デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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新作です。


第1部
第1話 転生召喚符術師・伊月真緒


 

 199X年、とある世界で【大破壊】と呼ばれる未曾有の世界の危機が起きた。

 

 メシア教とガイア教の裏の世界での衝突とそれに乗じた様々な者達の暗躍がそれを助長し、世界は滅ぶかと思われた。

 しかしその時、3人の男がこの地に降り立ち、全てを薙ぎ払い世界を救ったとされている。

 

 彼らの名は、『ザ・ヒーロー』『ロウヒーロー』『カオスヒーロー』。

 彼らの活躍により、何やかんやあって全部殴り倒されて世界は救われた。

 

 それから、約10年後の201X年。

 舞台は、中国地方のある地方都市、『さくらの町』。

 

 表の世界は平穏ながらも、裏では人と悪魔の距離が近くなり共存する世界でこの話は始まる。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 神戸市内の市民病院の一室。

 入院しているらしい男性の着替えの入ったバッグをベッドの側に置いた男の子のような容姿の少女に、ベッドで半身を起こしたその男性は話しかけた。

 

             

「なあ、真緒」

 

「何、父さん?」

 

「父さんな、隠居しようかと思うんだ」

 

「隠居してどうすんの?」

 

「わしももう年だし、こうして交通事故で怪我をするくらい衰えた。

 だから、跡目はお前に譲って隠居しようと思うんだ」

 

「ねえ、父さん」

 

「何だ、真緒?」

 

 

 真緒と呼ばれた少女は、父と思われる神戸市の市民病院のベッドで右足をギプスに固定して吊るしている中年の男性をジロッと睨んで答えた。

 

 

「ボクさぁ、先月中学を卒業したばかりだよ?

 それに父さん、まだ50歳越えたばかりだよ?

 おまけに、その程度の怪我ならうちのでなくても【傷薬】飲めばすぐに完治できるよね?」

 

「…………」

 

「確かに、正式にこうして符術師になったよ。

 大学行って就職するより家業を継いだほうが儲かるというのもあるしさ。

 高校は行かずに、こうして父さんの会社の社員になったけどさ。

 何で隠居なんて言い出すのさ?」

 

 

 彼女に問いかけられて思わず視線を逸していた彼女の父である『伊月郁夫(いづきいくお)』は、娘である少女の方を向くと咳払いをしてこう言った。

 

 

「ゴホン。なあ、真緒。

 お前が5歳の時にあの“大崩壊”が起きてもう10年以上過ぎた。

 世界のあちこちでいろんな事が起こって、わしも地元の仲間と協力して生き残った。

 小学生になって符術の修行を始めて、お前はすぐに覚醒して父さん以上の素質を見せた」

 

「うん、憶えているよ。

 アメリカが核戦争を起こそうとしたとか、

 メシア教がそれに託けて地上を焼き払おうとしたとか、

 ガイア教が世界を儀式で作り替えようとしたか聞いたよ。

 でも、“3英雄”が全部何とかしたんだよね?」

 

「まあ、今の裏世界の常識だな。

 それでな、こうして車に撥ねられて病院に担ぎ込まれた時にな、夢の中で祭神様のお告げがあったんだよ」

 

「祭神様のお告げ?」

 

「声が聞こえたんだ。

 

 『いい機会だから、娘に跡目を継がせて護符作りに専念しろ、な?

  もうお前は伸び代もないし、年だから外回りの退治業は体がキツイだろ?

  娘が結婚して孫が出来るくらいまでは病気をしないようにしてやるから。

  悪いことは言わないから、な?』

 

 だ、そうだ。だから、頼むよ真緒」

 

「ああ、もう分かったよ。やればいいんでしょう、やれば。

 どうせ強くならないと、いつ世界の危機が降ってくるか分からないんだし」

 

 

 そう言うと、彼女は諦めたように項垂れて答えた。

 

 その髪をショートにしたボーイッシュな容姿の美少女の名は、『伊月真緒(いづきまお)』。

 

 神戸市の北にある『さくらの町ニュータウン』が、宅地造成で住宅地になり町になる前の集落の頃からその土地で異界を守護していた旧家の符術師の家系の娘である。

 そして、この世界がメガテンの世界であることに苦悩する転生者でもあった。

 

 

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 それから数日後。

 

 

「……と、そういう訳でそこの事故物件の除霊をして欲しいんですが……」

 

「……何か問題でも?」

 

「いや、いつも不動産屋さん経由で頼んだら来てくれる拝み屋さんではないんで。

 …あの坊や、本当に君に出来るのかい?」

 

