呪術の子   作:メインクーン

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前回:
虎杖「えっ、クリス先輩だけ単独行動なの!?」

新田「人数合わせで俺も参加ですか!?」

クリス「今年は皆のお邪魔虫だよ!」

五条「ルール変更でクリスを倒したチームの勝利です。皆頑張ってくださーい」

一同「クソ運営が」



京都姉妹校交流会⑥

クリスがお邪魔虫として突如皆を攻撃し始め、五条のアナウンスで急遽彼女を倒すルールに変更されてからというもの、交流会の団体戦は大きく状況が変化していた。

 

何せ相手は五条悟に並ぶ現代最強の術師。幾ら首輪の効力で術式を封じられた状態とはいえ、呪力強化の質や結界術の技量等は生徒達の中でも群を抜く。唯一の反転術式持ちである事も脅威的だ。

 

両者の差は圧倒的。乙骨のいない今、現状のメンバーでクリスの動きを追える者は彼女との戦闘経験がある東堂しかいない。かと言って東堂1人で勝てるほど易しい相手であるはずがなく、虎杖を含めた京都校の面々は苦戦を強いられていた。

 

 

「百斂・穿け────がっ!?」

 

「はーい、脇腹無防備になってるよ。すぐ防御できるように意識して」

 

 

穿血を放とうとした加茂の脇腹に、瞬歩で接近したクリスの手刀がめり込む。手加減した攻撃でも受けた衝撃は凄まじい。加茂は吹っ飛ばされた先の大木に叩きつけられた。

 

 

三重大祓砲(アルティメットキャノン)ッ!!」

 

「これでも食らえ!!」

 

 

その隙を突いてメカ丸がビームを、真依が銃弾を放つ。手加減などない、本気で殺しに行くための攻撃。本来なら虎杖に向けるはずだった三重大祓砲(アルティメットキャノン)と鋭い鉛玉が左右から同時に襲い掛かる。

 

だがクリスはその場から逃げる事なくじっと佇み、そのまま2人の攻撃を受けた。メカ丸の極太ビームに全身が飲み込まれ、そこへ追い打ちをかけるように真依の銃弾が飛び込んでいく。

 

焦燥に駆られ、内に眠る本能的な恐怖に従って衝動的に放った必殺の一撃。もしこれが並の術師なら確実に消し炭となって死んでいた。しかし、相手は現代最強の一角。一方的に攻撃しているはずなのに冷や汗が止まらず、2人の息遣いは時間が経つごとに荒くなる。

 

頼む、今ので少しでも効いてくれ……そんな切実な願いが聞こえてきそうな表情とは裏腹に、2人の目には非情な現実が映っていた。

 

 

「いいね、怯まずちゃんと連携が取れてる。悪くないと思うよ2人とも」

 

「チッ、化け物が……!」

 

「これでも駄目か」

 

 

全力の攻撃をモロに受けてなお無傷で佇み、果敢に攻める勇敢さを褒める余裕まであるクリスに、2人は苦虫を噛み潰したような顔を見せる。

 

手応えはあった。それでも大したダメージにならなかったのは単純に火力不足なだけである。この純粋に格が違うという事実が齎す影響は決して小さくない。

 

そうこうしている内に、どこからともなくパンッと乾いた音が耳に入る。その音に気付いたクリスが後ろを振り返ると、そこには拳を固めて低姿勢で構える虎杖の姿があった。

 

 

(位置替え……葵君の不義遊戯か。さっき2人纏めて蹴り飛ばしたのにもう戻ってきたの?葵君は分かってたけど、悠仁君も復帰と対応が速い!流石だね)

 

 

クリスは厄介な相手になり得る東堂と、ついでで隣にいた虎杖を初手で遠くへ蹴り飛ばしていた。結構当たり所が良かった感じだったので、もう少し復帰に時間が掛かるだろうと思っていたが……予想以上の速さに内心舌を巻いた。

 

特に虎杖のタフネスには目を見張る物がある。

 

 

「おらぁっ!!」

 

