呪術の子   作:メインクーン

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パチンコで10万円勝ったその日の内に全て高級焼肉で使い果たしたクリス。

そんな中、B小町が出場するJIFは着々と近付いており……。



超人ゴリラ(クリス)のトレーニング ①

「あー、今日暇だなー……」

 

「暇なら課題でもやったらどうなの? ここ最近ずっと家でゲームしながらゴロゴロしてるだけじゃないの。偶にどこか出掛けてるみたいだけど」

 

 

何気なく呟いたクリスの一言に有馬がすかさずツッコむ。

 

 

「呪術高専は夏休みの課題がないんだー……なら勉強しろって? それも大丈夫。僕こう見えても偏差値70以上はあるからね。兄さんと同じくらい成績良いんだ」

 

「……学力と知性が釣り合ってないのね。お気の毒に」

 

「それどういう意味?」

 

 

例によって有馬の毒舌が炸裂し、クリスとあわや口論になりそうな雰囲気が醸し出される。

 

しかし、近くで会話を聞いていたミヤコが、ゲームをしながら暇と嘆くクリスをぶった切る提案を出した。

 

 

「暇なら外で運動でもして来なさい。ほら、B小町のトレーニングに混ざって坂道ダッシュでもしたら? 良い汗かくわよ」

 

「「……えっ?」」

 

 

 

 

 

────という訳で。

 

 

「ハイ、皆おはよう! じゃあいつも通りトレーニングしていくヨ! 今日は特別参加でクリスちゃんもいるから、そのつもりで!」

 

「「「はーい!」」」

 

「ぷっ……くくっ……くはっ……!」

 

「どうしたのクリス? 何でそんなに笑ってるの?」

 

「いや、何でもないよ姉さん……ふははっ……!」

 

(……えっ、本当に何で笑ってるんだクリスのやつ? ひょっとして、俺がぴえヨンの変装をしてる事に気付いたとか? いや、そんなまさかな……)

 

 

本日限定で、クリスも急遽B小町のトレーニングに特別参加する事になった。

 

ぴえヨン(アクア)を見て笑いを堪えるのに必死だった。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

外で運動しろとミヤコに言われ、B小町のトレーニングに参加する事になったクリス。

 

ここ最近は閑散期なので呪霊による被害も減り、特級術師のクリスも平均して2日に1件のペースでゆったりと任務を熟していた。

 

今日は緊急で任務が舞い込んでくる場合を考慮しなければ何もない日。そういう日は家でソファーに寝転がり、ゲームしながら惰眠を貪るのが日課となっていた。

 

とはいえ、呪術師として日夜活動する生活に体が慣れているのか、若干ワーカホリック気味となっており、ゲームで暇を潰してもどこか身体が落ち着かない。

 

その果てにぼそりと呟いた一言がきっかけで、皆と一緒にトレーニング場へ向かった。

 

 

(まっ、偶にはこういうのも良いか……って)

 

 

そして現在、ルビー達と一緒にとある山の麓に来ている訳だが、そこで待っていたぴえヨンを見てクリスは咄嗟に口元を手で塞いだ。

 

 

(な、何やってんの兄さん、ぴえヨンの真似なんかしちゃって……って、そのアヒル声止めて! ヤバい! 堪えろ、堪えるんだ……ここで絶対に爆笑してはいけない! に、兄さんの……くくっ……名誉のためにも……ふひっ)

 

 

クリスは一瞬で気付いた。

 

幼少の頃から見えないものが見える特別な視界と、呪術師として長年活動して積み重ねた経験を持っていた。

 

それ故に、目の前にいるぴえヨンが本物ではなく変装したアクアである事を見抜いた。

 

アクアがこんな事をしている理由をクリスは知らない。しかし、そんな疑問が些末事に思えてしまうほど今のアクアは抱腹絶倒ものだった。

 

 

「ふふっ……それでにい……ぴえヨンさん、僕は今からどうすれば良いですか? 姉さん達と同じ事すれば良いですかね?」

 

 

危うく『兄さん』と言いそうになるが、直前でそれを抑え込み言い直す。

 

 

「うーん、そうだねぇ……君は社長に運動して来いって言われたんでしょ? 別にメンバーでも何でもないから自分の好きなように走って、気が済んだら自由に帰って良いと僕は思うよ! 勿論、皆と一緒に走って踊っても全然構わないけどネ!」

 

「そうですか……ではそうしまぶはぁっ!

