呪術の子   作:メインクーン

53 / 109
第3章の過去編も終わり、ここから第4章です。



第四章
あれから半年


高千穂での戦闘や年末の父親再会イベントを迎えてから半年が経ち、クリス達は2年生に進級した。

 

当然可愛い後輩達もできるというもので、今年は編入生も含めて4人が呪術高専に入学した。

 

 

「おっはよー、皆揃ってる? 今日もトレーニング頑張るよー!」

 

「朝からうるせえな。もう少し先輩としての威厳とかねぇのかよ」

 

「おい真希、あんまそういう事言ってやんなよ。昨日から秤先輩らが遠征しててぼっちだからって、わざわざ俺達に絡みに来たんだぜ。ここで突き放したら可哀想だろ」

 

「すじこ」

 

「パ、パンダ君、それだと返ってクリス先輩を煽ってるだけじゃ……」

 

「知るかそんなの。だりぃ」

 

「ねぇ皆辛辣過ぎない? 泣くよ?」

 

 

朝から大声で挨拶するクリスに向かって、情け容赦もない辛辣な言葉を浴びせる後輩達に、クリスはわざとらしく泣いて同情を誘う。しかし全く効果は無かった。

 

このように、入学してきた4人の新入生はクリス達に負けず劣らずの曲者揃い。

 

常に勝ち気で男勝りな禪院真希。呪言師の家系でおにぎりの具しか喋らない狗巻棘。夜蛾学長が生み出した呪骸のパンダ。呪霊化した最愛の人に呪われた乙骨憂太。

 

特に乙骨は入学早々、五条の計らい(我が儘)でいきなり特級術師に任命された異能。他の3人も一芸に秀でた何かを持っており、将来性がある。

 

 

「で、今日は何なんだよ? またいつもの走り込みと組手か?」

 

「そうだよ真希ちゃん。そろそろ交流会も近くなってきたからね。特に今年は憂太君も参加するから、当日までにみっちりしごいておかないとね」

 

「あ、あはは……お手柔らかにお願いします」

 

 

季節は夏。夏休みが近付き、段々日中の日差しがきつくなってきた今日この頃。

 

9月中旬に控える京都校との交流会に備えて、クリス達は1年も巻き込んで日々トレーニングに励んでいる。

 

特に今年は、2,3年が参加するイベントに1年の乙骨が参加するのでなおの事躍起になっている。

 

今日も五条の代わりに、クリスが指導役としてやって来ていた。

 

 

「じゃ、行こっか。君達も来年から交流会に参加するんだし、強くなっておくに越したことはない」

 

「それもそうだな。指導する人はアレとして」

 

「だな。1人だけウザい奴がいるのはアレだが、強くなるために頑張るのは大いに賛成だ」

 

「しゃけ」

 

「前から思ってたけど毎回一言多すぎない? そろそろストレス過多で一晩中泣き喚くよ。皆の部屋の前で」

 

「そん時は思いきりぶん殴って磔刑にしてやるから覚悟しろ」

 

 

早速グラウンドに行こうとして、後輩から再度容赦ない罵詈雑言を浴びせられ、出鼻を挫かれたクリス。

 

流石に思うところがあったのか、思わずしょうもない反論が口から出たが、真希にあっさり流されてしまう。

 

 

「うう……憂太君、皆が虐めてくるよー。僕とっても悲しいよー。頭なでなでして慰めてー」

 

「えっ、ぼ、僕がですか?」

 

 

クリスは我慢の限界だと言わんばかりに乙骨に抱き着き、労いを求めた。

 

 

「早く早くー」

 

「じゃ、じゃあ少しだけ……」

 

 

先輩に強引にせがまれ、戸惑いながらもクリスの頭を撫でる乙骨。

 

しかし忘れてはならない。乙骨の身には、決して刺激してはならない存在がいる事を。

 

 

 

 

憂太からぁ……離れろぉぉぉっ!!

