デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。


第14話 高師やるめ

 

「……え、やるめちゃん?」

 

『あ、真緒さん! 真緒さんがどうしてここに?』

 

「それはこっちのセリフだよ。どうしてこんな所に?」

 

『うそっ!? わたしの言う事が判るの!?』

 

「それが解らないと、家業が成り立たないからね」

 

 

 真緒は、思わず顔見知りのレベル1【幽鬼ゴースト】となっている少女に話しかけていた。

 そして、話しかけられた『やるめ』と呼ばれた少女もまた自分の話す言葉が通じているのに気が付き驚いていた。

 

 これには理由がある。

 基本的に、人間と悪魔は会話が成り立たない。特に、幽鬼や悪霊などのダーク属性の悪魔はその傾向が顕著である。

 では、会話するにはどうすればいいか?

 

 まず一般的なものは、悪魔から同調させて話しかける場合と人間と悪魔のそれぞれがかなり波長が合う場合。これは人間が非覚醒の場合でも起きる現象で、覚醒して相手を認識できるなら会話できる可能性は上がる。

 ただし、よほどの事がないと仲魔には出来ないし、襲われる危険性が一番高い。

 

 一番簡単な方法は、COMPや悪魔召喚プログラムを手に入れる事。ただし、サマナーの素質となる魂の強さ、つまり『レベル』がないと会話できても仲魔には出来ない。

 さらにダーク属性の悪魔は、向こうが交渉に応じるつもりがある場合か“ダークマン”や“ジャイブトーク”のアプリを入れないと会話できない可能性がある。

 

 そして、最後は召喚者が人間でなく悪魔に近い場合か、専門の術を訓練して技術として会得し術師となる場合である。真緒の場合はこれの後者である。

 式神召喚の術を会得する際に、その中に幽鬼や悪霊を調伏するための技術として“ジャイブトーク”が含まれているのだ。

 ちなみに、戦後のメシア教の異教狩りによりその辺のノウハウが失伝して、ダーク悪魔の効率的な除霊が出来ない術者が日本には多々いるという事例も存在する。

 

 

「とりあえず、やるめちゃん仕事だからごめんね。ティコ」

 

『ワフ』

 

『……へ? うわ、ワンちゃん押さえつけないで! いたたた』

 

「後で話を聞くから。六根清浄、魔性封印」

 

『え、え? なに? あ、あああぁ』

 

 

 真緒は彼女をこの場から連れ出すべく、彼女をティコに抑え付けさせると柏手を一つ打ちカードへと封印した。その際、彼女と何かの繋がりを断ち切ったような感覚がかすかにあったが、真緒はそれに気付かずにカードを懐にしまった。

 そして、ドアの外の二人に声を掛けた。

 

 

「終わりましたよ。えーと、マサコさん」

 

「あら、もう。やだ、本当。

 女の子の姿が見えないわね。それで、この幽霊のワンちゃんは?」

 

『ワフ』

 

「この子はうちの子ですよ。可愛いでしょう?」

 

「まあ。雑種の子かしら、撫でられないのが残念ね。

 そうね。この子以外に気配はないみたいだし、お仕事終了ね」

 

「それじゃ、ボクは帰りますのでジライヤさんに連絡はお願いしますね」

 

「本当に助かったわ。

 うちの連中だと、武器だの火だの電撃だのでお部屋が駄目になっていただろうし。

 あと、もし成人した後でお金に困ったらうちのお店にいらっしゃいね?」

 

「あはは、考えておきます。それじゃ」

 

 

 部屋に入ってきて中を確かめたマサコに挨拶をすると、真緒はそのマンションを後にしママチャリを急ぎ漕いで家へと帰ったのだった。

 

 

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 そして、翌日。

 

 家の居間には真緒とやるめと呼ばれた幽霊の少女、連絡を受けて学校を休んできた希流子に真緒の父郁夫が揃って座っていた。また有定は、居間の様子が気になってうろうろしていたない世を強制的に連れて行き、空気を読んで奥の方で家事をしている様であった。

 皆が集まった所で、真緒から昨晩の事を聞いた郁夫が最初に話し出した。

 

 

「すると、君が娘の友人だった?」

 

