デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。
この世界のメシア教会について少し触れます。


第12話 新たな覚醒とメシア教会

 

「……あれ? ここはどこだろう? 何でボクは裸で?」

 

 

 真緒は気が付くと、見知らぬ場所に立っていた。

 そこは、辺り一面の草原と満天の星空がどこまでも続く心地よい風が吹く草原であった。

 真緒はそこに一人、何も身に着けないまま立っていた。

 しかし、不思議と不安感や羞恥心が湧いて来ず、これは夢なのだと理解できていた。

 

 

「確かない世さんの仲魔を合体させて、その力を確認するために星見山の異界に潜って、……それから?」

 

『案ずるでない、我が愛し児よ。

 汝が身体は今も自室の床にて眠っているぞ』

 

 

 真緒が振り向くと夜空から一冊の書が降りて来て、真緒の目の前に浮遊している。

 その薄く輝く書物は、真緒が護符を作る際にはいつも目を通している家伝の書【感応秘密修法集】であった。先程の声はこれからしたようだ。

 

 

「えーと、祭神様かな?」

 

『いかにも。汝の家が符術師として奉ずる【鎮宅霊符神】なり。

 今宵は汝と語らいたく想い、参る事にした』

 

「こんばんは、神様。今日は何の御用でしょう?」

 

 

 真緒が尋ねると、その声は早口で語り出した。

 

 

『うむ、まずは汝の偉業を褒めるとしよう。

 よくぞ術者としての壁、当世風に言えばレベル10の壁を越えた。見事なり。

 古くは戦国の頃に星田より分かれ始まる汝の家は、徳川の世の頃から徐々に素質が下がりここ数代まで殻を破る者はいなかった。

 さらに、化外の地から来た天使教の者共により、営々と築いた我が霊地も一旦途絶えるなどの災難にもあった。

 なれど、そなたは見事に達成したのだ。誇るが良い。

 さらには、祖先でも何人かのみ可能に出来なかった符や心得や薬術を身に着け、敵を倒し調伏して回った事は誠に見事であったと言えるだろう』

 

「ああ、えーと。ありがとうございます?」

 

『謙遜する必要はない。

 その祝賀として、褒美をいくつか本霊より授かって来た。

 一つは、本霊の加護だ。

 主に厄除けと無病息災、要は体を頑丈にし運を良くするものだ。

 もう一つは、正式な道士の服だ。

 汝の持つ霊装の外套に手を加えて作ったので受け取るといい。

 さらには、新たな壁を越えるごとに貰えるように言質も取ってきた』

 

「はあ、まあ。これもありがとうございます」

 

『うむ。

 これも、本霊と北斗星君殿と妙見菩薩殿に頭を下げて教えを乞いた甲斐があったというものだ。

 【優秀な信徒の子孫を得るには素質のある魂を異世界から招く異世界転生に限る】

 流石は「なろう小説」とかいう当世の文化に詳しいアマテラス殿の助言もあったればこそだ。

 日本神も侮り難し。これにも感謝するしかないな』

 

「ちょっと待って。聞き捨てならない文言が!」

 

『ああ、いかんな。もう夜が明ける時間だ。

 楽しい時間は過ぎるのが早いものだ。

 後は、そなたが優れた力を持つ婿を迎えれば全てが安泰になるだろう。

 ではまた、新たな壁を越えたその時に逢おう。さらばだ!』

 

「だから待って! こっちの話も聞いて~!」

 

 

 思わず腕を振り上げて叫ぶ真緒だったが、そのまま彼女は腕を振り上げて寝ていた布団から上半身を起こして改めて夢だったと気が付いた。

 周りを見るとまだ薄暗く、壁掛けの時計の針は午前4時を指していた。

 

 ふと枕元を見るとそこには、神棚に収めてあるはずの符術の書の『感応秘密修法集』と薬学の書の【家伝注釈・本草綱目】が鎮座しており、その横には黒い色の映画などで見た道士の服が帽子とズボンと靴もセットで畳んで置かれていた。

 はっと気が付き壁にかけておいたケブラーコートを見るが、そこにはハンガーしか残っていなかった。

 得意げな祭神の顔を見た気がして、呆然としていた真緒はポツリと呟いた。

 

 

「こんな派手なのを町中では着れないし、何より自転車が漕げないよ」

 

 

