呪術の子 作:メインクーン
万「宿儺、あなたに愛を教えて私と結婚してもらうからね!」
宿儺「悪いな万、俺の興味はクリスにあるんだ。潔く諦めてくれ」
万「いやぁああああああーっ!?」
クリス「憂さ晴らしに僕を巻き込まないでよ……」
漏瑚「儂らはどうすれば良いんじゃ?」
花御「今の内に逃げましょう」
1000年ぶりの再会を果たした万と宿儺。
だが熱烈なラブコールも虚しく、虎杖と入れ替わった宿儺にばっさり振られた万はその場に頽れてしまった。
長年想いを伝え続けた相手から直接、それも目の敵にしていたクリスを抱き寄せた上で振られたので、その精神的なショックは凄まじいものだった。
そんな彼女を見て、今まで散々ストーカー被害に遭ってきた宿儺は意趣返しができて満足そうに笑った。いきなり巻き込まれたクリスは呆れて深い溜め息を吐いたが。
そうして万が一頻り絶望と悲しみの叫び声を上げた後。
「……おっ、戻った。先輩どうだった?あいつ先輩に変なことしなかった?」
「おかえり悠仁君、特にヤバいことはされてないから大丈夫。でもちょっと色々あってね……」
「あいつに酷いこと言われたとか?」
「ううん、その逆。宿儺にプロポーズされちゃった」
「へっ?プ、プロポーズ?何で?」
宿儺の行動は別にプロポーズではない。だが状況的にどう見てもプロポーズにしか思えなかったので、とりあえずそのように伝えるクリスであった。
それを聞いた虎杖が目を点にして反射的に聞き返す中、ようやく叫び終えた万がよろよろと力無く立ち上がった。
「ふ、ふふふふ……宿儺に振られちゃった、振られちゃったわ。でもまだよ、こんな程度で私の愛は止まらないわ。たとえ宿儺が誰を愛そうとも、最後に私の横にいればそれで良いもの」
「……何があったか知らねぇけど、修羅場があったって事だけは何となく分かったわ」
宿儺に振られてもすぐに前を向いて進む万を見て、虎杖は何とも言えない微妙な気持ちになる。ぶつぶつと独り言を呟く万はそれだけ哀愁が漂っていた。
「覚えてなさい、星野クリス!宿儺にプロポーズされたからって調子に乗らないことね!お前を倒して正妻の座を私は手に入れる!それまで首を洗って待ってなさい!」
「えっ?ああ、うん……まぁ良いかそれで」
「それで良いんだ先輩……」
気を取り直して改めて、万はクリスに対してライバル宣言を突き付けた。どちらか宿儺の正妻に相応しいかを決める愛のライバル宣言を。
クリスは「何かもう訂正するのも馬鹿らしくなってきたし良いや」と半分諦めた状態で適当に返事をしたが、万はそれを本気と受け取った。
「ううっ……今夜はヤケ酒よ!うぁああああああーん!!」
「あ、うん。じゃあまたねー」
そして、背中に再び昆虫の羽を生やすと上空へ一気に飛び上がり、涙ながらに夜の星空へと消えて行った。
「先輩、あいつ追わなくて良いの?」
「いや、そのつもりだったんだけどね?でもさっきの呪霊達はいつの間にか居なくなってるし、宿儺にプロポーズされてからどうにも調子狂っちゃったというか、心ここに在らずというか……」
「先輩、言っとくけどあいつにそんな情は無いっすよ。どうせ口から出任せを言ったに決まってる。騙されないで」
「それは僕もすぐに分かったけど、嘘とはいえあんなストレートに言われたらちょっとね。どうやら呪いの王はハニトラも上手いらしい。これも五条先生に報告しておくよ」
万を追い掛けなかった理由に、宿儺にプロポーズされたからと答えたクリス。だが、彼女が万を見逃した理由はもう1つある。
(にしても万の奴、2年前に比べて随分強くなってた。呪力の消費効率が格段に上がってたし、基礎的な呪力操作にもより磨きが掛かってた。基礎を徹底的に洗い直したのかな?
