TINNPIRA SAMURAI ~チンピラ侍、ダンジョンに潜る~   作:庭鳥

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 ソウジロウ君は今までの主人公が大人しすぎる、まともすぎる、ということからぶっ飛んだ奴を目指して生まれました。その結果……なんやコイツと作者自身が思ったりします。でもあんまりまともにしすぎると今まで通りだし……ううん。第3話始まります。今回でちょっとした区切りはつきます。



第三話 悪鬼羅刹

 

~ 5 ~

 

「さあさあここだぜ!入ってくれ~!」

 

「ああ、わかったよ……なんで扉を開けないんだい?」

 

 フラスコが扉に手をかけたままのバリーに聞いた。

 

「い、いやほら一気に入らないとモンスターが突然襲ってくるかもしれなくて危険だろ?」

 

「成程。」

 

「そうら、並べ並べ!」

 

 そうしてフラスコ、ボトル、アンプル、ソウジロウの四人は扉の前に横並びになった。その瞬間、ソウジロウは扉の中からがさがさという音を聞いた気がした。いや、足音を無数に聞いた気がした。ずっと黙っていたソウジロウであったが、のんびりした様子で口を開いた。

 

「フラスコ殿、玄室ってそんなに敵がいるもんなんでござるか。」

 

「ん、いやいても二、三体ぐらいじゃな……グエッ!?」

 

「うん!?」 「キャッ!?」 「ござっ!?」

 

 四人は玄室の中に無理矢理蹴り入れられた。その後にバタンという音と共に、扉は閉められる。ソウジロウたちの目に飛び込んできたのは、無数のデメケン、軽く見るだけでニ十体はいるであろうデメケンの集団であった。さらに一体が、宝箱の中から生み出されているのを見た。それを見てボトルが叫んだ。

 

「ま、魔法陣の罠だ!それもこんなに魔物が溜まるまで放置してやがる!マナー違反なんてレベルじゃねえぞ!」

 

「バリー!なんだこれは!」

 

 フラスコが扉の向こうに向かって怒鳴る。それにはせせら笑うバリーの声で帰ってきた。

 

「へっへっへ、悪いね。それに嘘は言ってねえぜ。玄室の中にモンスターがいただろ?ただちょっぴり数は多いかもな。……そのチンピラ侍をパーティに入れた不運を呪ってくれや。これも『闇ギルド』の依頼でね。」

 

「な、なんだよ闇ギルドって!?」

 

「それを知る必要はねえな。そんじゃ、あの世まで達者でなー。」

 

 その言葉と共に一斉にデメケンが敵意を向けてくる。その最中にも一体デメケンが増えて、パーティの面々の顔は青ざめる。それを見て、ソウジロウは呑気に一言だけ呟いた。

 

「ひょっとしてピンチにござるか?」

 

 その途端、一斉にデメケンが毒液を吐き出してきて、パーティはバラバラに逃げまどわなければならなかった。

 

 

 こんな状況下でもフラスコは冷静に指示を飛ばしていた。自身の非を感じ入ってはいたが、謝罪なんて後でいくらでもできる。それを優先し仲間を死なせるなど、呆れかえるべきリーダーだろう。彼はそうではなかった。

 

「ボトル!僕と共に前に!まずは魔法で宝箱を破壊しろ!」

 

「承知した!」

 

「アンプル!扉を開けて退路を確保してくれ!」

 

「駄目……向こうで押さえられてて、私の力じゃあ!」

 

「なら神術を使っていい!とにかく退路を!ニ十匹はさすがに苦しい!」

 

「わかったわ!でも私の腕じゃあ二発くらいかかるかも……。」

 

 そう言ってアンプルは詠唱に入る。それからフラスコは一体のデメケンを始末し、噛みついてくる一体を盾で殴り飛ばしながら一瞬ソウジロウをちらと見た。

 

「ソウジロウ君!こうなれば君にも戦っていただくほかない!僕の不手際で済まないが、刀を抜いて戦ってくれ!」

 

「え、これ『竹光』にござるぞ!」

 

「た、竹光だと……!?なんでだ!!」

 

 ボトルが思わず叫ぶ。竹光、それは竹から作った模造刀である。見た目はカタナっぽいが人を斬れるはずもない。ソウジロウは状況を分かっていないのか、のんびりした口調で喋る。

 

