呪術の子   作:メインクーン

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前回:
アイ&ルビー&クリス「交流会の最後は特別野外ライブ!皆も盛り上がっていこー!」

一同「イエーイ!!」

ルビー「10月31日に渋谷でハロウィンライブするから見に来てね!」

アイ&クリス「行く行く!楽しみだね!」



襲撃後、その裏で

クリス達が交流会の締めに特別野外ライブを開いて皆と盛り上がっていた頃。

 

 

「流石だよ真人。高専が保有していた宿儺の指6本と呪胎九相図の1から3番……全て計画通りだ。任せておいて正解だったよ」

 

「まぁね。夏油の言ってた通り、俺の行った所には雑魚しかいなかった。今更あれに手こずるわけないさ」

 

「それもそうか」

 

 

高専の襲撃から戻ってきた真人達は、アジトで待つ羂索に早速今回の目的である特級呪物を引き渡した。

 

1番欲しかった要望通りの物が手に入り、羂索は満足そうに笑みを溢す。そんな彼に今度は万が話しかけた。

 

 

「ほら羂索、私からも。要望通り持って帰ったわ、これで良いんでしょ?」

 

 

そう言って万が取り出したのは血塗れの手足。そう、術式を使えなかった星野クリスから無理矢理捥ぎ取った手足である。

 

 

「万もお疲れ、感謝するよ」

 

「礼には及ばないわ」

 

 

差し出されたそれらを羂索は全て受け取り、これまた満面の笑みを浮かべながら丁重に保管した。

 

 

「星野クリスの両腕に左脚……うん、これだけあれば十分だ。いいね、計画を着々と進められている。これなら10月31日は何とかなりそうかもね」

 

 

悪意の滲み出た笑いを絶やさず、改めて万の方に視線を向ける。

 

 

「それにしてもよく星野クリスから手足を奪ってきたね。いくら術式の使用が制限された状態でも、彼女から肉体の一部を奪うのは簡単じゃない。"真球"でも使ったのかい?」

 

「ええ、そうね。肉体を一気に削り取るなら、あれ以上の技は他にないもの」

 

 

羂索に尋ねられた万は質問に答える。

 

羂索が今しがた口にした『真球』というのは、構築術式使いの万が持つ技の1つにして切り札のようなもの。術式で生成した液体金属を操って『完全な球体』を作り出し、それを相手に向けて放つ。

 

この真球の最大の特徴は、接地面積がないので無限の圧力が発生するという事。あらゆる物体に無限の圧力がかかり、真球が通過した跡は何もかも消え去ってしまう。まさに触れる事すらできない一撃必殺の大技。

 

そんな殺傷力に極限まで特化した恐ろしい技を、万はクリスとの戦闘中に使用したのだ。

 

 

『あはは、やるじゃないクリス。術式抜きでもここまで粘るとは。流石に強いわ……でもね?』

 

『────ッ!?今のは……!?』

 

『驚いたかしら?私だってこういう技は持ってるの。まぁ、デカいやつを1個作って全身丸ごと削り取っても良かったんだけど、さっき殺さないって言ったし……ね?』

 

『……確かに、これは出来るだけ避けたいね。少なくとも術式が使えない状態で受けていいものじゃない』

 

『残念だけど、まだ右腕しか取れてないからもう1,2本あんたの手足を貰っていくわ。もう少しだけ痛い目に遭ってほしいからね』

 

『チッ……!』

 

 

その後も奥の手の1つである真球を使い、クリスの左腕と左脚を奪い取る事に成功した。

 

以前までの真球は一撃必殺の火力はあったが、サイズが必要以上に大きく速度が遅いという複数の欠点があった。

 

どんな大きな攻撃も当たらなければ意味がない。極超音速で飛び回り、瞬間移動もできるクリスに当てるのは不可能に近い事だった。

 

だからこそ万は高千穂での敗戦を機に一から鍛え直し、術式の研鑽に伴って真球の改善にも努めた。

 

結果、真球のサイズをハンドボール程度の大きさまで縮小させる事が可能になり、サイズ次第ではあるが、射出速度は音速を優に超えるようになった。

 

細かい調整がいるため生成に時間がかかるという欠点があるが、そのデメリットを打ち消すだけのメリットを享受している。

 

勿論、これでもまだクリスの方がずっと速く動けるので当てるのは結構厳しいが、状況と立ち回り次第で何とかなるレベルにはなった。

 

