呪術の子   作:メインクーン

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前回:
新野「もう良いわ……アイの好きにして」

アイ「仲直りしよ、ニノ」

カミキ「ふふ、お久しぶりですねアイ」

クリス「上手くいって良かったね、ママ」



第七章
不幸中の幸い


──20XX年9月、高専地下にて。

 

 

「というわけで、脱サラ呪術師の七海建人でーす!」

 

「その言い方止めてください」

 

 

地下空間に、意気揚々と七海を紹介する五条の声とそれを諌める七海の平坦な声が響く。肩を組んで仲が良さそうな雰囲気を醸し出しているが、それは五条からの一方的なもので、七海の方は少しうんざりした様子で溜め息を吐いた。

 

そんな正反対の2人を前に、虎杖はどう反応すればいいか迷っていた。

 

 

「呪術師は変な奴多いけど、こいつは会社に勤めてただけあってしっかりしてるんだよね」

 

「他の方もあなたには言われたくないでしょうね」

 

「脱サラ……何で初めから呪術師になんなかったんすか?」

 

 

呪術師にしては珍しい、七海の特異な経歴を聞いて虎杖は首を傾げる。

 

殆どの呪術師は高専卒業後、そのまま高専所属の術師になるかフリーの術師として活動するかに分かれる。五条のように高専の教師になる者もいる。そのどれにも進まず、自ら戦闘とは無縁の社会へ飛び込んだ七海の行動に、虎杖は純粋に疑問を抱いた。

 

だが、七海は彼の質問に答えない。

 

 

「まずは挨拶でしょう。初めまして虎杖君」

 

「あ、はい。初めまして」

 

 

代わりに、初対面の人に対して誰もが行う挨拶の言葉を口にする。その際、どこにでもいる一般的な社会人と同様に姿勢を正してお辞儀する事も忘れない。その堅い態度に意表を突かれたのか、虎杖も反射的に七海と同じくお辞儀する。

 

そうして互いに挨拶を済ませると、七海は言った。

 

 

「私が高専で学び気付いた事は、呪術師はクソという事です」

 

「…………」

 

 

先程までの会話の流れからは想像できない予想外の発言に、虎杖の動きが一瞬止まる。

 

そんな彼の事などお構いなしに、七海は更に続けて言う。

 

 

「そして一般企業で働き気付いた事は、労働はクソという事です」

 

「そうなの!?」

 

 

これまた予想外の発言に、今度は思わず驚愕の声を上げる虎杖。

 

 

「同じクソならより適正のある方を。出戻った理由なんてそんなもんです」

 

「暗いね」

 

「ねー」

 

 

このようなやり取りを終えた後、虎杖と七海は早速任務に取り掛かった。

 

 

 

 

 

──しかし、現場で2人が見たものは想像以上に凄惨で醜悪だった。

 

 

『人間だよ。いや、元人間と言った方が良いかな』

 

「……やはり、そうでしたか」

 

 

電話の向こうから聞こえてくる家入の声が、やけに冷たく耳に響く。

 

現場に向かった七海と虎杖は、その先で2体の呪霊と遭遇した。そこで七海の指導を受けながら応戦し、危なげなく勝利したのは良いものの、ある問題が発覚する。

 

それは戦っていた呪霊と思しき化け物が、実は何者かによって改造された元人間だったかもしれないという可能性。本来写真には残らない呪霊の姿が何故か写っていた事で、その衝撃的な真実が判明した。

 

そして先程、倒した2体の異形の検死を高専にいる家入へ依頼した結果、本当に元人間であった事が確定。虎杖としては最後まで認めたくない真実だったが、現実はどうしようもなく非情である。淡々と告げられた検死結果は、心優しい虎杖にはくるものがあった。

 

 

『虎杖、1つお前に言っておく。こいつらの死因はざっくり言うと、身体を改造させられた事によるショック死だ。君が殺したんじゃない。その辺履き違えるなよ』

 

「はい……」

 

 

少々ぶっきらぼうな言い草だが、家入なりに虎杖を気遣っているのが分かる言葉であった。

 

それを聞いて罪悪感が完全に無くなったわけではないが、心に圧し掛かった重りがすうっと軽くなったのを虎杖は確かに感じた。

 

 

『……まぁ、もう少し適当にバラシて調べ終えたら、クリス呼んで人間だった時の状態に巻き戻してもらうよう頼んでおくよ。末端から脳の中心まで弄られてるが、あの子の術式ならそれでも何とかなるだろう』

