デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。


第17話 異界・星見山

 

「え~、真緒さんだけ出かけるのは狡いです」

 

「でも、今日も裏山に行って悪魔と戦うだけだよ?」

 

「それでも、有定さんの家事の特訓よりはマシです!」

 

「大丈夫。ボクだって、その家事の特訓は昔やったんだよ。

 それとも、ジプスの白い魔お…エースさんみたいになりたいの?」

 

 

 数日前にハンター向け冊子にすっぱ抜かれた、ジプス系列の女性モデル事務所も兼ねたハンタークラン『マギウス』のトップ“白いエース”の黒い目線で目元が隠されている私生活の写真を真緒はない世に見せる。そこには、

 

『エアコンガンガンにかけた部屋で、カップ焼きそばに唐揚げにビール!

 家庭があったらこんな食生活アウトよねっ! 独り身バンザイっ!!!』

 

 と、タイトルが付けられた写真のページがあった。

 ある意味無惨なそれを見て、ポツリとない世は呟く。

 

 

「私、頑張ります。強くなれてもこうはなりたくないですし」

 

「うん。いくら美人で強くても、こうなるとね。

 出会いの方は、父の伝手でお見合いをするという手段もあるから。

 それじゃあ、ちょっと行ってくるね」

 

「遅くならない内に帰ってきてくださいね」

 

 

 ない世にそう言って見送られて、真緒は異界となった夜の星見山に出掛けていった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『えい、【スクンダ】!』

 

「火神符、急々如律令!」

 

『ワン! グルルル』

 

『『アアァアアアァア』』

 

「よし、魔性封印っと」

 

 

 花子さんの魔法で動きが鈍った火炎弱点のオバリヨンとモウリョウの群れを、真緒がマハラギの札で焼き払い残った敵をティコが噛み砕きここにいた敵は全て倒せていた。

 

 梅雨も終わり暑くなり出した6月下旬のある日、真緒は異界と化した夜の星見山で仲魔のティコと花子さんを召喚して、彼らが強くなるためにマグ稼ぎとドロップ品稼ぎを行っていた。

 

 事の起こりは、1週間ほど前の事。

 

 

『へっへ~ん、どう? マスターに強くしてもらったんだ』

 

『むう。あたしだって、有名な花子さんの一人として負けられないわ』

 

 

 悪魔合体で強化された事を、ルビーが花子さんに自慢したのが始まりだった。

 

 当然、拗ねた花子さんもレベルアップを強く望み、ティコも最近あまり構ってくれないのを不満に思っていたのか全力でアピールしていた。

 そのためこの数日は夜になると、祭神の加護を得てから星明りが有れば夜目が効くようになった真緒は毎晩、夕食後から日付が変わる頃まで彼女らに山へと引っ張って行かれるようになっていた。

 

 

「うーん、マッカが少々でフォルマは無いか。そっち何か落ちてる?」

 

『こっちにはもう無いよ』

 

『ワン!』

 

「それじゃあ、先に進もうか」

 

 

 そう言うとティコを先頭にして真緒たちは山道を登り始めた。

 

 この星見山は頂上に妙見菩薩を祀ったお社があり、そこへ登るのに真緒の実家近くの山道の入口から3時間ほど掛けてグルリと一周する形で山頂まで道が続いている。

 また、その入口は地元の人向けの登山道の入り口である為に、道もあまり整備されていないため昼間でも移動は大変なものとなっている。

 

 ただ異界に変わると、道の行程はほぼ同じであるが頂上につくまでにいくつかの広場が出来ており、そこにこの異界で出る悪魔達が待ち構えていて戦闘になるために、毎回ランダムで何度か戦って行かないとお社にいる異界の主には会うことが出来ない仕組みになっていた。

 

 登っていた真緒たちは、しばらくして中腹にある泉の湧く広場についた。

 そこは泉から湧いた水が溜まっている池もあり、ちょうど中間まで来たという目印になる場所でもあった。

 そしてその場所には、この泉によく出入りしている頭に皿と背中に甲羅を持った緑肌のカエルのような姿の悪魔がいた。

 彼は真緒を見ると、片手を上げて挨拶をしてきた。

 