何にせよ、今ここであいつと戦ったら確実に悠仁君が死んじゃってたし、どうにか穏便に済んで良かったね。お互いのためにも)
万を一目見てクリスはすぐに分かった。彼女が2年前とは比較にならない強さを持っていることに。
勿論、いくら万が強くなったところで後れを取るクリスではないが、間違いなく高千穂の時のようにはいかなかった。それだけの確信があっただけに、クリスも万もお互い穏便に済ませるのがあの場の最適解だったのだ。
とにかく、今回のやり取りで分かった事がたくさんあった。なので必ず五条と情報を共有しておこうと思うクリスだった。
「……あ、ようやく帳が上がったね。それじゃあ、もう夜だし高専に帰ろっか。ゆらちゃん達も心配して待ってるだろうし」
「ゆらちゃん?」
「女優の片寄ゆらだよ。僕の友達でさ、今日はスピネルとゆらちゃんともう1人の4人でハイキングに行ってたんだ」
「えっ、クリス先輩あの片寄ゆらと友達なの!?マジか凄ぇ、流石芸能一家」
漏瑚の急襲から始まった突然のハプニングだったが、どうにか事態は収束したので、虎杖を連れて皆の所へ戻るクリスであった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
それから1時間後。
虎杖を連れて片寄達の所に戻ったクリスは、心配して待っていた片寄とカミキに無事であることを伝え、詳しい説明を後回しにして瞬間移動で高専に戻った。
クリスが呪術師であることを知らないカミキが、瞬間移動を初めて体験してかなり動揺していたが、それを無視して五条の下へ向かった。
そして、高専で帰りを待っていた五条に、虎杖を連れた後の出来事と事の顛末を詳細に報告した。
「……とまぁそんな感じで、平和的に事態は収まりました。とはいえ3人とも取り逃がしたのは僕のミスなんで、そこは本当にごめんなさい」
「いや、いいよ。むしろよく犠牲者を出さずに返り討ちにできたと思う。流石は僕の一番弟子、よく頑張ったね」
「えへへー、それほどでも」
全員の逃亡を許したことで謝るクリスを、五条は決して怒らず、むしろクリスの頭を撫でながら褒めてくれた。
五条に頭を撫でられたクリスはご満悦な様子である。
「……で、今日は後ろにいる皆でハイキングに行ってたわけか」
「ええ、そうですよ。僕とスピネルとゆらちゃんとミキさんの4人で、県外の山へ」
「良いな―、今度も僕も連れてってよ。皆でハイキングとか面白そうじゃん」
「実際楽しかったですよ。とても長閑で心地良かったですし」
話は変わり、ハイキングの話で盛り上がる2人。五条の視線がクリスの後ろにいる片寄達に向くと、それに気付いた片寄が頭を下げた。
「お久しぶりです、五条さん。お元気そうで何よりです」
「片寄の方こそおっひさー。しばらく見ない内に随分出世したね。もうすっかりテレビで引っ張りだこの大女優じゃん」
「あはは、皆さんのお力添えがあってこその成果ですよ」
片寄が再会の挨拶をすると、五条の方も気さくな態度で手を振りながら挨拶した。
大女優として出世した事については、少し照れ臭そうに微笑む片寄。五条のようなイケメンに褒められて満更でもない感じである。
「隣の君は初めましてかな?呪術高専1年の担任、五条悟だよ。よろしく」
「初めまして五条悟さん、カミキヒカルと申します。それにしても、クリスさんとは随分親しい仲のようですね」
「まぁね。クリスとはもう13……いや、今年で14年の付き合いになるからね。それがどうかした?」
「いえいえ、とても仲睦まじい様子で微笑ましいなと思いまして。クリスさんが楽しく学校生活を送られてるようで何よりですよ」
五条の視線が片寄から隣のカミキに移り、お互いに自己紹介を済ませる。
カミキがクリスの実の父親である事や、アイの殺害を手引きした黒幕である事を五条は既に知っている。だがクリスに気を遣い、この場ではあえて何も知らないふりをする五条。
それでもクリスを巡ってお互いの視線が交錯するが、両者共にニコニコと笑みを浮かべるだけで、それ以外は当たり障りのない会話が続く。
「ところで、そろそろ皆さんに聞きたいことがあるのですが、質問良いですか?」
「良いけど質問って?」
「それは勿論、先程クリスさんが見せた謎の力についてですよ。あれは一体何なんですか?それとクリスさん、あなた一体何者何ですか?」
