呪術の子   作:メインクーン

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前回:
ツクヨミ「映画撮影で3兄妹の子供時代の演技したよ」

アクア&ルビー「子供の頃はもっと天才児っぽかったでしょ」

片寄「実はミキさんやクリスちゃんと友達なんだ」

あかね「まさかクリスちゃんがカミキヒカルと交流があったなんて……」

カミキ「お久しぶりですねクリスさん」

クリス「初めまして、星野クリスだよ。よろしくね!」

ニノ「……よろしく」

※『45510』の内容を含んでます。



過去を縛る呪い

──カミキヒカルと一緒にいた旧B小町メンバーのニノこと新野冬子と出会い、数十分が経った。

 

現在、3人は都内某所のカフェで一息ついている。ここは数あるカフェの中でも一際人気がない。路地裏を練り歩いた先にあるこの店は、そもそも店として認識している人自体が少なく、客の入りは限りなく無いと言ってもいい。所謂「知る人ぞ知る店」である。

 

ここを選択したのはカミキヒカル。偶然見つけたこのカフェには不定期で通っており、今回クリスと新野の間に流れる不穏な空気──ほぼ新野からの一方的な感情の発露だが──を察知して案内した。

 

あまり他人には聞かれたくない話をする場としては丁度良い。今は3人以外に客はいない。

 

 

「…………」

 

「……で、何か僕に言いたい事があるんじゃないですか、()()()()?」

 

「──ッ!?」

 

 

テーブルを囲んで座る中、注文した紅茶を口に含んだクリスはカップを置くと、正面に座る新野に早速話を切り出した。

 

突然アイと瓜二つの相手から尋ねられ、新野はビクリと肩を揺らして分かりやすく動揺を見せる。その間、カミキは2人のやり取りをただ見守って微笑んでいるが、新野にそれを気にする精神的な余裕はない。

 

年齢だけで見れば彼女の方がクリスより一回りも二回りも歳上だが、今だけはその年の差からくる余裕などは感じられず、まるで天敵を前にした小動物の様に怯えた目を向けていた。

 

それでも彼女は震える声で、恐る恐るクリスに尋ねる。

 

 

「……何で、そう思ったの?」

 

「何でも何も、それだけ露骨な反応を見せたら嫌でも気付きます。その理由も大体察しが付きます。十中八九僕のママと関連がありますよね?」

 

「それは……その……」

 

「でもまぁ、動揺する気持ちも理解できますよ。だって僕、姿も声もママとそっくりですから。随分昔に亡くなった知人と瓜二つの人が突然目の前に現れて驚かない人は、そんなにいないでしょう」

 

 

返答に困って言葉を詰まらせる新野に遠慮なく、クリスは彼女の心情を推し量って口にする。

 

やや一方的な会話になりつつあるが、それも最初だけ。話を続ければ緊張の糸は解れ、新野の口数も語気も徐々に勢いを増していく。

 

 

「新野冬子……今ネットで検索してみましたが、めぼしい情報は特に得られませんでした。でもママが活動していた頃のB子町について調べたら……お、ありましたね」

 

「ッ!?」

 

 

クリスの言葉に新野が俯き目を見開く。他の2人には見えていないが、その表情から怯えは消え、黒い感情が見え隠れしていた。

 

そんな彼女の急激な変化にもお構いなしに、クリスは口を開く。

 

 

「えっと……元B子町のメンバー『ニノ』、キャラクターイメージはパンダ。B子町結成当初、周りより秀でた歌唱力と明るい笑顔がファンの心に刺さり、最初期のスタートダッシュを成功に導いた立役者」

 

「…………やめて」

 

 

耳を澄ませば微かに聞き取れる声で、ぼそりと呟く。

 

 

「だがアイが加入して以降、ターゲット層が被っていたためあっという間にファンはアイの方へ移り、彼女を応援する者は次第に減っていった」

 

「…………やめて」

 

 

先程よりも大きく震えた声で、もう1度口にする。ずっと前に仕舞いこんだはずのアイに対する激しい感情が、クリスの声を聞く度に再燃し、沸沸と込み上げてくる。

 

 