「うん、良い拳。蹴りもキレがあって鋭い。パワーは申し分ないし呪力の流れも読みづら……んん?」

 

 

たった今、虎杖の拳を受け止めた腕から2度の衝撃が奔った。

 

五条から虎杖の打撃の特徴を聞いていたクリスは、今の攻撃ですぐに理解した。これが1度の打撃で2度の衝撃が生まれる『逕庭拳』なのだと。

 

確かにこれは面倒臭いなと思った。この技はここぞという時にフェイントで使うと結構上手くいくだろう。しかしメインで使う武器にはならない。パワーが圧倒的に足りないから。

 

そろそろ黒閃を教えておくべきだろう。基礎はできたし呪力操作も着実に上達している。これだけ土台が整えば、彼のポテンシャルなら問題なく黒閃を出せる。そうすれば術師として更に次の段階へ進む事ができる。

 

そう思いながら虎杖の攻撃を避けていると、虎杖に続いて東堂もクリスの前に戻ってきた。

 

 

「やってくれたなクリス。まさかいきなり俺とブラザーを蹴り飛ばすとは驚いた……だが、俺とブラザーの熱く固い絆!2人の力が合わせれば、あの程度どうと言うことはない!」

 

「急に何言ってんの?」

 

「さぁブラザー!俺達の力で、シスターの暴走を止めるんだ!何故なら俺達は3人で1人なのだから!」

 

「おう!クリス先輩、俺負けないよ!」

 

「だから急にどうしたの!?というか悠仁君まで何言ってんの?ちょっと冷静になって!」

 

 

戻ってくるなり訳の分からない事を喋る東堂に戸惑うクリス。おまけに東堂の鼓舞につられて虎杖まで舞い上がっている事態に、思わず目を見開いて叫び散らした。

 

虎杖と東堂はつい先程邂逅したばかりで、本来なら2人の間に絆もクソもない。だが彼らはまるで10年一緒に戦ってきたコンビの如く、非常に高いレベルで連携している。これには流石のクリスも驚きを隠せない。

 

いや、君達さっき会ったばかりだよね?出会って10分くらいしか経ってないのにその連携の高さは何なの?特に悠仁君、君確か蹴り飛ばされる直前までは葵君に対して割と他人行儀だったじゃん。僕に蹴飛ばされてここに戻ってくるまでの数分間で一体何があったの?ヤバいって。

 

底の見えない闇深さを感じてクリスは思わず身震いした。しかも当然の様に自分もその輪の中にいる事になっているので始末に負えない。

 

えぇ、知らん……何それ……怖……。

 

東堂と何かに取り憑かれたかもしれない虎杖の奇妙な言動は、想像以上に高い連携による攻撃も相まってクリスの意識を攪乱するのに最適だった。

 

 

「玉犬『渾』」

 

「────ッ!!」

 

「少し隙だらけじゃないですか、クリス先輩?」

 

 

虎杖と東堂の奇行に気を取られている間に、伏黒が召喚した玉犬『渾』が木々を掻き分けて悠々と走り、その鋭い鉤爪をクリスに振るって飛びかかった。

 

少年院で破壊された玉犬『白』の力が残った『黒』に引き継がれて誕生した『渾』。その強さは1つになる前とは比較にならず、力の限り振り下ろした剛腕は特級呪霊の肉でさえ難なく抉り、引き裂く。

 

そんな『渾』の攻撃をクリスは紙一重で躱すと、素早く懐に入って『渾』の腹に強烈な蹴りを放つ。

 

見事なカウンター、鋭く重い蹴りが腹に深くめり込む。これには強くなった『渾』も耐えきれず血反吐を零し、咄嗟に後退りして距離を取った。

 

 

「パワーもスピードも悪くないけど、まだ足りないかな?それと……バレバレだよ真希ちゃん」

 

「ちっ……!」

 

 

玉犬『渾』を退けたと同時に、今度は真希が背後から忍び寄って薙刀を振り下ろすが、それもクリスに避けられてしまう。

 

 

「あっさり避けやがって。大人しく切られとけよ」

 

