呪術の子   作:メインクーン

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前回:
クリス「オリジナルの穿血よりもヤバい技作っちゃったなぁ。使い所は考えないとねー」

ミゲル「オイ夏油、俺達ヨリアノ女ノ方ガヨッポド呪詛師ジャナイカ?」

夏油「……ノーコメントで」

万「あの女マジでヤバい。滅茶苦茶すぎるわ」



高千穂事変 ③

その現実味の無い光景に、あかねとルビーはただ呆然と目を見開いていた。

 

呪霊に襲われ、極限状態で見えるようになった呪いの存在。いつもならただのオカルト話として笑い飛ばせたが、実際に襲われてしまった以上は認めざるを得なかった。

 

そして今、身近な存在のクリスが見知らぬ3人と化け物達を相手にたった1人で戦っている。彼女達を襲った連中とは比較にならない化け物達と。

 

 

拳が振るわれる度に震える空気の音。土砂が撒き上がる度に広がる土の匂い。炎が肥大化して草木が燃える度に感じる膨大な熱。

 

それら五感で感じる情報が、目の前で起こる光景を現実の物であると、輪を掛けて2人に自覚させる。

 

 

極めつけに、どう見てもクリスがやったと思われる山の破壊。

 

 

どれもが到底人間の手で作り出せるとは思えない破壊の跡は、まるで人型の戦略兵器がぶつかり合っているかの様で。

 

人間離れした身体能力もそうだが、何より恐ろしいのは全員の動きにまるで躊躇が存在しない事だった。

 

 

『今ガチ』収録時にあかねが鷲見ゆきの頬に傷を付けた出来事が、まるでお子様同士のじゃれ合いに思えてしまうほど、暴力的で圧倒的な殺意。

 

ただ純粋に、目の前の相手を破壊しようという意思が、戦場の外から見守っている2人にもヒシヒシと伝わってくる。

 

だが、そんな命の奪い合いという野蛮な行為を目の当たりにして、2人は目を離す事ができなかった。

 

 

「……凄い」

 

 

唖然と見つめる中での呟きが、あかねの口から自然と漏れ出た。そこに感嘆めいた響きが含まれているのは、果たして気のせいだろうか。

 

圧倒的な力はそれだけで見る者を魅了するというが、4人の戦いがまさにその典型。素人目に見ても、非常に洗練された力と動きを持ち併せている。

 

 

──生物としての格が違う。

 

あかねはそんな感想を抱いた。

 

 

「クリス……」

 

 

あかねの隣にいるルビーも、先程までの憎しみを孕んだような暗い顔はどこへやら。

 

目の前の戦闘の現実離れ具合に衝撃を受け、ただ只管に妹の名前を連呼し続けている。

 

今、ルビーがどんな想いを抱いているのかをあかねは知らない。だが、妹の名を何度も呟くルビーの声には、家族の身を案じる感情を孕んでいるように感じた。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

──午後11時26分。

 

ハイになって吹っ切れたクリスが山を破壊してから、明らかに形勢が変わった。

 

 

「ごほぉああああっ!!」

 

「ほらどうした!? そんなのものかよ万ぅ!」

 

 

クリスの膝蹴りを顎に受けた万が、遥か上空まで一気に舞い上がる。

 

構築術式を駆使して全身に纏った虫の鎧。攻守ともに完璧と言える万の戦闘形態は、並の術師や呪霊では相手にならない強さを秘めている。

 

しかし、元々最強に近い実力を有するクリスがハイになった事で、その鎧もあっという間にボロボロになっていた。

 

 

「ぐっ……な、舐めるなぁ!」

 

 

ゲラゲラと嗤うクリスに煽られ、売り言葉に買い言葉で反撃に出ようとした万。

 

両手を前に突き出し、液体金属を針の形にして突き刺そうとするが、狙った先にクリスはもういない。

 

 

「遅ぇよばぁぁぁーーか!」

 

「がはぁっ!?」

 

