デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。
第2部開始です。



第2部
第11話 悪魔合体と業魔殿


 

「それじゃ、真緒。

 わしは作った護符を納入したらそのまま寄り合いに出て、帰りは夜になるからな」

 

「分かった。

 ない世さんは今、有定さんの昼食の特訓中だけど、午後は神戸まで一緒に出かけるから。

 …それと夜までって、また一緒に飲んで喧嘩しないでよ?」

 

「分かってる、分かっているよ。

 入院中、死んだ母さんに枕元でさんざん叱られたからな」

 

 

 そう真緒と話すと父の郁夫は、仏壇の眼鏡を掛けまるまると太った人の良さそうな真緒の母の『やろうか奈』の遺影に挨拶をすると家を出ていった。

 

 真緒自身は生前の母の記憶はない。彼女が真緒の出産時に死亡しているからだ。

 もっとも母に関する記憶はと言うと、その後は毎年のお盆に帰って来て話をしているので『人のいい関西のおばちゃん』という死後の母親の印象しかない。

 

 

『包丁の持ち方はこうです。それだと、指を切りますよ?』

 

「……有定さん、お慈悲を。もう少しゆっくりとお願いします」

 

『鍋でそれを煮ている間に済ませるんです。はい、続けて』

 

「ああああっ、真緒さん助けて~」

 

 

 今年の夏に帰って来たら何を話そうか。

 それを楽しみにしつつ、「得意料理はレトルト」と宣っていたない世の悲鳴が聞こえる台所へと歩いて行った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱり、薪や炭で火加減を見つつ料理するのは無理があると思うんですが?」

 

「ガスコンロがあった方が楽なのは確かなんだけどね。

 うちの周りは星見山が近いから、ガス管やガスボンベがあると怖いんだよ」

 

「……異界から出て来るんですか?」

 

「そ。湧き潰しが足りないとね。

 もし、それでうちの敷地に侵入して戸外で触れてドカンとされたらたまらないし」

 

「…ああ~↑、はぁ~↓」

 

 

 そんな事を話しながら、真緒とない世は5月になって徐々に暑くなりつつある中を神戸市内に向かうために電車を乗り継いて移動していた。

 

 あの事件から2週間が経過した。

 

 実行犯は速やかに処断されたが、さらに日ノ本所長や裏で関わっていたらしい何人かにも処罰が掛かったらしい。所長は今度の夏のボーナスと給料が大幅カットされて涙目になったそうだし、実行犯達に資金援助していたらしい人物は家庭の危機になったそうだ。

 その辺の事をいい気味だと含み笑いしながら、織莉子が真緒に教えてくれていた。

 

『アメリカの歌姫「アリス・リデル」来日! 

 新曲の「Will you die for me ?」を引き下げての来訪を、プロデューサーのアクセラレータ氏は次のように~』

 

『先年、正式に債権管理機構の管理下に置かれたアルゴンソフト社に次いで、大手通信企業サイバース・コミュニケーション社の倒産が発表された。

 チーフテクニカルオフィサーにしてCEOであった氷川聡氏が数年前に会見後に行方不明になって以来、残された社員たちは~』

 

『アメリカメシア教と欧州キリスト教の正式会談、東京で行なわれる。

 宗教間の争いでテロまで引き起こした両宗派であるが、この度、日本一神教教会代表の九頭竜天音氏の仲介により、アメリカよりローラ・スチュアート主教と欧州からはエンリコ・マクスウェル司教が来日されて恙無く行なわれ~』

 

 GWに入り人の減った昼間の電車内で、肩に持たれてウトウトとしているない世をそのままにして真緒は携帯で最近のニュースを調べていた。そして、とても聞き覚えのある名称の並ぶニュースを目にして頭が痛くなるのを押さえていた。

 

 

「す~は~、よし。ない世さん、起きて。降りるよ」

 

「……むはっ。

 あ、ああごめんなさい。降りるんですね。ここはどこだろう?」

 

 

 そうしている内に目的地の駅に着いたので、真緒はない世をゆすり起こすと不思議な顔をしたままの彼女の手を引っ張って電車を降りるのだった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ここだよ」

 

「ここですか」

 

 

 彼女らがいるのは、兵庫県で一番高いビル『シティタワー神戸三宮』のすぐ隣りにある雑居ビルの1階にある不動産会社『ブラックリベリオン』の事務所であった。

 真緒に導かれてない世はドアを開けて中に入ると、中には数人の若者たちがおり、受付らしい赤い髪の胸の大きい女性が話しかけてきた。

 

 

「いらっしゃい。何かお部屋でもお探しですか?」

 

「こんにちは、カレンさん。“ゼロ”さん、居ます?」

 

「あ、伊月さんじゃない。久しぶり。いつも悪魔カード、ありがとうね。

 社長なら地下で研究中よ。全く、諦めが悪いったら」

 

「ははは。今日は、こっちの彼女の仲魔の悪魔合体をお願いに」

 