「父は今、事故にあって入院中なんです。

 そんなに心配なら、近くの八幡神社の方に聞いてください。

 不動産屋さんだってそこの氏子の人でその紹介なんですから」

 

「……まあ、そこまで言うなら」

 

「それと…」

 

「それと?」

 

「ボクは女の子ですよ?」

 

 

 さくらの町の駅前からさほど遠くない場所にある築40年は経とうかという木造のアパートの前で、ここの大家らしい中年の男性と男の物の服を着ているせいで余計に少年にしか見えない姿の真緒はそんな会話をしていた。

 

 この事故物件は人死とかは無いにも関わらず数年前からアパート全体に“出る”ようになり、周囲の相場の半額ほどまで家賃が下がっている物件であった。数度のお祓いがあってもクレームは止まず、困り果てた大家は取引のある不動産屋から拝み屋を頼んだようだった。

 

 10年前の“大破壊”から裏側の治安を再興させた『ジプス』が全国に配置したこの町にもある『人外ハンター協会』支部。そこに所属する者たちは異界の攻略や悪魔退治は引き受けるが、変なプライドがあるのかこういう細々とした除霊は引き受けない傾向にあるのだ。

 

 だから地方でこういう依頼が出る時は、戦後のメシア教の“異教狩り”からも生き残った市井の拝み屋や除霊師が引き受けて細々と活動しているのだ。

 もちろん真緒の家もそうで、何でもメシア教に追われた曽祖父は家伝の秘伝書を持ち追跡から逃げ切ったという武勇伝を幼児の頃に何度も聞かされたのを憶えている。

 

 

「やあ、それはすまないね。

 そうか、あの拝み屋さんの娘さんか。なら、任せてみようかね」

 

「判って頂けたならいいんです。

 それじゃ、始めますね。出ておいで、ティコ」

 

 

 そう彼女が言って取り出した古びた犬の首輪を振ると、足元に大型犬くらいの大きさの雑種の犬が尻尾を振ってお座りして現れた。

 

 このティコと呼ばれる犬は昔、彼女の家で飼っていたペットの犬が【魔獣イヌガミ】となって彼女の初めての式神召喚で契約した悪魔である。全体的に茶色の柴犬に似た雑種で、額に白く星のような形の模様があるのが特徴である。

 

 大家さんには見えないらしく怪訝な表情だが、それに構うこと無く真緒はティコに命令した。

 

 

「ティコ、このアパートで出ている幽霊の場所が判る?」

 

『ワン!』

 

「犬の鳴き声が聞こえた! お嬢ちゃんが何かしたのかい?」

 

「うちで飼っていて、亡くなった後もこうして一緒にいてくれるティコです」

 

「へーっ、そんな事もあるんだねぇ」

 

「はい、ボクの大事な家族なんです」

 

 

 真緒と大家がそんな会話をしていると、嗅覚で周囲の悪魔の位置が分かる能力があるティコがアパートの一室の前でワンと鳴いた。その部屋の名札には『山田』と書かれている。

 

 

「あの大家さん。この部屋はどなたのですか?」

 

「ここは苦学生の山田さんの部屋だね。そう言えば、最近見てないね」

 

「この中に幽霊がいるみたいです。

 中に入ってみますので、大家さんはここで待っていてください」

 

「分かったよ、わしでも何か寒気がするからね。

 警察とかに連絡がいるようなら声を掛けてな、お嬢ちゃん」

 

「はい。ティコ、先頭に入って」

 

『ワン!』

 

 

 真緒が扉をそっと押すと、鍵は掛かっておらずにそのまま開いた。

 中からは、もう少しで小規模の異界になるような濃度のマグネタイトが流れてくる。

 犬のティコを先頭に部屋に入ると、若い男性と濃厚なキスをしている女性の幽霊がいたが「え?」とばかりに驚いて動きを止めた真緒を見て、女幽霊は男を背に庇うと真っ裸のまま立ち上がって襲い掛かって来た。

 

 

『ここは私の縄張りだよ。出ていけ!』

 

『ワン!』

 

『あいたた! この噛むんじゃない、クソ犬!』

 

「ティコ! えーと、レベル3【悪霊ポルターガイスト】。

 火と破魔が弱点なら!」

 

 

 殴りかかってきた幽霊の機先を制するように、ティコが幽霊の足に噛み付いた。

 見鬼でアナライズした真緒は、腰の御札用の特性ポーチから護符を取り出し掛け声を掛けた。

 

 

「六根清浄! 禁狐魅符、急急如律令!」

 

『あ、やばっ。ごめん、マスター。あああ、消えるー!』

 

「マスター?