「それでもファンの人気を集めようと懸命に活動するも、誰も彼女に注目する事なく、その視線は常にアイへ釘付けになっていた」

 

「やめて……!」

 

 

遂に耳を澄まさずともはっきり聞こえる声量で止めようとするも、読み上げるクリスの声は止まらない。

 

 

「正確に言えば彼女だけではなく、他のメンバー全員のファンがアイに移っていったわけだが、それだけアイの人気は凄まじいもので、彼女の隣に立ち並んでいたといえる者は誰一人としていなかっ──」

 

「もうやめてっ!!」

 

 

旧B子町メンバーのニノに関するプロフィールと経歴、そしてメンバー内での人気の格差。

 

サイトに纏められた内容を淡々と口にするクリスだったが、突如それを遮る怒号がテーブルを叩き付ける音と共に店内に響き渡る。

 

声の主は、新野。頬を紅潮させ、肩で息をし、先程までの怯えた目から一転、憤怒や憎悪などの激情が籠った目でクリスを鋭く睨み付ける。

 

 

「どうしていつも……いつもいつもいつもいつも!どうしていつもあんたばっかり!あんたばっかり……!!」

 

「…………」

 

 

目尻に涙を滲ませ、激情に身を任せてクリスの胸倉を掴む新野。クリスはそれに抵抗せず無言でされるがまま、表情1つ変えずにじっと目を合わせる。

 

 

「あんたがいなけりゃこんな事にはならなかった!私がどれだけ努力して必死に笑顔を振り撒いても!みーんなアイアイアイアイ叫んで!結局どこまで行ってもアイばっかり!!」

 

「…………そんな事は」

 

「黙れ!あんたはいつもそうやって適当にはぐらかす!そう言われるこっちの気も知らないで、全く気にも止めず振る舞って!あんたのそういう所がずっとずっとずっとずぅぅ──っと!気に入らなかったのよ!!」

 

「…………」

 

 

今まで堰き止めていたドス黒い感情が濁流となって口から溢れ出す。1度出始めたら留まる事なく、次から次へと数多の暴言がクリスに向かって放たれる。

 

もはや今の新野に、目の前の人間がクリスである事など頭にない。アイとは別の人だから、アイに対する憎悪や嫉妬をぶつけても意味がないと判断できる冷静な思考も持ち合わせていない。

 

過去の偶像をクリスに重ね、ただ只管に叫び続けるだけ。その行為に人間的な理性はなく、まるで獣の如き絶叫である。

 

それでもクリスは、ずっと黙ったまま新野の憎悪を正面から受け止める。

 

 

「大っ嫌い!!あんたなんか……あんたなんか、もう1回死んじゃえば良いのに!!」

 

 

その言葉を吐いた直後、新野ははっと目を見開き、途端に冷静になった頭で先程自らが発した暴言を振り返る。

 

そして微かに身体を震わせながら、クリスの胸倉からそっと手を離して座り込んだ。

 

 

「ち、違っ……本当にそんなつもりで言ったわけじゃ……!」

 

 

その表情には後悔の念が含まれていたが、もう時すでに遅し。慌てて弁明しようとも、言ってしまった事を今更撤回するなど出来なかった。

 

結局何も言えず、また怯えた小動物のように俯く新野。そんな彼女へ向けて、無言だったクリスが口を開く。

 

 

 

 

 

「────ごめんね、()()

 

「…………えっ?」

 

 

その声がクリスの口から発せられた瞬間、新野は動きを止めた。見守っていたカミキも薄らと目を見開いており、驚きを隠し切れていない。

 

明らかに空気が変わった。

 

 

「あの頃からずっと……今でもそうして悩み続けていたんだね。()がいなくなってから何年も、何十年も」

 

 

「本当に馬鹿だなぁ私って」と呟きながら、新野の目の前に座る少女は自嘲気味に乾いた笑い声を漏らす。

 

その急激な変化について行けず、新野は戸惑う。それでもたった今浮かんだ疑問を恐る恐る口にした。

 

 

「────アイ?」

 

 

微かに聞き取れるその疑問に、クリス──否、アイははっきりと答えず新野に語りかける。

 

 

