呪術の子   作:メインクーン

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前回:
幼女邪神「頼んだよ星野クリス」

クリス「えっ、ママが相手?」

星野アイ「……(何も言わず先制攻撃)」



アイとクリスの親子喧嘩 ①

星野アイは生前、規格外のアイドルだった。

 

当時、一世を風靡したアイドルグループのB小町。その中でも不動のセンター、絶対的な存在であった星野アイ。

 

あなたにとって星野アイとは?と聞かれれば、10人中10人が「完璧で究極のアイドル」と即答するくらいには圧倒的な人気を誇っていた。

 

それはメンバー内の嫉妬や妬みすらも撥ね退けてしまう程にずば抜けていて、誰も彼女の横に並び立つことは出来なかったという。

 

 

まさにアイドル界の五条悟。

 

 

全てのアイドルの頂点に君臨し、彼女を目にした瞬間、あらゆるアイドルが敗北を認めた。

 

絶対的な強者、紛う事なき伝説のアイドル。

 

 

 

 

 

──だからこそ、突如訪れた星野アイの死は、当時日本中にとても大きな衝撃を齎した。

 

 

「そんな、嘘だろ……?」

 

「ドーム公演当日にアイが死ぬなんて!」

 

「アイ……アイィィィィィーッ!!」

 

「嫌だ……認めない、俺は認めないぞ……」

 

「これは夢だ……何かの悪い夢なんだ。そうに決まってる」

 

「アイが死んだ?おいおい、それは質の悪いフェイクニュースだろ」

 

 

彼女の死を、別れを拒む者達で溢れかえった。

 

人気絶頂だった当時のアイのファンは数百万人を超えており、その1人1人が彼女の魔性の魅力に当てられ熱狂的なファンと化していた。

 

 

「アイを殺した真犯人を必ず見つけ出して、絶対に俺が殺してやる……!」

 

「アイ……あんたは最期まで完璧で究極のアイドルだったわね。私達全員、あんたの足元にも及ばなかった」

 

「俺にとってアイは娘みたいなもんだったのに……よくも殺してくれたな。許さねぇ、必ずぶっ殺してやる」

 

 

更に彼女と深い関係だった者ほどアイという存在を強く信奉しており、特に家族(主にアクア)や一部の旧B小町メンバーなどはその筆頭だった。

 

その様相は絶対的な神(星野アイ)を崇める1つの宗教団体。そんな現世に舞い降りた神の死は、当然数多くの人々の心に大きな傷痕を遺した。

 

 

結果、大勢の人々の想いは暴走し、呪いとなって折り重なった。

 

 

本来ならば星となって消える運命だったアイの魂は、彼女の死を拒む者達の呪いによってこの世に引き留められた。

 

その後はアイの魂を核として、折り重なった呪いが魂を閉じ込める外殻を成した。

 

 

こうして最強最悪の呪い、特級過呪怨霊『星野アイ』は誕生した。

 

生前星野アイが所持していた生得術式に加え、数百万人以上の強烈な負の感情で蓄えられた莫大な呪力量と出力。

 

どれもが今までの呪霊とは一線を画し、全てが規格外の存在となっている。

 

 

烏の幼女が呪霊になったばかりの星野アイと縛りを結んで力を封じなければ、今頃日本は間違いなく壊滅していた。

 

だが、封印状態も永遠に続くわけではない。日に日にアイの力は増しており、封印ですら徐々に抑えが効かなくなっていた。

 

そのタイミングで訪れた、夏油傑が起こした未曽有の呪術テロ、百鬼夜行。

 

これを好機だと考えた烏の幼女は、現代最強に並ぶ実力を持つ星野クリスに、星野アイの魂の解放を任せることにしたのであった────。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

百鬼夜行が始まってしばらく経った。

 

この日集結した術師達は次から次へと襲い来る呪霊を祓い、徐々に数を減らしていく。

 

始めは1000体いた呪霊も術師が総力を挙げて対処すればなんて事はなく、既に4割近くの呪霊の祓除が完了していた。

 

 

「ここは私が」

 

「七海さん……」

 

 