 

クリスは超高速移動で万の背後に回り込んでおり、ギュッと握り締めた拳を万の背中めがけて力一杯振り下ろした。

 

黒い閃光が迸り、背中部分の鎧が破壊され、万の顔が苦痛に歪む。鋭く、内部に浸透する衝撃が体内を何度も駆け巡り、平衡感覚がおかしくなる。

 

 

「おらぁあああああっ!」

 

「──ッ!?」

 

 

それでもクリスは攻撃の手を止めない。

 

高速で地面に落下していく万の顔面を掴むと、そのまま順転の力で更に加速し、勢いよく地面に叩き付けた。

 

 

瞬間、万とクリスを中心に広がる巨大なクレーターと衝撃波。

 

天高く粉塵が舞い上がり、破片が飛び散り、凄まじい轟音が大気を震わす。

 

 

「……何だかんだ言ってさぁ、何も考えずに力を振るう時ってスッキリするよね。あんたもその気持ち、分かるでしょ?」

 

「あがっ……はぁ、はぁ、はぁ……っ!」

 

 

顔面に大ダメージを受けて言い返す事もできない万の後ろで、趣味の悪い笑顔を浮かべてクリスは思った事を語る。

 

普段は言わなさそうな台詞も、ハイになった今の状態では平然と口にする。

 

それでも精一杯の抵抗なのか、顔面部分の虫の鎧が破壊されて素顔が露わになってもなお、万は恨めしそうに鋭い目付きでクリスを睨む。

 

 

「おっ、良いねぇその目。ほら頑張れ頑張れ♪」

 

「────ッ!! クソガキがぁああああっ!」

 

 

年下のクリスにこれでもかと煽られ、万の怒りのボルテージが更に上がる。

 

大量の液体金属を生成し、それらをありとあらゆる武器の形にしてクリスに差し向ける。

 

槍、刀、矢、鎖、鎌……。ありとあらゆる凶器が強烈な殺意と共に、全方位から一斉に飛び掛かる。

 

絶対に殺す、どこにも逃がしはしないという強い意志が感じ取れた。

 

 

「死ねぇえええええっ!!」

 

 

──しかし、クリスは余裕の表情を浮かべていた。

 

 

「フッ……!」

 

 

攻撃が当たる寸前、吸い込んだ息を一気に吐き出すと同時に、クリスはその場から掻き消えた。

 

一見隙が無さそうに見える万の全方位攻撃にも、ほんの僅かに抜け道があった。

 

 

クリスをそれを見逃さなかった。

 

全ての攻撃を紙一重で掻い潜り、目にも止まらぬ速さで攻撃範囲外に脱出すると、そのまま空気を蹴って再び空高く舞い上がる。

 

そして万の頭上に移動すると、地上に向かってパンッと両手を合わせた。

 

 

「ふふっ、さぁて……耐えられるかな?」

 

 

クリスがしっかりと照準を定め、莫大なエネルギーをその手の中で圧縮し始める。

 

 

「なっ、いつの間にあんな……って、ヤバい!?」

 

 

発射まで残り1秒。

 

その時点で万も上空にいるクリスの存在に気付き、放たれようとしている攻撃を察知して尋常ではない焦りを見せる。

 

今から完全に回避する事は不可能でも、出来る限りダメージを抑えようと、万は咄嗟に後方へ跳んだ。

 

 

次の瞬間────、

 

 

 

 

 

「術式順転『望速・煌』」

 

 

 

 

 

再び放たれたクリスの拡張術式。

 

山を容易く消し飛ばした超高威力のビームが、今度は地上に向かって撃ち込まれた。

 

とはいえ、全力で撃てばルビー達にも被害が出てしまうので、それを考慮して全力の半分以下に威力を抑える。

 

だが、それでも至近距離で相手を消し去るには十分すぎる威力。

 

 

案の定、万は莫大なエネルギーに晒され、派手に吹き飛ばされた。

 