『はい。真緒さんの友達だった高師やるめです』

 

 

 そう腰まで伸ばした髪を後ろで2つ分けにして纏めている制服の幽霊少女は、自分の名前を名乗った。

 

 彼女の名前は【高師やるめ(たかもろやるめ)】。

 

 真緒や希流子と同じ中学の同学年の生徒で、今年の初めの冬休みの間に繁華街の雑居ビルでいじめを苦に屋上から飛び降りて自殺していた女子生徒であった。

 学校内では目立たない普通の彼女がいじめを受けていたのは、去年の春からだった。

 切っ掛けは些細なことだったが、ただその頃から始まったのは確かだった。

 

 

「なんでそんな事をする前に、わたくしや真緒に何も言わなかったんですの!?

 そんなにわたくしたちは頼りない友人だった言うの!?」

 

『ごめん。助けてくれたのに本当にごめんね、希流子ちゃん。

 その時は、本当に何も考えられないくらいだったの』

 

 

 今は真緒が仮ではあるが使役していて触れられるやるめに、泣きながら希流子が抱きついていた。

 お互いにボロボロと泣いている様子を見ながら、自分も泣き出さないように我慢しながら真緒が話を促した。

 

 

「やるめちゃんが自殺した事件は、一人で飛び降りたという事になっているよ。

 虐めていたグループの連中は、事件との関連性が証明できなかったから卒業の日まで自宅謹慎になっておしまいだった。

 ボクや希流子も父さんや神主さんにも協力してもらって独自に調べたけど、あの時の中学の校長は頑として協力をしようとしなかったから結局、全部立ち消えになって卒業する事になったんだよ」

 

「娘の頼みだったし、わしも協力をしたんだが我々の調査でも詳しいことは解らなかった。

 君のご両親もあの後すぐに町を出ていった。

 辛いと思うがあの日、何があったか話してくれないかね?」

 

「やるめ、大丈夫ですの?」

 

「……うん。自分が死んでこんなに泣いてくれる人がいただけでも充分だよ。

 おじさん、あの日は……」

 

 

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 彼女が語ったのはどこにでも有りふれているようないじめの様子であり、彼女には死を選ぶ事になった地獄の体験であった。

 

 虐めていたグループのリーダーの名は【長谷川します乃(はせがわしますの)】。

 

 彼女も真緒や希流子と同じ中学の同学年の生徒で、地元では一番大きい会社の鶏卵や鶏肉を取り扱う『長谷川フーズ』の社長の一人娘だった。

 それなりの美少女だが『都会のお嬢様』に対する拘りがあったのか、髪型を縦ロールにしてかなりの金額を掛けたファッションをして取り巻きのグループを作ってと学校の女王を気取るような気位の高い少女であった。

 

 始まりは、些細な事であった。

 

 します乃の取り巻きの娘の一人が好きだった男子が、彼女らの行動を見て告白を断る際の言い訳に「俺は高師さんが気になっているから」と答えたのが始まりであった。

 やるめ本人に問い質しに行くも知らないからと当然のように穏当に返答されたが、原因はやるめだと決めつけていた彼女らは白を切って馬鹿にされたと考えて逆に激高した。

 

 そして、“いじめ”を始めた。

 

 徐々に噂や陰口を流して周りを無視させて孤立させて、次はやるめの持ち物を隠して壊して捨てて囃し立てて追い詰めた。

 

 そこまでいった所で最初の言い訳を言った男子が、女子の友人を通して別クラスのします乃とは対立していたグループの中心だった希流子と真緒に助けを求めた。

 

 町長で町一番の神社の神主の娘の希流子とその友人で他の女子とは別思考の考え方をする真緒の二人は、します乃も苦手としているからだった。

 

 正義感の強い希流子とそれに引っ張られて真緒も、他のクラスのやるめを助けるように動いた。

 

 人目がない所で、正面から彼女らに希流子と真緒は正論で諭して止めるように約束させた。

 これで止めるようならと、教師も当てにならないが最初から力づくはと考えた為にこのように行動したのだ。

 

 しかしこの中途半端な行動は、甘やかされた家庭で育ったします乃にはとても癇に障る行動であった。

 それは、エスカレートさせるには充分な引き金であった。

 