 

『おお、伊月の嬢ちゃんやないか。ティコの散歩かぁ、精が出るのう』

 

『ワン、ワン!』

 

「河太郎さん、こんばんは。弟さんは?」

 

『あいつなら辻川山の池の方におるよ。今日はちょいと暇潰しにな』

 

『マスター、この方は?』

 

 

 花子さんに聞かれて、真緒はこう答えた。

 

 

「姫路の近くにある辻川山公園の池の主の河太郎さん。

 弟の河次郎さんと一緒に、地元の観光名物になっている河童の方だよ」

 

 

 彼の名は【河太郎(がたろう)】。レベル24の【妖鬼カッパ】である。

 

 弟の【河次郎(がじろう)】と共に、姫路市の北にある福崎町の観光名所の『辻川山公園』にいるとされている河童の兄弟の兄貴の方である。彼は時々、ふらっと池を出てあちらこちらの知り合いのいる異界に出かける癖があり、ここにも時々来るので真緒とも顔見知りであった。

 

 福崎町では辻川山公園の近くに柳田國男の生家があり、街を上げてあちこちに妖怪の像があって観光の目玉になっている。ちなみに河次郎の方は、福崎駅の駅前にある大きな水槽に『ようこそ、ふくさきへ』のプラカードを持って地面から出入りする像があるので興味のある方は訪ねてみて欲しい。

 

 泉の中の袋から冷やしていたきゅうりを取り出すと、ポリポリとかじりながら彼は話を続ける。

 

 

『あ~、美味い。

 ほうか、嬢ちゃんもようやく余裕を持ってここまで来れるようになったんやな。

 山頂の社の前まで行けるようになるには、まだちいと修練が足りんようやが』

 

「ここから先は、レベル10台の相手が出るようになりますからね。

 確かにまだ、ボクでも難しいです」

 

『オレは元々、ここの泉目当てに来とるだけやニンゲンとは戦わへんがな。

 こっから社までの間で自然湧きした奴で、外に行こうとするのは片付けておくさかい。

 ま、オレがいる間は、ここに他の連中は来いへんから少し休んでいきや』

 

『美味しそうなきゅうり』

 

『おう、花子さんかいな。こんなとこに珍しいな。

 嬢ちゃんの仲魔みたいやな。一本、食うか?』

 

『わあ、ありがとう。……うん、冷たくて美味しい』

 

『そりゃ、良かったな』

 

「すみません、河太郎さん」

 

『良いってことよ』

 

 

 池の畔にある河太郎の座る石の隣の石に座り、花子さんはきゅうりを食べだした。

 いつもなら、ここで一戦して休憩してからもと来た道を下るのだが、今日は彼がいた事でもう休憩になってしまった。

 真緒も防具をつけた男装姿だったので、カバンからティコに犬用のおやつを出して上げると自分も水筒と傷薬を取り出して飲み、そのまま手頃な石に座って休憩を始めた。

 

 

『ワン!』

 

「ふう、……あれ、携帯?」

 

 

 尻尾を振りながらお気に入りだったおやつを食べているティコを見ていると、カバンに入れてあった折りたたみ携帯が振動しているのに気が付いた。ここは異界の中なので繋がるはずはないのだが、真緒はそれに出てみた。

 

 

「もしもし?」

 

『……私、メリーさん。今、薬局の前にいるの』

 

「……え?」

 

『どうしたんだ、嬢ちゃん?』

 

 

 それだけ言うとぶつっと切れた電話に驚いている真緒に、河太郎が聞いてきた。

 

 

「いえ、花子さんの親戚から電話が」

 

『あたしの親戚?』

 

「ちょっと待って。……もしもし?」

 

『もしもし、私メリーさん。今、公園の前にいるの』

 

「……切れた。メリーさんだね」

 

『珍しいなぁ。どのメリーさんかな? 会うなんて何年ぶりだろう?』

 

 

