デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。下ネタ注意。


第18話 有馬温泉と変態悪魔

 

『お願いだから助けて欲しいのよぉ』

 

「とりあえず、家に帰ろうか」

 

『おお、帰るんかい。元気でな、嬢ちゃん』

 

「河太郎さん、それじゃさようなら」

 

 

 メリーさんと合流した真緒は時間と場所の事もあり、一度家に帰ってから話を聞くことにした。

 そして、家に戻りその翌日の朝。

 

 朝食も終わった真緒は、メリーさんの話を聞くべく自分の部屋に戻っていた。

 テーブルの上で立ついわゆる美少女フィギュアと同サイズの彼女を見て、ベッドに座った真緒は思った。

 

(まんま◯ーゼンメイデンの水銀燈そっくりだなぁ、このメリーさん。

 えーと、レベル12【怪異メリーさん】。物理耐性、火炎弱点、呪殺無効、と)

 

 そんな事を考えていると、ベッドで横に座っていた花子さんが話しかけた。

 

 

『それにしても、かなり弱くなったメリーさんだね。

 何か原因でもあるのかな?』

 

『しょうがないじゃない。悪魔って概念の生き物なんだからぁ。

 ネットでの妙なネタ扱いをまともに受ける内に、こうなっちゃったのよぉ。

 最初の私は、レベル50にもなる大悪魔だったのにぃ』

 

「花子さんも他人事ではないからね?

 男性向け作品に影響を受けるうちに萌美少女化して、性犯罪者に付け狙われていたの忘れたの?」

 

『あーあー、聞こえなーい。思い出させないでー』

 

『そっちも大変なのねぇ。

 ネタキャラと【R18】な事をされるキャラ、どっちも悲惨だわぁ』

 

『うるさいなぁ、もう。そっちは、一発屋の芸人みたいじゃない』

 

『あの頃の自分に帰りたぁい。

 ネット掲示板なんてものさえ無ければぁ!』

 

 

 耳をふさいでいる花子さんとしくしく泣くメリーさんに、真緒は話題を変えようと試みた。

 

 

「それで、メリーさんは何の用でボクに会いに来たの?」

 

『ああ、それなのよう。助けてほしいの。

 このままだと住む家が無くなっちゃうわぁ』

 

『住む家が無くなるって?』

 

『実はねぇ……』

 

 

 メリーさんの話によると、もともと彼女は隣町にある異界の悪魔だったようだ。 

 そこは、花子さんが前に住んでいた都会から疎開してきた学校の怪談の悪魔達がいた異界のように、メリーさんのような都市伝説の悪魔達の疎開先としてハンター協会が買い取って管理していた廃墟の中にあった異界であるらしい。

 

 隣町と言えば、この町の国道なり電車なりで北東に抜けた先には有馬温泉のある街がある。

 彼女の話によれば、彼女らが住む異界のある建物はその温泉地の外れにあるとの事だ。

 それで、現在その異界が大変な事になっているそうだ。

 

 そこで、疑問に思っていたことを真緒は聞いてみた。

 

 

「そもそも、何でボクを探していたのさ?

 そういう依頼をハンター協会に出すなり、相談してみればいいんじゃないかな?」

 

『それがねぇ、有馬温泉のハンター協会の人がねぇ言うのよ。

 「うちはうちで旅行客相手にやらかす奴の対処で手一杯だから、さくらの町の協会を頼ってくれ。

  ただし、あそこの所長は通さずに、伊月の旦那の娘さんを直接頼れ。

  この間の飲み会で散々自慢していたし、お前さん達と同じ都市伝説を仲魔にしているから聞いてくれるだろう」って。

 だから、探してここまで来たのよぉ』

 

『……それって、厄介払いじゃないの?』

 

(ティコと花子さんもレベル10になれたし、ボクもレベルがまた上がった。

 内容次第だけど、大丈夫かな?)

 

「ちょっと待ってね。ペペさんに聞いてみる」

 

 

 花子さんのツッコミに少し考えた真緒は、メリーさんの話した経緯をペペロンチーノにメールで送って問い合わせてみた。

 10分ほど経って、こう返答が帰ってきた。

 

『まあ、うちの所長を通すなってのは正解ね。

 こっちで向こうの担当者に話をつけておくから、そっちで請けちゃってもいいわよ。

 迷惑料も込めて依頼料はふんだくっておくから頑張りなさい☆』

 

 メールを読んだ真緒は、ため息をつくとメアリーさんに答えた。

 

 

「とりあえず、詳しく話してくれるかな?

 この一件、ボクが依頼を請ける形になるみたいだし。報酬の方もよろしく」

 

『報酬の方はリーダーと話して欲しいわぁ。私、お金なんて使ったことはないんだしぃ』

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『案内してきたわよぉ、リーダー』

 

(うわ、希流子よりすごい胸!)

