと待機中だったので、代官山駅の方向から来た虎杖とは一番距離が近かった。
そして、虎杖の大声の反響具合から割と近くにいると察知した順平が、その事をパンダに伝えて急いで虎杖の所へ駆け付けたのである。
ちなみに、絶対に大変な目に遭うと確信した日下部は移動をかなり嫌がっていたが、今ここで1人になるよりはマシだと妥協して渋々2人の後を追ってきた。別に生徒達の事が心配でついて来たわけではないと本人は思うようにしている。
「それで本当なの?五条先生が封印されたって話は」
「ああ、実はな……」
順平達に今の状況とこれまでの経緯を説明した。メカ丸の存在と五条封印の事実、そしてクリスも狙われている事まで。
その衝撃的な情報の連続に、話を聞いた3人は絶句する他なかった。
「マジかよ。よりにもよってあの五条が本当に……」
「でも夏油傑の姿をした呪詛師は悟を動かせなくて、まだ地下5階に残ってるんだよな?なら、そこに行けば救える可能性はあるわけだ」
「確かにそうですけど、相手もそう簡単に通らせてくれるわけありません。恐らく特級呪霊達が死に物狂いで殺しに来ますよ」
「順平の言う通りだよなぁ……やっぱナナミンが来るまで待つか?」
「その方が良いだろ絶対。ついでに禪院の爺さんも一緒に連れて行こう。呑兵衛だが話は分かる人だし、何より1級の中でも特に強いからな」
しばらく話し合った結果、移動しながら七海のグループと禪院のグループに合流し、そこで新たな編成を組んでから突入しようという結論に至った。
ただし、渋谷駅の周囲に術師を入れない帳が降ろされているため、突入する前にそれを破る必要がある。とはいえ帳の突破方法に関しては虎杖に考えがあった。
「五条が封印された後に降りた術師を拒む帳……代々木公園に降りてる奴と同じようだが、そんな大規模で強靭な帳、本当に突破できるのか?力尽くじゃどうにもならないと思うが」
「これは俺の予想なんだけどさ、代官山駅に降ろされた帳は……」
虎杖は今回の帳に関して、代官山駅での戦いからとある推測を立てていた。
代官山駅では帳の"基"となる物が存在し、それが破壊されないように呪霊が周囲を守っていた。五寸釘程度の大きさのそれには術式効果が込められており、あえて帳の外に出る事で発見・撃退のリスクを上げ、帳の強度も底上げしていた。
これらの要素から推し測るに、今回も帳の"基"を見つけて破壊さえすれば先へ進めるようになる……虎杖はそう考えた。
「おいおいマジかよ、結界術の基礎ガン無視じゃねーか。やってらんねーぜ全く」
「でも文句言ったって仕方ないだろ日下部。帳をどうにかしないと悟を助けられないしさ」
バグ技じみた高度な結界術の数々に日下部は深い溜め息を吐いた。これからそういう事が出来る奴らと戦うかもしれないと思うと、気分が落ち込むのも無理はなかった。パンダに諭されてもその態度は変わらない。
「……虎杖君、その理屈ならかなり目立つ場所に帳の"基"はあるんじゃないかと思うんだ」
「言われてみれば確かに……順平、その話もっと聞かせてくれ」
「分かった。そろそろ移動したいし、歩きながら話そう」
その後、虎杖の呼び声を聞いて駆けつけた七海達と合流し、改めて情報を共有した。
「なるほど、夏油さんの皮を被った何者かが五条さんを封印し、今度はクリスさんを狙っていると……非常に厄介な事になってきましたね」
「獄門疆に嘱託式の帳……とんでもない物のオンパレードだな」
「術師のみを拒む帳の"基"が目立つ場所にあるとしたら大分場所は限られてきますね。高層ビルの屋上か、人目の多い広場くらいかと」
