呪術の子   作:メインクーン

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前回:
東堂「俺達は親友だぜ、マイシスター」

クリス「えっ? はっ? えっ?」

乙骨&里香「黒閃!」

クリス「ぎゃああああああっ!?」



五条家との関係

京都姉妹校交流会初日、団体戦のその後を語っていこう。

 

東堂・乙骨・里香のチームにまさかの逆転負けしたクリスは、気を失って数分後に再び目を覚ました。

 

彼女が意識を取り戻した時には既に団体戦は終了しており、東京校の勝利で終わっていた。加茂&西宮ペアを撃破した秤&綺羅羅ペアが、森に散らばる呪霊達を一層したのだ。

 

ポイントとなる呪霊を東京校が軒並み祓ったので、団体戦の勝者は東京校となった。クリスにとっては試合に勝って勝負に負けたという事になる。

 

 

「くっそー、まさかあそこで憂太君と里香ちゃんの黒閃をモロに食らうとは思わなかったよ。いやはや、これは完全に僕の負けだね。天晴れだよ憂太君」

 

「いや、そんな事言ったらクリス先輩も術式使えなかったじゃないですか。それにこっちは何度も負けかけましたし……」

 

 

先程の対戦を振り返りべた褒めするクリスだが、乙骨は恐れ多いと言わんばかりに身を縮める。

 

乙骨としては、東堂と里香の助力に加え、何故かクリスが急に動きを止めて隙だらけになるという運が重なったから勝てたと考えている。最初から術式の使用がありなら全員瞬殺されて終わりだったと。

 

たまたま勝ったようなものなので、あまりうかうかしてられない。乙骨は気を引き締めた。

 

 

「……で、葵君。一つ聞きたい事があるんだけど良いかな?」

 

「何だ、マイベストフレンド?」

 

「あのペンダント……何なの?」

 

 

話は変わって、クリスは東堂の方に顔を傾ける。

 

戦いの終盤で見てしまったペンダントについてどうしても聞いておきたかった。何故長身アイドル高田ちゃんと自分の写真がロケットペンダントに入っているのか。その理由を。

 

 

「クリスよ、もう忘れてしまったのか? お前と高田ちゃんは一緒にアイドルやってて、同じ学校に通ってる俺とお前は掛け替えのない親友じゃないか。

 俺が高田ちゃんに告白すると伝えた時、お前は応援してると言って俺の背中を押してくれたし、その後も焼肉を奢って傷心中の俺を慰めてくれた。毎日が青春だった輝かしいあの頃を思い出してくれ」

 

「うん、ごめん。聞いたこっちが悪かった。この話はこれでお終いにしよう」

 

「ふふっ、なぁに構わんさ。もし困りごとがあったらいつでも相談してくれ。困ってる親友を助けるのに理由は要らないからな」

 

「駄目だこれ話通じてない」

 

 

理由を尋ねたら訳の分からない思い出をつらつらと語られた。東堂の内に眠る存在しない記憶はクリスの理解を遥かに超える代物だった。

 

無理にでも話を切り上げてさっさと次の話題に移ろうとする。だが、存在しない記憶に思いを馳せる今の東堂には通用しない。

 

 

「それでクリスよ、次のライブはいつなんだ? 最近は高田ちゃんと一緒にライブする機会が減ってるから少し寂しいんだ。でも忙しかったら無理せず休むんだぞ。アイドルは健康第一だからな」

 

「まず高田ちゃんと知り合いじゃないし、そもそもアイドルやってないんだよ。アイドルやってるのは姉さんの方だから」

 

「必ずライブには行くし握手会にも当然並ぶ。そしたらまたあの時のように高田ちゃんと『たかたんビーム』をやってくれ。ファンとしてはそれだけで十分だ」

 

「あーもう、どうして会う度こうなるのぉ!? 葵君強いけど言ってる事が訳分かんないよ!」

 

 

次から次へと存在しない記憶と存在しえない未来を脳に送り込まれ、クリスはとうとう頭を抱えて叫んだ。

 

 

((((ごめんクリス、辛いだろうが何とか1人で耐えてくれ……))))

 

 

しかし、このやり取りを見ている人達から手が差し伸べられる事はなく、ただ延々と東堂の簡易無量空処で脳を破壊され続けるクリスであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから翌日、京都姉妹校交流会2日目は凄くあっさりと終わった。

 

交流会2日目は個人戦が行われるのだが、こちらも団体戦と同じく東京校が勝利を収めた。圧勝だった。

 