 その日の朝食でせっかくだからと、枕元の【道士袍服】を靴以外を着て報告がてら見せた郁夫、有定、ない世の第一声はこうであった。

 

 

「ほう、祭神様がなぁ。似合っているぞ、真緒」

 

『よくお似合いですよ、お嬢』

 

「……わぁ。

 似合っていますけど、チャイナドレスをくれるとか変わった神様なんですね」

 

「うちの神様、中国の道教から日本に来て陰陽道に取り入れられた神様だもの」

 

 

 ピントのずれたない世の感想に真緒が返していると、カハクやルビーに花子さんは興味深げに服の袖や右腰の深いスリットの事などを気にしているようだった。

 祭神様の転生に関する部分を除いた話を真緒から聞き、感慨深げに郁夫が言った。

 

 

「そうか。真緒は壁を越えられたのか。

 わしも祖父さんも、家伝の書を守り切った曾祖父さんもついぞ越えられなかったんだがなぁ。

 真緒、お前は本当に自慢の娘だよ」

 

「やだな、お父さん。皆んないるんだから止めてよ」

 

 

 赤くなって照れている真緒に、郁夫は続ける。

 

 

「そんな自慢の娘にちょうどいい依頼が来ていてな。

 町のメシア教会なんだが?」

 

「お父さん、また?」

 

「ああ。

 寄り合いで聞いたんだが、あそこの養護施設のばあさんシスターがまた腰をやったらしくてな。

 ああいう慢性的なのは、魔法や魔法薬でも一時的にしかならんからなぁ」

 

「分かった。

 これ着替えて食べ終わったら、すぐに行くね。

 ない世さん、出かけるから汚れてもいい服に着替えてね」

 

「……むぐ。え? どこに行くんですか?」

 

 

 朝食を食べ始めていたない世に真緒は告げた。

 

 

「この町のメシア教会が経営している児童養護施設」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……あ、見えてきましたよ。あれがそうですね」

 

「うん、そうだよ。あそこが知り合いの人が神父をやっている教会だよ」

 

 

 町の北側の住宅街の外れ、空き家が目立つ一角にそこそこ大きい教会とそれに付随して立っている児童養護施設の建物があるのが見えてきた。

 

 真緒たちが近付いて見ると、施設の方はまだきれいなコンクリート製の建物であったが教会の方は築数十年は経過しているのが彼女らにも判るほどボロボロの木造の教会であった。周囲がよく掃除されているので、まだ人が使っていると解るレベルである。

 

 その教会の入り口で、真緒たちがよく知っている女性が箒を持って掃除をしていた。

 

 

「……あれ、御国さん。こんにちは」

 

「あら、真緒さんと生江さん。こんにちは。どうかされたんですか?」

 

「施設のまとめ役のヨランダさんが腰をやったと聞いたので、手伝いに来たんです。

 御国さんこそ、どうしてここに?」

 

「ここの教会は資金不足でメシア教が経営していますけど、宗派関係なく祈りに来ていいと神父様が言っているので私もクリスチャンなので助かっているんです」

 

「ボクたちも父に言われて、お手伝いに来たんだ。

 うちの父はこの町の霊能関係の寄り合いの相談役だからね」

 

「ああ、そうでした」

 

 

 ポンと手を打って納得している織莉子のもとに、金髪碧眼のシスターの少女が走ってやって来た。

 

 

「織莉子さん、すみませんがお昼のご飯の用意を手伝ってください!

 あれ、この方たちは?」

 

「伊月家の真緒です。こっちは、うちの生江ない世さん。

 父からヨランダさんがまた腰をやったから手伝いに行ってくれって」

 

「わ、助かります。私はこの春にここに就職したノーヴァです。

 子ども20人は、さすがに私と神父様だけじゃ見守りしきれないので」

 

「ほら、ない世さんも行こう。

 有定さんに受けた家事の特訓の成果の見せ所だよ」

 

「……普通の家の家事とこういう場所は違うと思うんですけど~」

 

 

 ぶつぶつと言っているない世を連れて、先に行った織莉子とノーヴァに続いて真緒も中に入って行った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 数時間後。