「いや~、刀。昔はあったんでござるけどな~質屋に入れてしまったでござるから、ともかく威嚇のために竹光ぶら下げてるんでござるよ。」

 

「な……!?」

 

「お前何しに来たんだ!!」

 

 フラスコが絶句し、ボトルが思わず叫んだ。しかしすぐにフラスコは思い直した様子の顔になる。ともかくやるしかない、そのような表情であろうか?彼は急いで叫ぶ。

 

「なら自分の身だけでも守ってくれていたまえ!僕たちは多分守れない!」

 

「了解でござ!」

 

 そんな声を聴きながら、フラスコはどこか無理だろうと思っていた。この数だ。武器もないのに生き残れるはずもない。だが……すまない。僕にも守るべき仲間がいるのだ。そのように考えていたのである。

 

「グギャラララアア!!」

 

 ファーストペンギンらなぬ、ファーストデメケン……最初の一体が突っ込んでくる。ボトルはそれを避け、反撃もくれずに杖の方を構えた。

 

「ストーンブラスト!」

 

 その言葉と共に石弾が発射され、罠の作動した宝箱をぶち壊す。ともかくこれでデメケンの出現は食い止められた。しかし未だ対処できる限界を超えた数がいるのである。ボトルはその隙をつかれ、デメケンの穢れた爪の一撃を喰らってしまった。

 

「グッ!?」

 

「下がれ!ボトル!」

 

 フラスコが前に出て一気に、三体のデメケンを相手取る。一匹を切り裂き、もう一匹を盾で殴りつけて首の骨を折る。さらに軸を固定して一匹を蹴り飛ばした。流れるような、驚くべき三連撃である。しかしそんな風に数を減らしても、まだまだ敵はいるのである。

 

 フラスコの後ろから毒液の散布が来た。彼はそれを飛びのいて避ける。だが避けても避けても、次々に毒液が吐きつけられる。

 

「くっ!?」

 

 目の前のデメケンの毒液を盾で防御する。……しかし持ち手の裏まで毒で汚れてしまった。彼は手袋と共に盾を捨てた。

 

「アンプル!どうだい!」

 

「……大海の息吹をもたらしたまえ!今、一発よ!」

 

「……そうか!」

 

 正直な話、彼はもう扉が開けているという報告を期待していた。だがそれはまだ果たされなさそうだ。彼は目の前の魔物の山を見つめる、盾は失った。ボトルも負傷した。だが……まだ舞える。そう思った。

 

 その時、アンプルが扉を見つめながら口を開いた。

 

「でもこの……扉の隙間から……キャッ!?」

 

「全くヨォ……出てこようとすんじゃねえよ。デメケン共全然使えねえじゃねえか。」

 

 扉を開けて入ってきた様子のバリーがアンプルの口を押えて、引っ掴んでいた。あれでは詠唱は出来ない。さらに後ろに二人の仲間たちも引き連れている。

 

「バリー!!貴様……どこまで!!」

 

「こっちを見てる余裕があるのか?フラスコ?」

 

「危ないぞ!フラスコ!」

 

「ぐっ!?」

 

 ボトルがデメケンの攻撃を受け止めて弾くが、途端に二人は囲まれる。さらにバリーの仲間のうちの一人が、ニヤニヤしたままアンプルの喉元に短剣を突きつけた。勢いあまって彼女の首から少しの血が垂れる。その冷たい感触にアンプルは恐怖の声を漏らした。

 

「おめえら、抵抗は止めろ。この女だけは生かしてやってもいい。」

 

「エヘヘ、良いんすか。お頭?」

 

「態度次第だがな、ヘヘ。中々上等な女じゃねえか。俺ァ気に入ったぜ。」

 

 フレスコはそれを見て、歯を食いしばり遂に激高した。

 

「バリィィー!!!手前ェふざけるなよ!!僕らが殺されるものか!!デメケン共の次はお前だ!!」

 

 そう言いながらデメケンを切り飛ばしてバリーの元に駆け寄ろうとする。しかしそこに斧使いの男が前に立ち、大ぶりでフラスコに牽制した。盾があればそれを頼りに突っ込んだろうが、今はもう毒液にまみれて存在しない。フラスコは一瞬、足が止まる。

 

「エッヘッヘ、よそ見してるから。」

 

「あっ。」

 