個人戦は誰と誰が戦うのかをくじ引きで決めるのだが、クリスの対戦相手は東堂と西宮の2人。昨日ボコボコにされた東堂は相変わらず戦いを楽しんでいたが、クリスと戦う事になってしまった西宮の絶望的な表情は誰もが目を背けた*1

 

勝敗の行方は語るまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

「──ってな感じで交流会は東京校が勝利したよ。いやー、金ちゃんと綺羅羅ちゃんには感謝しないとね。おかげで来年は東京校が会場になったし。あっ、時間があれば姉さん達も見に来るといいよ」

 

「あ、ああ……あわわわわ……」

 

「ク、クリスちゃん、それ聞いてるこっちの心臓に悪いよ……」

 

 

2日間に及ぶ交流会が終了してしばらくが経ち、クリスは都内の喫茶店でルビーと黒川あかねに交流会の話を笑顔で語っていた。

 

ほのぼのとはかけ離れた凄惨で血生臭い内容に、ルビーは顔面蒼白で泡を吹きかけ、あかねは胸を押さえて辛そうな表情を浮かべた。

 

その手にはタブレットが握られており、東堂と乙骨と里香の3人と戦うクリスの姿が映し出されている。冥冥に頼んで呪術的な技術で録画していたのだ。

 

 

「もう姉さん、そんなにショック受けなくても良いでしょ。そろそろ慣れた頃合いだろうし、映像を見たいって言ったのは姉さんだよ?」

 

「だって、だって……交流会っていうから皆で楽しくパーティーしてると思うじゃん。なのに実際はただの殺し合いとか、こんなの誰が予想できるのよ!?」

 

「殺し合いじゃないよ、模擬戦だよ」

 

「クリスちゃんは一度模擬戦の意味を辞書で調べ直した方がいいかもね」

 

 

そう言ってクリスに詰め寄る中、タブレットには乙骨と里香が呪力出力最大のダブル黒閃を決めて殴り飛ばす映像が流れた。

 

大量の血反吐を吐いて全身がボロボロの血塗れになるクリスを見て、ルビー達は更に顔色を悪くした。

 

しかもアイの死亡時よりも酷い有様なので、ルビー的にはそういうトラウマも含めて頭を抱えた。

 

 

「うう……乙骨君、初めて会った時は礼儀正しくて優しい子だなって思ってたのに、戦いになるとこんなに豹変するなんて思わなかったよ」

 

「今更何言ってるの? 呪術師は頭イカれた奴らのハッピーセットなんだから当然だよ。憂太君だって高専に来る前は、同級生を半殺しにしてロッカーに詰めてたらしいし」

 

「イカれてるの基準が私達と全然違う……」

 

 

最も、それを実行したのは乙骨ではなく里香なのだが、ここではあまり関係ない話である。

 

 

「一緒に映ってる東堂? も何かおかしな事ばかり呟いてるし、呪術師ってよく分からない人達ばかりだなぁ……」

 

「まぁ、葵君は頭のおかしなドルオタだからね。ちなみに高田ちゃんが最推しで、必ずライブと握手会に参加するくらい推してるってよ」

 

 

画面に映る東堂を眺めながら、ルビーは若干引いた表情を見せる。そんな姉の反応に、クリスは苦笑しながらも軽く説明した。

 

そして高田ちゃんという単語に反応し、ルビーの目の色が変わる。

 

 

「高田ちゃんって、長身アイドルの高田ちゃん? あの人凄いよね、先月も横浜アリーナでソロライブしたばかりだし。私も早くアリーナやドームでライブできるくらい有名にならないと」

 

「そうだね。ママが成し遂げられなかったドームライブ、期待してるよ姉さん。その時は僕も最前列で観に行くから」

 

「うん、待ってて。すぐにやってみせるから」

 

 

アイドルとして対抗心に火が付いたのか、途端に鼻息が荒くなるルビー。大言壮語だと言われそうな夢だが、クリスは素直に背中を押して応援した。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

「──交流会の内容自体はアレだけど、クリスが無事で良かったよ。ねぇ、他にはどんな事があったの? 戦い以外で何か楽しい事とかあった?」

 

「私も聞かせてほしいな、クリスちゃんのお土産話」

 

 

しばらく経って、ルビーとあかねは戦い以外の思い出話を根掘り葉掘りクリスに聞き始めた。

 

 

「んー、そうだね……学校じゃないけど、半年ぶりに五条先生の実家に泊まった話ならあるよ」

 

「「はっ?」」

 

 

