呪術の子   作:メインクーン

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前回:
クリス「転校生の吉野順平君でーす!」

順平「よ、よろしくお願いします」

五条「故人の虎杖悠仁君と星野アイさんでーす!」

虎杖&アイ「はい!おっぱっぴー!」

ルビー「ママの馬鹿ぁ……!」



京都姉妹校交流会⑤

『えー、それでは姉妹校交流会……スタァートォ!!』

 

『おい五条!お前はもっと先輩を敬えー!!』

 

 

柱に取り付けられたスピーカーから2人の騒がしい声が響き渡る。

 

先輩を適当に弄って遊ぶ五条と、良い様に揶揄われて憤慨する歌姫のやり取りには、聞いている生徒達が揃って溜め息を吐く程だ。何とも締まらない状況だが、そんなぐだぐだな中で戦いの火蓋は切って落とされた。

 

開始の合図が出された瞬間、戦場となる森の中に向かって一斉に駆け出す虎杖達。

 

その中にクリスの姿は何処にもない。

 

 

「クリス先輩どこにいるかな?」

 

「知らんが、まぁその内どっかで会うだろ」

 

「それよりも今は東堂だ。あいつは確実に1人で突っ込んで来る」

 

 

虎杖の呟きにパンダと真希が淡々と答える。

 

東堂の動向に警戒しつつ、クリスの探索も欠かさない。一体どうしてこのような事になっているのか。

 

 

「まさかクリス先輩が同じチームにならないなんて思いませんでしたね」

 

「しゃけ」

 

「お邪魔虫ってどういう事っていうね。例年通りなら私らと一緒のチームでしょ」

 

「そういう文句は五条先生に言ってくれ。まぁそれだけクリス先輩が強いって事だ」

 

 

釘崎の愚痴を受け流す伏黒だったが、それでも今回の異例に思うところがあったのか、面倒臭そうに溜め息を一つ吐く。

 

それもこれも全ては五条が原因である。

 

 

────数時間前

 

 

「えっ?クリス先輩、交流会に参加しないの!?」

 

「うん、今年は東京校のチームとしては参加しないよ」

 

「そりゃまたなんで?」

 

「今回の交流戦、悠仁君と順平君を入れたらこっちが2人多くなるでしょ?それだと不公平だから、2人を入れる代わりに僕が抜けるって事になったの」

 

 

虎杖達の疑問にクリスが端的に答える。理屈は分かるが、例年の決まりを破るやり方に納得はいかない。

 

 

「いや、交流戦は本来2年生から参加なんだし、どっちも不参加でいいだろ。ぶっちゃけこいつら2人はイレギュラーで、参加しようがしまいが困らねぇしよ」

 

「ちょっと真希ちゃん、そんな酷い事言わないで。折角の機会なんだし1年の皆にも参加させてあげようよ」

 

「つーか誰だよ、そんな事言い出したやつ。まぁ大体想像は付くけど……」

 

「はーい僕だよ!皆大好き五条先生だよ!」

 

「うわやっぱり」

 

「こいつ自分が皆から好かれてると勘違いしてるぞ。鏡見せた方が良くね?」

 

「パンダ先輩、この人にそんな事しても意味ないですよ。変に調子乗るだけです」

 

 

五条が自ら名乗りを上げた瞬間、東京校の生徒達が一斉に眉を顰めるが、本人は一切気にも止めず喋り出す。

 

 

「昨年の交流会でクリスが普通に参加したらゲームバランス崩れるのは分かってたし、そんな在り来りな展開は面白くないでしょ?やっぱ競い合うならヒリつきが欲しい所だよね」

 

「それでバランス保つためにクリス先輩外して1年を更に2人追加ってか?それ逆に私らの負担がデカくなるだろ。それに京都校の奴らがそれで納得すんのかよ。完全に舐められてるとしか思われねぇぞ」

 

「良いじゃん、それだけ君達を高く評価してるって事だよ」

 

 

体のいい事を言って真希の反論をのらりくらりと躱す五条。それでも人数の差という問題は残っているが、それも大丈夫だと五条は言う。

 

 

「今年の東京校は1年全員参加してもらうけど、それは京都校の方も同じ。年に1度の大事なイベントに1年は参加できないってやっぱ不公平だからね。勿論人数合わせのためでもあるけど」

 

「それで俺もここに連れて来られたってわけですか!?」

 

 

五条の説明を聞いて驚いた声を上げるのは、京都校に通う1年の新田(あらた)

 