 

「分かりました。それでは、後処理はそちらの方でよろしくお願いします」

 

「そっか……クリス先輩にありがとうって伝えといて」

 

『ああ、しっかり伝えておくよ』

 

 

そこで通話は終わり、室内は重苦しい空気で静まり返った。

 

 

「……どっちもさ、俺にとっては同じ重さの他人の死だ。それでもこれは、趣味が悪すぎだろ」

 

(この子は他人のために本気で怒れるのだな)

 

 

拳を力強く握り締め、険しい表情で怒りを露わにする虎杖を見て、七海は彼に対する人物像と評価を今一度改めるのであった。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

──それから数時間後。

 

 

「なるほど、それで僕が呼ばれたってわけですね」

 

「ああ、忙しい中で悪いが頼むよ」

 

「任せてください」

 

 

現在クリスは家入に呼び出され、化け物になった改造人間の死体の前に立っていた。凄惨な死体をまじまじと眺めるが、数秒してわざとらしくオエッと嘔吐くと、溜め息を吐いて肩を竦める。

 

 

「これマジで言ってます?話には聞いてましたけど、中々ヤバい事されてますね。ここまで身体をぐちゃぐちゃにされた人を見るのは久しぶりですよ。犯人えげつないですね」

 

 

顔を顰め、不快な気持ちを包み隠さず露わにする。そんなクリスを横目に、家入は改造人間に視線を戻す。

 

 

「ああ、今までに見てきた死体と比べて明らかに異常だ……で、どうだ?お前の術式で戻せそうか?」

 

「とりあえずやってみます」

 

 

家入に促され、クリスは改造人間の1人に手を置いて術式を発動した。

 

反転術式で生成された正のエネルギーを生得術式に流し込むと、身体の内側へ引っ張られるような感覚と共に時間が徐々に巻き戻る。

 

 

「……終わりました。こんな感じで良いですか?」

 

「十分だ、ここまでやってくれたら御の字だよ」

 

「それなら良かったです」

 

 

数十秒後、人ならざる異形の化け物は人間の姿に巻き戻り、土気色に染まったその肌が天井の照明に照らされる。

 

元に戻った2人はどこにでもいそうな一般の男性と女性であったが、相当苦しめられたのだろう。彼らの死に顔は酷く歪んでいた。

 

薄暗い雰囲気の中、凄惨な死体を見てクリスが呟く。

 

 

「……まぁ、呪術師やっていればこういうのも見ますし、今更動揺する事もありません。それでもこれは……ねぇ?」

 

「七海と虎杖には頑張ってもらわないとな」

 

「五条先生は今海外ですし、僕が代わりに2人の手伝いに行った方が良いですかね?」

 

「お前はお前で仕事が立て込んでるから無理だろ。そもそもお前が一緒にいたら虎杖の訓練にならないし、あいつの生存が上にバレるリスクが高くなる。今のお前は良くも悪くも目立つからな」

 

「うっ!?それは、その……」

 

 

少し心配になって虎杖達の手伝いに行こうと考えるクリスだったが、家入に現実を突き付けられ言葉に詰まってしまう。

 

ここ数日、何故か急に彼女宛ての任務の数が倍増したので、文字通り日本全国を飛び回って呪霊の祓除に赴いている。少なくとも今週一杯は虎杖達の援護に回れる余裕はなく、出来て今のように家入の仕事の手伝い程度が限界である。

 

 

「そう心配するなよ。今の虎杖は簡単にやられるほど弱くないし、七海もいるからな。それに、万が一のための()()はちゃんと渡してきたんだろ?なら後は信じてやれ」

 

「はぁ……悠仁君、大丈夫かなぁ」

 

 

結局クリスはその場で残念そうに項垂れ、虎杖と七海が無事に任務を終えられるようにと願った。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

──20XX年9月某日、里桜高校校内にて。

 

 

「そんな……お前の母ちゃんが……」

 

「うん……」

 

 

この日、虎杖は激しい呪術戦を繰り広げた同級の友人、吉野順平の暴走を止めていた。

 

元は改造人間の事件の聞き込み調査のため、接触を図っただけだったが、映画の話題や吉野の母親との交流を通じて、いつの間にか友人としての信頼関係を築き上げた相手。

 