「あら、彼女もサマナーなのね。地下はそっちだから」

 

 

 目を白黒とさせているない世を引っ張り、事務所の奥の扉を開けて奥の階段を降りていく真緒。

 地下の扉を開けるとそこには、複数の人間も入れる大きさのガラスケースと中央の魔法陣にそれらが有線で繋がっている大きな機械があった。

 そこの近くには、端末の置かれた机に向かって何か書き物をしている紫の瞳で黒髪の細身の男性がいた。

 

 

「…やはり、妖精と女神の組み合わせが…。ええい、カドモンが手に入らない今の状態では…」

 

「こんにちは、ルルーシュさん。よろしいですか?」

 

「ん? 客か? 少し待て、今準備をする」

 

 

 そう言ってその男性は立ち上がると、奥の部屋に入って何やらゴソゴソとし始めた。

 訳が分からず混乱しているない世といつもの事と平然としている真緒の前に、独特のデザインの黒いマントとフルフェイスヘルメットのあるデモニカスーツを来た先程の男が現れた。

 そして、バサリとマントを翻すと彼は高らかに宣言した。

 

 

「フハハハハ、よくぞ来た! 悪魔合体師ゼロの館【業魔殿】にようこそ!

 さあ、希望を言うがいい!」

 

「今日は彼女の仲魔の合体をお願いします」

 

「……え? ええ? 私のですか?」

 

「そうだよ。そのために今日はここに来たんだから」

 

「では、COMPを預かろう。…ふむ、レベル8か。なるほど」

 

 

 ない世が思わずCOMPを指し出すと、ゼロはそのまま受け取りPCに繋げて仲魔の様子を見出した。

 ゼロの後ろ姿と真緒の顔の両方を不安げに何度も見るない世に、苦笑した真緒は彼の紹介を始めた。

 

 

「ない世さん、彼は【ルルーシュ・ランペルージ】さん。

 ここの業魔殿の主であり一流の悪魔合体師で、少し変わった趣味がある人だよ」

 

「少し変わった趣味とは面白い表現だが、これは趣味ではないぞ。

 生涯をかけて達成すべき研究なのだ!」

 

 

 真緒の言葉に振り向いて言うゼロ。ジト目で答える真緒。

 

 

「カレンさんに聞きましたよ。

 東京にいる時に、親友の男性と実の妹さんがつきあい出したから始めたって。

 居づらいからわざわざ神戸まで越して来て、造魔で【理想の妹】を作ろうとしているって」

 

「カレンめ、余計な事を話したな。

 だが、俺は止まらんぞ。我が友ヴィクトルが理想のメイドを手に入れたのだからな!」

 

「でもそれで、妹さんから電話もSNSもブロックされているらしいじゃないですか。

 奥さんのシャーリーさんも構ってくれないって愚痴っているそうですよ?」

 

「おおお、ナナリィィーーー! すまん、シャーリーーーッ!」

 

 

 ヘルメットを脱いで滂沱の涙を流し、絶叫するルルーシュ。

 ない世が混乱してワタワタとしている間に、一通り叫んで落ち着いたのかヘルメットを被り直してゼロはない世に聞いてくる。

 

 

「ふう。さて、こいつらはそれぞれ長所を伸ばす感じでレベル8にすればいいのだな?」

 

「……え、え? あ、その通りですけど、なんなんですか!?」

 

「ない世さん、彼はこういう人だから流してね。

 この業界、変わった人は多いからいちいち驚いていたら身が持たないよ」

 

「出来たぞ。確認しろ」

 

 

 ゼロがスマホ型COMPを渡してきたので、受け取ったない世は中を確認した。

 【悪霊ポルターガイスト】だった女幽霊は堕天使と合体し【夜魔リリム】に、【魔獣カソ】は妖獣と合体し【地霊カハク】になった。

 共にレベル8で、物理スキルと火炎スキルが強化されていた。

 

 

「……出来てる。じゃあ、あの装置は一体?」

 

「あれか? 実際にあれでも合体は出来るが、主に見栄え用だな。

 COMPがあるなら、デビオクや悪魔全書から相手を見繕ってさっさと出来るしな。

 まあ、稼働の問題もあるしあっちでやってくれという客もいるから、年に数回は動かしているぞ。

 ほら、これが今回の明細だ」

 

「はい。じゃあ、これで」

 

「確かに、ご利用感謝する。

 ああそれと、仲魔と話をしたいならここでしていけ。

 外では出来ないからな」

 

 

 真緒が今回の支払いをする横で、ゼロがない世に助言をしてくれた。

 

 

「……ああ、確かに人前で呼び出すわけにいきませんからね」

 

「そうじゃない。

 隣に54階建てのでかいビルがあっただろう?