「私さ、本当はちゃんと気付いていたし、今でもしっかり覚えてるんだ。それでも皆が望むならって、その気持ちに気付かないふりをして、嘘に嘘を積み重ねて本当の自分を隠し続けて……それが結果的に良い方向へ転がらない事も何となく分かってたけど、ずっと見て見ぬふりを続けてきた」

 

「何を……言って……?」

 

 

突如始まったアイの独白に新野の手が震え出す。

 

 

「……ううん、本当は皆のためじゃない。いや、皆のためでもあるんだけど……やっぱり一番は、私自身のため。自分のために嘘を吐いて、自分のために、皆にとっての理想の偶像(アイドル)で在り続けた。だって────独りになるのは寂しかったから」

 

「…………」

 

「その途中で3人の子供を産んで、それからは1人じゃなくなって、最期は子供達のおかげで愛する事も愛される事も理解できた。結果的に死んじゃったけど、子供達を産んだ事に関しては全く後悔していない。むしろ良かったって感謝してる。

 けど……けどやっぱり、メンバーだった皆には今でも思うところがあってさ。だからもし叶うなら、1度皆と本音で話し合って────仲直りしたい」

 

 

そう締め括って独白を終えるアイ。

 

今のは彼女がアイドルだった頃、少なからず思っていた心の内の本音。ほんの一部に過ぎないが、彼女の口から赤裸々に語られた言葉は新野に確かな衝撃と動揺を齎した。

 

それでも彼女は目尻に涙を浮かべ、反論する。

 

 

「……何よ、それ」

 

 

呆然とした顔で、ぽつりと呟く。

 

 

「違う……こんなの違う。こんなのは『アイ』じゃない。私の中の『アイ』はこんな事言わない。あの子は私達の事なんか眼中になくて、私達の言葉程度では傷付かないし覚えてすらいない。本物の『アイ』なら『そんな事あったっけ?』って言って、いつも通り笑顔を振り撒くの。だってあの子はいつだって────最強で無敵のアイドルなんだから」

 

 

新野は頭を抱え、自らに言い聞かせるようにぶつぶつ言う。その様子は鬼気迫るもので、自分にとって都合の悪い現実から目を背けているようだった。

 

そして暫く逡巡した後、光の無い瞳を向けて乾いた笑みを浮かべる。

 

 

「……ははっ。一瞬本気で信じちゃったけど、今のでようやく目が覚めたわ。どうやらあなたも偽物だったってわけね。良かった、星野ルビーと一緒で。アイの真似して私の弱みを引き出そうとしたみたいだけど、本物の彼女はそんな事絶対に言わない。弱音なんて吐かないし、そもそも弱音を抱く事すらないの」

 

 

新野の心に迷いや動揺は消えていた。自身が抱くアイの偶像と、目の前のアイに似た少女を比較して、アイの偽物が吐いた偽りの言葉と断定したのだ。

 

その時彼女が見せた表情はどこか晴れやかで、とても安堵しているのが見て取れた。

 

 

────やっぱり偽物はどこまで行っても偽物。本物のアイはもういない。彼女を超える存在も二度と現れない。

 

 

アイの偶像を辛うじて保てた安心感と喜びを胸に、新野は立ち上がった。

 

 

「残念だけど、話はこれで終わりよ。あなたもアイに似た偽物と分かった以上、これ以上の会話は不要。じゃあ────」

 

 

じゃあね、星野クリス。

 

そう言って店から立ち去ろうとした時だった。

 

 

「……結成当初、メンバー4人の共同アカウントで作ったブログ、覚えてる?」

 

「……はっ?」

 

 

アイの偽物と断定したクリスの口から、予想だにしない言葉が出てきた。

 

B小町結成当初、アイ、ニノ、高峯、渡辺の4人で作成した共同アカウントのブログ。まだ仲が良かった頃の彼女達が思い付きで作成したそれは、B小町の古参ファンすら存在を知る者は滅多にいない。

 

記事数は1桁、総アクセス数も300程度といえば、どれだけ稀有な物かは想像に難くない。正に幻のブログである。

 