 

「がぁああああああああっ!!」

 

 

絶叫と共に何度も地面を跳ねる万。

 

何とか直撃は免れたものの、目と鼻の先で地面にぶつかり急速に膨張するエネルギーの塊。

 

あまりの熱量に虫の鎧もあっという間に溶かされ、灰燼に帰す間もなく消失していく。

 

結果、その勢いのまま吹き飛ばされた万は、遥か先にあった大岩に激突した。

 

大岩は崩れて万を呑み込んだ。

 

 

「おー、やるじゃん。ギリギリで直撃を避けて何とか耐え凌ぐとは。あの感じだと、まだ生きてても不思議じゃないね」

 

 

万の回避術を見て、クリスは感嘆の声を上げる。

 

直撃すれば勝敗が決まっていた一撃だっただけに、それを耐え切った万に対して素直に驚いていた。

 

 

そうこうしていると、今度は後ろから音もなく近付く影が1人。

 

 

「甘いですよ夏油さん。僕がその程度の隠密に気付かないとお思いで?」

 

「……流石だね、クリスちゃん」

 

 

背後から振るわれた三節棍。それを軽々と片手で受け止めながら振り返り、夏油に優しく話し掛けるクリス。

 

対する夏油は冷や汗を垂らしながらも、努めて冷静になってクリスの言葉に返事を返した。

 

とはいえ、今のクリスに先程までの隙は無い。それは夏油自身もかつての師匠として望んでいた事だが、それはそれ、これはこれと言える問題である。

 

 

「「…………」」

 

 

両者の間に数瞬の沈黙が流れる。

 

この膠着状態を破ったのは、夏油の方だった。

 

 

「ハァッ! タァッ!」」

 

 

游雲を数回、全力で振るった。

 

急所となる頭部、首、脇腹などを正確に狙い、確実に当ててダメージを与える気だった。

 

 

「よっ、ほっ……ふふっ、動きがとろいですよ夏油さん!」

 

「ガッ!? うぐっ! ごはっ!」

 

 

しかし、全ての攻撃を難なく避けられ、逆にカウンターで頬、鳩尾、脇腹と3回殴られてしまう。

 

勿論、全てが黒閃。咄嗟にクリスの拳と自分の身体の間に割りこませる形で呪霊を召喚し、どうにか衝撃を和らげたものの、この3発で夏油の肉体は多大なダメージを受けた。

 

 

「……や、やるじゃないか。正直、想像以上の威力だったよ」

 

「えへへっ、どうもー!」

 

 

口元から血を垂れ流しながらも、夏油は嘗てのようにしっかりと褒め称える。

 

クリスも満更ではないのか、嬉しそうに微笑んだ。

 

と、そこへ夏油の助け舟が入る。

 

 

「タァッ!」

 

「おっと危ない!」

 

 

横からミゲルの拳が迫ってきたので、後ろに飛んで回避する。

 

相変わらずその手には黒縄が握られており、クリスを捕らえられるタイミングを虎視眈々と狙っている。

 

だが、ハイになった今のクリスにとって、黒縄の毒牙に掛かろうが掛かるまいがどちらでも良かった。

 

 

「何度デモオ前ノ術式ヲ封ジテヤルヨ!」

 

「あっそう? まぁ、別に何でも良いけど」

 

 

鬼気迫るミゲルの猛攻に対する淡泊な反応。ミゲルはそれを見て嫌な予感がした。

 

それでも狙い通り、黒縄の先端がクリスの右脚に絡まり固定される。

 

 

「ハァアアアアーッ!」

 

 

相手の術式を封じたミゲルは、反撃に転じようと黒縄を力一杯引っ張る。

 

が、クリスの方が一足早かった。

 

 

「それっ」

 

「──ッ!? チッ、モウ四肢ヲ切リ落トス事ニ何ノ躊躇モ無クナッタカ……」

 

 