「ちょ、シンプルに言い方酷くない?普通に傷付くんだけど……」

 

「うっせー、何言おうが私の勝手だろ。んな事より、こっからじゃんじゃん切ってくから覚悟しとけよ」

 

「んー、何か釈然としないけどまぁ良いや。そっちがその気ならこっちもどんどんギア上げてくよ。精々振り落とされないように頑張ってね」

 

「はっ、言ってろ。勝つのは私らだからな」

 

 

薙刀を振り回しながら大口を叩く真希に対し不敵に笑う。そんなクリスを囲むように、釘崎、順平、パンダ、狗巻らが呪力を漲らせながら続々と茂みの中から現れる。

 

京都校の生徒に続き、東京校の生徒達も着々と集まりつつあるこの状況をクリスは楽しんでいた。

 

 

「これでようやく全員ってところかな?皆で力を合わせれば……って考えてるみたいだけど、僕はそんなに甘くないよ」

 

「先輩の方こそ、私らをそう簡単に倒せると思ってたら大間違いですから。今日は殺すつもりで行くんで、そこんとこよろしくお願いします」

 

「おー、野薔薇ちゃんも言うようになったねぇ。それじゃあ期待しちゃおっかなー?」

 

「うわぁ、本当にクリス先輩と戦うのか。気分乗らないないぁ……けどやるしかないしなぁ」

 

 

トンカチと五寸釘を携えて構える釘崎と、その横で嫌そうな顔を隠そうともせず海月の式神を周囲に展開する順平。

 

そこから少し離れた場所で、先程クリスに蹴飛ばされてダメージを負った加茂が新田の応急処置を受けて戻ってくる。胴体に何重にもテーピングを巻いて、辛そうに脇腹を抑えながらも弓矢を握り締める。

 

そんな彼の隣に伏黒が立つ。

 

 

「……楽巌寺学長から、全員で虎杖を殺すように命令されましたよね?」

 

「…………そうだと言ったら?」

 

「その件については後でじっくりと。とりあえず今は、あの厄介な先輩を倒すために一時協力しましょう」

 

「ああ、分かった……君は随分と立派だね、伏黒君」

 

「急に褒めてどうしたんですか?というか今ので褒める要素あります?」

 

「あるよ、私にとってはね」

 

 

加茂が突然褒めたので伏黒は戸惑いを隠せなかった。何やら向こうにも色々な事情があるのは察するが、それでも唐突にやられると調子が狂うというもの。

 

伏黒はどこかむず痒い気持ちになりつつも、目の前の強大な相手に無理やり意識を切り替えて集中する事にした。

 

 

「話し合いは済んだかな?それじゃあ……続きと行こうか」

 

 

全員の戦う準備が整うまで空気を読んで大人しく待っていたクリスが低く腰を落とした。その瞬間、再び緊張で張り詰めた空気が戦場を覆う。

 

西宮と新田を除く12人対1人の対決。普通なら結果を聞くまでもない一方的な戦いだが、相手がクリスである以上油断は禁物。ここから全員打ちのめされて1人勝ちする未来も十分にあり得るのだ。むしろそうなる可能性の方が遥かに高い。

 

それでもやらねばならない。クリスを倒し、この団体戦を滅茶苦茶にした首謀者(五条悟)の顔面に拳を叩き込むために。

 

そんな波乱万丈の団体戦が、今火蓋を切って落とされた。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

戦闘が始まって15分、東京・京都校合同チーム対クリスの戦いは熾烈を極めていた。

 

 

「おらぁっ!!」

 

「──ッ!!」

 

 

パンと東堂が鳴らした拍手と同時に、虎杖がクリスの背後から力一杯握り締めた拳を突き出す。

 

だがクリスは咄嗟に屈んで回避し、虎杖の足を素早く払って体勢を崩させる。そのまま地面に倒れ込む虎杖の背中を蹴り上げようとするも、もう1度東堂の拍手する音が響き渡る。

 

その瞬間虎杖は姿を消し、クリスの蹴りは空を切った。

 

 