とはいえ、そのブログはとうに削除されており、いくら探し回ってももうどこにも存在しない。それがどうして存在を知るはずもないクリスの口から出てきたのか。まさかと思う心の声を胸に、新野は再び彼女に意識を向けた。

 

 

「この前、あのブログがどうなったのか気になって久々に確かめてみたの。そしたらブログそのものが削除されててびっくりしちゃってさ。多分、3人の内の誰かが消したんだとは思うけど、その時に()()()()()()()()()()()()()()を見たはずなの。

 ……ねぇニノ、ひょっとしてブログを削除したのはニノだったりしない?もしそうなら()()()()をあなたは見た────」

 

「あれは違うっ!!あんなのは『アイ』じゃないっ!!」

 

 

アイの言葉を再び怒号で掻き消す新野。これ以上彼女に喋らせるわけにはいかなかった。

 

このままでは最強で無敵のアイの偶像が今度こそ崩壊してしまう。見たくなかった真実を嫌でも見てしまうようになる。だから今ここで、何としても止めなければならない。

 

そんな思いで新野は力一杯叫ぶ。否、それはもはや獣の咆哮に近しいものだった。

 

 

「あんな弱々しいアイは『アイ』じゃない!あんたは弱音なんか吐かない!仲間に縋る事もない!だってあんたはいつだって……いつだって……!!」

 

 

しかし、いくら叫んだところでもう遅い。現に今の彼女の怒号はただ声が大きいだけで、先程のような激しい怒りや憎悪は一切感じられない。精一杯の虚勢を張っているに過ぎない。

 

新野の精神は摩耗し、とっくに限界を迎えていた。

 

故に────

 

 

「……ねぇ、ニノ」

 

「……何よ」

 

 

言葉を詰まらせ、止めどなく涙を零し続ける新野の手を、アイがそっと寄り添うように優しく握り締める。

 

 

「もう止めよう、こんな事。いつまでも子供みたいにいがみ合って、こんな時ですら本音を話さないまますれ違ってさ。これ以上はお互い辛くて苦しいだけだよ。仲直りできるなら私、何度でも皆に謝る。迷惑ばかりかけてごめんなさいって、謝るから。

 だから、もう止めよう…………お願いします」

 

 

新野の目を真っ直ぐ見つめ、同様に涙ぐみながら再度和解を提案するアイ。

 

 

「お願い……します……」

 

 

もう1度、今度は頭を下げて懇願する。

 

先程までの新野なら、アイの偶像を壊さぬために激情に身を任せて拒絶していただろう。だが、今の彼女は精神を削ってまで叫び散らし、身も心もすり減らした直後。

 

認めたくないという思いは未だあれど、それを行動に移す精神的な余裕も体力も残っていない。要は疲れていた。

 

そう、疲れたのだ。そして、蓄積した疲労を1度自覚してしまった人の心は非常に脆く、折れやすい。

 

 

「…………」

 

 

どれくらい経っただろうか。

 

アイが頭を下げて暫くした後、新野は力無くその場に座り込んだ。

 

 

「もう良い、疲れた……後はあんたの好きにして」

 

 

憔悴しきった新野の口から漏れ出た言葉は、酷く小さく、とても弱々しかった。

 

その時に見せた彼女の顔は、偶像を崇拝する信者のそれではなく、どこにでもいる、ただ1人の疲れ果てた女性のものだった。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

それから数十分後、クリスはカミキ達と別れ帰路に就いていた。

 

 

『いやぁ、思ったより良い感じに話が進んだね』

 

 

中にいるアイが深い溜め息を吐く。

 

とても緊張していたのか、先程の新野とのやり取りを思い返してはほっと胸を撫で下ろす。

 

 

「そうだね。一時はどうなるかと思ったけど、結果的に丸く収まったのは良かったよ」

 

『それもこれもクリスのおかげだよ。ありがとね』

 

「どういたしまして」

 

 

アイからの感謝の言葉を受けて、得意げに胸を張るクリス。

 

 

「確か、偽のゴールで緩急つける……だっけ?」

 

「うん、そうだよ」

 

 

先程の新野との会話の流れは、クリスが考え誘導したものだった。

 

新野のように感情の波が激しく警戒心が高い相手は、心の弱みを引き出して動揺を誘いつつ、偽のゴールを設けて緩急をつけるやり方が有効。

 