そんな順平がどういう経緯か、自身が通う里桜高校を突如襲撃し、生徒の1人を呪殺しようとした。その瞬間を目の当たりにした虎杖は、彼を止めるべく体を張って戦い……結果、勝利した。

 

そして、何故人を呪い殺そうとしたのか。その理由を知るべく、虎杖は順平の心に寄り添い、事の経緯を聞いた。

 

心優しい順平の母親が、何者かによって唐突に呪い殺された事。そんな理不尽を自分達に差し向けてくる者に心当たりがあった事。自らに宿った呪いの力で、推定犯人と思しき者に復讐しようとしていた事。

 

そんな話を全て聞き終えた時、虎杖は言葉を失いそうになるも、何かを決意した様子で順平の瞳を真っ直ぐ見つめる。

 

 

「順平、高専に来いよ。いつもテンション高い先生とかバカみてぇに強い先輩とか、頼れる仲間が一杯いるんだ。皆で協力すれば、順平の母ちゃんを呪った奴もきっと見つかる。必ず報いを受けさせてやる。だから……一緒に戦おう」

 

「──ッ!!」

 

 

力強くも優しいその言葉に、順平は目を見開く。こんな自分にも心から寄り添い、手を差し伸べてくれる人がいる。その事実が堪らなく嬉しく、暗く淀んだ彼の心に明るい光が差し込んでくる。

 

虎杖の真っ直ぐな心に、順平の目頭が熱くなった。

 

 

 

 

 

────その背後から忍び寄る、悪意に満ちたドス黒い影が1つ。

 

 

 

 

 

(さて……そろそろ頃合いかな?)

 

 

2人のやり取りをずっと影から眺めていた継ぎ接ぎ顔の特級呪霊『真人』は、邪悪な笑みを浮かべながら1歩ずつ静かに歩み寄り、2人の目の前に現れる。

 

底の見えない闇、軽薄さの裏に隠れたドス黒い殺意。表情から滲み出るそれらに、虎杖も目にした瞬間、真人への警戒心が急激に高まる。

 

 

「誰だ……?」

 

「え、真人さん……?」

 

 

一歩一歩近付く真人に警戒しつつも、順平を守れるように左腕で庇いながら後退る虎杖。

 

しかし、それでも突然の事態に対する困惑があったようで、彼がほんの僅かに見せた隙を真人は見逃さない。

 

 

「初めましてだね、宿儺の器」

 

「待って真人さん!!」

 

「──ッ!?」

 

 

一瞬の攻防。

 

真人が腕を振り上げた瞬間、彼の敵意に気付いた順平がそれを止めようと声を張り上げる。

 

それよりも速く、虎杖は焦る順平の表情を見て咄嗟に臨戦態勢に移り、真人からの攻撃に対応できるよう素早く身構えた。

 

更に速く、真人は変質させ巨大化した左腕を虎杖に向けて伸ばす。虎杖が態勢を整え切る前に行動した事で、彼が反応して回避する前に押し出し、背後の壁に叩き付けて拘束する事に成功する。

 

 

(馬鹿か俺は!継ぎ接ぎ顔の人型呪霊!ナナミンが言ってたまんまじゃねぇか!)

 

 

拘束され、身動きが取れなくなって漸く彼は自身の失態を恥じる。

 

真人との交戦経験がある七海から、容姿の特徴を事前に聞いていたにもかかわらず反応に遅れてしまった。これにより、真人の目の前に無防備となった順平だけが取り残される。

 

虎杖は力の限り叫んだ。

 

 

「逃げろ順平!こいつとどんな関係かは知らん!けど今は逃げてくれ!頼む!!」

 

 

順平の身の危険を察知し、彼を案じて発した心の声。しかし、緊急時だからといってその思いが届くとは限らない。

 

 

「虎杖君落ち着いて!真人さんは悪い人じゃ────悪い……人?」

 

 

虎杖を宥めようと発した自身の言葉に疑念を感じ、漸く今になって母親殺害の真相に気付いた順平。

 

そんな彼と真人は肩を組み、優しく落ち着いた声で囁くように最期の言葉を語りかける。

 

 

(どうする?どうする!?このままじゃ順平が!でもこの拘束から脱出する方法が……考えろ考えろ考えろ……!!)

