社長は活動休止中、しっかり私の椅子を守ってくれていた。
まあ、何というか。私が抜けている間の人気は低迷してたみたいだけど。
私の復帰直後からB小町は快進撃を遂げた。
まずは歌番組の生放送で活動を再開して。ライブハウスで歌って、ドラマに出演して、グラビア雑誌に載って、クイズ番組に出て、ドッキリ番組でドッキリを仕掛けられて。
ドミノ倒しみたいに段々と仕事が増えていった。
そして遂に20歳の誕生日にドームライブを成功させ、B小町は正真正銘伝説のアイドルグループとなった。
そして現在。
「お兄さん、今日はハンバーグ作って〜」
「また急にリクエストを……材料あったかな」
私の休日の過ごし方は、子供達と一緒にお兄さんと家で過ごす事。
伝説のアイドルになった私が不用意に外に出たら人だかりができて休みどころじゃなくなるからね。
「ミャコ姐さん。飯作る間子供達見ててください」
「はいはい」
お兄さんの手の回らない所を手伝ってくれるようになった社長の奥さんのミヤコさんも一緒。
私は家事全般が苦手であまり役に立たないんだ〜。
私の子供達の方が余程得意なの。遺伝しなくて良かった。
苺プロの名前は大手の事務所と肩を並べられるくらいにまで成長した。
そのおかげで、社長は急成長した事務所の舵取りで毎日大忙し。
所属タレントが増えて、社長1人じゃ制御しきれなくなってきて。
今は社長はアイドル部門、奥さんはネット部門。って感じでそれぞれ別分野の運営をしてるの。
ネットメインだから社長ほど動き回らなくても良いとはいえ。うちの子達のお世話までしてくれてるんだからホント感謝だよね〜。
ドームライブの頃までは社長がマネージャーを兼任してたんだけど、B小町にも遂にマネージャーがついたの。
でも、お兄さん以外にお世話されるのはどうしても嫌だったから、マネージャーはお兄さんじゃないとアイドル活動厳しいかもって脅しちゃった*
そしたら私専属のマネージャーってことで認めてもらえたんだ。経験ない人を全員のマネージャーには出来ないからって。
そのせいでまた私を贔屓してるって当時のメンバーとは更に溝ができちゃったけど。
でも今はそんな事ないんだ。だって、私は正真正銘伝説のアイドルになったから。
新しくB小町に加入する子達は、私に憧れて入ってくる娘が多い。
例えば今年得票数一位でセンターを取った娘もそうだった。
えっと、確か名前は……何だっけ?
「ハンバーグできたぞ。チビどもは離乳食な」
「はーい」
まあ、何でもいっか*
今はお兄さんのご飯の方が大事。
「ミャコ姐さんも食べていってください」
「毎日悪いわね」
「いえ、こっちの台詞です、本当に。毎日助かってます」
とはいえ、すぐに食べられるわけじゃない。
私達より先に、子供達にご飯を食べさせなきゃいけないから。
私たちは順番に食べて、子供の世話をローテーションで交代してるの。
赤ちゃんは危ないから食事中だとしても一時も目を離しちゃダメなんだ。
「ミヤコさん。お仕事の暇を見つけて手伝ってくれてるんだから、ホントありがたいよね〜」
「正直、アイに会ってから女は全員じゃがいもにしか見えてなかったんだけど。ミャコ姐はいい女だな」
「は?」
やっぱりこの
私が一番ってだけじゃ満足できない。私が100で、それ以外の人間が0。それが私の理想なの。
専属にしてもらってからは24時間私と一緒にいて、浮気には目を光らせてるけど。
まさか既婚者も危険だったなんて。失敗失敗。
「ちょっ……アイ?お前のリクエストでハンバーグ作ったんだけど……」
「ハンバーグなら後で食べれるよね?」
お兄さんを無理矢理立たせて、服を引っ張る。
いつからか姉さんって呼び始めたから、家族愛かと思って油断してたよ。
私もお兄さんを愛してるんだから、初めから間違ってたんだ。
お兄さんには、私以外要らないってこと。また1から教えてあげる。