数日前、五条から1年も全員連れて来るように言われたと歌姫から伝えられた新田はずっと疑問に思っていた。何で1年の俺まで交流会に行くんですか?今年は京都校の方が人数多いって聞きましたけど、ひょっとして先輩らの身に何かあったんですか?ちょっと心配やなぁ……。

 

そんな疑問と不安は、たった今五条の説明により解消された。

 

いやちょっと待てください。ここまで来た以上、このまま交流会に参加するのは何となく分かってましたけど、まさかこっちのチームの人数確保のためとは思いませんって。どうなってるんですかこれ?というか向こうの1番上の先輩は一緒に戦わないんですね。いや俺としてはめちゃめちゃ助かりますけども。

 

心の中でそんなツッコミを入れる新田だった。

 

 

「で、クリス先輩は結局どうなるんですか?まさかこのまま観戦するってわけではありませんよね」

 

「よくぞ聞いてくれました恵君!今年の僕はね……皆のお邪魔虫だよ!」

 

 

皆が一斉に首を傾げる。ちょっと何言ってるのか分からない、そんな愚痴が聞こえてきそうである。

 

 

「……お邪魔虫?お邪魔虫って何?」

 

「それは交流会が始まってからのお楽しみ。それまで僕は皆と別行動だから」

 

「えぇー……」

 

「それじゃあ皆、交流会楽しもうねー!」

 

 

虎杖の質問にも碌に答えず、クリスはそそくさとその場を離れて行った。

 

 

────という事があり、今に至る。

 

 

「なーんか嫌な予感がするんだよなぁ……」

 

「心配すんな、あの馬鹿2人のやらかしは今に始まった事じゃない」

 

「全然フォローになってねえ……」

 

 

すかさず入ったパンダのフォローは、虎杖の不安を解消するには至らず、むしろ加速させるだけだった。

 

そうこうしながら森の奥へ走っていくと、視線の先に蠢く怪しい影を発見。

 

呪霊────森の中に解き放たれた呪霊の一体だ。予め複数放たれた3級呪霊に、その中に一体だけ存在する2級呪霊。2級呪霊を倒せば勝利となるが、どちらのチームも倒せなかった場合は他の呪霊を祓った数で勝敗を決めるルールとなっている。

 

今目の前に現れたのは3級、はっきり言って弱い。だが倒しておくに越した事はない。

 

 

「あ、呪霊」

 

「雑魚だな」

 

 

全員気付いたようで、誰が祓うか決めようとした。

 

その瞬間だった。

 

 

「よおぉぉーし!!全員いるな!!纏めてかかって来い!!」

 

「おらぁっ!!」

 

 

予想通り東堂が単独で奇襲を仕掛けてきた。

 

しかし来ると分かっていた以上、東京校の生徒達の対応は素早く、いの一番に虎杖が強烈な膝蹴りを東堂の顔面にお見舞いする。

 

 

「よし散れ!」

 

 

その間に残りの生徒達は一斉に散開し、各自森の奥へと走り去って行った。

 

残ったのは虎杖と東堂の2人だけ。

 

 

「良いスピードだ」

 

(マジか?結構良いの入ったろ)

 

 

虎杖は内心驚愕した。確実に決まったと思った膝蹴りを顔面に受けてなお、全く堪えていない東堂のタフネスに。負ける気は全然無かったが、不敵に笑う相手の底知れ無さに肝を冷やす自分がいた。

 

そして、今の一撃で東堂のボルテージは更に上がった。拳を固く握り締め、徐に振り上げる。

 

 

「お返しだ1年、死ぬ気で守れ!」

 

「がっ……!?」

 

 

瞬間、腕から伝わる強烈な衝撃と痛みに虎杖はゾッとした。

 

反撃として繰り出された東堂の拳を、今確かに腕を交差して防御した。そのはずだ。そのはずなのに何だ、この威力は?腕はちゃんと残ってるよな?そう思い、咄嗟に自身の腕を確認せざるを得なかった。

 

その隙を与えてくれる東堂ではない。

 

 

「────ッ!?」

 

 

間髪入れず、虎杖の頭を何度も踏みつける。呻き声を上げようとも、辺りに血が飛び散ろうとも、攻撃の手を緩めることはない。

 

背後の木にもたれ掛かるように倒れた虎杖に、ここから隙を見て脱出する手段がある訳もなく、やがて呻き声すら上げず沈黙した。

 

それに気付いた東堂は攻撃を止め、酷く残念そうな表情を虎杖に向けた。もう終わりか……そんな落胆の声が聞こえてきそうである。

 

しかし、この程度で倒れてしまう虎杖ではない。

 