 その一言と共にフラスコは後ろから地面に引き倒される。前を見れば、そこにあるのは毒液を貯めたデメケンの大あご。それが今か今かと、おぞましいその瞬間を待ちわびていた。

 

 今回、意図的にはめられたといえ基本的にダンジョンの中は無法地帯なのである。なにせ魔物が人を殺したのか、仲間割れが起きたのか、パーティー間で争いがあったのかわかりはしない。迷宮の中の法はただ一つ、『弱肉強食』という獣の法があるのみである。人の法の前の、神の法の前の、もっとも古き法律である。

 

(死んだ、僕のせいで……すまない……ボトル……アンプル……()()()()()君。)

 

 

 

 

 

 いくら待っても、デメケンの攻撃は来なかった。代わりにポタリポタリという音が聞こえた。初めは毒液の滴る音かと思ったが、薄く目を開けるとそれがようやく血であると気づいた。真っ二つに切り裂かれたデメケンと返り血を浴びたソウジロウがそこにはいた。

 

「いやはや間一髪にござる?ピンチにござったか?」

 

「え……は?」

 

 何故死んでいない、そのような声が漏れかけた。ソウジロウは武装をしていなかったはずである。その手にある剣はたった今自分が落としたもの。そうであれば彼は一体どうやって今まで防御をして……?

 

 そうしてフラスコは壁際のソウジロウが身を守っていた辺りを見た。……身を守っていると思っていた辺りを見た。そこにあるのは、死体、死体、死体。七体ほどのデメケンの死体が積み重なっていた。首が折れたらしい死体、顎が首のあたりまで開かれた固体……明らかに()()()()で殺されていた。

 

(ば、馬鹿な!武器無しで殺したのか!)

 

 フラスコは大きく目を見開いて、ソウジロウを見つめた。彼はフラスコの心も知らず、手元の剣を握ったまま困ったように頬をかいていた。どこかぼんやりしているが、その目はバリーたちを見つめている。彼らも状況がつかめてきた様子で何かを喚いている。ソウジロウはゆっくりと口を開いた。

 

「この剣借りてるでござるよ……ところで、ええと拙者次は何をすればいいんでござるか?」

 

「はっ?」

 

「いや~どうにも拙者、人の顔と複雑な事は分からなくて……斬るのは得意なんでござるけどな。襲ってくるのが敵って言うのは分かるんでござるが。」

 

「……!」

 

「敵は誰にござるか?」

 

 フラスコの頭にひらめきが、この場を打破するための直感が舞い降りた。彼は殆ど無意識のまま叫んだ!

 

「杖と剣とナックルダスターを持ってるやつ以外、全員()だ!斬って良い!」

 

「そうにござるか。」

 

 ソウジロウは風が吹くようにさらりと答えた。……しかし、そこから始まったのは殺戮であった。悪鬼羅刹の通り道、僧侶も顔をそむける地獄の次第。サムライが男たちに近づいていった。

 

「来るのか、テメ……。」

 

 斧使いの男が言い終わる前に寸断された。手に構えた斧ごと身体が真っ二つになり、言葉を言い終わることもできなかった。それを見てようやくバリーと短剣使いも理解した。ヤバイ、と。

 

「デメケン共を盾にしろ!」

 

「おう!」

 

 バリーの掛け声とともに、アンプルを拘束したまま二人が移動する。デメケンたちは一瞬、襲うべき相手に迷うが向かってくるソウジロウの方を脅威と認めたようであった。

 

「グギャラララアア!!」

 

「……。」

 

 ソウジロウは無言のまま、デメケン共を斬り倒していく。素手であった時とは比べるべくもない速度である。一呼吸の間に三体は倒し、さらにそれが止まらない。フラスコは倒れ伏しながらそれを見て理解した。綺麗な太刀筋でもなく、華麗な剣術でもない。あれは膂力に任せた力業の一撃である。ただ振り回しているだけ……。だがそれが並外れている。圧倒的な膂力でどんな物だろうと関係なく叩ききっている。

 

 一瞬のうちにデメケンたちは全滅した。しかしそれをバリーたちは予測していたようである。仲間のうち一人が吹き矢を構えた。たらり、とその口から液体が漏れたのを見た。毒矢だ!フラスコはそう思った。

 

「やれ!!」

 

「ふっ!!」

 

 フラスコが警告を発する暇もなく吹き矢がソウジロウに迫る。しかし……なんということだろうか。ソウジロウは後ろから剣を大きく振り回し……まだ広まらぬ球技べーすぼーるのように……吹き矢を打ち返した!

