呪術の子   作:メインクーン

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前回:
クリス「やっほー!会いに来たよ!」

片寄「こっちも会いたかったよ!」

カミキ「お久しぶりですね」

アイ「えっ?はっ?えっ?」



蜜月な親子の晩酌

片寄ゆらとカミキヒカルの2人と一緒に飲み会をするために、片寄の自宅にやって来たクリス。

 

そんな3人は現在、酒を片手に盛大に飲み会を楽しんでいた。

 

 

「「イエェェェェェーイッ!!」」

 

「あはは、2人とも相変わらず良い飲みっぷりですね」

 

 

ビール缶を片手に肩を組み合い、おつまみを食べながら高らかに笑い合う片寄とクリス。そんな2人を対面に座るカミキは笑顔で見つめながら日本酒を嗜む。

 

和気藹々とした雰囲気の中で飲み続ける3人だったが、1人だけ穏やかではない者がいた。

 

 

『ちょ、ちょっとクリスゥゥゥゥーッ!?何でそんな楽し気に飲んじゃってるのー!?』

 

『もう、どうしたのママ?そんなに慌てて』

 

『どうしたもこうしたもないよ!その人アレだよ、ここで言うのも何だけどクリス達の実の父親なの!流石に気まずいというか……!』

 

『うん、勿論知ってるよ。五条先生に教えてもらったからね。それからママの殺害を手引きした真犯人である事も知ってるよ。これも五条先生が教えてくれたんだー』

 

『ふぁああああああああーっ!?何で五条さんがそこまで知ってるのぉおおおおーっ!?』

 

 

クリスに実の父親であることを明かすが、逆にアイですら知らなかった衝撃の真実を娘から告げられ、アイは驚愕のあまり堪らず絶叫した。

 

そんないつもの完璧で究極な偶像も崩れ去り、珍しく柄にもなく荒ぶるアイを宥めつつ、クリスは片寄とカミキとの飲み会を引き続き楽しむ。

 

 

「いやー、ビールが美味しいねー!」

 

「だねー、ゆらちゃん!ほらほら、ミキさんももっと飲んで!」

 

「ええ、ありがたく頂きます」

 

『人の話を聞いてぇー!お願いだから!』

 

 

相変わらずアイが心の中で喧しく叫んでいるが、クリスはそれをスルーしてビールをグイッと一気に煽る。

 

 

「ああ、そう言えばクリスちゃん。私この前映画の主演のオファーが来たの」

 

 

そんな中、片寄が唐突に映画の話題を振ってきた。普通に凄いことなのでクリスは素直に賞賛する。

 

 

「へぇ、凄いじゃん。流石天下の大女優。で、何の映画なの?」

 

「それがさぁ……クリスちゃんはもう知ってるかもだけど、『15年の嘘』っていうアイの半生を描いた映画にアイ役で出ないかって打診されてね」

 

「……マジで?」

 

「大マジ」

 

 

片寄の言う映画とは、件のアクアと監督が企画した映画のことだった。

 

彼女にその映画の主演のオファーが来ていると知り、クリスは一瞬で静かになって聞き返すが、片寄は真面目な顔で即答した。

 

 

「でも私、そのオファーは断ろうと思っててね」

 

「えっ、何で?普通に受ければ良いじゃん。だよねミキさん」

 

「そうですよ。せっかく主演の候補に選ばれたんですし、素直に受ければ良いのでは?」

 

 

だが、生憎片寄は主役を演じるモチベーションが無かった。

 

理由を尋ねたところ、もう25歳になる自分が中高生時代のアイを演じるのは流石にキツいし、精神的にクるものがあるとのこと。

 

映画には喜んで出演しようと思っているが、出来れば主演以外を希望している片寄だった。

 

そして何よりも……、

 

 

「誰よりもアイ役に適してる人が目の前にいるのに、その人以上にアイ役を演じられるイメージがどうしても湧かなくってさー」

 

「あー、なるほど。そういう感じね」

 

「クリスさん、アイの3人目の娘だとバレて一躍時の人ですもんね。ネットでは『アイの復活』とか『アイの生まれ変わり』とか言われてる程ですし。僕も知らなかったのでびっくりしましたよ。でも言われてみれば確かにアイにそっくりです」

 

『嘘を吐けぇええええええーっ!!そう言うあなたは父親でしょうがぁああああああーっ!!』

 

 

カミキの発言にまたしてもアイが反応して生得領域内で荒ぶるが、クリスはそれをぐっと抑え込んで2人との会話に意識を集中させる。

 

 

「ま、まぁとにかく映画には出るつもりなんだね?具体的にどの役を希望してるとかあるの?」

 

「うーん、まだそこまでは……。でもアイ役に関してはやっぱ現役の高校生を起用した方が良いと思うんだよ。不知火フリルとか黒川あかねとか……ほら、最近だと星野ルビーとかもね」

 

「おっ、僕の姉さんに目を付けるとはお目が高い」

 