 

「痛ってぇな……」

 

「オイオイ、マジかお前」

 

 

完全に沈黙したはずの虎杖がもう意識を取り戻して立ち上がった。ここまで頑強な肉体と精神力を持つ術師はそういない。彼のあまりの立ち直りの速さに東堂は感嘆した。

 

集中的に頭を殴られ続けた虎杖は若干気が立っているが。

 

 

「人の頭バカスカ殴りやがって。これ以上馬鹿になったらどうすんだよ」

 

「心配するな。男の子は馬鹿なくらいが丁度いいと高田ちゃんが言っていた」

 

「誰だよ。アイドル興味ねーよ俺」

 

「じゃあ何でアイドルって分かるんだ?ちゃんと知ってるじゃないか」

 

「うっせーな、名前だけだよ。アイドルつったら精々B小町くらいしか詳しくねぇし」

 

「ほう、B小町を……なるほど、クリスの影響か。出来れば高田ちゃんの布教活動も一緒にしてほしいところだが……まぁ良い。お前、名前は?」

 

「虎杖悠仁」

 

 

虎杖の言い分を聞いて、東堂は何かを納得したように頷く。彼の予想できない言動に既に戸惑いつつある虎杖だったが、ここで更に困惑する質問が飛んできた。

 

 

「そうか。虎杖悠仁、お前に1つ聞きたい事がある。どんな女がタイプだ?」

 

「……?」

 

 

その質問に首を傾げる虎杖。

 

いや待って、何でこの状況で急にそんな質問が?どういう脈絡これ?ちょっと訳分かんねぇんだけど。そんな様々な疑問が浮かぶ。

 

 

「女のタイプ?何で今そんな事聞くんだよ?」

 

「気にするな、ただの品定めだ。早く答えろ」

 

「うーん……よく分かんねぇけど、強いて言うなら……(ケツ)身長(タッパ)のデカい女の子かな?ジェニファー・ローレンスとか」

 

「────ッ!!」

 

 

────瞬間、東堂の脳内に溢れ出した存在しない記憶。

 

同じ中学に通う中、共に笑い共に泣き、時々喧嘩しながらも互いを慰め合って共に学校生活を送った日々。同じ志を持つ同士のシスター(クリス)も加わり、3人一緒にラーメンを食べに行った帰り道。

 

3人で過ごした懐かしい日々を振り返り、東堂は感動のあまり感泣した。

 

 

「地元じゃ負け知らず……か」

 

「……?」

 

「どうやら俺達3人は『親友』のようだな」

 

「今名前聞いたのに!?てかもう1人誰だよ!?」

 

 

もう滅茶苦茶すぎてツッコミが追いつかなくなってきた。それでも東堂はどこ吹く風といった様子で、1人で妄想の世界に浸ってぶつぶつ呟いている。

 

この人マジで何なんだよ、どんな反応すれば良いんだ?何か分からんけど怖いって。そんな最初に対峙した時とは別の不安がじわりと広がる。

 

そうして東堂から一歩後退りした時だった。

 

 

「いたぞ、虎杖悠仁だ」

 

「────ッ!?」

 

 

気が付いた時にはもう遅かった。東堂の奇行に気を取られすぎて、他の京都校の生徒達が包囲している事を察知できなかった。

 

 

(やべぇ囲まれた!いつの間に!)

 

 

前方に真衣と加茂、背後に三輪とメカ丸が待ち構えていて逃げ道がない。そして上空には箒に跨って地上を偵察している西宮。加茂の後ろに救護係の新田も待機しているため、例え負傷してもすぐに戦線復帰できるように対策されている。

 

先程とは一転して一気に緊張が奔る中、真衣が無言で銃口を虎杖に向けて引き金を弾く。勿論1発だけではなく弾が切れるまで。

 

だが、連続で放たれた呪力を纏った銃弾は、虎杖の驚異的な身体能力と動体視力によって全てあっさり躱され地面に埋もれた。

 

 

「シン・陰流 簡易領域 ────『抜刀』!!」

 

 

簡易領域を利用した三輪のカウンター技「抜刀」も無言で難なく回避され、その刃は虎杖を掠めすらせず虚しく空を切った。躊躇いがあったとはいえ跳躍であっさり回避された事に少なくない衝撃を受ける三輪であった。

 

 

(今度は背後からビーム!?前は糸目の人が弓を……って、あれ?)