 

 

順平と真人のやり取りを横目に、虎杖は拘束を解いて順平を助ける方法を必死に模索していた。しかし、自分の力だけでどうにかできる程、今の彼は強くない。

 

そう……彼の力だけならば。

 

 

(……そうだ、そういえば高専を出る前にクリス先輩から貰った物があったはず……)

 

 

虎杖は思い出した。任務に赴く前、クリスからとある物を貰っていた事を。

 

それは、七海と共に高専を出る前日────

 

 

『悠仁君、はいこれ』

 

『……何これ?御札?』

 

『そう、御札。正確には呪符って言って、それに呪力を込めれば君を呪いから守ってくれる効果が発動するよ』

 

『へぇー、そんな凄い効果が……でも何で俺に?』

 

『万が一の保険って所かな?だって悠仁君、呪霊に1回殺されかけてるし』

 

『そっか。でも大丈夫だよ先輩……とはまだ言い切れないけど、これに頼らなくても良いくらい強くなるから』

 

『ふふ、良いね。そう来なくっちゃ』

 

 

────このようなやり取りがあり、クリスからお助けアイテムの呪符を受け取った虎杖。

 

 

(確かポケットに突っ込んだまま……あった!これだ!)

 

 

辛うじて動かした手を徐にポケットに入れると、ガサガサと乾いた音と共に1枚の御札が取り出される。

 

おどろおどろしい書体でびっしりと漢字が書き込まれた、凄まじい禍々しさを放つ呪いの御札。

 

 

(頼む……今だけはどうか!)

 

 

肝心な時に、他者から貰った道具に頼らないといけない己の弱さを恥じながらも、握り締めた呪符にありったけの呪力を込めた。

 

その瞬間────

 

 

「順平って、君が馬鹿にしている人間の、その次くらいには馬鹿だから。だから死ぬんだよ……無為転ぺ────はっ?」

 

 

クリスが虎杖に渡した、呪いから身を守る呪符。

 

その効果、呪力を込める事で攻撃してきた呪霊に対し、カウンターで呪符に刻まれたクリスの術式が発動する。発動する術式効果は、予めクリスがプログラムした単一の物のみだが、それでも呪いから一時的に身を守るには十分。

 

以前、片寄ゆらや黒川あかね達に送った呪符と同系統の物であり、今回虎杖が所持している呪符は緊急脱出用の瞬間移動ではなく、カウンターで『望速・鋲』が発動する。

 

故に────

 

 

「だぁああああああああーっっ!!」

 

「ぐぶぅっ!?」

 

 

巨大化した真人の手が蜂の巣にされ、それによって出来た僅かな緩みから、虎杖は無理矢理拘束を破って真人に殴り掛かった。

 

突然訳も分からず拘束を解かれた真人は、呆気に取られたせいで虎杖の攻撃に対し反応が遅れ、彼の全力の殴打をモロに食らってしまう。

 

真人は殴り飛ばされ、順平の魂の形を変える途中で強制的に術式を遮断させられた。

 

 

「大丈夫か順平!?怪我は……」

 

「う、ぐっ……がぁああああああああっっ!!」

 

「順平!?おい、しっかりしろ順平!ちくしょう、何だよこれ!?順平の腕が……!」

 

 

腹の底から出た叫び声が、物静かな校舎内に響き渡る。

 

辛うじて手遅れになる前に助かったが、それでも真人の術式の影響をその身に受けてしまった順平。彼の肉体は右腕から一部胴体まで青黒く変色し、化け物のように大きく変形、肥大化していた。

 

魂の形を無理矢理変えられ、それに伴って急激に変形した肉体。それによる堪え難い激痛が順平を容赦なく襲う。

 

 

「宿儺ぁああああああああっっ!!」

 

「何だ小僧?」

 

 

手遅れにならずとも、苦しみに叫ぶ友を見て見ぬふりなど出来ない。

 

藁にも縋る思いで宿儺を呼んだ虎杖は、順平を介抱しながら必死に叫んだ。

 

 

「何でもする!俺の事は好きにして良い!だから俺の心臓を治した時みたいに、順平を治してくれ!」

 

「断る」

 

 

即答だった。

 

虎杖の必死の要求に対し、宿儺はやや食い気味にそれを拒否した。

 

その反応はまるで面白くない映画を延々と見続けた後のようで、一つ大きな溜め息を吐いた後、気怠げな目を虎杖に向けて端的に言い放つ。

 

 

「つまらん、自分でどうにかしろ」

 

「て、てめぇ……!」

 

 

あっさり見捨てた宿儺の無情な態度に虎杖が声を荒らげるも、宿儺はそんな彼を一瞥した後に再び身体の内に沈み、全く反応を示さなくなった。

 