「あ、やっぱルビーってクリスちゃんのお姉さんだったかー。ということはアクアはお兄さんってことになるね。いやー、3人とも遺伝子強すぎだし顔良すぎだよね。私と違って本当に凄いよ」

 

「そういうゆらさんだって目を見張るほどの美人じゃないですか。そう自分を卑下する必要はありませんよ」

 

「んもうっ、ミキさんったら!そんなに褒めたって何も出てきませんよー!」

 

『騙されないでゆらちゃん!その人いつもこんな感じだから!』

 

 

片寄がカミキの誉め言葉に照れている傍ら、その様子を見守っていたアイが唐突に立ち上がって再び声高に抗議する。

 

いつまでも荒ぶるらしくない母親の姿に、クリスはただ只管苦笑いで受け流すのであった。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

それから数時間後、いつものように酔い潰れた片寄をベッドに寝かせて介抱したクリスは、カミキと2人きりで酒を酌み交わす。

 

 

「お疲れ様です、ゆらさんはもう寝ましたか?」

 

「まぁね、ああなるとゆらちゃんは朝までぐっすりだから」

 

「ということは、またしても2人きりになったというわけですね」

 

「ふふっ、そうだねパパ」

 

 

日本酒とビールを互いに注ぎ合いながら談笑する両者には、和やかな空気を通り越してある種の色気のような雰囲気が醸し出されている。

 

本当に親子同士かと疑いたくなるほど距離感が近い2人を見て、中にいるアイは気が気でなかった。

 

 

『ちょっとクリス、何かやけにヒカルと距離近くない?念のためもう少し離れた方が良いんじゃ……』

 

『良いの良いの、僕は別にそこまで気にしてないし、ミキさんも満更ではなさそうだしさ。それにこの人弄り甲斐があって面白いんだよ。とっても良いリアクションを見せてくれるんだ』

 

『あー、確かにヒカルはそういう可愛い一面があるからめっちゃ分かる……って違う!そういう問題じゃなくてね?』

 

 

クリスの言うカミキの良い点に共感して頷きかけ、直前で首を横に振って正気に戻るアイ。

 

アイは完全にクリスのペースに乗せられていた。

 

 

『ヒカルはリョースケ君を唆して私を殺したんだよね?それに関してはもう昔の事だし自業自得だから良いんだけどさ、今はとにかく子供達のことが心配なの』

 

『あーね、そういう感じか』

 

 

とりあえずアイの言い分を聞いてみたら、親として至極真っ当な内容だった。

 

アイ曰く、自分が殺された当時は危うく子供達に危害が及びそうだったので、それを思い出して子供達の身を心配しているとのこと。

 

自分自身を殺したカミキの事を許したわけではないが、子供達の安全に比べれば些末な事だとアイは語る。勿論その対象は現代最強たるクリスも例外ではない。

 

自分の事よりも子供達の身を案じるその姿は、どこまでいっても我が子を愛する母親そのもの。愛を知った母親は最強なのである。

 

とはいえ、クリスがそれを素直に受け入れるかはまた別の話だ。

 

 

『ママの気持ちは分かったけどさ、ごめん、やっぱこのままの距離感で居続けるね。だってミキさん面白いし』

 

『えっ、ちょ、クリス!?今の話聞いてた!?本当にそれで大丈夫なの!?』

 

『大丈夫、何とかなるって。だって僕最強だし』

 

『そうだけど、そうなんだけど……うーん、やっぱり不安だなぁ』

 

 

娘にあっさりと拒否され、アイは頭を抱えた。

 

確かにクリスの言う通り、彼女がカミキに危害を加えられて悲惨な目に遭うイメージは全く湧かない。仮にそんなことが起きた場合、むしろ襲ったカミキの方を心配するかもしれない程だ。

 

それでも1度は身体を許した関係の男。そんな男を前にして絶対大丈夫とは言い切れなかった。

 

だが、それでもクリスは自信を持って言う。

 

 

『まぁ、もしミキさんが誰かに復讐されたとしても、僕は味方にならないし助けるつもりもないって既に本人には伝えてるからね。向こうもそれを了承してるから、当面は問題無いんじゃないかな?』

 

『えぇ、何それ……クリスってばちょっと大胆過ぎない?私でもそこまで言えるメンタルないよ』

 

『ふふーん、凄いでしょ』

 

『褒めてないからね?』

 

 

父親兼殺人鬼だと知ってなお堂々と交流を続け、おまけに相手もそれを知ってて一緒に酒を酌み交わす。

 

そんな歪な関係性を何の確執もなく維持しているクリスにアイですら引いた。とはいえ呪術師の視点で見れば、これよりももっと複雑で歪な血縁関係が横行しているので、本当に大した問題ではない。別に珍しくもないありふれた家庭事情なのだ。

 

そんなこんなで根っからの呪術師との感性の違いを痛感したアイは、まぁクリスなら別に良いかと達観した心持ちで2人のやり取りを見守ることに。

 

 

「……で、パパは今回のママを主役にした映画についてどう思ってるの?」

 