黒縄に振り回される直前で、クリスが呪力で強化した手刀を右脚に振り下ろし、丸ごと切り落とした。

 

それと同時に回復した術式で時間を巻き戻し、右脚を元の状態に戻す。当然、服の修復も忘れずに。

 

その光景を目の当たりにしたミゲルは、得体の知れない宇宙人でも見るような表情をクリスに向ける。

 

それでもミゲルは続けた。

 

 

「モウ一丁ッ!」

 

「えいっ」

 

 

攻撃を掻い潜り、時折夏油の援護を受けながら、何とか黒縄をクリスの身体の一部に絡めて拘束する。

 

 

「マダマダァ!」

 

「ほいっ」

 

 

その度にクリスも四肢を丸ごと切り落としては、即座に肉体を修復して応戦する。

 

 

「何度デモヤッテヤル!」

 

「じゃあ何度でも振り出しに戻すよ」

 

 

いつの間にか3人の周囲には、クリスが自ら切り落とした数多くの四肢と大量の血が散乱していた*1

 

常人が目撃したらあまりの醜悪さと不快感に、思わず嘔吐してしまう程の凄惨な現場だった。

 

 

ここで疑問に思う事は、何故ミゲルがこのような行為を何度も繰り返すのか。それには理由があった。

 

 

(オ前ガ凄マジイ精度デ肉体ヲ修復デキル事ハ分カッタ。ダガ、イツカ呪力ヲ使イ果タシテ限界ガ来ルダロ! ソレガ俺ノ狙イダ……!)

 

 

ミゲルの狙い。それはクリスの呪力切れ。

 

これまでの戦いで、クリスが非常に高度な治癒を施せる事は十二分に理解した。だが、無い腕や脚を修復する事は一筋縄ではいかない。生やす度に少なくない呪力を消費する。

 

 

戦闘が始まって随分時間が経った。

 

特級クラスの術師と特級呪霊2体の集中攻撃から始まり、山を破壊する大技の使用、万・夏油・ミゲルの3連戦。その度に肉体も同時並行で修復していた。

 

たとえクリスの呪力量が莫大だったとしても、そろそろ呪力切れになってもおかしくない。

 

呪力切れに追い込めば、いくらクリスと言えど為す術は無い。後は全員で一斉に叩くだけ。

 

ミゲルはそう考えていた。

 

 

だが、それは大きな誤算だった。

 

 

「……お前が僕の呪力切れを狙って、何度も黒縄を振り回してる事は分かってる。だからこの際はっきり言っておくけど────僕に呪力切れは無いよ」

 

「…………ハッ?」

 

 

突如、クリスから告げられた衝撃の事実。

 

いつの間にか狙いを察知されていた事も驚きだが、ミゲルにとって最後の言葉の方が何倍も衝撃的だった。

 

言葉の意味の理解に苦しんでいると、クリスが更に説明を続けた。

 

 

「そっちは知らないだろうけど、僕の術式反転『還』は時を巻き戻す力だ。これを駆使すれば肉体の修復もダメージの全自動無効化もお手の物。黒縄みたいに術式を乱されると意味無いんだけどね」

 

 

術式反転の概要を聞いて、ミゲルの頬を一滴の冷や汗が伝い落ちる。理解してしまったのだ。

 

 

「……マサカ、術式反転ヲ更ニ駆使スレバ……」

 

「そう、術式反転の解釈を広げて、()()()()()を巻き戻す対象にする。そうするとどうなる?