 あれはタワーマンションでもあるし、ジプスが建てた結界装置でもある。

 あれの周囲ではマグがどんどん吸われて、レベル20以下の悪魔は顕現も近寄る事も出来ん。

 サマナーなら気をつけろ」

 

「は、はい!」

 

「COMPや契約で紐づけているなら召喚は短時間なら出来るとは思うが、異界内以外では止めた方が賢明だろう。

 ああ、ここは自前の結界内だから影響はない」

 

 

 一通り、助言が終わったのを見計らって真緒が声を掛けた。

 

 

「ない世さん、呼び出すのはうちに帰ってからにしよう。

 彼の研究の邪魔をするのも悪いし」

 

「え、あ。そうですね。今日はありがとうございました」

 

「うむ。では、新人サマナーよ。強くなってからまた訪れるがいい。

 さらばだ、フハハハハ」

 

 

 彼の哄笑を背中に聞きながら地下を出て、地上の社員の人たちに挨拶をすると真緒とない世は外に出た。

 駅へと向かう途中、ない世が真緒に尋ねた。

 

 

「……真緒さん。

 今日の彼といいアーチャーさんといい、こっちの業界の人って変な人が多いんですか?」

 

「こっちの業界で店を持っている人に多いのは確かだね。

 あと、ない世さんはまだ会っていないけど知り合いにはもっといるから。

 いずれ、顔つなぎで紹介するからね」

 

「か、勘弁してください~~っ!」

 

 

 真緒の容赦のない言葉に、泣き顔のない世の叫びが夕方の神戸に木霊した。




後書きと設定解説


・関係者

名前:伊月郁夫(いづきいくお)
性別:男性
識別:異能者・52歳
職業:拝み屋/占い師
ステータス:レベル9(成長限界)
詳細:
 拝み屋と占い師を生業にしていた主人公の実父
 物語直前に無免許運転暴走車の交通事故で大怪我
 娘の関係もあり町内の霊能組合の相談役でもあった
 娘を生んだ妻が出産で亡くなり再婚はしていない
 妻は霊能力のあった一般人で名前は「やろうか奈」
 容姿は2chやる夫派生の「いく夫」

名前:生江ない世(なまえないよ)
性別:女性
識別:異能者・23歳
職業:伊月印刷従業員
ステータス:レベル6→8
耐性:破魔無効・魅了耐性(装備)
スキル:COMP使い
    民俗学(アナライズの解析率が上昇する)
    アドバイス
     (敵にクリティカルを与える確率が上昇する)
    コーチング
     (敵からクリティカルを受ける確率が低下する)
    食いしばり
     (HPが0になった際、自動的にHP1で復帰する)
装備:COMP(正規品。アナライズ、マッパー、エネミーソナー)
   ケブラージャケット(霊装)
   紫水晶のアミュレット(魅了耐性)
詳細:
 主人公の仲間になった元ダークサマナー
 整った顔立ちだがスタイルも凡庸でリボン以外特徴のない容姿
 元々、大卒時に就職に失敗し悪友の手引でこの道へ来た
 数度目の仕事で見事に失敗して友人は逃げ途方に暮れていた
 主人公に現場に放り込まれ続けて戦闘にも慣れつつある
 容姿は2chやる夫派生の「生江ない世」

名前:ルルーシュ・ランペルージ
性別:男性
識別:覚醒者・20代
職業:業魔殿神戸支部長
詳細:
 ヴィクトルの同志を名乗る悪魔合体師の変人
 「究極の妹」を探して造魔の研究をしている
 仕事時はテンションが高く会話にコツがいる
 妹のことでかなり情緒が不安定になっている
 嫁にシャーリーがいて実妹にはウザがられている
 容姿はコードギアスの同名の彼

・仲魔(ない世)

【悪霊ポルターガイスト】
レベル4 耐性:火炎弱点・破魔弱点・呪殺耐性
スキル:九十九針(敵単体・小威力の銃属性攻撃)
詳細:
 生江ない世のCOMP仲魔
 事故物件に住み着いていた肉感的な女性の色情霊
 住居人の男性と懇ろになっていた
↓+堕天使
【夜魔リリム】
レベル8 耐性:氷結弱点・衝撃無効
スキル:夢見針(敵単体・小威力の銃属性攻撃。
        低確率で睡眠付与)
    吸魔(敵単体・小威力の万能属性MP吸収)
詳細:
 生江ない世のCOMP仲魔
 元は肉感的な容姿の女性の色情霊の悪霊
 堕天使と合体して念願の夜魔になった

【魔獣カソ】
レベル4 耐性:火炎耐性・氷結弱点
スキル:アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃)
詳細:
 生江ない世のCOMP仲魔
 火を体に纏ったハムスターのような姿の悪魔
 好物もハムスターと同じもの
↓+妖獣
【地霊カハク】
レベル8 耐性:火炎耐性・氷結弱点・衝撃弱点
スキル:アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃)
    マハラギ(敵全体・小威力の火炎属性攻撃)
詳細:
 生江ない世のCOMP仲魔
 蝶の羽と白い中華服の褐色肌の少女の姿
 妖獣と合体して地霊となった
 今だにネズミの感覚が抜けていない

次回は、早めに。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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