「あー、やっぱそれ聞くよね。うん、知ってた。じゃあ初めてのミキさんに呪術について順に教えてあげる」
カミキに質問され、クリスは1つずつ説明していった。呪術のこと、呪いの存在、呪術師として裏で活動する自身のこと、呪術高専のこと。
彼女の説明をカミキは静かに聞き、時々相槌や質問を挟みながら理解を深めていく。
「……とまぁ、ざっとこんな感じかな?どうミキさん、少しは理解できた?」
「ええ、まぁ。しかし、呪いですか……俄かには信じがたいですが、常識を超えた力や化け物を実際にこの目で見てしまった以上、認めざるを得ませんね」
「ミキさんのその気持ち、私も超分かる。初めて呪いの存在を知った時は凄く驚いたし、何なら怖すぎて叫んだもん。むしろよくそんな冷静でいられるよね」
「いえ、僕も正直驚いていますが、驚きすぎて反って冷静になりました」
呪いの存在を知って吃驚仰天するかと思いきや、思っていた以上に冷静だったカミキに、片寄が自分の時とは大違いだと感心する。
そんな彼の反応に五条もケラケラと笑う。
「あはは、それで冷静さを保ってられるのはある意味才能だよ。クリスの友達なだけあってしっかりイカれてるし、君案外呪術師向きの性格かもね」
「止めてくださいよ五条さん、笑い話にもなりませんって。化け物退治とか僕は勘弁ですよ」
「大丈夫大丈夫、術師になれって言ってるわけじゃないから。だって君全然
「そう言われると何だかショックですね……」
五条が六眼でカミキを調べた結果、彼に術式は無いことが判明した。それを才能無しという言葉ではっきり言われたカミキは苦笑いを浮かべていたが。
なお、ここまでで全く会話に入り込めていない者が1名。
「……ねぇ先輩、俺はどうしたら良いの?どんどん話が進んでるけど、俺ここにいて良い感じ?」
「いやいや、悠仁君はむしろ居てもらわなきゃ困るよ。今スピネルを抱っこしてるのは君なんだからさ。で、どう?スピネルは?」
「ぐっすり寝てる。2週間会わなかっただけで、もう結構懐かしい気分だよ」
全く会話に入り込めていない悠仁だったが、現在彼の腕の中でスピネルが気持ちよさそうに熟睡している。
2週間ぶりに見れた自分の妹に、悠仁の顔からは自然と笑みがこぼれていた。
そんな悠仁に対して、片寄がゆっくりと歩み寄って顔を覗き込む。
「……ねぇ、悠仁君だっけ?スピネルちゃんを可愛がってるところ悪いんだけどさ、君に1つ聞いてもいいかな?」
「えっ、あの片寄ゆらが俺に?良いけど何?」
「その子のお父さん、もしかして君だったりしない?」
「へっ、俺?」
突然の質問に虎杖は素っ頓狂な声を上げる。しかし、そんな彼に対して片寄の目は若干据わっていた。マジの目である。
「いやね、どうにもその子に対する愛情が人一倍凄いし、スピネルちゃんと君の髪色同じだし。それに私、さっき君がクリスちゃんをギュッと抱き寄せてるところ見たからさ、もしかしたらそうなのかなってね?」
片寄は見ていた。先程までいた山の麓で、クリスの肩を抱き寄せて顔を近付ける虎杖の姿を。
実際は虎杖と入れ替わった宿儺が、しつこく付き纏ってくる万への意趣返しに行ったものだが、遠目から見ていた片寄達にそんな事情が分かるはずも無かった。
「えっ、いやいや……確かにスピネルは俺とクリス先輩で育ててるけど、別に俺はこの子の父親ってわけじゃ……というか、俺がクリス先輩を抱き寄せた?何の話っすか?」
「良いのよ恍けなくて。私だけじゃなくてミキさんも見てたから。そうだよねミキさん?」
「ええ、僕も見てましたよ。先程までいた山の麓で、君が大胆にもクリスさんを抱き寄せる瞬間を。というか今、クリスさんと2人でスピネルを育てていると言いましたが、やはりそういう事なのでは?」
あっ、これ完全に誤解されてる。
そう思った虎杖が即座に弁明しようと口を開くが、推定有罪と見做されている彼の主張が片寄達の耳に届くことはない。
むしろ更に誤解を悪化させてしまった。
「うんうん。クリスちゃん、父親は内緒って言ってたけど、確かに君なら内緒にしたがるのも納得かもね。高1の後輩との間に出来た子だってバレたら大変だもん」
「いやだから、それはただの誤解……」