 嵐のような昼食の時間が終わり小さい子たちが昼寝の時間になって、ようやく休憩の時間になった。

 体力が尽きて子供たちと一緒に倒れているない世は別として、ぐったりとしている織莉子とまだ余裕のある真緒はノーヴァが淹れてくれた麦茶を応接用の部屋で飲んでいた。

 彼女らの向かいのソファには、ノーヴァと並んでカソックを着た白い面長の顔の神父が座っていた。

 彼は同じようにちびちびと麦茶を飲みながら、真緒たちに話しかけてきた。

 

 

「いや、本当に助かったよ。

 業者の人は調理や食器の洗浄はしてくれるが、配膳やなんかはこっちの仕事だしね。

 ヨランダさんがいかに上手くやっているかよく理解ったよ」

 

「相変わらずここは忙しいですね。できない夫さん」

 

 

 彼女らの前にいるのは、この教会の神父である【派速出できない夫】。

 ここが地元の出身で高校卒業時に上京して前は別の場所で友人たちとハンターチームをしていたが、両親が事故で亡くなり人手に渡る前に戻って来て相続したカトリックの神父である。

 

 そして、その際の高額の税金や借金の肩代わりをメシア教会が行ない、代わりに派遣されてきたのが彼の隣に座る【シスターノーヴァ】であった。

 彼女自身はメシア系の神学校を出たのはいいが、メシア教の過去の所業のせいで就職先がなく唯一あったハニトラ募集に飛びつきここに派遣されたという事情があった。

 

 2人に共通して言えるのは、金の問題がなかったらメシア教とは縁を切りたいの一点である。

 昔を懐かしそうにしながら、真緒にできない夫は話を続ける。

 

 

「あの『おにーちゃん、おにーちゃん』言っていたちっちゃかった真緒ちゃんが、こんなにも立派になるとはなぁ。

 偉いぞ、真緒ちゃん」

 

「ボクのそういう事は言わないで下さいよ。

 昔のこと、父たちから聞いているんですよ。お二人にバラしていいんですか?」

 

「やめてくれ、真緒ちゃん」

 

 

 クスクスと笑っている織莉子の横で、ノーヴァが興味深げに尋ねてきた。

 

 

「それは興味ありますね。お二人は知り合いなんですか?」

 

「近所のお兄さんと幼児でした。

 できない夫さん、ボクが幼稚園の頃にこの辺りのワルを〆て回る番長だったんですよ。

 リーゼントして作業着にポンタン着てバイクに乗って、平成の時代なのに」

 

「やめて」

 

「それでビッグになってやるって、高校卒業したら町を飛び出したんです。

 でもご両親が亡くなって教会が危ない時に戻って来て……」

 

「それ以上は本当に止めてね、真緒ちゃん。オネショの話、バラされたい?」

 

「それは卑怯ですよ、できない夫さん! セクハラです、セクハラ!」

 

「死なば諸共だから、ね?」

 

 

 お腹を抱えて俯いて震えるノーヴァと向こうを向いて震えている織莉子を余所に話は続く。

 

 

「まあ、とにかくヨランダさん。2、3日で戻ってくるって言うからしばらく頼むよ」

 

「ない世さんのためにもいい経験ですし、父の依頼でもあるし頼まれました。できない夫さん」

 

「…わ、私も…ぷ。で、出来るだけお手伝いに…く、来ますね」

 

「ありがとうございます。

 でも、織莉子さんは無理しないでいいですからね」

 

「は、はい。……くすっ」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 施設の夕食の時間が終わり、真緒とない世は自宅に帰るために日が暮れていく住宅街の中を歩いていた。

 途中でダウンしていたない世は、今もフラフラとしながら歩いておりそれでも疑問に思ったのか問いかけてきた。

 

 

「……ねえ、真緒さん。

 あそこのメシア教会って、話に聞いていた場所と全然違うんですけど」

 

「それはこの町の教会が出来た経緯が経緯だからね。

 その上、『信仰の為なら何をしても許される』とか言っていた連中は10年前に日本から追い出されたしね」

 

「追い出したんですか?」

 

「うん。ボクも聞いた話だけど、天使は皆殺しにしたって。

 トップの7大天使はザ・ヒーローがアメリカで丹念にすり潰したせいもあるけど」

 

「ひえっ」

 

「それから、ロウヒーローが彼らの心が折れるまで説教したから大人しいんだって」

 

「ヒーローの人たちはすごいんですね。説教だけで天使の心を折るなんて」

 

「そうだね」

 

(それにしても、そんな事が【餃子にされた彼】に出来るとは思えないんだよなぁ。

 この世界の『ヒーローたち』って誰なんだろう?)