 

 

そうして必死に逃げ回る虎杖を逃がすまいと、メカ丸がビームを打とうと右手を突き出し、加茂が頭を穿とうと弓を構え……次から次へと猛攻を仕掛ける京都校生の勢いに、流石の虎杖も違和感を抱き始める。

 

先程から全員、やけにこちらを見る目が冷たい事に。それはまるで、呪霊を相手にしている時のような容赦のなさで……

 

 

(何か……こいつら全員、俺の事殺す気じゃね?)

 

 

嫌な予感が脳内に過る。考え得る中で最悪の可能性だが、どうやら的外れでもなさそうだった。不味い、逃げ道がない。どうやって切り抜ければ……そうして次の逃げの一手を必死に考える。

 

この状況に、蚊帳の外だった東堂は同じ京都校生達の行動を見兼ねて、頭を冷やしてもらうため術式を使おうとした。いくら楽巌寺学長の指示とはいえ、寄ってたかって1人を攻撃し、どさくさに紛れて暗殺するなど言語道断。そんなつまらない事をするなという思いからである。

 

────しかし状況は、1人の乱入者によって突如掻き乱される事になる

 

 

「あれ?皆こんな所でどうしたの?」

 

「────ッ!!」

 

「クリス先輩!?」

 

「なっ!?星野クリス!いつの間に……!」

 

 

緊張を壊す呑気な声に反応して振り向けば、そこには一体いつからいたのか、星野クリスが木の枝に腰掛け全員を見下ろしていた。

 

その首には去年の交流会でも着用していた術式を封印する首輪が嵌められている。まるで奴隷にでもなったのか?と疑いたくなるほど悪趣味な見た目のそれは、見る者の顔を色々な意味で引き攣らせる。

 

これを用意して18歳の女の子の首に嵌めた五条悟には、皆がただ只管ドン引きするばかりである。当のクリスは全く気にしてる様子はないが。

 

 

「京都校は全員いるね。で、東京校は悠仁君1人だけ?他の皆は?というかこれどういう状況?何で悠仁君1人だけを皆で取り囲んでるの?」

 

「それは……」

 

 

周囲を見渡したクリスが、その場に集った京都校生達に状況の説明を要求する。術式が封じられてなお色褪せない現代最強の威圧感に、チーム代表の加茂も言葉を詰まらせ思わずたじろいでしまう。

 

その姿を見て、若干呆れた様子ではぁと深い溜め息を吐くと、クリスは木の上で器用に立ち上がりつつ感情の矛を収める。

 

 

「まぁ良いや、何となく事情は分かるし。どうせ楽巌寺学長からの指示でしょ?あの爺さんも頭固いからねー。それはそれとして……」

 

 

そして、徐に空を見上げてぐっと身体を伸ばす。全身の筋肉を少しずつ丁寧に和らげるようにゆっくり、じっくりと。

 

次の瞬間────

 

 

「……えっ?」

 

「桃ちゃん、油断大敵」

 

 

空から全員の動きを偵察していた西宮の目の前に、突如としてクリスが現れた。

 

あまりに一瞬の出来事に西宮の思考は追いつかない。その隙を見逃さず、クリスの右足が西宮の脇腹に向かって振り払われた。

 

 

「がはっ!?」

 

 

瞬間、とてつもなく重い衝撃が西宮を襲う。呪力で肉体を強化しているにも関わらず、たった一撃で肋骨が数本へし折れる。肺から全ての空気が吐き出され、全身がミシミシと音を立てて悲鳴を上げる。

 

蹴られた勢いそのままに、西宮は痛みで声を上げる間もなく地面に叩き付けられた。

 

 

「西宮っ!!」

 

「桃っ!!」

 

「うっ……ぐううっ……」

 

 

立ち上がれない西宮に京都校の面々が急いで駆け寄る。中でも加茂と真衣が切羽詰まった様子で飛び出し、倒れ伏す西宮を抱きかかえる。

 

 

「西宮、しっかりしろ!」

 

「桃、大丈夫!?意識はある!?」

 

「新田、すぐに西宮の応急処置を!」

 

「は、はい!分かりました!」

 

 

重傷を負った西宮の治療を新田に任せ、加茂達は再び木の上に降り立ったクリスに鋭い視線と敵意を向ける。

 

 

「どういうつもりだ?何故いきなりこんな事を?」

 

「ゲームを始める前に言ったでしょ、僕は皆のお邪魔虫だって。それ以上でも以下でもないよ。そろそろアナウンスが入るんじゃない?」

 

「アナウンス?」

 

 

要領を得ないクリスの回答に加茂が訝しげな表情を浮かべていると、近くのスピーカーからピンポンと軽快なチャイムの音が耳に入った。

 