「でもこれだけは言っておくわ。たとえ君が高校生だろうと、責任は最後まで取りなさい。それが父親としての責務だから。分かった、虎杖君?」
「あーもう!全然こっちの話聞いてくんねぇー!」
口を開こうとすれば、それに覆い被さるように真剣な顔をした片寄達から小言を言われ、どんどん誤解が酷くなっていく。
このどうしようもない悪循環に虎杖は頭を抱え、思わず叫んでしまった。
『クク、ケヒヒッ……好い気味だ。ちょっとした嫌がらせには丁度良い。小僧、せいぜい噛み締めろ』
なお、虎杖の中にいる宿儺は、困り果てている彼を見て静かに嗤っていた。
一方、虎杖に詰め寄る片寄とカミキを横目に、クリスは宿儺にプロポーズされたことを五条に話していた。
「ふーん、あの宿儺がクリスにプロポーズねぇ……いくら何でもこれを見て見ぬふりは出来ないかな。流石の僕もちょっとムッと来ちゃったかも」
「あれ、もしかして嫉妬してます?」
事の経緯を聞いてぷくっと頬を膨らませる五条。その反応を楽しんでいるのか、ニヤニヤしながら顔を覗き込むクリスに五条は言う。
「そりゃするよー。だってクリスは僕が先に見つけてきたんだよ?ぽっと出の呪いの王に取られて堪るかって話だもん」
「わーお、五条先生ったら大胆。そんなこと言われたら、僕照れちゃいますよ?」
「じゃあもーっと照れさせちゃおっかな?今度2人でどっかに出掛けようよ。一緒に任務サボってさ」
「良いですねそれ。是非ともご一緒させてください、五条先生」
「決まりだね。久々のデートと洒落込もうか」
宿儺に謎の対抗心を燃やした五条がクリスをデートに誘った。誘われたクリスも満更ではないのか、これに二つ返事で了承した。
とはいえ、2人は定期的に買い物へ行ったり遊びに行ったりするので、デートと言われても今更な話ではある。むしろ五条家からよく縁談の話を持ち掛けられる程の仲だ。
なお、他の人がこれを聞けば、特級2人が揃って任務サボんじゃねぇよとキレるのは確実である。そういう周囲への影響を一切考慮せず、2人は近日遊びに出掛ける予定を立てるのであった。
「だーかーら!俺はスピネルの父親じゃなくて兄なの!義理の!」
「本当に?でもスピネルちゃんと君の髪色同じだよ。こんな珍しい色、偶然にしては出来すぎじゃないかな?」
「偶然だよ!だってスピネル拾い子だもん!昨年何故か俺ん家の玄関前に置かれてて……!」
「……って、虎杖君は言ってるけど、実際はどうなのクリスちゃん?」
五条とデートの約束をしているクリスに、片寄が虎杖の発言の真意を確かめるべく尋ねる。
だが、丁度そのタイミングでスピネルが目を覚まし、クリスの胸に向かって手を伸ばし始めた。
「あ、スピネル起きた……あれ?ひょっとしてお腹空いちゃったのかな?じゃあそろそろおっぱい飲もっか」
「「えっ……えっ!?」」
「ちょ、先輩……?」
「悠仁君、スピネルこっちに渡して。今から晩御飯の時間だから」
片寄とカミキがクリスの発言に愕然とする中、虎杖からスピネルを受け取ったクリスは皆にくるりと背を向けると、上着を半分脱いでスピネルの顔に自身の胸を当てた。
「ほーら、よしよし良い子だねー。たくさん飲んで大きくなるんだよ」
「……虎杖君、これは一体どういう事かな?さっきの君の発言と随分食い違うようだけど?」
「これは僕達とじっくり『お話』する必要がありそうだね?」
「いやタイミング!?タイミングが悪いどころの話じゃねぇええええー!!」
虎杖の絶叫が室内に響き渡った。
明かされた正体。謎深まる関係!
虎杖「五条先生、クリス先輩、ちょっとヘルプ!この2人俺の言うこと全然信じてくれない!」
片寄&カミキ「責任取れよ虎杖君」
アイ「あんたが言うなヒカル」
Q.今の万ってどのくらい強いの?
A.詳細は後々明かす予定ですが、割とマジで宿儺の指16本分くらいの実力があります。とりあえず魔虚羅は単独で倒せます。高千穂戦での敗北を糧に彼女も頑張って修行したという事です。
Q.スピネルってどんな見た目してるの?特徴は?
A.まだ赤ちゃんなので目立つ特徴は見られません。ただ、アイの面影が何となく感じられる顔をしてます。それから髪の色は虎杖と同じ薄茶色(アニメ版だとピンクベージュ)です。
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