 

 

何とか平静を保ちながら言葉を交わそうと尽力するが、やはり駄目だった。

 

どうしても堪えられなかった。

 

 

「ちょっ、さっきから本当にどうしたのクリスちゃん? もしかしてどこか体調悪かったりする? すぐ家に戻って休んだ方が良いんじゃない?」

 

「い、いや、大丈夫だよMEMちゃん。本当に大丈夫……ちょっと思い出し笑いしただけだから。マジで問題無い」

 

「そ、そう? なら良いけど……」

 

 

先程からどこか様子がおかしいクリスを案じ、MEMちょが心配そうに尋ねるが、思い出し笑いと誤魔化してお茶を濁す。

 

流石に今のは危なかったと、クリスは心の中で胸を撫で下ろした。

 

 

「ではまず始めに坂道ダッシュから! ここ数週間で3人共よく走れるようになってきたからねぇ……もっと体力増やすために、今日から往復10本から12本に少し増やしていくよ!」

 

「「ええーっ!? そんなぁー!?」」

 

「うわー、ぴえヨンさんって結構スパルタですよね。そりゃまあ、言われたからにはやりますけど……」

 

 

走る量がいきなり増え、ルビーとMEMちょは始める前からげんなりし、反対に有馬は何だかんだ言いながらも大人しく従う。

 

 

(とりあえず僕も適当に走って適当に体動かしたら帰ろっと……)

 

 

クリスも笑うのを我慢して気持ちを切り替え、軽くストレッチして身体をほぐす。

 

 

「ねえ、あんたもマジで走るの? ついて来るのは勝手だけど、私はあんたのペースに合わせる気なんて無いから。途中でバテても普通に置いていく。良いわね?」

 

 

ストレッチを済ませていつでも走れる準備が整ったクリスに対し、有馬が走る前に釘を刺してきた。

 

煽りたいのか心配しているのか定かではないが、そのような気遣いはクリスには無用ともいえる。

 

何故なら……。

 

 

「あー、先輩。クリスなら問題ないよ。というか、多分置いてけぼりになるのは私達の方だと思うし……」

 

「えっ?」

 

「うんうん、ルビーちゃんの言う通り。付け加えるとね、クリスちゃんの身体能力は僕より遥かに上だから」

 

「……えっ?」

 

 

クリスは素の身体能力ですら、常人のそれを遥かに上回る超人ゴリラだからである。

 

 

「それじゃあ行くよ! よーい……スタートォ!」

 

「スタートォオオオオッ!」

 

 

ぴえヨンの合図で坂道ダッシュのトレーニングが始まった。

 

スタートを切った瞬間、開口一番クリスがハイテンションで叫びながら坂道を駆ける。

 

自動車に匹敵する速度で。

 

 

「はっ? ……はあっ!?」

 

「え……ええーっ!?」

 

「うわっ、やっぱ速い……!」

 

(マジでどうなってんだろ、あの身体……)

 

 

クリスの後を追う形で走る4人がそれぞれ違う反応を見せる。

 

元からクリスのイカれた身体能力を知っていたルビーとぴえヨン(アクア)は、既に分かりきっていた結果を淡々と受け入れる。

 

逆に知らなかった有馬とMEMちょは、想定を遥かに超えるクリスの身体能力に驚愕し、度肝を抜かれた。

 

その間にも先頭との距離はどんどん引き離され、あっという間にクリスの姿は木の陰に隠れて見えなくなってしまう。

 

 

「……えっ、何あのスピード? 自動車?」

 

「自動車だったねぇどう見ても……えっとさ、クリスちゃんって本当に人間?」

 

「人間だよ……ガワだけはね」

 

「いやちょっと待ちなさい、何よその含みある言い方は。実はマジでそういう感じだったりするの? ねえ……ねえったら!」

 

 

あまりに非現実的な光景。

 

ぽかんと口を開けていた有馬とMEMちょだったが、それでもすぐに気を取り直してルビーに尋ねる。

 

しかし、若干答えるのが面倒なのか適当に返すルビーの対応に、2人のあらぬ疑念がどんどん高まっていく。

 

そうこうしている内に……。

 

 

「……あれっ、皆まだそこにいたの? 何してるの?」

 

「えっ、クリス!? いつの間にここに……って、まさか……」

 

「……もう、既に頂上まで行った感じ?」

 