京都に派遣された七海も、1級術師としてその実力を遺憾なく発揮する。

 

先程から2級以下の術師達を一方的に虐殺していた巨大呪霊を前に、七海は一切怯むことなく果敢に攻めていく。

 

 

「フンッ!ハァッ!」

 

 

呪霊の攻撃を掻い潜りながら頭上より高く跳躍すると、重力に従って落下し、同時に鉈を力の限り振り下ろす。

 

鋼のように硬かった呪霊の肉はみるみる裂けていき、首、胴体、脚と順に切って確実に動きを止めていく。

 

 

「ゴガァアアアアアーッ!!」

 

「フンッ!」

 

 

呪霊が雄叫びを上げながら突進するも、七海は他の雑多な呪霊を祓いながら冷静に動きを見極め、巨大呪霊の頭部を横薙ぎに振り払った。

 

瞬間、空間は歪み呪力が黒く光る。

 

七海の黒閃が呪霊に炸裂し、多くの術師を苦しめた巨大呪霊はあっさり倒れ伏した。

 

 

「す、凄い!流石は七海さん!あの呪霊を1人で祓うなんて……」

 

「安心するのはまだ早い。呪霊はまだまだ大勢やって来ます。すぐに戦闘態勢を整えてください。でなければ死にます」

 

「は、はい!」

 

 

後輩から賛辞を贈られても一切浮つかず、次の戦闘に向けて即座に意識を切り替える。

 

この厳格かつ油断ない姿勢には、後輩達も尊敬と羨望の眼差しを送りつつ、急いで準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

そこから少し離れた地では、京都校の生徒達が協力し合って呪霊の討伐に勤しんでいた。

 

1年と2年で力を合わせ、際限なく襲来する呪霊に冷静に対応する。

 

 

「赤血操術『苅祓』!」

 

「シン・陰流簡易領域『抜刀』!」

 

大祓砲(ウルトラキャノン)ッ!」

 

「まったく、キリが無いわね!」

 

 

2年の加茂を中心に、1年の三輪、メカ丸、真依がサポートしながら互いの死角をカバーする。

 

その陣形を維持して戦う事で、最小限のコストで最大限のパフォーマンスを発揮している。

 

 

「フンッ!」

 

「東堂!?お前今までどこに行ってた?」

 

「俺がどこにいたかは些細な事だろう。それよりも、8時からの生放送に高田ちゃんが出演する。それまでに終わらせる!」

 

「あ、おい待て!」

 

 

他の京都メンバーと離れて単独行動を取っていた東堂も戻り、5人一塊で行動を共にする。

 

 

「加茂君、6時の方向から20体近くの呪霊が接近中!」

 

「分かった、すぐに迎撃準備を済ませる」

 

「気を付けて。1体だけ物凄い呪力を持った呪霊がいる。多分、特級クラスだと思う」

 

「何だと!?それは本当か西宮!?」

 

「危ないと思ったらすぐに逃げてね!」

 

 

唯一空を飛べる西宮は、上空から呪霊の動きを偵察しながら逐次情報を伝達する役割を担っている。

 

京都校のメンバーがここまで効率良く戦えるのは西宮の情報提供のお陰である。

 

こうして京都校の生徒達も街を守るためにしっかり仕事を熟していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「────ッッ!?」」」」

 

 

刹那、七海や京都校の生徒達を含めた術師全員、強烈な死をイメージした。

 

 

「──ッ!?な、何だこの悍ましい気配は!?」

 

「これは……何だか凄く嫌な予感が──ッ!?」

 

 

遥か遠くのビル群から、途轍もない呪力と呪力のぶつかり合いが起こっていると全員が感じ取った。

 

規模からして間違いなく特級同士の争い。しかもこちらへ近付いているのか、戦いの衝撃音が徐々に大きくなっている。

 

 

「……はっ?」

 

「ビ、ビルが……!」

 

 

そんな事を考えている一瞬の間に、視界に移るビル群が次々と両断され、ポップコーンのようにポーンと上空に跳ねて宙を舞う。

 

この天変地異の前触れのような光景に、京都中の術師、呪詛師、呪霊が驚愕し動きを止めた。

 