しかし、クリスの口から明かされた内容に2人の目から光が消え、代わりに黒い星が両目に宿った。

 

 

「……それ、詳しく聞かせてくれる?」

 

「交流会が終わって帰る時に五条先生の実家から連絡が来たの。『せっかく京都に来たならウチに寄って一泊していかないか?』って。僕も当分行ってなかったし、挨拶がてらお邪魔しようと思ってね。

 それで皆と別れて五条先生と2人で実家に寄ったの。御馳走とか贈答品とかいろいろ良くしてもらったし、久々に五条先生と一緒に寝たりして……」

 

「「ちょっと待ってぇええええええっ!?」」

 

 

実家に寄った時の話をクリスがしている途中、聞き捨てならない単語が聞こえたのでルビーとあかねはすぐさま遮った。

 

その表情からは不安と焦りの感情が見て取れた。

 

 

「どうしたの2人して?」

 

「どうしたもこうしたも無いよ! 御馳走とかプレゼント貰ったとか、そこまでならまだ耐えられる。でも『一緒に寝た』ってどういう事!? あのクズ男と一緒に寝たってどういう事!?」

 

 

ルビーの焦り具合は尋常ではなかった。星野アイという前例がある以上、アイと瓜二つのクリスがそうなってしまう可能性を否定できなかった。

 

最悪クリスがこの年でママになるかも……なんてとんでもない事態を想像していたら、クリスが若干戸惑いながらも質問に答える。

 

 

「どういう事って、そのままの意味だけ……ああ、そういう事ね。別に姉さん達が想像してるような関係には発展してないから安心して」

 

 

クリスは言葉の意味をすぐに察してその可能性を否定した。クリスの言う『一緒に寝た』は、本当に言葉通りの意味である。

 

幼い頃から深夜まで一緒にゲームをしては床に雑魚寝する日々を送っていたので、今更同じ部屋で寝るくらいはお互い何ともないのだ。

 

 

「というかそんなこと言ったらお風呂も一緒に入ったし、お互いに裸を見るくらいは別に何とも無いかなぁ。本当に今更って感じ」

 

「ぎゃああああああああああっ!?」

 

「ル、ルビーちゃん!? 気をしっかり保って! ここで心が折れたらもうお終いだよ!」

 

 

クリスの口から告げられた更なる追い打ちに、ルビーは雄叫びを上げてテーブルに倒れ伏した。隣であかねが心配そうにルビーの背中を何度も擦るが、いまいち効果は無い。

 

その様子を見てクリスはいつものようにケラケラと笑い飛ばす。

 

 

「もー、姉さんリアクション大げさ過ぎだって。まぁぶっちゃけ五条家の方はそれとなくその気があるけど、肝心の五条先生がアレだからねー。心配しなくても大丈夫だよ、いやほんとマジで」

 

 

五条悟本人にその気は無いが、彼の婚期を気にする五条家の方が最近さりげなくその方向に持っていこうとする節があるのを、クリスは敏感に感じ取っていた。そろそろ直系の世継ぎが欲しいのだろうと思われる。

 

とはいえ五条家との関係は依然良好で、何度も助けられたりお世話になったりした事があるので、のらりくらりと躱して角を立てないようにしている。

 

どちらかというと、今でもクリスを付け狙う禪院家の方がヤバいので、五条家の対応は正直そこまで気にしていない。全てがドブカスのあの男に比べたらどうという事はないのだ。

 

とりあえず五条家から贈答品として貰ったダイヤモンドの指輪は右手の薬指に嵌めた。これから呪力と術式を当て続けて呪具にしようかと考えている。

 

 

──しかし、今のルビーはそれを聞いて安心できる精神状態ではなかった。

 

 

「あ、ああ……あわわわわ……」

 

「あっ、ルビーちゃんが遂に泡吹いちゃった!? 起きて、ねぇ起きてルビーちゃん!」

 

「ははっ、マジウケるー」

 

 

右手の薬指に付けた指輪を弄りながら、クリスは目の前の2人の反応を見て楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみにその指輪のお値段は?」

 

「1000万」

 

「「えっ?」」

 

「だから、1000万」

 

「「…………えっ?」」

 

 

 

*1
ちなみに京都側にいる乙骨の対戦相手は秤、加茂の相手は綺羅羅。




クリスは五条家とも仲が良いという話は前にも何回か触れましたが結構ズブズブです。そもそもクリスと五条悟の距離感が長年の付き合いでバグってるからね。しょうがないよね。

なお……、

五条&クリス「この輪の中に傑(夏油さん)が居ればなぁ……」
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