 

「う、ううっ……ぅ、ぁ……」

 

「……順平?」

 

 

その間に、腕を変形させられた痛みに堪えきれなくなった順平が、遂に絶叫するのを止めて意識を手放した。

 

先程までの反響が嘘のように静まり返り、死んだようにピクリとも動かなくなった順平を前に暫し茫然と立ち尽くす虎杖。

 

真人は距離を保ったまま、何もせずその様子をじっと眺めていた。

 

 

(いやー、びっくりしたね。まさか虎杖悠仁が強引に拘束を破って止めに来るとは。誰の差し入れか知らないけど、あんなお助けアイテムがあるとか聞いてないって。順平ももう役に立たなそうだし、何もかも中途半端でつまんないなぁ……それにしても)

 

 

あと少しの所で自分の思い描いた通りに事が進まず落胆するも、すぐに意識を切り替え、先程虎杖に殴られた頬をそっと撫でる。

 

 

(今さっきの攻撃……俺の魂の形ごと殴られた。おかげで鼻血が止まらないし、頬も結構ヒリヒリして痛い。

 魂の輪郭を知覚していない限り、俺への攻撃は意味がない……けど虎杖悠仁は宿儺の器。自分以外の魂が同じ肉体に存在してるから無意識に掴んだんだろう、魂の輪郭を。つまりこいつは……俺の唯一の天敵でもある。厄介だね)

 

 

虎杖悠仁が自身にとって初めての天敵と理解し、真人は彼に対する警戒度を一気に引き上げる。

 

元々は彼の内に眠る宿儺に対し、完全復活を促すための交渉を行う予定だった。だが、それも順平が助かった事で計画の前提が崩れたため、かなり面倒臭い状況に陥ってしまった。

 

今から当初の目的を果たすためには、虎杖との戦いに打ち勝った後、自身の術式(無為転変)で宿儺の魂を直接呼び起こす必要がある。

 

しかしそれは、ほんの一歩間違えれば一瞬で祓われる可能性がある危険な策。今の虎杖に後れを取る心配は無いが、思っていたよりも不利な状況下である事には違いなかった。

 

あーあ、それもこれも虎杖悠仁が持ってたお助けアイテムのせいで全てが狂っちゃった。誰だよ、あんなもん持たせた奴。もしいつか出会ったら、そいつの魂の形変えて一生駒として扱き使ってやるよ。尊厳も自由も全て奪って、徹底的に嬲り尽くしてやるからな。

 

真人は虎杖と順平を間接的に助けた謎の相手に、そんな残酷で醜悪な感情を抱くのであった。

 

 

「────あ゛ぁあ゛あ゛あ゛っ!!」

 

「おっと!残念、二度は食らわないよ」

 

 

あれこれ考えている最中、虎杖が再び雄叫びを上げながら全力で真人に殴りかかった。

 

しかし、流石に同じ攻撃を何度も食らう真人ではなく、今度は後ろに飛んであっさりと躱した。

 

 

「……ぶっ殺してやる」

 

「殺す?祓うの間違いだろ、呪術師」

 

 

濁流の様に激しく濁りきった虎杖の殺意を前に、嘲笑が入り混じった真人の返答が静かな校舎内に反響する。

 

こうして長きに渡る2人の因縁の戦い、その初戦が幕を開けた。

 

 

 




※その後の展開

ご機嫌斜めな宿儺「小僧を嗤おうにも海月の餓鬼が死んでいない以上、後で星野クリスに元通りにされて喜ぶ姿が想像できる。面白くないし不愉快だ。はぁー……小僧、お前は本当につまらんな」

超ボロボロの真人「順平は役に立たなかったし、虎杖悠仁の魂は折れなかったし、宿儺に触れたら初手でいきなり斬られたし……何とか逃げ切れたけどもう散々。領域展開のイメージ掴めただけまだマシか?1回練習すれば出来そうな気がするし。いやでもなぁ……あーもう、やっぱ今日は厄日だよ!」

90徹目のクリス「順平君の怪我なら僕に任せて、一瞬で治してあげるよ!こんな感じでほら……ひゅーっとやってひょい」

困惑を隠せない順平「あれ、治ってる!?」

大号泣の虎杖「じゅーんぺーい!!」

後方保護者面の七海「良かったですね、虎杖君」


吉野順平、呪術高専編入決定!!
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