*
「もー。ママってば相変わらずなんだから」
「もうあれはああいう病気だから仕方ないだろ」
「あ、それ知ってる。ヤンデレって言うんでしょ?」
「俗っぽい言い方だが。間違ってはないな」
「それにしても、
次男の
「まさかあれから9人も兄妹が増えるとはさすがに予想できなかったな」
「でもママ昔からたくさん家族が欲しいって言ってたじゃん」
「まさかこんな大家族を目指してたとは思わないだろ」
「それに関してはパパも悪いけどね〜」
「そういえば、今日もホテルで泊まりだとか」
「またパパが『ミャコ姐はいい女〜』とか言うからママも怒っちゃうんだよ」
「言わんとする事はわからなくもない。父さん1人じゃ手の回りきらない、俺たち11人の世話を手伝ってくれてるんだからな」
「ママは家事ド下手だもんね〜。昔からパパに全部任せてたとか」
「あれはあれで理想的な形なのかもしれん」
「今でもラブラブだもんね」
「こっちが恥ずかしくなるくらいにはな」
「パパ無事に帰ってくるかな?」
「まあアイも無理はしないだろ。お腹に
「そう言えば。パパが今回こそは俺の考えた名前を〜って張り切ってたけど」
「まあ今回も無理だろうな」
「パパがママに勝てる訳ないもんね〜」
「まさか将来この名前で良かったと思う日が来るとはな」
「羅陽須羅瑠璃ちゃん?くん?には悪いけど私も瑠美衣でよかった〜」
「ネーミングセンスが誰にも遺伝してないといいけどな」
「確かに〜。子供に名前つける時はみんなで考えよ?」
「ちょっと気が早すぎないか?」
「でも、ママは今の私達くらいの歳に私達を産んでるんだよ」
「どれだけ大変だったかは見てきてわかってるだろ。反面教師にしろよ」
「わかってるよ〜」
「本当かよ」
「それにしても。流石に三回目か四回目かの妊娠ですっぱ抜かれて大炎上した時は、ママのアイドル人生終わった〜!と思ったけど……」
「その後まさか、何度妊娠しても体型が崩れない奇跡の体って再ブレイクするとはな」
「ママもママで炎上とかあんま気にしないタイプだったのが良かったよね。社長ももう自棄で、経産婦だって個性だ〜!とか言い出しちゃうし」
「俺もこの事務所絶対終わったと思ったもんだが。まさかそれが跳ねるとは」
「今は女性人気も高いんだよ。ママだけ安産祈願系のグッズばっかり売れてるの面白すぎでしょ」
「七人目産む頃にはもう炎上というか。またか、って反応だったからな」
「多産系アイドルって何〜!?って笑っちゃったわ〜」
「プラシーボなんだろうが、本当にアイのステージを見に行った不妊治療中の夫婦は妊娠確率が上がっていたらしいからな」
「あ、その番組私も見た!やっぱりアイドルは人を救う職業なんだよ」
「お前も苺プロのアイドル候補生だもんな。やっぱりB小町入りを狙ってるのか?」
「勿論!今の目標は去年の人気投票1位のメムを超えること!」
「アイはいいのか?」
「私に殿堂入りは無理だよ〜。ママの票って他のB小町メンバー全員の倍はあるんだよ?」
「いつ聞いても圧倒的だな」
「長年の固定ファンを掴んでるからね〜。30超えてあの若さは反則だって」
「でも実はメムもそろそろアラサーという噂が……」
「えっウソ!?絶対ガセだよ〜」
「ちょっとルビー!アクアー!あんの色ボケ夫婦がいないんだからあなたたちも子供達見るの手伝いなさい!」
「はーい」
「しょうがないな」
斯くしてプロローグは終わり。新たな物語の幕が上る。
そして、俺達はそれぞれの目標へ向かって走り始める。
-完-
思いつきの短編とはいえ初めて完結まで持っていけました。
重くなりそうなので、最後は軽めのギャグテイストにしてみました。結構気に入ってます。
感想中毒という重い病気を患っているため返信ができず申し訳ありません。
この場を借りて謝罪と感謝を。ありがとうございました。