 術式反転を使えば、傷付いた肉体も溜まった疲労も消費した呪力もぜーんぶ、元通りに回復する。だから実質呪力切れは無いわけ」

 

 

クリスは術式反転『還』の解釈を広げる事によって、術式対象を呪力その物にまで拡大している。

 

これによりクリスは戦闘中に呪力を大幅に消費しても、術式反転で即座に空っぽの呪力を満タンに出来る。五条悟とは別の方法で呪力切れの問題を克服していた。

 

なお、この呪力全回復は他人にも使用可能である。他人の呪力を扱うため、多少時間が掛かるというデメリットはあるが。

 

 

「……マジカ、ソンナノアリカヨ。イクラ何デモ無法ガ過ギルンジャナイカ?」

 

「まっ、これも才能って奴かな? いやぁ、ごめんね」

 

 

クリスの術式反転の詳細を聞いて、今までの作戦が全て無意味だった事を知ったミゲルは思わず苦言を呈した。

 

それを飄々とした態度で軽く流したクリスは、話は終わったとばかりに身構えた。

 

 

「じゃ、続きと行こうか。といっても、そろそろこの戦いも終わりにするつもりだけど」

 

「……何テ奴ダ、クソッタレ!」

 

 

──そして、お互いが再び攻撃態勢に入る。

 

数秒の沈黙の後、ミゲルが先に動いた。

 

 

「ダァアアアアッ!」

 

「はぁああああ……黒閃ッ!」

 

 

ミゲルが放った打撃に合わせて、クリスも打撃で応戦する。

 

拳と拳がぶつかり合った瞬間、クリスの呪力が黒く光った。

 

2.5乗の威力になったクリスの打撃は、ミゲルを仰け反らせて体勢を崩した。

 

 

「もう一丁、黒閃ッ! 黒閃ッ! 黒閃ッ!」

 

「グッ! ガッ! ゴハァッ!」

 

 

間髪入れず3連続で黒閃を叩き込み、更なるダメージを与える。

 

しかしこれでも倒れないのだから、ミゲルの耐久力はやはりどこかおかしい。

 

故に、この厄介な相手を退ける方法をクリスは既に決めていた。

 

 

「ごめんなさい夏油さん、僕もう躊躇しませんので!」

 

「くっ……!」

 

 

ミゲルから少し離れた場所。

 

そこで援護する機会を探っていた夏油に向けて、クリスは両手を合わせた。

 

術式が発動し、両手の中に莫大なエネルギーが圧縮されていく。

 

再びあの技を撃つと察知した夏油が、苦虫を噛み潰したような顔で手持ちの呪霊達を肉壁に配置する。

 

と、その時……、

 

 

「危ナイ夏油! 全力デ防御スルンダ!」

 

 

危機を察知したミゲルが、夏油と呪霊達の間に急いで割り込んできた。

 

両腕を交差し、身体中に黒縄を巻き付けて、夏油の盾になるように身構える。

 

 

それをクリスは待っていた。

 

 

「だと思ったよ! 夏油さんがヤバくなったら、お前は必ず護りに入るってなぁ!」

 

 

夏油とミゲルの会話の節々から、2人の間には主と部下の関係があるとクリスは勘付いていた。

 

だからこそ、その関係性を利用して2人を一遍に退ける事にした。

 

 

「術式順転『望速・煌』」

 

 

本日3度目となる超高威力のビームが放たれる。

 

目で捉えられない速度で真っ直ぐ突き進むそれは、呪霊の肉壁を瞬く間に消し飛ばし、一番後方にいるミゲルと夏油に直撃した。

 

 

「グッ……!」

 

「うぐっ……!」

 

 

一瞬受け止めたのも束の間、山を消し飛ばす威力のビームに踏ん張りきれるはずもなく……、

 

 

 

 

 

「オワァアアアアアアーーッ!!」

 

「ぐぅうううううっ……!!」

 

 

 

 

 

ミゲルと夏油はビームに押し出され、帳を突き抜けて遥か彼方へ吹き飛ばされていった。

 

それを確認した後で、ビームを撃ち終えるクリス。

 

 

「ふぅ……これでようやく一番厄介なミゲルを片付けられたね。はぁー、清々した」

 

 

今回の戦いで最大の障壁となる男をようやく退け、クリスはほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「にしても今の攻撃も耐えるとか、あいつの身体マジでどうなってるの……?」

 

 

それでも超高温高密度のビームを真正面から受けて、殆ど気合いで耐え抜いたミゲルは本当に同じ人間なのか。

 

いくら黒縄有りきとはいえ、今のは流石におかしいのでは?