 

このような超常を引き起こしたのは一体誰なのか。それはすぐに分かった。

 

 

「あそこにいるのはクリスか!ならば戦ってる相手は……もう1人のクリス、だと!?」

 

 

一瞬だけ見えたその姿に、東堂は驚愕した。

 

1人はすぐに分かった。特級術師の星野クリス、彼女本人が戦っていると。

 

だが、もう1人の方にも目を向けると、そちらも星野クリスと瓜二つの容姿をしていた。これには東堂も困惑を隠せない。

 

 

「一体何がどうなってるんだ……」

 

 

隣にいる加茂が茫然とした表情で2人の戦いを見届ける。

 

唐突すぎて事態は飲み込めないし、クリスとクリスにそっくりな人が間近で凄まじいレベルの戦いを繰り広げている。

 

そんな事実に誰しもが困惑しながらも、重力に従って降り注ぐビルの瓦礫の存在に気付き、慌ててその場から撤退した。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

特級過呪怨霊と化した星野アイとの戦闘開始から10分以上が経過した。

 

最強最悪の呪霊となった星野アイと相対するは、アイの娘であり現代最強の五条悟と肩を並べる特級術師、星野クリス。

 

 

そんな2人の母娘対決は────全くの互角だった。

 

 

「──フッ!」

 

 

軽く息を吐きながら、アイの顔面を目掛けて拳を振るうクリス。

 

順転の時間加速から繰り出される超高速の連続打撃。並の相手であれば、反応すらできずに一瞬でミンチになっていただろう。

 

だが、アイは違う。

 

 

「──ッ!?」

 

 

アイはクリスの打撃を全て見切り、あっさり掌で受け止めて防御した。

 

当然、拡張術式でクリスの打撃は全て黒閃になっている。アイがいくら攻撃を受け止めようが、黒閃によるダメージは無視できないはずだった。

 

だがアイは、莫大な呪力量と出力による呪力強化で防御力をカバーし、黒閃のダメージを最小限に抑えていた。

 

暴走した今のアイは全ての攻撃が必殺になり得るし、全てのダメージが最小限になる状態。

 

それを察知したクリスは母親の変貌ぶりに舌を巻いた。

 

 

「まさかこんな所でママと戦う事になるとは思わなかったよ!というか、ママってそんなインファイト仕掛けるタイプじゃなかったじゃん!」

 

 

そもそも非力で戦いとは無縁の人生だったでしょ!と内心ツッコみながら、クリスは果敢に攻めていく。

 

ビル群を次々破壊しながら京都の上空で激闘を繰り広げる2人。

 

時間が経つにつれ、徐々に苛烈になっていく戦闘は他の術師達にも影響を及ぼしていく。

 

 

(このまま京都の街で戦ったらマズいね。そのうち更地にしそうだし、ここは人も建物も無い山の方に移動するのが得策かな)

 

 

崩壊するビルの瓦礫を避けながら撤退する仲間を見て、戦う場所を変えようと決意したクリス。

 

 

「ママ、ちょっと場所を変えるよ。ついて来て!」

 

 

幸い、アイはずっとクリスに執着して追いかけてくるので、誰も居ない山地へ誘導するのは簡単だった。

 

空を飛んで京都の街から少し離れ、街を一望できる山奥へ降り立つ。

 

 

「うん、ここなら他の皆に迷惑かけなくて済みそうだね。さっ、いつでも──っ!?」

 

 

降り立った瞬間、クリスの眼前に大量のナイフが飛んできた。クリスはそれらを紙一重で回避し、飛んできた方角に目を向ける。

 

そこには右手を突き出した姿勢でじっと見つめるアイの姿があった。

 

 

「今のナイフ、ひょっとしてママの術式?娘に向かってナイフを飛ばしてくるなんて物騒だね」

 

「…………」

 

 

冷笑を浮かべてアイに話しかけると、返事の代わりに更に大量のナイフが飛んできた。

 

 

「いや返事も無しかい!」

 

 

何もない虚空からポンッとナイフが現れ、呪力を帯びた状態で超速で飛ばされる。

 