このタイミングでの放送に全員が動きを止めて静かに耳を傾けると、よく知った声が森中に響き渡る。

 

 

『えー、ここで皆さんにお知らせがありまーす。たった今エリア内にお邪魔虫が放たれましたー。お邪魔虫は首に術式封じの首輪を装着した状態でエリア内を徘徊中でーす。生徒達を見つけ次第、無差別に妨害してくるので気を付けてくださーい』

 

「五条先生……」

 

「お邪魔虫ってそういう……」

 

 

スピーカーから流れる五条のルール追加説明を聞いて、納得したり困惑したりと様々な反応を見せる面々。

 

しかし説明はまだ終わっていない。

 

 

『なお、現時点を以て2級呪霊ではなくこのお邪魔虫の討伐が団体戦の勝利条件となりまーす。どちらのチームも皆で力を合わせて頑張って倒してくださーい。繰り返しまーす……』

 

『ちょ、五条!?あんたいきなり何言ってんの!?私そんなの聞いてないんだけど!』

 

「「「「……えっ?」」」」

 

 

最後に明かされた情報に全員が動きを止めた。

 

突然のルール変更に一同は困惑を隠せない。東堂だけ笑顔で身体を震わせていたが、殆どの生徒達は青ざめた顔でゆっくりとクリスの方へ視線を向ける。

 

今からこの化け物を倒せだと?冗談じゃない。術式が使えないからって、倒しやすくなったわけじゃないんだぞ。さっき上空にいた西宮が一撃でやられた瞬間を見てないのか。これで喜ぶのは精々東堂くらいだろ。無茶振りにも程がある。

 

そんな愚痴を声高に叫びたい。しかしルールがそうなってしまった以上、いくら文句を言ったところで意味はない。そもそも呪術師を続けていれば、こういう理不尽な状況に出会すのはよくある話。否が応でもやるしかないのだ。

 

クリス(ラスボス)を前にした一同は彼女に向き直り、嫌々ながらも腹を括った。

 

 

 

 

 

一方その頃、少し離れた場所からこの知らせを聞いた東京校の生徒達はというと……

 

 

「聞いたか今の?」

 

「ああ、ばっちり聞こえたな。また何かやってんなぁあの2人」

 

「明太子」

 

 

真希の問いかけにパンダと狗巻が呆れた様子で返す。1人になった虎杖が京都校の奴らに命を狙われているかも……と思って引き返そうとしたタイミングで聞こえた急なお知らせ。予想通り今回もやらかした2人の馬鹿に頭を抱えたくなる思いだった。

 

 

「全くあの2人は……はぁ、余計面倒臭くなった」

 

「溜め息吐いたってしょうがないわよ伏黒。それに良いんじゃない?ようやくヒリついてきたし、面白くなってきたわ」

 

「釘崎、先に言っておく。クリス先輩の実力知ったらそんな能天気な事言えなくなるからな」

 

「確かに、僕もこっちに来てからクリス先輩と何度か手合わせしてみたけど、あの人何かもう滅茶苦茶過ぎて……正直やってられないなって思ったよ」

 

「分かってるわよ、あの人が馬鹿みたいに強い事は。それでも私はやるわ。とにかくさっさと向かいましょ……ほら!」

 

「いたっ!?痛いよ釘崎さん……」

 

「もう少し加減しろ」

 

 

溜め息を吐いて額に手を当てる伏黒と、クリスとの手合わせを思い出して思わず身震いする順平。どこか弱腰になっている2人の背中を強めに叩いて、釘崎は悠々と戦場に向かって歩き出す。

 

圧倒的な敵と戦わねばならない状況でも強気な姿勢を崩さない1年の気概に、真希達もにやりと不敵に笑って共に戦場へ向かう。

 

その道中、パンダが尋ねた。

 

 

「ところでよ、交流会(ゲーム)が始まってからいきなり重大なルール変更してくる五条先生(運営)ってどう思うよ?」

 

「控えめに言ってクソだと思う」

 

「「「それはそう」」」

 

「しゃけ」

 

「あはは……」

 

 

真希の容赦ない返答に、パンダ、伏黒、釘崎の声が重なる。狗巻も首を縦に振って皆と同調し、苦笑いを浮かべる順平も彼女の返答に対して特に反論する気はなかった。

 

 

 




数日後に呪術廻戦が終わり、推しの子もアニメがもうすぐ終了する。原作も何だか最終局面っぽいし、読んでた漫画が終わると空虚な気持ちになってしまう……南無。
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