(やっぱ葵君は厄介だね!戦い慣れてるだけあって、立ち回りとサポートが抜群に上手い!僕でもあのレベルのサポートは中々……)

 

 

一瞬の内の僅かな攻防で東堂のレベルの高さを改めて認識させられる。普段の言動はアレだが、本当に彼は呪術師として頭一つ抜けているのだ。

 

今も虎杖に続いて他の皆が躊躇なくクリスに追撃する中、絶妙なタイミングで不義遊戯を発動し、クリスからのカウンターを全て回避に導いている。普通14人もいれば連携が乱れた隙を突かれ、1人ずつ確実に減らされるのがオチだが、それをたった1人で防いでいる。

 

そして隙あらば自らもクリスに接近して攻撃に参加する余裕っぷり。

 

 

(でも、そんな葵君のサポートを皆活かし切れてない!いくらお膳立てされても、速さと火力がないと僕は倒せないしジリ貧だよ!)

 

 

東堂の完璧なサポートがありながら、全員クリス相手に攻めあぐねていた。

 

確かに不義遊戯で絶妙な位置に飛ばされるのだが、位置替えに反応してから攻撃のモーションに入るまでが遅すぎるせいで攻撃が当たらない。唯一虎杖のみが東堂と息を合わせられているが、虎杖のパワーもクリスにダメージを負わせるには後一歩足りない。

 

そんな戦況を変える一声が突如戦場に響く。

 

 

「────『ぶっ飛べ』!!」

 

「……危ないなぁ棘君。僕が()()してなかったらヤバかったんじゃない?」

 

「本当にそうかな?」

 

「……?パンダ君、それってどういう──ッ!?」

 

 

パンダの不穏な物言いに聞き返そうとしたのも束の間、クリスの立っている地面が急激に膨張し、大爆発を起こした。

 

その勢いでクリスの身は木々を突き破って空中に投げ出される。

 

 

(なるほど、そう来たか。呪言の対象を僕ではなく地面の方に……考えたね)

 

 

飛ばされながら先程起こった現象を冷静に分析する。確かにそういう事は今までやってこなかったが、狗巻の呪言は機械越しでも通用するレベルなので、地面に呪言の効果が作用しても不思議ではない。これは盲点だった。

 

なお、上手く体勢を崩された事に感心を覚えるクリスだが、そんな隙を晒しておいて放っておく相手ではない。この機を逃すまいと不義遊戯で入れ替わった人達が一斉に飛び掛かってきた。

 

ゴリラモードになったパンダの拳、順平が操る海月の式神が持つ毒針、クリスの顔面へ振り下ろされる虎杖の強烈な蹴り。

 

 

(間髪入れず追撃!また葵君の采配!あいつ本当に厄介……それでも!)

 

「「「はぁっ!!」」」

 

「甘ぁーい!!」

 

「「「はっ……!?」」」

 

 

だが、どの攻撃もクリスには直撃しなかった。何と身動きが取り辛い空中で無理矢理身体を捩じり、空気を蹴って上空へ跳躍したのだ。

 

唯一虎杖の蹴りだけクリスの頬を掠めたが、彼女を止める有効打には到底なり得ず空振りに終わった。

 

まさかの回避方法に他の皆も驚きを隠せない。

 

 

「ちょ……ええっ!?何よあれ、あんなのアリなの!?」

 

「今確かに空を蹴って飛んだぞ」

 

「おかしいですよ今の!どんな脚力してるんですか!?」

 

「だから嫌なんだ、この先輩の相手は……」

 

 

空気を蹴って空中歩行という力業に十人十色な反応を皆が見せる中、クリスは再び強靭な脚力と卓越した呪力操作で”空気の面”を蹴り、待ち構える皆に向かって特攻を仕掛けた。

 

自由落下とは比較にならないスピードで上空から突っ込むクリス。目で追う事すらできない状況で、やはり東堂だけは相手の動きをしっかり捉えていた。

 

 

「────えっ?」

 

「ふっ、そう簡単にはいかんぞシスターよ」

 

「……結構ギア上げたんだけどね。これでもまだ反応するか」

 

 