 言うだけ言うとまた切れた通話の相手の事を伝えると、花子さんが懐かしいと言い出した。

 さすが同じ都市伝説の出身だけあって、何体かと面識があるようだ。

 話しているとまた掛かってきたので、真緒は通話に出た。

 

 

『もしもし、私メリーさん。今、貴女の家の近所のローソンの前にいるの』

 

「……あれ?」

 

『どうした、嬢ちゃん?』

 

「う~ん、家から離れてる?」

 

 

 河太郎が聞いてくるが、頭の中で周辺の地図を思い浮かべて頭をひねる真緒。

 そこへもう一度掛かってきたので、真緒は話しかけてみる事にした。

 

 

『もしもし、私メリーさん。今、貴女の家の近くの伊藤園の自動販売機の前にい……』

 

「道、間違えているよ?」

 

『ええ?』

 

「そっちに行ったら駅の方で反対だから、北に向かって」

 

『ほんとぉ?』

 

「うん、ほんとほんと」

 

『えっとぉ、赤い屋根の家が並ぶ方?』

 

「そっちそっち」

 

『ちょ、ちょっと待っててねぇ?』

 

「なんか、聞いてた話と違うなぁ」

 

 

 通話の切れた携帯を持ちながらポツリと漏らす真緒に、花子さんが答えた。

 

 

『それは、あたしと同じで何体もいるんだもの。そんな子だっているよ』

 

「そんなものかぁ。……あ、掛かってきた」

 

『わ、私メリーさん。今、貴女の家の近くの赤い家が並ぶ通りに…』

 

「うん、そっちだよ」

 

『…………』

 

 

 無言で切れる通話。何か面白くなって来た真緒。

 興味深そうに見る河太郎と花子さん。

 

 

『そいつぁ、最後には背中に立っててブスリといく奴だったか?』

 

『そうそう』

 

「聞いた話だとそんな感じだったね。……あ、来た」

 

『私メリーさん。今、貴女の家の前にいるの』

 

「ボク、今は家にいないよ」

 

『……え? それじゃ今、どこぉ?』

 

「家の北に山が見えるでしょう? その山中。

 登山道の入口は家から真っ直ぐだからすぐ分かるよ」

 

『え? えーと……うん。あそこねぇ』

 

 

 さらに彼女は1時間ほど山中を彷徨い、その都度誘導されてそろそろという場所まで来れたようだった。

 真緒たちが寛ぎながらわくわくして待っていると、電話が掛かってきた。

 

 

『……もしもし、私メリーさん』

 

「うん、それで?」

 

『えっと、あのぉ…グスッ』

 

「どうかしたの?」

 

『そのぉ、…グスッ。そのままだと、背中に立てないって言うかぁ…グスッ』

 

「あ」

 

 

 真緒は池を背に座っていたのを思い出し、念のために護符を持つと河太郎たちを背にして立ち上がった。

 そして、もう一度話しかけた。

 

 

「これでいい?」

 

『うん……グスッ……ヒグッ……。

 えっとぉ……グスッ、……私メリーさん。今貴方の後ろにいるの……』

 

「いらっしゃい、メリーさん」

 

 

 真緒が振り返ると、そこには身長30cm程の銀色の髪をした黒のゴスロリ服を着た人形が河太郎や花子さん、それにティコに囲まれてグスグスと泣き顔で立っていた。

 

 

『頼み事をしに来ただけなのに、何でこんな所にいるのよぉ。バカァ…グスッ』




後書きと設定解説


・関係者

名前:河太郎&河次郎(がたろう&がじろう)
性別:男性
識別:妖鬼カッパ
ステータス:レベル24
耐性:火炎弱点・氷結耐性・電撃弱点
スキル:アクエス(敵単体・中威力の水撃属性攻撃)   
    ポイズマ(敵単体・中確率で毒付与)  
    プリンパ(敵単体・中確率で混乱付与)
詳細:
 兵庫県の地元では有名な妖怪の兄弟河童
 緑肌が兄で、赤い肌が弟のほうである
 柳田國男の著書『故郷七十年』が元の妖怪
 地元の池から時々異界の手伝いに来ている


次は早めに。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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