 

 

 そんな事を言いつつ、彼女らは家へと帰って行った。




後書きと設定解説


・主人公

名前:伊月真緒(いづきまお)
性別:女性
識別:転生者(現実世界)・15歳
職業:中卒符術師
ステータス:レベル8→10・マジック型(魔・速)
耐性:破魔無効・呪殺耐性
スキル:神符作成(家伝独自の護符の作製技術)
    呪符作成(魔法の護符の作製技術)
    式神召喚(契約した悪魔の召喚術)
    封印の術(カードハント)
    見鬼(ハイ・アナライズ)
    薬草師(家伝独自の薬品の作製技術)
    符術の心得(符術使用時の威力や効果を強化する)
    星宿神の加護 new!
装備:道士袍服(霊装)new!
   鋭敏のピアス(精神無効付与)
   バイク用ヘルメット
   自転車(ママチャリ)
   ベルト付き札入れ用革ホルダー
アイテム:
 符を作成するための専用の筆と専用の紙と専用の墨
 肩がけの丈夫な黒い革のバッグ
 厚手の男物の服とジーンズ 
 ケブラーベスト(霊装、予備)
 飼い犬の物だった首輪
詳細:
 道教系列の古流符術を継承する拝み屋の名家の生まれ
 明治に寺を辞め細々と活動していてメシア教を回避した
 6歳の時に父と修行開始して覚醒し、前世記憶も復活した
 山の麓にある先祖代々の屋敷で父親と2人で住んでいた
 子どもの頃から母がいないため家事や調理も器用に熟している
 10レベルに達して色々と新しい力を手に入れた
 容姿は2chやる夫派生の「ねらう緒」

・主人公のスキルとアイテム

【星宿神の加護】
 道教系の神で星宿神でもある鎮宅霊符神が一番期待している証
 メシア教などのせいで家が先細っているので大盤振る舞い
 主に厄除けと無病息災(ステータスの体と運が上昇する)

【道士袍服】
 主人公のケブラーコートに祭神が手を加えて作った道士用の浄衣
 黒色の冠巾、脚衣、手袋、雲履の一式が付属している
 「回避強化」のスキルと高い魔法防御が付与されている
 デザインはFF14の道士シリーズのものと同じ

・関係者

名前:派速出できない夫(ぱーそくでできないお)
性別:男性
識別:異能者・28歳
職業:メシア教さくらの町教会神父
ステータス:レベル22
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:ハマオン(敵単体・中確率で即死付与)
    メディア(味方全体・HP小回復)
    リカーム(味方単体・HP半減状態で蘇生)
    パトラ(味方単体・軽度の状態異常回復)
    ポズムディ(味方単体・毒状態を回復)
    回復プレロマ
       (自分の回復魔法の効果を強化する)
装備:銀のロザリオ(呪殺無効。家伝の一品)
詳細:
 地元の出身で主人公とは古い知り合い
 昔はやる夫、やらない夫、できる夫と組んでいた
 現在は神父をしながら児童養護施設長も兼任
 教会関連の治療や内向きな事務などを担当
 金髪碧眼で巨乳のシスターが理想の相手
 容姿は2chやる夫派生の「できない夫」

名前:シスター・ノーヴァ
性別:女性
識別:異能者・18歳
職業:メシア教さくらの町教会シスター
ステータス:レベル17
耐性:物理耐性・破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:マハンマ(敵全体・低確率で即死付与)
    ディア(味方単体・HP小回復)
    スラッシュ(敵単体・小威力の物理攻撃)
    薙ぎ払い(敵全体・小威力の物理攻撃)
装備:ブロードソード(メシア教製の片手剣型霊装)
   改造シスター服(適度にエロく改造された霊装)
   銀のロザリオ(呪殺無効。メシア教製)
詳細:
 メシア教から神学校卒業後の就職のために町に来たシスター
 金髪碧眼で白人の巨乳の美少女シスターという目立つ容姿
 メシア教関連の実務は彼女が仕方なく取り仕切っている
 個人的には物騒なメシア教からの寿退職を常に考えている
 容姿はやる夫スレオリジナルの「シスターノーヴァ」


墓参りが台風直撃で潰れたのでこんな時間に投稿です。

次は早めに。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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