 

 

 

 

「「「「……あっ」」」」

 

「り、里香ちゃん!?」

 

 

乙骨に憑りつく特級過呪怨霊、祈本里香の怒りの咆哮が校内中に轟いた。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

そんなこんなで交流会に向けて1年生とトレーニングに励む日々を送っていたある日の事。

 

 

「やっほークリス、元気にしてる? お姉ちゃんが来たよー」

 

「こんにちはクリスちゃん、これお土産で買ってきたの。皆で分けて食べて」

 

 

事情を知るクリスの姉・星野ルビーと黒川あかねが呪術高専にやって来た。数カ月ぶりの再会だった。

 

 

「久しぶり姉さん、あかねちゃん。2カ月ぶり? 3か月ぶり? まぁとにかくよく来たね。お土産もありがとう。ほら、入って入って」

 

 

再会の挨拶も程々に、高専内を一緒に歩き回りながら話す。

 

 

「あれ、今日は五条悟居ないの?」

 

「五条先生は今任務に行ってるから居ないよ」

 

「そっか。それを聞いてちょっとほっとしたよ。あの人がいると全然話が進まないから」

 

「あははー、何も言えないや」

 

 

五条悟が居ない事を知り、ふーんと軽い反応を示すルビーと胸を撫で下ろすあかねを見て、クリスは苦笑いを浮かべるしか無かった。

 

2人からの五条悟への評価は、「容姿が良いだけのちゃらんぽらんなクズ」から大して変わっていないので、この反応も仕方がないものである。

 

 

「姉さん達は最近どう? 仕事は上手くやれてる?」

 

「私はこの前ようやく映画の撮影が終わって少し暇になったくらいかな。でもまた次の仕事が来るだろうって事務所から言われたよ」

 

「凄いなあかねちゃんは。でも私も負けてないよ。クリスも見たでしょ、この間の『深掘れワンチャン』で私がリポーターしていたとこ」

 

「あー、見た見た。面白かったよ。姉さんのお馬鹿エピソードとか、もはや盛り過ぎて別物だったし。兄さんも相変わらずドライな反応でさ」

 

 

クリスの問いかけにあかねもルビーも笑顔で答えた。

 

特にルビーは最近、兄のアクアがレギュラーを務めるネット番組、『深掘れワンチャン』のリポーターに任命され、強烈な馬鹿エピソードで番組中の笑いを搔っ攫っていた。

 

ちなみにその時の話は、ハンドソープを鍋で焼いたら家が火事になりかけたという内容だが、実際は鍋に油と洗剤を間違えて入れたというもの。

 

これを聞いて、「ぶっちゃけ内容変えなくても十分インパクトあったんじゃね?」と思うかもしれないが、そこにツッコむのは野暮というものだろう。

 

そんな感じで、映画やドラマに引っ張りだこのあかねと、お馬鹿キャラ兼兄妹キャラとして売っていく方向に定めたルビー。

 

これからの2人の活躍に期待が高まるばかりであった。

 

 

「あっ、そうだ。その事でクリスに1つ聞きたい事があるんだけど……」

 

「んー、何々?」

 

 

会話に花を咲かせていると、突如ルビーが何かを思い出したように声を上げた。

 

 

「クリスってさ、コスプレやってたりしない?」

 

「コスプレ? やらないけど、どうしたの?」

 

「いや、それがね……」

 

 

ルビー曰く、今度の番組企画がコミケの日にコスプレイヤーの取材を行うというものだが、肝心のレイヤーが中々集まらず苦戦しているとの事だった。

 

そこで片っ端から人員を搔き集めて形だけでも作ろう、という流れになっているらしい。コスプレの内容も厳しく、ディレクターの意向で『東京ブレイド』限定のコスプレが指定されている。

 

何故東京ブレイド限定なのかは甚だ疑問だし、話を聞く限りディレクターの仕事ぶりに問題があるのは明確だ。振り回されてるADが哀れに思えるレベルで。

 

 

「なるほど。それで僕にもどうか番組に出てくれないかって言ってるわけね。コスプレして」

 

「うん、そういう事。いやね、覚えてるよ。クリスが1年前にアイドル勧誘を断った事は。これから先、呪術師として生きていくつもりなのは理解してるし、あまり乗り気じゃないのは分かってる。