しかもこれはクリスが術式を使っている事を前提とした話なので、高専襲撃時の術式を使用できないクリスに真球を当てるのはずっと難度が低かった。

 

これほどの強化は縛りによる自縄自縛の効果ではない。クリスに完膚なきまでに負けた日から2年間、羂索達と暗躍する傍らで日々絶えず修行し、呪力操作と術式の研鑚を積み重ねた万の努力の賜物である。

 

要は、万は純粋に強くなった。

 

クリスの読み通り、今の彼女は冗談抜きで宿儺、五条、クリスに迫る勢いで実力を伸ばし続け、彼らの隣に立って肩を並べんとしている。いや、もしかするともう既に……なんて事になっても不思議ではない。

 

祈本里香に代わり、真の呪いの女王とも言うべき存在か。

 

今回クリスに見せた修行の成果は、より洗練された呪力強化と改善された真球の2つだったが、他にも修行の成果はある。それは今後の戦いで徐々に見せていく事になるだろう。

 

2年前とは比較にならない実力を持つ万を眺め、羂索はクツクツと嬉しそうに笑った。

 

 

「……で、その捥ぎ取った手足を使って何するの?いきなり取ってきてって頼まれたから取ってきたけど」

 

「ああ、これかい?これは足止めの材料として使うつもりだよ」

 

 

今度は万からの質問にすらすらと答える羂索。どうやら何か作戦があるようだった。

 

 

「足止めって……誰の?というか"材料"って?」

 

「今度の10月31日、私達は五条悟と星野クリスの封印に試みるけど、その際少しでも両者の封印成功率を上げたい。そのためには獄門疆を複製するだけでは駄目だ。もっと多くの準備が必要になる」

 

「それはまぁそうね。1人だけでも大変なのに2人だし、仮に同時に相手をしたら全然勝てる気がしないというか」

 

「だから封印は1人ずつ行うしかない。まずは一番厄介な五条悟から、次に星野クリスの順でね。けど五条悟を封印する間、星野クリスが大人しく待っているわけないだろ?そのために、彼女の相手ができる時間稼ぎ要員が欲しいんだ」

 

「時間稼ぎなら私1人で十分だと思うわよ?」

 

「いや、君も宿儺と同様、獄門疆の封印計画が失敗した時の保険として取っておきたい。私としてはなるべく慎重になって行動したいんだ。後の事も考えてね」

 

「ふーん……」

 

 

羂索の説明を聞いて万は素直に頷く。

 

こういう作戦参謀に関して羂索の右に出る者はいない。少なくともここにいる呪霊や呪詛師の中では断トツで羂索がそういう事に向いている。

 

そう考えていた万だったが、今しがた羂索の口から出た宿儺の名に反応してふと思った。

 

 

「ねぇ、思ったんだけど10月31日に宿儺を復活させて、私達全員で五条悟とクリスを叩くのは?宿儺だって何だかんだ楽しそうだったら乗ってくれるノリの良さがあるし。そこんとこどうなのよ?」

 

 

相手の最大戦力は五条悟とクリスの2人。対するこちらは羂索を筆頭に万や裏梅、4人の特級呪霊が揃っている。更に宿儺もどちらかと言えばこちら側で、彼が復活すればほぼ確実にこちら側が優勢になる可能性が高い。

 

……あれ?これ獄門疆をわざわざ使わなくてもワンチャンあるんじゃね?そう思う万だったが、今思い付いたこの作戦も羂索にあっさり却下された。

 

 

「いや、それを主軸にするのは止めた方が良い。仮に指を全部与えて宿儺を復活させたとして、その復活はあくまで一時的なものだ。虎杖悠仁という檻からいつまで出ていられるか分からない。

 そんな状態で2人と戦って、倒しきる前に虎杖と宿儺の意識が入れ替わったら?その瞬間、私達の敗北は決定的なものになるだろう」

 

「あー、確かに。それはちょっと困るかも」

 

「そもそも、今所持している指を宿儺に与えても力の全てを取り戻せるわけじゃない。状況によってはまだ万の方が宿儺より強いまであるよ。やはり宿儺と共闘する案は、封印計画が悉く失敗した時のサブプランとして取っておくべきだね」

 

「まぁ、あなたがそこまで言うなら……分かったわ」

 

 

羂索の説明を受けて万は大人しく引き下がった。封印して相手の戦力を大幅に削げるなら、わざわざ無理して最強達と戦う必要もないからだ。

 