 

そんな疑問が尽きないクリスであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──いやぁ、やっぱり強いね彼女。想像していた以上だ。あれには流石に勝てる気がしないね」

 

 

戦場からかなり離れた山の頂上。

 

そこでクリス達の戦いをじっと見ていた少女が、ぽつりと感想を呟いた。

 

 

「仮に魂を破壊しようとしても、恐らく彼女の術式反転は()()()()()()()()だろう。かと言って真正面から挑めば瞬殺は免れない……」

 

 

そこまで言って、少女は肩を竦めた。

 

 

「はー、止め止め。これ以上考えても仕方がない。そもそも彼女と敵対するとか御免だし。でもまぁ、1度会ってお話するくらいはしてみたいかな」

 

 

何やらブツブツ呟いては首を振る少女。

 

と、そこへ1羽の烏が少女の下に舞い降りた。

 

 

「あっ、やっと戻ってきた。いやぁ、星野ルビーをあの祠まで誘導してくれてありがとう。君だけでも取り返せて良かったよ。

 あの冥冥とかいう術師に手持ちを全部横取りされた時はどうしようかと……」

 

 

どうやら少女は烏をたくさん飼っているようだが、冥冥に全て奪われていたらしい。

 

それでもどうにか奪い返した1羽を使って、何かを行ったようだった。

 

 

「さて、クリスは一旦置いといて、一先ずルビーだね。鉄は熱いうちに打てとも言うし、なるべく早く行動しないと。ああ、それはそうと……」

 

 

何やら意味深な事を喋っていた少女は、思い出したようにくるりと後ろを振り返った。

 

 

「君はどうだった? 久々に彼女を見た感想は?」

 

「…………」

 

 

そこにいたのは見目麗しい1人の女性。

 

ピンク色のミニワンピースとサイハイブーツと手袋。側頭部には特徴的な兎の髪飾り、ウエストでキュッと締まった黒いベルト、ハート型や星型等の派手な装飾。全体的にとても煌びやかな衣装を纏っている。

 

何よりも目を惹くのは、瞳に宿る2()()()()()()

 

話し掛けられても沈黙を貫く女性に少女は言った。

 

 

「ああ、可哀想に。12年ぶりに()()()()()の姿を見ても反応無しとは……。まぁ、私と結んだ縛りで力を封印された影響なんだけどね。そうでもしないとこの国は今頃とんでもない事になってただろうし」

 

 

少女はわざとらしく胸に手を当てて、木から落ちた猿に会ったかのような、同情を浮かべつつ軽んじる表情を女性に見せた。

 

それでも女性は無反応だった。

 

 

「けど心配は要らない。近い内に機を見てその縛りは解くつもりだから。そしたら思う存分、愛する我が子を抱きしめてあげれば良い。そんな理性が果たして残っているかはさておき……ね?」

 

 

少女が何を考えているかは分からない。そしてもう1人いる女性の事も。

 

 

「いずれにせよ、君達家族が平穏無事に再会できる事を私は願ってるよ。それも全て君達次第だけど。

 ……それじゃあ行こうか。高千穂を滅茶苦茶に荒らされた後始末も考えないといけないし……はぁ」

 

 

正体不明の2人は、静かにその場を後にした。

 

 

 

*1
この戦いでクリスが切り落とした手足の数は合計で10本くらい。普通なら死んでる。




この2人は一体何者なんだ?(すっとぼけ)



※今回の話でも少し触れましたが、クリスの呪力量は乙骨<クリス<15本宿儺くらいです。

ちなみに五条悟に勝てないのは術式の相性が悪いのと、領域勝負になるとジリ貧で負けるから。

ぶっちゃけ宿儺との方が相性は良い。ほら……ディアルガvsパルキアみたいな感じで。
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