最初は幻か何かと思ったが、避けた後のナイフを観察すると、地面に突き刺さったまま一向に消えない。

 

 

(あのナイフ、全部本物か!物質の創造……ママの術式は構築術式?いや、にしては呪力消費効率が良すぎる)

 

 

本物のナイフが創造されているので、アイの術式は構築術式かと思われた。だが、術式が発動する際の呪力の起こりと消費呪力量を観察した結果、似て非なる別の術式だと判断する。

 

構築術式を持つ万との戦闘経験があるクリスだからこそ一瞬で分かった。

 

 

「まぁ何だって良いけど、娘に対して終始無言ってどうなのさ!何か言ったらどうよ!」

 

 

術式の推察は続けつつ、先程から一言も喋らない母親に対して不満を捲し立てる。

 

戦闘開始から結構時間が経ったが、これまでアイはうんともすんとも言わずに攻撃し続けている。

 

これ程の実力なら、会話が成り立つ知能はあってもおかしくないと思っていただけに、一向に口を利かない現状を不思議に感じていた。

 

だが、何度も語りかけたクリスの努力が功を奏したのか、遂にアイの口が動いた。

 

 

「クリス……どこに行くの?ねぇ、待って……置いて行かないで……」

 

「何だ、ちゃんと喋れるじゃん。あと別に置いて行ったわけじゃないからね。戦う場所を移しただけだから」

 

 

飛来するナイフを回避しながら、アイの言葉に耳を傾ける。

 

一応会話が成立しそうで良かったと思う反面、理性は人に危害を加える呪霊のままなので微妙な気分だった。

 

 

「どうして私から逃げるの?どうして私を殴ってきたの?ねぇ、どうして……答えてよ……」

 

「何度でも言うよ、逃げたんじゃなくて場所を移したの。それに先に殴ってきたのはママの方じゃん」

 

「……ふざけないで」

 

 

口数は増えているが支離滅裂な言動を繰り返すアイ。これにはクリスも思わず素でツッコみを入れる。

 

しかし今のアイに娘の言葉は届かず、徐々にヒートアップしていく。

 

 

「待ってって言ってるじゃん!お願いだから逃げないで!1人にしないでよ!私のこと『愛してる』って言ってよ!」

 

「あーもう、話通じない!これじゃ喋れても意味ないよ!」

 

 

アイがいよいよ涙を流しながら絶叫しだしたので、クリスは厄介な事態になったと頭を抱えた。

 

 

「嫌い!嫌い!皆嫌い!大っ嫌い!」

 

「いや急にどうしたの!?それに何よ、皆嫌いって?死に際に言った『愛してる』って言葉は嘘だったの!?」

 

「死ね!死ね!皆皆皆皆みーんな死んじゃえ!」

 

「ちょ、言葉がどんどん物騒になってない!?」

 

 

呪霊化による弊害か、はたまた生前心の内側に秘めていたアイの本心か。

 

どちらが正解か定かではないが、アイが割と洒落にならない罵詈雑言を吐き散らし始めた。

 

アイが存命だった頃の僅かな記憶を辿っても、ここまで暴言を吐く姿は見なかったので、流石のクリスもこれには困惑した。

 

 

──そして、怒りのままに叫び続けたアイの激情は遂に限界を迎えた。

 

 

「もう2度と離さない……」

 

「──ッ!?来る!」

 

「絶対に……逃がさない!」

 

 

クリスがアイの体内から呪力の起こりを感知したと同時、2人の周囲に巨大な炎が舞い上がった。

 

 

「噓でしょ、これもママの術式なの!?」

 

 

困惑するクリスを他所に、舞い上がった炎は徐々に円柱を成していき、やがて2人を取り囲む巨大な壁となった。

 

それだけでは終わらない。

 

 

「……ん?この音はまさか……雷!?」

 

 

炎の次は雷。

 

雲一つない上空から突如雷が降ってきて、先程出来た壁の上から傘の様に覆い被さる形でその場に帯電する。

 