「えっ、そんなの当たり前じゃん? じゃないとここまで降りてこないよ?」

 

「いや、そんな『何言ってんのこいつら?』みたいな顔で見られても……」

 

「そう? まあ良いや。それじゃあまたねー!」

 

 

一切足音を立てずに近付いたかと思えば、嵐のように坂を下って行ったクリス。

 

それを見た有馬は、走る前にルビーとぴえヨンが言った言葉の意味をようやく理解した。

 

 

「なるほど、確かにこれはヤバいわ。色んな意味で」

 

 

一旦考えるのを止めて、とりあえず完走しようと目標を立てる有馬だった。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

────数十分後。

 

 

「おーい、みんなー! 流石に遅すぎなーい? 早くしないと置いてくよー! 途中でバテても知らないからねー!」

 

「はあ……はあ……う、うるさい! あんたが速すぎるのよ! 行くならさっさと行けぇ!」

 

「う、嘘でしょクリスちゃん、速すぎ……。私達、結構体力増やしたつもりなんだけどなぁ……」

 

「はあ……はあ……分かっていたけど、運動能力じゃクリスには全然敵わない……」

 

「………………」

 

 

坂道ダッシュを始めてからしばらく経ったが、クリス以外の全員は4分の1を終えた時点ですっかり息が上がり、夏の暑さも相まってその場にへたり込みそうになっていた。

 

ぴえヨンに扮したアクアも、ぱっと見は疲れてなさそうに見えるが、被り物のせいで熱気が充満して大変な状況になっている。

 

対するクリスは、数十分間1度も休まず走り続けたにもかかわらず、息切れしている様子は全くない。むしろまだまだ余裕と言いたげな表情だった。

 

 

「本当にどんな身体してんの!? 速すぎて自動車でも走ってんのかと思ったわよ! どう考えてもおかしいでしょ!」

 

「ねぇねぇルビーちゃん、クリスちゃんって昔からああいう感じ? 私が見た限りだとスピード落ちてる様子が一切なかったけど……」

 

「クリスは走るスピードも体力も人間じゃないもん……だってあの子50m走で5秒切るし」

 

「いやオリンピックに行けよぉ!? アイドルに誘ってる場合じゃねえ! 日本陸上競技連盟は何やってんだぁ!」

 

 

ルビーの口から突如明かされた衝撃の事実に、MEMちょが吃驚仰天して思わず声を荒げる。

 

本当にその通りだと、それを聞いて有馬も内心頷いた。

 

 

「ねえどうしたのー? 僕もう12往復どころか24往復も終わっちゃったよー? 暇だから先に頂上の広場で待ってるからねー」

 

「良いからさっさと行けゴラァ!」

 

 

開始20分程度で往復坂道ダッシュのノルマを既に終えていたクリスは、追加で走り続けて待つのも飽きたので先に行く事にした。

 

 

「はいはーい。……ほら、姉さんとMEMちゃんもしゃんとしなよ。みっともないよ?」

 

「うぐぐ……言われなくても分かってるよ!」

 

「坂道ダッシュなんてすぐに終わらせてやるんだから! 今に見てなさい!」

 

「おっ、良いよ良いよその調子だよ。ほら頑張れ頑張れ♪」

 

「「「うがぁああああああムカつくぅううううううっ!!」」」

 

 

クリスの言葉とゲスな笑みが、3人の苛立ちを一気に最高潮へ押し上げた。

 

 

「じゃ、後はお願いね兄さ……ぴえヨンさーん!」

 

「ああ、うん。それじゃあまた後で……」

 

 

又もや散々煽られまくって絶叫する3人を尻目に、クリスは芝生が広がる山頂の広場へ先に行くのであった。

 

 

(……やっぱりそうだ。何故かは知らんがクリスのやつ、俺の存在に気付いてやがる)

 

 

そしてアクアもまた、ぴえヨンに変装している事がクリスにバレたと確信した。

 

 

 




※現在のクリスのスペック その1

ゴリラ力(呪力強化あり)≒ ドブカス呪霊戦で覚醒した真希

ゴリラ力(呪力強化なし)≒ 虎杖の3分の2程度(呪力強化なし)

50m走タイム(呪力強化なし)= 4.5秒

フルマラソン(呪力強化なし)= 1時間5分(常にトップスピードで走れば良いだけ。体力切れ? 何それ美味しいの?)

結論:オリンピックに出ろ
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