七海、猪野、伏黒の3人も今の状況を知り、各々が事態の深刻さとこれからすべき事を頭に叩き込む。
そして肝心の帳の"基"がある場所だが、伏黒と順平は既に見当を付けていて、その考えを皆に共有した。
「……なるほど、
「じゃあチーム分けしようぜ!帳を破壊して五条先生を助けに行く人と、代々木公園に行ってクリス先輩に状況伝える人の2チームで!」
向かう当てが付いたところで、虎杖がチーム分けをしようと言い出した。非常に重要な選択である。
「虎杖は五条先生を助けに行く方だろ?というか、お前は真人とかいう継ぎ接ぎ呪霊に対する特攻持ちだから、どの道救出チーム入りは確定だけどな」
「流石伏黒、分かってんじゃん!」
伏黒の肩を虎杖が笑顔でバシバシ叩く。
伏黒は若干不機嫌そうだが決して押しのけようとしない辺り、褒められて案外嬉しかったのかもしれない。そんな印象を受けた。
「私は一旦伊地知さんと合流します。1級でしか通らない申請がいくつかあるので。その後は直毘人さん達と合流して五条さんの救出に向かいます」
「じゃあ俺は星野に状況を伝えに行く方で。メカ丸の話じゃそっちの方が優先度高めなんだろ?実際、星野にどうにかしてもらった方が早く片付くからな」
七海と日下部はそれぞれ己ができる仕事を選ぶ事に。
正直に言うと申請の手続きは日下部が行きたいと思っていたのだが、七海に先を越されてしまって引くに引けなくなった末の苦肉の判断だ。
なので今も平静を装っているが内心はかなり焦っている。五条救出という面倒事に突っ込まなくて済むだけマシだとは思っているが。
「じゃあ俺も悠仁と同じく救出チームだな」
「俺だって勿論救出に行くぜ。七海さんも後々行くってんなら尚更だ!」
パンダと猪野も救出チームに入る事になり、これで5人中4人の救出チーム入りが決定した。残るは式神使いの伏黒と順平の2人だけ。あともう1人はクリスへの伝達役を決めておきたいところだった。
「後は伏黒と順平だけど……2人はどっちが良い?」
「僕はどちらでも。自分にできる事を精一杯やるよ」
「俺も別にどちらでも。出来る事をやるだけだ」
「お前らどっちも同じかよ。はっきりしねーな」
まさかの2人とも同じ回答に、隣で聞いていた猪野が呆れた顔で肩を竦める。だが、拘りがないと言ってもやる気がないわけではなかった。
「ただ、クリス先輩への伝達は伏黒君の方が向いてると僕は思う。伏黒君の方が足があるし、遠隔でのサポートも幅が利くからね」
「まぁそうだろうな。鵺か玉犬に乗っていけばクリス先輩の所まですぐに着く。代々木公園の帳の破壊も、日下部先生と一緒なら何とかなるだろ」
「よし、これで決まりだな!それじゃあ行くか!何としてでも五条先生を助けるぞ!」
「「「おーっ!!」」」
こうしてチーム分けが終わり、各々が自身の役割を果たすために行動を開始した。
────午後20時47分、代々木公園野外ステージ外。
────国立代々木競技場第一体育館の屋上にて。
「────ッッ!!」
「こいつ結構しぶとい……どうしよっかな?」
虎杖達が二手に分かれて行動を開始してから数分後、クリスは超強化改造人間と未だに激闘を繰り広げていた。
本作でのキャラ達の行動
虎杖⇒原作と変わらず五条先生救出へ
伏黒⇒原作と違い、クリスに現状を伝えるために代々木公園へ
順平⇒原作と違い、今も生存中。五条先生救出へ
パンダ⇒原作と違い、五条先生救出へ
猪野⇒原作と変わらず五条先生救出へ
七海⇒原作と変わらず伊地知と合流、その後は重面を半殺しにして五条先生救出へ
日下部⇒原作と違い、伏黒と一緒に代々木公園へ