アイの術式によって、分厚く巨大な火柱の壁と雷の天井による空間が作り上げられ、宣言通りクリスを密閉空間に閉じ込めた。

 

 

「なるほど……徹底的に追い詰める算段ってわけね」

 

 

アイが取ったこの行動に「上等じゃないか」と呟きニヒルに笑うクリス。

 

これ程の強者と戦うのは五条を除いて初めてなので、このように考えるのも当然だった。

 

だが、そんな事を思っているクリスを前に、アイは最後の駄目押しのカードを切った。

 

 

「逃がさない……逃がさない……!」

 

「あの構えは……まさか!?」

 

 

アイが胸元の前で両手を構え、掌印を結ぶ。親指と人差し指でハートマークを模し、残りの指を交差させたシンプルかつ変わった掌印を。

 

そして、これから起こる事をすぐに察知したクリスも、人差し指と中指を交差させた片手のみの掌印を結んだ。

 

 

 

 

 

「「────領域展開」」

 

 

 

 

 

それは呪術戦における極致。呪術を極めた者だけが成せる最終奥義。

 

呪力で構築された両者の生得領域が今、現実世界に形を成して現れる。

 

 

「無常迅速」

 

「相思相愛」

 

 

瞬間、両者の立つ世界が真っ黒に染まった。

 

領域展開した事で現れるアイの生得領域。ナイフで腹部を刺された血塗れの屍が大量に積み上がっており、とても生前の彼女の心象風景を表しているとは思えない。

 

一方でクリスの生得領域はというと、彼女の背後に巨大な時計塔が聳え立っており、時計の針が高速で回転しているものだった。

 

 

(まさか領域展開まで会得してるとはね……)

 

 

──互角。

 

領域の結界内では対になる2人の必中効果が重複し、打ち消し合っていた。

 

この結果にはクリスも内心舌を巻いた。現在クリスの領域の精度は1年生の時よりも更に向上しており、五条悟の無量空処と5分近く張り合える域にまで達している。

 

そんなクリスの領域と互角の精度を誇るアイの領域。

 

お互いが領域を展開した状態での戦闘。どちらかが大きなダメージを負い、どちらかの領域が崩壊すれば即座にどちらかの必中術式が襲う。

 

 

──だが、クリスはここで大きな誤算をしていた。

 

 

先程も述べたように、領域の結界内では対になる2人の必中効果が重複し、打ち消し合っていた。

 

 

そう、結界()では。

 

 

 

 

 

「……えっ、何あれ?どうなってるの?」

 

「クリスさん!」

 

 

その異常は山地から離れた京都の街で確認できた。

 

巨大な火柱と雷に囲まれた空間から突如出現した結界。その結界の更に外側から、幾千本ものナイフが縦横無尽に飛び交い、結界を執拗に攻撃し続ける。

 

終わらないナイフの雨に結界は急速に削られ、徐々にその強度を無くしていく。

 

 

──星野アイの領域の効果範囲は、クリスの領域の外殻より外側に達する。

 

そして、領域展開は相手を閉じ込める事に特化した性質上、外側からの攻撃に脆い。

 

それ故に──、

 

 

「なっ……!?」

 

 

クリスの領域は遂に限界を迎え、外殻が破壊されて崩壊した。

 

次の瞬間──、

 

 

「──ッ!!」

 

 

結界を攻撃していた無数のナイフが、今度はクリスの身体を切り裂いた。

 

 

 




特級過呪怨霊『星野アイ』

術式:嘘を本物にする
術式効果:自身がイメージした『嘘』を『本物』として現実に具現化する。単純な物体の創造は勿論、解釈次第では自然現象の発生、精神干渉、新たな術式の創造等まで可能にする。でも何故かアイはナイフの攻撃に拘る。

領域展開:相思相愛
領域効果:誰かを愛したいし、誰かに愛されたいと願う星野アイの魂が作り出した領域。だが、暴走状態となった今は伏魔御廚子の様な殺意マシマシの絶殺領域と化している。愛の欠片も無い。

 なお、星野アイの領域は他の者の領域と異なり、結界で空間を分断しない。結界を閉じず生得領域を具現化する神業を披露する。
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