「それで、やるめちゃんはこれからどうするの?
もうそろそろ、決めたらどうかな?」
『え? どうするって成仏するんじゃないの?』
「てっきり、こっちに残るつもりだと思っていたんだけど?」
『え?』
「え?」
あの事件から、5日後。
梅雨に入りシトシトと雨が降る天気の中、幽鬼ゴーストとなった高師やるめは真緒と今だに契約したままでまだ真緒の家で暮らしていた。少し湿気た煎餅を食べて寛いでいた彼女に、真緒はこれからどうするのかを聞いたのだが驚かれていた。
まず、あの事件の後始末を語ろう。
まず基本的に、この世界の日本では覚醒者を入れるための刑務所は存在しない。
ハンター協会の場合、ほとんどの場合はフォルマやマッカ、貴重な異界物質を採取するために“異界鉱山”に呪的に拘束されて放り込まれる。
怪力などの覚醒者の身体能力に対応した収容施設を表立って作るのは、一部の精神病棟を除き経費も嵩むし何より表の社会に対する異能や悪魔の隠蔽に影響するから許可が出ない。
“この世に科学で証明できないオカルトは存在しない”
この普遍的な表の社会に蔓延する『常識』が、世界的なGPを下げる役割を果たしているからである。
このため日本では、表の社会には悪魔や異能などのオカルトは出さずに極力、裏で片付けるように10年前の“大破壊”の終了後から、再建されたヤタガラスや新設されたジプスは上から下まで死んでも蘇生手段はあるし体力の疲労や精神の摩耗も魔法やアイテムですぐ回復できるのだからと、使う暇が無い高給と引き換えにブラックを越えたダーク企業な労働を続けてこの社会を維持している。
また、元は敵対していた組織の人間や在野の素質のある人々も狩り集めてそれは行われていた。
なお、海外では『悪魔 vs 中央政府 vs 地方軍閥(with 傍観の崑崙)の三国史再び』をしている中華のように、それぞれの国により事情が異なるのでそれは置いておく。
以上は、日本の人外ハンター協会に捕縛されたダークサマナーの例である。
今回の件であるが、未覚醒の手下たちは記憶処理を施して警察へ移管とされた。
ただし、リーダーのタケシとします乃は、縄張りを荒らした事への報復としてガイア教に引き取られていった。
少なくとも彼らは、年間8万人はいるとされる日本の失踪者名簿に載るのは間違いない。
さて、彼らの処遇が決まるのはしばらく後だがそれはさておき、今の彼女らの問題は高師やるめの今後の身の振り方だろう。
驚いているやるめに真緒は話を続ける。
「基本的にね、『死』っていうのは覚醒するととても身近になるんだよ。
切った張ったが稼業なところもあるから」
『あの、私はその覚醒とかってしていないんですけど?』
「乱暴な表現だと、『覚醒=異能に目覚める≒広義の悪魔に近くなる』になるんだ。
臨死体験が強く覚醒を強く促す事例みたいにね。
だから、そういう意味ではやるめちゃんも覚醒した訳だよ」
『まあ、私、一度死んでいますしね』
「そうだね。
でも、幽霊になって戻って来たんだから、ボクとしては友達にまた会えて嬉しいけど?
お盆のたびに亡くなった母も会いに来てくれるんだよ」
『自分で言うのもなんですけど、自殺したんですよ私。
前から思っていましたけど、やっぱり真緒さんて考え方が普通の人とずれていますね』
「それは置いておいて。
とにかく、成仏するなら安全に送るための儀式はするし、悪魔としてこちらに残るなら色々と手伝うよ。
そろそろ決めてね?」
『……うう~ん』
「お待ちなさい!」
真緒に問われてやるめがグルグルと考え込んでしまった所へ、スパーンと居間に入るための襖が勢いよく開いた。
そこには高校から帰ったばかりなのか、制服のままの希流子が立っていた。
夏服の制服のせいでより目立つのか、目測で去年より大きくなり揺れている胸に思わず視線が行き頬がひきつるが、努めて冷静に真緒は希流子に声を掛けた。
「……希流子、学校から帰るの早くない?」
「今日は土曜日ですから午前で終わりですわ。
それより、再会できましたのにこれでさよならは納得いきませんわ!」
「でも、死者が彼岸に逝かないのは神社の娘としてはどうなの?」
「“それはそれ、これはこれ”ですわ。
わたくしがCOMPを購入して契約すれば、一緒に居られますわ」
『嬉しいけど、何故私にそこまでするのかが分からないのだけど?』
戸惑うやるめに、真緒が言い放つ。
「希流子って立場上広く浅い付き合いが多いから、深い仲の友達少ないんだよね。
せっかく出来た友達がいなくならないで欲しいからだけなんだよ。
ねえ、やるめちゃん。もう少し一緒に居てあげて?」
「真緒、わたくしは真緒ほど友人は少なくないですから。
やるめさん、せっかくこの様な形でもまた会えたのですから居なくならないで下さいな」
『……うん、そうだね。ありがとう、希流子さん真緒さん』
少し涙目になりながら笑みを浮かべるやるめと、フンスと鼻息荒く得意げに笑う希流子。
その二人に真緒も笑みを浮かべて立ち上がり声を掛けた。
「それじゃ、二人とも。神戸まで行こうか?」
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「……それで俺の所に来たのか、ふむ。
では改めて。
フハハハハ、よくぞ来た! 悪魔合体師ゼロの館【業魔殿】にようこそ!