「そうですね、正直言って僕はこの映画に特に興味がありません。いえ、それが公開されることによってどのような結果になるかは気にしてます。多分僕も無関係では無いと思うので。ただ内容その物はあまり期待してませんね」

 

 

静観を選んだアイを他所にクリスが映画の関心具合を尋ねるも、意外にも映画に対するカミキの関心はあまり高くなかった。

 

 

「えー、何で?自分の妻が映画に出るんだよ?それに多分、兄さんも姉さんも映画に出ると思うんだよね。パパとして多少応援するくらいはあっても良いじゃん」

 

「……まぁ、僕の会社から出資するくらいはアリですけど、関わるのもそれくらいですかねぇ。何せ映画の中のアイを見なくとも、僕の目の前にアイと同等……いやそれ以上の輝きを持った女性が既にいるので」

 

 

意外も意外、映画への興味が薄い理由はクリスの存在があるからだった。

 

かつてのアイかそれ以上の輝きを放つクリスという血の繋がった愛娘。カミキの興味関心は既にクリスにのみ向けられていた。

 

 

「おっと、これはもしかして可愛い娘に対する愛の告白ってやつかな?ひゅー、パパったら大胆だね」

 

「ええ、その通りですよ。何ならこれを機に、僕からの愛を受け取ってくれると嬉しいですね」

 

「いやーん、パパったら親バカだぁー。それともアレかな、マジの愛の告白だったり?今のはどっちなのかなぁ?」

 

「さぁ、どちらでしょうね?」

 

 

お互いに肩をぴったりと付け、至近距離で見つめ合いながら赤らめた顔で話す。

 

クリスが醸し出す高校生とは思えない大人の妖艶な色気と魅力は、見る者が見れば我慢できずにその場で襲い掛かっていただろう。

 

そんな彼女を目にしたカミキは終始ニコニコと微笑んだまま、腰に手を回してギュッと抱き寄せる。

 

 

『えっ、えっ、えっ?ちょ、ちょっとクリス、流石にそれ以上は洒落にならないよーっ!?』

 

 

生得領域の中でアイが声を荒げるが、その声がクリスに届くことは無く。

 

ぴったりと身体を密着させた状態のまま数十秒経ったところで、カミキはそっとクリスから手を離した。

 

 

「何というか、パパってば毎回会う度に大胆になってきてるよねー」

 

「慣れってものですよ。最近ではあなたに会うと今みたいに抱き合うのが日課になってる気がします」

 

「うーん、ちょっと否定できないかも。どうしてだろうね?」

 

「さぁ、どうしてでしょうね?」

 

 

これまでクリスとカミキは両手で数えるくらいの頻度で会っているのだが、回数を重ねるごとにハグをする時間が伸びている傾向にある。

 

カミキはこれを日課と称しているが、既にかなりおかしい距離感である。クリスもその行動を容認しているのが余計に拍車を掛けていた。

 

 

「ふぁああ……何だか眠くなってきちゃった」

 

「お酒を飲んだ影響ですね。もう時間も遅いですし、そろそろ寝た方が良いでしょう」

 

「そうだねぇ……そうするよ」

 

 

と、ここで酔いが良い感じに回って眠くなってきたので、クリスも片寄と同様に寝室へ向かう。

 

片寄が用意してくれた広めのベッドに飛び込み、そのままゴロンと寝転んで布団を被る。

 

 

「それじゃあお休みパパ。また明日ねー」

 

「ええ、お休みなさいクリスさん。また明日」

 

 

それから数分後、クリスは己の眠気に従って夢の世界に旅立った。

 

 

「……ようやく寝ましたか。相変わらず自由奔放な人だ」

 

 

すぅすぅと静かな寝息を立てて眠るクリスを見ながら、カミキは静まり返った寝室でぼそりと呟く。

 

そして抜き足差し足で寝ているクリスの隣に立ち、そっと顔を近付けて彼女の頬に軽い口付けを行う。

 

 

「……いつもあなたのお転婆に付き合わされてますので、これくらいの意趣返しはさせて貰いますよ」

 

 

それからカミキも部屋に散らばったビール缶を片付けた後、寝室に用意されたベッドに潜って深い眠りに就くのであった。

 

一方その頃、クリスの生得領域内から全てを見ていたアイは……、

 

 

『あわわわわわっ……!?今の、もしかしなくてもクリスにキ、キスを……!』

 

 

1人で赤面したまま固まり、何かをぶつぶつ呟くだけの機械と化していた。

 

 

 




アイですら投げ出すクリスのイカれた感性。もしかしてクリスは結構真面なんじゃね?って最近言われてたけど、やっぱり彼女も呪術師なんですよね。

あと、片寄ゆらが映画に出演することで映画の撮影現場が更にカオスになるかもよ。良かったねアクア、ルビー、推しの子の皆!


Q.クリスに脳を焼かれた今の状態のカミキが、呪術師としてのクリスの強さを目の当たりにしたらどうなるの?

A.大絶頂。もうクリス以外はどうでも良くなるくらい執着するかも。今でも十分執着してるけど。
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