いきなり瞬間移動していた三輪は、一瞬何が起こったのか理解できなかった。

 

ただ、ほんの数秒前まで自分がいた場所に拳を振り下ろしたクリスと、それを腕で防御する東堂がいる事を認識し、そこでようやく自分は今攻撃されていた事実に気付く。

 

理解した瞬間、三輪は背筋が凍り付いた。冷や汗は止まらず、肩が震えて呼吸も荒くなっている。今、もしも東堂が助けてくれなかったら……そんな最悪のもしもが頭を過り、腰が抜けそうになった。

 

そうして両手で力なく刀を握り締めて立ち尽くす三輪を他所に、戦闘は更に激しさを増していく。

 

 

「調子乗ってんじゃねぇよ!」

 

「真希ちゃん口が悪いよー。ほらほら、せっかく呪具の扱いは1番上手いんだし、もっと活かさないと」

 

「それウザいから止めろ!凄ぇ腹立つ!しかも全部片手で往なしやがって!余計腹立ってしょうがねぇ!舐めんな!」

 

「怖いなー、そんなに薙刀振り回してると危ないよー。刀身も剥き出しだしさー」

 

「うるせー、どうせ切られても反転ですぐ治せるだろうが」

 

「でも心は傷付いちゃうなー?」

 

「知らねぇよそんなの、勝手に言ってろ」

 

 

薙刀を振り回す真希を片手で対処しつつ、他の生徒の攻撃も同時に捌く。

 

狭い森の中でリーチの長い薙刀を難なく使いこなし攻撃する真希は勿論、それらに全て片手であしらっているクリスも大概である。

 

しかし、その状況も長くは持たない。不完全な天与呪縛を持つ真希ではいくら呪具を上手く扱ったところで限界があるのだ。

 

 

「ぐっ……!」

 

「ほらほら真希ちゃん、どんどん押されてるよ。もっと踏ん張って!」

 

(こいつ、更にギア上がって──ッ!?)

 

 

徐々に速く鋭くなるクリスの動きに、真希はとうとう追い付けなくなった。いくら技量があってもそれを上回るパワーとスピードでゴリ押しされてはどうしようもない。基礎的なスペックであまりにも差があり過ぎた。

 

 

「真希さん虐めて楽しんでんじゃねーよゴラァ!!」

 

 

真希が押される姿を見ていられなくなったのか、クリスの背後から釘崎が大量の釘を乱打しながら突っ込んできた。

 

しかし、近接に難がある彼女がクリスの相手をするのは余りにも無謀だった。

 

 

「待て野薔薇!今来んのはヤバ……ッ!」

 

「ガッ……!?」

 

「野薔薇ちゃん、果敢に攻めるのは良いけど、もっと近接鍛えた方が良いかもね」

 

 

芻霊呪法『簪』で追撃する間もなく、釘崎はカウンターで顎に強烈な一撃を入れられ、その場に膝から崩れ落ちた。

 

 

「てめぇ、よくも野薔薇ヲ゛ッ!?」

 

 

真希も一瞬の隙を突かれ、鳩尾に重い一撃を食らって地面に叩き付けられた。

 

 

「さて……これで一通り全員の攻撃は受けたかな?後は1人ずつ片付けるだけだね、何人かダウンしてるけど」

 

「「「…………」」」

 

 

好戦的な笑みを浮かべるクリスを前に、皆が苦しそうに顔を歪ませる。

 

たった1人に対して未だに有効打の一つも与えられていない状況に焦りが生じる。

 

そんな中でも虎杖と東堂は果敢に攻め続けた。

 

 

「合わせろ東堂!」

 

「OKブラザー!俺達の力、見せてやるぞ!」

 

 

交互に入れ替わりながら2人同時に飛びかかる。短い時間で何度も入れ替わり続けて混乱を誘う。

 

 

「虎杖達を援護しろ」

 

「微弱ながら……私も加勢する」

 

 

そこへ伏黒の『渾』と加茂が射た矢の援護も加わり、クリスの動きを更に制限する。

 

 