 でもお願い、本当にどうしても出演者が足りなくて困ってるの! どうかこの通り!」

 

「うーん、そんな切羽詰まった顔で頼まれても……」

 

 

アイドル勧誘をしてきたあの時とはまるで状況が違う。

 

今回の場合は、いわゆる番組の助っ人枠として臨時で出るようなもの。アイドルのように、今後の私生活にもずっと影響が出るわけではない。本当に1日限りの出演。

 

しかも今のルビーは呪術師としてのクリスを知っている状態。それらの事情を考慮して、色々と便宜を図ると言っている。それだけ人員が足りないのだろう。

 

とはいえあまり乗り気でないのもまた事実。だからこそ渋い顔を見せていたのだが……。

 

 

「へー、良いんじゃないコスプレ? 僕、クリスのコスプレ姿見てみたいなぁ」

 

「そうそう、クリスも可愛いんだし絶対コスプレ姿似合うに決まってぇええええええっ!? ご、五条悟!?」

 

「えっ、何その驚き方。ウケるー」

 

 

任務を終えて帰ってきた五条悟が、クリス達の間に割って入った事で話が変わる。

 

あまりに自然な入りに思わずルビーも奇声を上げて飛び退き、それを見た五条は指を差してケラケラ笑っている。

 

 

「な、何であんたがここにいるのよ。任務で居ないってクリスが言ってたのに」

 

「速攻で終わらせて帰ってきたに決まってるじゃん。だって僕最強だよ。呪霊なんて瞬殺だし、高専まで瞬間移動であっという間さ」

 

「そういう事だよ姉さん。五条先生は最強だからね。常識で語らない方がいい」

 

「そう言ってるクリスちゃんも十分常識の枠組みから外れてるよ……」

 

 

驚き混乱するルビーに、五条とクリスがやれやれと言わんばかりに肩を竦めて説明する。

 

そんなクリス達のやり取りに1人だけツッコみを入れるあかねだった。

 

 

「で、結局クリスはどうするの? コスプレイヤーになりきって取材受けるとか面白そうじゃん。やらせとかテレビ業界の十八番だし。行ってきなよー」

 

「えー、そう言われましてもちょっとねぇ……」

 

 

話を戻し、クリスがコスプレして番組に出るか否かを決める事に。

 

五条は強く推した。

 

 

「まぁまぁまぁまぁ!」

 

「うーん……」

 

「もう1度言うけど、クリスのコスプレ姿見てみたいな。絶対似合うって、間違いない。それとも何、ビビってるの?」

 

「……あーもう、しょうがないですねぇ! そこまで煽るならやってやろうじゃありませんか! だから見ててください! 五条先生を発情させるくらい可愛いコスプレしてやりますよ!」

 

「あっ、今さらっと発情って言った」

 

 

散々五条に煽られた結果、売り言葉に買い言葉でやけくそ気味に番組に出ると宣言するクリス。

 

五条の登場であっという間に話は終わった。

 

 

「ありがとうクリス! それじゃあまた何かあったら連絡するから当日はお願いね! 大丈夫、衣装はこっちで用意するから」

 

「うん、分かった。……そういう訳なんで、絶対に五条さんも来てくださいよ、コミケ」

 

「ああ、分かってる分かってる。楽しいコミケになりそうだ」

 

「「うわぁ……」」

 

 

こうしてクリスの番組出演が決まった事に、五条はニヤリと笑みを深めた。

 

その悪辣な笑顔に、やっぱりこいつは碌でもない性格をしているなと思うルビーとあかねであった。

 

 

 




この章で百鬼夜行まで行きたい。


※おまけ
クリス「でも僕だけコスプレって何か物足りなくない?」

五条「じゃあもう1人くらい連れて行ったら? 真希とかどう?」

クリス「えー、絶対に断られますよそれ。既に結果が目に見えてる」

五条「じゃあ……憂太?」

クリス「祈本里香がいる以上、修羅場になるんで却下ですかね。というか男子禁制でしょ、多分」

五条「だったら誰が良いのさ? 京都から歌姫でも呼びつける?」

クリス「ここはやっぱり……パンダでも連れて行こうかなぁ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。