 

「ふんでござる!!」

 

「え、あ。ゴボ……。」

 

 奇妙な声と共にその男は倒れかける。しかし目の前に迫ったソウジロウを見て短剣に手をかけた……瞬間、その腕はソウジロウが振り回す直剣に叩き斬られた。ソウジロウはそれを見ても無表情……いや街中の喧嘩と変わらぬ風である。その顔を見てフラスコは今まで感じた恐怖以上の物をソウジロウに感じた。この男は、何かが違う。

 

「むっ!?」

 

「でやああああ!」

 

 アンプルを放り出し、槍でバリーが殴り掛かってきた。この時ソウジロウは初めて剣で防御をしたが、剣が中ほどから崩れ落ちた。ソウジロウの無茶苦茶な力と使い方に耐えられなかったのだ。

 

「え、へへへえ!武器がなくなったな!それじゃどうするよ!」

 

「ふむ、困ったでござる。」

 

 ソウジロウはさりげなく足元の死体から短剣を取ろうとするが、槍を振って牽制される。ソウジロウは困ったように頬をかいた。

 

(武器がなくなった……不味い!バリーは他の二人とはわけが違う!確かな実力も持ち合わせている!)

 

 フラスコはそう思い、加勢をしようとするが武器がないのは彼も同じである。ボトルも傷を抑えて呆然とし、アンプルはぜえぜえと肩で息をしている。その間にバリーとソウジロウは互いに睨み合っていた。

 

「なあ、ソウジロウよぉ。ホントのとこ言うとな、依頼されたのはお前の殺しだけなんだよ。」

 

「それじゃ、なぜフラスコたちも巻きこんだのでござる。お前らは、ええと、確か友達とか言ってたでござろう?」

 

「ついでだよついで!いっしょにパーティー組んでんなら、巻き込むしかねえだろ!それにダンジョンの中は無法さ!お前らが殺されようが誰も責められねえ!なにせ証人が死んじまってるんだからな!」

 

「……。」

 

「おいおいどうした、怒ってんのか?イライラしてんのかぁ?ええおい!」

 

 その様子を見ていたフラスコは悟った、この野郎、ソウジロウを口車に載せようとしている。ビビっているのだ。圧倒的な力を前にして、口で怒らせ、宥めて、スキを突こうとしているのである。それに対して警告を発しようとしたが、その前にソウジロウが答えた。その内容はバリーだけでない。フラスコも、ボトルも、アンプルも唖然とさせた。

 

「いや、どうでもいいでござる。」

 

「は?」

 

「いや、拙者ダンジョン気に入ったでござる。()()()()()()()。金も稼げる。……拙者こういうわかりやすいのが好みでござる。」

 

「つ、強がりを……言ってんじゃねえ!!」

 

 バリーは槍を強烈に突き出した。それはまさしく熟練の技であった。腰が入った一撃は手元で加速し、目にも止まらぬ神速の突きとなる。さらに狙いも寸分違わず極めて精確、ソウジロウの右目を狙った。兜も被っていないソウジロウにとって、それはまさしく一撃必殺となる事であろう。

 

 だがバリーの目からソウジロウが消えた。彼はばね仕掛けのように屈み、足元を何かゴソゴソと探っていた。必殺の一撃を躱されたバリーは焦るが、その一方で安心もしていた。

 

(な、なんて反応速度!だが、だがまだ手はある。コイツは短剣を拾うつもりだな!)

 

 バリーは足元に転がっていた短剣を遠くに向かって蹴り飛ばした。彼の口元ににやりと笑みが自然と浮かび上がる。奴の狙いを阻んでやった。機先を制してやった。

 

 彼は策謀を張り巡らせるあまりに、自身の考えが全てと思ってしまう悪癖があった。自分の予想外の行動をしてくるものがないと思ってしまっていたのだ。すなわちそれが()()であったのだろう。

 

 彼の目に映ったのは、大口を開けたデメケンであった。

 

「どりゃああああああ!!!!」

 

「は!!?デメケンの……死体だと!!?ぐう……。」

 

 彼は呻くが既に腕が痺れてきている。デメケンの牙にも毒はたっぷりと塗られている。なんとソウジロウはその死体を担ぎ、口を開けさせて武器としたのであった!