「おお、さっきより連携上手くなってる!葵君に頼りきりってわけでもなさそうだし良かった良かった。やればできるじゃん!」

 

「全部避けながらそれ言うの辞めてくれません?嫌味に聞こえますよ」

 

「ふふっ、悔しかったら一発当ててみなよ」

 

「ならばシスターよ、これはどうだ!」

 

 

相も変わらず全ての攻撃を掻い潜るクリスに、東堂が不敵な笑みを浮かべて手を叩く。

 

瞬間、視界の端に映った加茂の矢が狗巻と入れ替わる。

 

 

(もう1度棘君を?また地面を爆発させて……)

 

「『沈め』!!」

 

(ッ!?さっきとは逆!踏ん張りが効かない!)

 

 

先程と違って足下の地面が沈下し、上手く飛び上がれずその場で体勢を崩してしまう。

 

明確な隙となったこの瞬間、今度こそ逃す訳にはいかない。

 

 

「『満象』」

 

「『澱月(おりづき)』!」

 

 

間髪入れず畳み掛ける。

 

伏黒が新たに調伏した式神『満象』を召喚、すかさず大量の水をクリスに向けて放つ。その横から順平が海月の式神『澱月』を飛ばし、満象が放出する水の中に全身をどっぷりと浸からせた。

 

澱月から生成される猛毒が水に溶け込み、汚染される。

 

 

(この水……毒か!しかもかなり強力!やってくれたね2人とも!)

 

 

沈んだ地盤に溜まった汚染水がクリスの全身をじわじわと蝕む。

 

今日初めて彼女に入ったダメージ。並の術師ならここで毒に侵され死に行く一方だが、クリスの反転術式は毒すら分解し除去できるほど洗練されている。これでも大した障害になり得ない。

 

案の定、水中で勢いよく蹴った衝撃で汚染水から軽々と脱出。すかさず反撃へ……と向かう前に、既に目の前で彼が待ち構えていた。

 

力一杯握り締めた拳を全力で放つ虎杖悠仁が。

 

 

(決める、今ここで!こんなチャンス、次来るかどうかも分からない!ありったけの力をぶち込むっ!!)

 

 

一度も有効打を与えられず、翻弄され続け、一方的にやられた悔しさ、もどかしさ。

 

そんな中でようやく訪れた、今後来るかも分からない絶好の機会。

 

虎杖の集中力が極限に達する。

 

 

『────痛ってぇ……相変わらずクリス先輩の蹴り強すぎるって。腕折れたかと思った』

 

『だが、奴はまだまだ本気とは程遠いぞ。気を抜くなよブラザー』

 

『分かってる。でも、戻ったところで今の俺の力じゃ先輩には効きそうにねぇし、どうすれば……』

 

『その事なんだが、ここでお前に一つ伝授したいものがある』

 

『伝授って……何を?』

 

『それはな────』

 

 

クリスに蹴り飛ばされた際、戦場へ戻りながら東堂と話した記憶。

 

頭の中でそれらが走馬灯のように駆け巡る中、遂にそれは繰り出された。

 

 

「黒閃ッッ!!」

 

 

鳩尾に拳が衝突した瞬間飛び散る黒い火花。

 

黒く輝く呪力はその膨大なエネルギーを以て空間を歪ませ、発生した衝撃は瞬く間にクリスの全身を駆け巡る。

 

そしてこの一撃により、虎杖悠仁が覚醒する。

 

 

「────ッ!?」

 

 

食らった瞬間、虎杖の黒閃に驚愕して目を見開くクリス。

 

すぐに反撃に出ようとしたその時────

 

 

「…………ん?」

 

「何だこの揺れ……地震?」

 

「お、おい……あれ!」

 

「なっ!?森が……!」

 

 

────突如森全体が大きく揺れ始め、巨大化した樹木が群れを成して生徒達に襲い掛かった。

 

 

 




東堂なら数分で虎杖に黒閃を教えて更に次のステージまで導けるでしょ。だって東堂だし。

ちなみにここの東堂は以前クリスと戦った事で原作より強くなってます。主にゴリラ度が増しました。
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