だが、それ以外にも戦わない方がいい理由はある。

 

 

(先の吉野順平の一件で真人は宿儺の顰蹙を買っている。復活した宿儺と私達が下手に接触したら、まず間違いなく真人と揉める事になるだろう。最悪真人が宿儺に祓われるかもしれない。そうなっては私の計画が一気に難航してしまう。それだけは御免だ)

 

 

真人を今後の計画で使う事を視野に入れているため、宿儺の復活でそれが頓挫してしまうような行動は控えたいのが羂索の本音だった。

 

勿論、宿儺と共闘するのもアリではあるが、少なくともそれは今ではない。もっと先の話になるし、最後の手段だ。

 

それだけ状況は厄介なのである。

 

 

「というわけだ。真人、手伝ってくれるかい?」

 

「俺が夏油の手伝いを?良いけど何するの?」

 

「10月31日まであと1ヵ月と少し……それだけあれば、星野クリスの時間稼ぎをしてくれる強力な改造人間を作れるだろう」

 

 

羂索の考えていたクリスの足止め要員。それは真人との共同開発で生み出す改造人間の事だった。それもどうやらただの改造人間ではないようで……

 

 

「なるほどね。時間稼ぎ要員って言うから誰かと思ったら……そういう事なら手を貸すよ。で、俺は何をすれば良い?」

 

「君には非術師の人間を改造して、それらの魂を一つに繋げ合わせる作業をしてもらいたい。ゆっくりでいいから、互いの魂が反発し合わないように上手く調整してね。材料はこちらでたくさん確保してあるから、好きなだけ使ってくれて構わない」

 

「OK、分かった。俺にとっても術式を鍛える良い訓練になりそうだし。夏油はその間何するの?」

 

「私は今所有してる特級呪霊を1つにする作業から入るよ。君が人間を、私が呪霊を、その後に互いの成果物を1つに融合させるんだ。1ヵ月もあれば十分だろう」

 

 

なるほど、確かに他の人と一緒にそういう物を作ってみるのも悪くない。術式の訓練にうってつけなのもあるが、何より結構楽しそうだから。

 

やりがいがありそうで良いね。真人はそう思った。

 

 

「良いんじゃない?でも、それで星野クリスを足止めできる強さになるかな?」

 

「さぁね、それは実際に作ってみなければ何とも。でも、ある程度は彼女の相手ができるようになってもらわないとね。そのために万に頼んで、星野クリスの肉体の一部を取ってきたんだから」

 

「そりゃあ良いや!」

 

「じゃ、早速始めようか」

 

 

そうして羂索と真人は作業に取り掛かった。

 

拠点にしている秘密のアジトの地下深くに位置する、羂索お手製の特殊な結界が張られた広大な空間。そこには羂索の手によって、老若男女問わず大量の非術師が拉致・監禁されていた。

 

その数────約50000人。

 

そんな彼らの助けを求める声、土下座して必死に命乞いをする声、肉体を無理矢理改造される耐え難い苦痛の声、死の恐怖に泣き叫ぶ声、得体の知れない相手に対する恐怖、どうしようもない状況への絶望。

 

大小様々な負の感情が飛び交い充満する空間で、2人の残酷で非道な実験は淡々と進められていった。時には他の自然呪霊達や裏梅達の手も借りて。

 

全ては星野クリスただ1人を、1秒でも長く足止めして時間稼ぎをするために。

 

 

その間、復活させた呪胎九相図の内の2人に宿儺の指の回収に行かせたり、高専の裏切り者の後始末に出掛けたり、10月31日に使う嘱託式の帳に特殊な仕掛けを施したりと色々な出来事があった。

 

とても忙しい毎日だったが、それでも2人は究極の改造人間を生み出すため、日々開発に赴き着々と作業を進めていった。

 

そうして1ヵ月があっという間に過ぎ去り、いよいよ運命の日となる10月31日が目前に迫った。

 

 

 




真人「万とか裏梅とか、呪詛師は皆夏油の事を羂索って呼んでるけど、もしかしてそっちが本名なの?俺達もそっちの名で呼んだ方が良い感じ?」

羂索「さぁ、どうだろうね。ただ、私の事は好きなように呼んでくれて構わないよ。どっちで呼んでも分かるから、君達の呼びやすい方で問題ない」

真人「ふーん……じゃあ夏油のままでいいや。俺達はそっちの方が呼び慣れてるし、今更呼び名を変えるのも面倒臭いし」

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