 

 しかし毒消し程度、ダンジョンに潜る者なら当然の備えである。彼は飛びのいて毒消しの瓶を飲もうとするが、ソウジロウの拳が飛んでくる。彼の下あごが揺れ、視界がぐらりと歪んだ。

 

「ぐ、ぎゃああ!!」

 

「うるせえでござる。」

 

 ソウジロウはバリーを引き倒し、馬乗りになって殴り続ける。その拳はいつまでも、いつまでも止まることはない。

 

「や、止めろ!()()!死んじまうから!許してくれ!」

 

「貴様が言ったのでござろう。」

 

「え……?」

 

 ソウジロウは一瞬拳を止めてからそのように言った。その顔は赤子に世の中の理を教える様に、当然と確信しているものであった。フラスコはそれを見て強烈な怖気を感じた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()……そう言ってたでござろう?因果応報、因果応報……。」

 

「ぐあ、お願……やめ……。」

 

「うひひひ、あっはっはっはあ!!!気に入ったでござる!!迷宮探索!!!」

 

 そう言いながらソウジロウはただの肉塊となったであろうバリーを殴り続けている。彼は本当に楽しそうに、心の底から笑っているようであった。

 

 軍人になったばかりの新兵が戦場にあてられて、倒した死体を傷つけ続けることがある。それとは似ているが彼は少し違っていた。正気の中で命の取り合いを行っている。彼にとっては戦場こそが居場所なのである。殺し殺されこそ生きる道であり、平穏な日常こそ疎外感を感じる異常なのである。

 

 多分攻撃をしたのが、だまし討ちをしたのが我々でも情け容赦なく殺されていただろう。フラスコはそれを悟り……心の内で思った。

 

(お、鬼だ……。ああいうのは人間じゃない。迷宮に住む魔物の側に近い者だ!)

 

 ソウジロウはしばらくの間、心の底から笑っていた。彼の下で、既にバリーは息絶えていた。

 

 

 

~ 6 ~

 

「成程……そんなことが。最初なのに大変な目にあいましたね。」

 

「そうなんでござるよ~。」

 

 ソウジロウはカウンターに寄りかかり、受付嬢に冒険の内容を報告していた。かいつまんで言えば、魔物をいくつか倒した、玄室に行った、他の冒険者ともめ仕方なしに討伐した。それだけでしかない。

 

 だから今はまだただの良くある話だと受け入れられていた。ソウジロウが周りに避けられ始めるのはもう少し先の話である。

 

「まあフラスコさんの証言もあります。貴方が罰せられることはないでしょう。」

 

「良かったでござ!」

 

 分かっているのか、分かっていないのか……。ソウジロウはそんな風に元気に返事をする。まあもとより理解する気がないのかもしれない。敵はぶちのめせばいい、最悪殺せばいい。彼の倫理観はそんな程度なのだから。

 

 さて受付嬢がさほど驚かない様に、実は迷宮の中での冒険者の殺し合いなど珍しくもないのである。魔物とも戦い、他の冒険者からの横取りも警戒し、さらに仲間からの不意打ちすら警戒しなければならない。最終的にはそういうことになる。なぜなら迷宮の中は無法なのだから。一応形ばかりの捜査がされるが、はっきり言って役には立たない。数人が口裏を合わせれば裁判にもならないのだ。

 

 ソウジロウのようなチンピラの方が生きやすい修羅の世の中とも言える。ところが、今回の報告で受付嬢は気になるところがあるようであった。

 

「闇ギルド……そんなものがあるとは初めて聞きました。ソウジロウさん、他に何かバリーは言っていませんでしたか?」

 

「え?拙者、記憶力には自信がない……。そうでござるな、やめてくれとか死にたくないとか……。」

 

「……。」

 

 生々しい話を聞かされ、受付嬢と周りの人間が顔をしかめた。相も変わらず空気は読めない男である。強いだけのチンピラ侍、ソウジロウ。ともかく彼は適職を見つけたようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。フラスコさんが次の冒険は勘弁してくれって言ってましたよ。」

 

「な、なんででござる!拙者が助けたのに!それに拙者武器も持ってないのにどうすれば……。」

 

「え?武器もなしに迷宮に行ってたんですか!?」

 

 受付嬢の叫びがギルドに響く。ソウジロウの戦闘時の笑い声とは違う、とぼけたような笑い声が響いた。

 

 

 

 

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