 癇に障ったします乃は、自身の彼氏だったギャル夫と友人たちに恥をかかせるように頼んだ。

 彼らが取った短絡的な行動は、やるめが一人の所を人目のない場所に無理やり連れ出して周りを不良たちで取り囲んでこう迫る事だった。

 

 『輪姦されるか自分から死ぬか選べ』、と。

 

 結果、やるめは彼らのたまり場のビルの屋上で自分から死ぬ事を選んだ。

 

 監視カメラなどない田舎の歓楽街では、彼らが関与した証拠は掴めなかった。

 自己保身に走った校長と教師に教育委員会は、いじめなど無かったと認めなかった。 

 また、結果を知ったします乃達は、知らぬ存ぜぬを決め込んで黙り込むことにした。

 

 そして、現在に至る。

 

 

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「ごめんね。ボクも変に甘く見たからこんな事になって、許してなんて言えないね」

 

 

 そこまで聞いた事で、自分の行動が彼女に死を選ばせる事になったと真緒もボロボロと泣いてやるめに抱きつき、希流子も含めて3人でしばらく泣き続けることになった。

 数十分後、やっと落ち着いてきたやるめに郁夫は話の続きを促した。

 

 

「辛いことを話してくれてありがとう。

 幸いと言っていいのか、実行犯だったキル夫とその取り巻きは娘の活躍でもういない。

 彼岸に行かず、まだこの世に残っていた理由を教えてくれないかね?」

 

『私の心残りは、“します乃”の事なんです』

 

「ふむ。

 もし恨みで凝り固まっていたら、『幽鬼』でなく『悪霊』になっているはずだが君はそうでない。

 他に理由があるのかね?」

 

『私、また私みたいな人が出ないように、死んでからずっと彼女の後ろで見ていたんです。

 しばらくして警察の人が何か知らせてきて、それを知った彼女の両親が喧嘩を始めたんです。

 弁護士の人が来て離婚の話し合いを始めて、何故か旦那さんが放り出されて終わりました』

 

「ああそういや、長谷川フーズが倒産していたな。社長のあいつ、追い出されたのか」

 

「父さん、知っているの?」

 

「面識はあるさ、町で一番大きい会社だったからな。それからどうしたんだね?」

 

『彼女、それで母親と町を出て神戸に移り住んだんです。

 そうしたら、神戸でまた裏路地にいそうな男性と付き合いだして、その男が私が見えるらしくてスマホを片手に殴りかかってきたんで逃げたんです』

 

「それで、こっちに戻って来ていたと」

 

『はい。真緒さんと希流子さんを探していたんです。

 彼女が、その男に言っていたんです。

 「私がこんな目に合うことになった原因のあの女どもを這いつくばらせたい」って』

 

 

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 真緒がやるめと出会っていた日の同時刻、神戸市内のラブホテルにて。

 

 そのホテルの一室に、大きな寝台の上で一戦交えて休憩しながら寝ているカップルがいた。

 女の方が枕元に置いてあったスマホを取り、天井に掲げながら隣の男に尋ねた。

 

 

「ねぇ、これがあればあの女どもを這いつくばらせる事が出来るのよね?」

 

「ああ。

 中身の方もお前に合う奴を用意しておいたぜ。

 あとは、その女どもをどうやっておびき出すかだな」

 

「そんなの簡単よ」

 

 

 女は上半身を起こすと、男に向かってニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「両方とも良い子ちゃんの優等生だったもの、やり方はいくらでもあるわよ。

 お金なら心配しなくても、私が何とかするしね」




後書きと設定解説


・関係者

名前:高師やるめ
性別:女性
識別:幽鬼ゴースト・享年15歳
ステータス:レベル1
耐性:破魔弱点・呪殺無効
スキル:引っ掻き(敵単体・小威力の物理攻撃)
詳細:
 いじめが原因で飛び降り自殺した少女の幽霊
 主人公が中学で見たいじめの被害者
 生前の名前は「高師やるめ」
 容姿は2chやる夫派生の同名のキャラ

すっかり忘れていましたが、感想の方は非ログインの方も出来るようにしておきました。


次は早い内に。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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