新たなお客様、いらっしゃいませだ!」
真緒と希流子たちの前にいたゼロスーツ姿のルルーシュが立ち上がり、マントを翻しながらポーズを付けて名乗った。上の事務所から持ってきたパイプ椅子に座り、初めて見る彼の奇妙な行動に希流子とやるめはポカンとしていた。
「針仕事は女性の必須項目」と言う有定に捕まったない世を置いてきた彼女らがいるのは、神戸にある不動産会社『ブラックリベリオン』の地下にある業魔殿の中であった。
やるめに関しては、希流子がCOMPを購入し契約をするのと弱いままでは危険だから悪魔合体で強くなる事を二人の間でここに来るまでに話し合っていた。あとは、COMPに入れる戦闘補助のアプリについてもルルーシュに相談するつもりでいた様だった。
真緒もまた相談する予定ではあったが、まず二人の方から先にやる事となった。
スーツで二人をアナライズしていたルルーシュが、まずこう切り出した。
「COMPは買ってきたか?」
「はい、こちらに」
「ハンター協会製の携帯ゲーム機型か。
傘や楽器やメリケンサックなんかよりはマトモだな」
「そんな形のものは使い難くありませんか?」
「それらを使いこなしている一流のサマナーもいるのが、この業界の変な所だな」
受け取ったCOMPをPCに繋げて確認しながら、ルルーシュは話を続ける。
「契約者の彼女は現在レベル10で、ゴーストの方はレベル1か。
合体して強化するに当たって、何か希望はあるか?」
「やるめさんは何か希望はあります?」
『痛いのは嫌だから、怪我を治したりとかの方がいいかな?』
「アプリの方は、わたくしの速度を活かせる方でお願いしますわ」
「分かった。
アプリの方は、先制率を上げる【Mr.サプライズ】と不意打ちを防ぐ【百太郎】でいいか。
伊月とそのゴーストの契約解除の同意は出来ているな?
……よし、こっちのCOMPに契約を紐付ける事が出来たぞ」
ルルーシュがそう言った途端、やるめの姿が消えた。
彼が見せてくる画面には、ストックの項目に『レベル1・ゴースト』と出ているのが希流子には見えた。
希流子に確認させた後、ルルーシュはテキパキと合体を行ない始める。
「こちらの方の自意識は残すやり方が良いんだったな。
……よし、出来たぞ。
今日から、こいつはレベル10の【女神ハトホル】だ。喚び出してみろ」
「はい。来て下さい、やるめさん」
そう言って希流子が操作すると、先程座っていた椅子の所にやるめが現れた。
着ていた服が学校の制服から白いエジプト風の貫頭衣に変わり、頭に金の冠を付けた姿で金色の腕輪と首飾りにサンダルを履いていた。
その中で一番真緒の目を引いたのは、エジプトの豊穣神になった影響からか希流子には劣るが中々に豊かなサイズになった胸であった。
真緒の中で順位が入れ替わり、今までない世とほぼ同一だった大きさがここに来て順位が繰り上げになった。
ちなみに、
『希流子>>ルビー≒やるめ>ない世>リリム=カハク=真緒>>花子さん』
が、この中での現在のランク付けである。
受けたショックを顔に出さないように笑みを浮かべて、真緒はぎこちなく話しかけた。
「……おめでとう、やるめちゃん。これで一安心だね」
『ありがとう、真緒さん。これからもよろしく』
「真緒、何かありまして?」
「ううん、何も! じゃあ、次はボクの番だね!」
「お、おう。そうか。
次は伊月か。何をしたいんだ?」
何かを誤魔化すように大きな声で言う真緒に、不思議に思いながらもルルーシュは問いかけた。
「この所、戦う相手に苦戦してばかりでうちのルビーが強くなりたいらしいんだ。
見てあげてくれませんか、ルルーシュさん?」
「ふむ、分かった。喚び出してくれ」
「出てきて、ルビー」
『来たよ、マスター。それで、わたしも強くなれるかな?』
「ほう?」
珍しく声を上げたルルーシュは、珍しそうにルビーをアナライズし始めた。
その結果を見て、彼はこう語り出した。
「怪異の特異個体とはかなり珍しいな。
誰がそうしたのかは知らないが、怪異の種族は悪魔合体は出来ないぞ?」
『ええっ!?