まずは相手を煽ってある程度精神を削ってから、1度アイの偽物だという確信を持たせて安心させる。その直後にメンバー内でしか知り得ない情報を開示し、更なる動揺と混乱を引き起こしてから、残った精神と体力を一気に削る。

 

そうして弱りきった新野の心へ寄り添うように、アイの本音を一摘みすればあら不思議。簡単に心が折れて、こちらの要求をすんなり受け入れるようになるという寸法である。

 

大雑把に言ってしまえばこのような作戦で、新野と話し始めた時から既に誘導は始まっていた。

 

 

『こわー 』

 

「ふふっ、こういうのを策士って呼ぶんだよママ」

 

『でもずっとニノを騙してたみたいでちょっと複雑な気分かも』

 

「そんな事もないんじゃない?だってママの言葉自体に嘘偽りはなかったんでしょ?なら大丈夫だよ」

 

『そうかな……そうかも』

 

「新野さんと連絡先も交換したし、これでいつでも電話1つで会いに行けるね」

 

『いやぁ、正直びっくりしたね。まさかあんなにもあっさり交換してくれるとは思ってなかったから』

 

 

アイを崇拝する新野の心をへし折った後、クリスは連絡先の交換を彼女に提案した。

 

最初こそたじろぐ新野だったが、好きにしろと言った手前で断るのは気まずかったのか、はたまた疲れて判断力が鈍っていたのか、あっさりと交換に応じてくれた。

 

クリスの言う通り、これでいつでも新野と連絡を取り合えるようになった。

 

 

『にしても大丈夫かな?』

 

「何が?」

 

『いやほら、ニノと仲直りするために途中からクリスと交代したじゃん?で、ヒカルには案の定私の存在がバレたじゃん。一応釘は刺しておいたけど、私の忠告をちゃんと守ってくれるかなって……』

 

「あー……」

 

 

新野と連絡先を交換して店を出た後、最後まで2人のやり取りを静観していたカミキがこっそり話しかけてきた。

 

 

『最後につかぬ事をお聞きしますが、今のあなたはクリスさんではなく、本当にアイで────』

 

『ヒカル、それ以上は駄目。もう話は終わったんだから。今の私は星野クリスだよ。それから、今日の事は他言無用でお願いね』

 

『…………ええ、それもそうですね。分かりました、()()()()()のご要望とあらば、素直に聞き入れましょう』

 

『それと────ちゃんと見てるから。逃げちゃ駄目だよ』

 

『ええ、肝に銘じておきます』

 

 

このようなやり取りがあり、今に至る。

 

その時のカミキの表情はどこか嬉しそうで、余裕さえ感じられる柔らかいものだった。過去に手を下した相手が現世に存在しているとなれば、普通なら平常心を保てないにもかかわらず、彼は違った。

 

その真意は本人に聞かないと分からない。分からないが、とりあえず忠告は守ってくれるだろうという妙な確信がクリスにはあった。

 

 

「まぁ大丈夫でしょ。パパならちゃんと守ってくれるって」

 

『えー、そうかなぁ?あーでも、仮にバラしたところで誰が信じるのって話か』

 

「それに、今度姉さん達にはバラすんだからあんま大差ないでしょ。早いか遅いかの違いだけだと思うよ」

 

『それもそっか』

 

 

一抹の不安は残るものの、何とかなるだろうと前向きに考えるクリスとアイ。

 

買い物袋をぶら下げながら、夕暮れ時の路地裏を通って家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────それから数週間後の8月末、映画『15年の嘘』の撮影終了。

 

そして9月、日本国内某所にて。

 

 

「凄惨な現場です。覚悟は良いですか、虎杖君?」

 

「おう!」

 

 

虎杖悠仁、不倶戴天の敵と相対する。

 

 

 




最初はもっと苦味の残る展開にするはずだったけど、気付いたらちょっとだけ良い感じの方向に進んじゃった。そして推しの子最新話で時系列が判明したせいで今後の展開が……マジでどうしよ。

ちなみに幼魚と逆罰編はサクッと終わらせて交流会編に移る予定です。
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