 ええと、それはそうと男の人は、……うわぁ」

 

 

 弱点である真緒の札の破魔魔法を受けた女幽霊は、そのまま何か言うと消えてしまった。

 女幽霊が消えたことにより部屋の中ももとの1Kのアパートの部屋に戻り、男の安否を確かめようとした真緒は男の様子を見て赤面し視線を逸した。

 

 

「白目剥いて股間が凄い事になっているけど、生きているみたいね。

 すみません、大家さん。救急車をお願いします」

 

「大丈夫かい、お嬢ちゃん。

 ……これは若い娘さんが見るもんじゃないよ。今、呼ぶから外に出ておきなさい」

 

「すみません。もう危険はないのでお願いします」

 

 

 この場の事を大家さんに任せると、真緒は外に小走りで出た。

 「変なものを見ちゃったな」などと呟いていると、ティコがいつの間にかここの隣の扉から顔を出していた女性のジャージを噛み付いて引っ張っていた。

 

 

『ワン!』

 

「わわわ、なになに何? ちょっと、一張羅なんだから離してよワンちゃん」

 

「ティコ、何をしているの? いたずらは、……あれ」

 

 

 ティコが女性に噛み付いているのを止めさせようとした真緒だが、ふと見鬼で彼女を見ると【レベル5 ダークサマナー】と出ているのに気付いた。

 そして、彼女に話しかけようとして真緒がポーチに手を添えながら近づくと、カランと足元で何かが落ちた音がして二人ともそれを見た。

 

 

「あ」

 

「これ、スマホ型のCOMP! 犯人はお前か!」

 

「ご、ごめんなさい~~~~!!」

 

 

 スマホを拾い上げると、真緒はその女性を取り押さえた。

 こうして、この事故物件の除霊依頼は解決するのだった。




後書きと設定解説


・主人公

名前:伊月真緒(いづきまお)
性別:女性
識別:転生者(現実世界)・15歳
職業:中卒符術師
ステータス:レベル8・マジック型(魔・速)
耐性:破魔無効・呪殺耐性
スキル:神符作成(家伝独自の護符の作製技術)
    呪符作成(魔法の護符の作製技術)
    式神召喚(契約した悪魔の召喚術)
    封印の術(カードハント)
    見鬼(ハイ・アナライズ)
    薬草師(家伝独自の薬品の作製技術)
    符術の心得(符術使用時の威力や効果を強化する)
装備:ケブラーコート(霊装)
   鋭敏のピアス(精神無効付与)
   バイク用ヘルメット
   自転車(ママチャリ)
   ベルト付き札入れ用革ホルダー
アイテム:
 符を作成するための専用の筆と専用の紙と専用の墨
 肩がけの丈夫な黒い革のバッグ
 厚手の男物の服とジーンズ
 飼い犬の物だった首輪
詳細:
 道教系列の古流符術を継承する拝み屋の名家の生まれ
 明治に寺を辞め細々と活動していてメシア教を回避した
 6歳の時に父と修行開始して覚醒し、前世記憶も復活した
 前世は交通事故で死亡したオタ系の喪女OL
 山の麓にある先祖代々の屋敷で父親と2人で住んでいた
 子どもの頃から母がいないため家事や調理も器用に熟している
 容姿は2chやる夫派生の「ねらう緒」

・仲魔

名前:ティコ
性別:オス
識別:魔獣イヌガミ
職業:真緒の使い魔
ステータス:レベル6
耐性:火炎無効・破魔弱点・呪殺耐性
スキル:噛みつき(敵単体・小威力の物理攻撃)    
    敵感知(半径50mの嗅覚による敵感知)
    警戒(奇襲や先制攻撃を受けにくくなる)
    忠義の励み(経験値の取得量が増加する)
詳細:
 真緒が飼っていた雑種の犬が変化した使い魔
 体は薄茶色の体色で額に白い星マークがある
 肉よりドッグフードの方を好んで食べる
 人語は話せないので意思疎通は犬のしぐさ

・敵対者
     
【悪霊ポルターガイスト】
レベル3 耐性:火炎弱点・破魔弱点・呪殺耐性
スキル:九十九針(敵単体・小威力の銃属性攻撃)
詳細:
 事故物件に住み着いていた肉感的な女性の色情霊
 住居人の男性と懇ろになっていた

主人公のスキルは、TRPGの「式神使い」と「符術師」を混ぜた物となっています。


今回はメガテンぽい物のオリジナルが浮かんだので書いてみました。
次回は早めに。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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