まともに戦えなかったのが悔しいから、頑張ってマスターと異界に潜ってレベルを上げたのに!』
「ここ数日、ずっと裏山に籠もる羽目になって強くはなれたけどね。
どうするの、ルビー?」
『仮面の人、何か他に方法はないの?』
「そうだな。御魂で地力を上げるか新しいスキルを身につけるかだな。
ほら、これが料金表だ」
「むむむ」
ルルーシュが差し出した料金表と手持ちの資金を見比べて唸っていた真緒だが、希流子がそれに声を掛けた。
「真緒、命の掛かった物に値は惜しまない方が上手く行きましてよ?」
「そうだね。じゃあ、これとこれをお願いします」
「ふむ。契約方法がCOMPでなく、古式なのか。
それならそこの赤マント、向こうの機械の魔法陣の上に立て」
ルルーシュが奥にある悪魔合体用の機械を指さした。
それを、不安そうに見るルビー。
『あれって大丈夫なの?』
「お前が気にする必要はない。ほら、さっさと行け」
『もう、分かったよ』
ブツブツ言いながらルビーが機械の中央の魔法陣に立つと、ルルーシュが端末を操作し始めた。
すると、左右のカプセル内に赤い勾玉のような悪魔と小さいカードが浮かんできた。
見ている内にそれらはカプセル内から消えて、ルビーの足元の魔法陣が一瞬だけ光った。
そして、彼はこう告げた。
「終わったぞ」
『ええ、勿体ぶってこれだけ!?』
「値段も最低限だから、エフェクトは全てカットした。
それに、しっかり強くなっているだろう? 文句を言うな」
『確かに強くなっているけどさぁ。もうちょっと欲しかったよ』
魔法陣を出て腕をグルグルと回しているルビーに、真緒が尋ねた。
「どう? これで少しはマシになったと思うけど」
『そうだね。
これでどれくらい強くなったかは、帰ってあそこの異界で確かめようマスター!』
「はいはい。これで終わりかな、ありがとうございました。ルルーシュさん」
「また強くなって来るがいい、伊月。そっちの二人組みもな」
「ありがとうございましたわ。興味深いものも見れましたし」
『えーと。ありがとう、仮面の人』
そう口々に礼を言って、真緒たちは帰って行った。
それを見送ると、ルルーシュはルビーのデータをPCの画面に移して眺めこう呟いた。
「こんなめちゃくちゃに悪魔の霊基を弄るなど、人間なら正気とは思えん。
ジプスではない、スティーブンやナカジマでもないだろう。
こんな真似をするのは誰だ?」
後書きと設定解説
・主人公
名前:伊月真緒(いづきまお)
性別:女性
識別:転生者(現実世界)・15歳
職業:中卒符術師
ステータス:レベル10→12・マジック型(魔・速)
耐性:破魔無効・呪殺耐性
リザルト:
レベル上昇のみ。スキル、装備に変化なし
前のデータは12話参照
・仲魔
名前:ルビー
性別:女性
識別:怪異赤マント(変異個体)
職業:真緒の仲魔
ステータス:レベル8→10
耐性:火炎耐性・破魔弱点・呪殺無効
スキル:毒串刺し(敵単体・小威力の物理攻撃。
低確率で毒付与)
パララアイ(敵単体・中確率で緊縛付与)
アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃)
マハムド(敵全体・低確率で即死付与)new!
物理ブースタ(物理攻撃の威力を上昇する)new!
リザルト:
アラミタマと御魂合体、ステータスの力と速が上昇
スキル変化、ムドがマハムドに入れ替え
スキルカード購入、物理ブースタ
・関係者
名前:岩崎希流子(いわさききるこ)
性別:女性
識別:転生者(英傑トモエゴゼン)・15歳
職業:高校生/巫女
ステータス:レベル9→10
耐性:物理耐性・破魔無効
スキル:デスバウンド(敵全体・中威力の物理攻撃)
勝利の小チャクラ(戦闘勝利時、MP小回復)
俊足の構え(ステータス「速」を10上昇させる)
装備:霊刀(家伝の霊装)
巫女服(霊装)
COMP(Mrサプライズ、百太郎)new!
リザルト:
レベル上昇、9→10
COMP購入、やるめを仲魔に
【幽鬼ゴースト】
レベル1 耐性:破魔弱点・呪殺無効
スキル:引っ掻き(敵単体・小威力の物理攻撃)
詳細:
いじめが原因で飛び降り自殺した少女の幽霊
主人公が中学で見たいじめの被害者
生前の名前は「高師やるめ」
容姿は2chやる夫派生の同名のキャラ
↓+邪鬼
【女神ハトホル】
レベル10 耐性:物理弱点・破魔無効
スキル:パトラ(味方単体・軽い状態異常回復)
メディア(味方全体・HP小回復)
回復ブースタ(回復魔法の威力が上昇する)
詳細:
希流子のCOMP仲魔
元は自殺した友人の幽霊の高師やるめ
邪鬼と合体して女神になった
ハトホルはエジプト神話の豊穣の女神
次は早めに。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。