 

『ご苦労。わてが、ここのまとめ役をしている【魔獣ウシオンナ】やで』

 

「……えっと、何で赤い振り袖を?」

 

『わての元々が座敷牢に閉じ込められていたお嬢様やからな。似合っとるやろ?』

 

 

 さくらの町から電車で北に行くこと約一時間ほど、メリーさんに案内された真緒と手助けのために連れてきたない世は有馬温泉の片隅の彼女らのいる異界がある廃墟へと来ていた。

 

 かつて800人は収容できると経営者が豪語した11階建てのビルを始めとするそこは、過去に大火事を出したのと増築による迷路化に建築物の老朽化が重なって10年以上前に営業を停止して廃墟と化している温泉ホテルであった。

 所有団体が税金や維持費用ばかり掛かり改築や解体費用を捻出出来ずにそのままにしていたのを、教会側が買い取って彼女ら用の異界となっていた。

 

 異界の内部は元の温泉旅館が現役だった頃の館内を模したもので、元の建物同様に内部は迷路と化していた。

 ここにはナイフの扱いを練習するために組手をしている口裂け女とカシマレイコに、異界内をバルクールで高速で走り回るターボばあちゃんや部屋の隅でブツブツと壁に愚痴を言い続けている人面犬などの様々な都市伝説系の悪魔たちが生活していた。

 その横を抜けて、メリーさんの案内でボスの部屋まで真緒は通されていた。

 

 ここにいるまとめ役を自称する【魔獣ウシオンナ】はと言うと、都市伝説の悪魔や吉凶を告げに来る妖怪の人頭牛身のくだんとは違う悪魔である。

 彼女は主に神戸市六甲山付近に出没する牛頭人身の妖怪で、赤い着物を着ていて出会うと事故に合うと言われている。戦前に生まれたという「体の一部が牛の子」の噂が元とされ、戦後には怖いもの見たさの連中に追いかけ回された過去を持つ怪異である。

 

 牛の妖怪だけにとても立派な胸部に視線をやっていた真緒だったが、ない世に肘で突かれてゴホンと咳をして視線を逸らし真面目な話を続ける。

 

 

「……真緒さん、失礼ですよ?」

 

「ゴホン。それで、ここの異界にちょっかいを掛けている連中がいるから対処して欲しいと?」

 

『そうなんや。前まではここにもわてらよりもっと強い悪魔がいたんやけどね。

 けれど、彼女は神戸に行ったまま帰ってきいへんのや』

 

「それは聞いたよ。で、その連中に殺された、とか?」

 

『違うんよ。向こうでホストクラブに嵌っているだけや。しょーもな』

 

「はい?」

 

「……ホストクラブですか?」

 

 

 ウシオンナが言うには、ここには都市伝説の中でもかなり強い「八尺様」がいたそうだ。

 

 ただ、彼女もメリーさんのように、ネット掲示板を初めとしたそれらの書き込みによる認識の変容と弱体化を受けて【おねショタ大好きな長身の爆乳お姉さん】な性格へと変貌してしまったらしい。

 神戸にはマグネタイトと現金を両替してくれる『生体エナジー協会』があり、神戸で潰してもいい異界を攻略して現金を稼ぐと人に化け入れ込んでいるホストに貢いでいるらしい。

 

 

『そんでな最後のメッセージには、

 「ミス・クレールとかいう女が私のアストルフォきゅんを奪おうとしているので帰れない」

 とか、あってな。

 それ以来、音沙汰不明なんや』

 

「それじゃ戦力になるのは?」

 

『クチサケとレイコに、ターボばあちゃんとあてとメリーさんやな。

 他の奴やと、そこにいる人面犬みたいに世の中から忘れられかけてスライム一歩手前のもおるくらいや。

 それに連中、前に押し入って来た時に八尺様に蹴散らされてから嫌がらせ中心になっとる。

 だから、その“厄介なもの”を二人に何とかして欲しいんや』

 

「それじゃ、その“厄介なもの”の場所に案内してくれる?」

 

『メリーさん、案内たのむで?』

 

『分かったわぁ。コッチよう』

 

 

 ある方向を指差すメリーさんを持ち上げると、真緒とない世は彼女が指し示す方へと向かって行った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 真緒とない世が着いた先は、元は温泉の大浴場が異界で変化した露天風呂風の温水の泉であった。

 ここだけ森のようになった泉の袂には額に一本角の生えた白馬が座っていたが、そいつは入り口に来たティコとメリーさんを無視して真緒とない世の方をフンフンとニオイを嗅ぎ始めた。

 そして、そいつは立ち上がると満更でもない顔で話しかけてきた。

 

 

「えっ、レベル21の【聖獣ユニコーン】?」

 

『へっ。年増の中古ビッチ共の巣に投げ込まれたと思ったら、なかなか質のいい処女が来たじゃないか。

 高貴な俺様に何か用なのか?

 お前らなら、触れたり背中に乗るのを許可しないでもないぞ?』

 

「「……うわぁ」」

 

『あらぁ、可憐な乙女ならここにもいるのに無視しないで欲しいわぁ』

 

『けっ。人形なんぞに欲情する様な変態じゃあるまいし、お前は範囲外だ!』

 

『……ぐすん。酷いわぁ』

 

 

 ユニコーンの発言に傷つきグスグスと泣き始めたメリーさんを持ちつつ、真緒とない世はその発言にドン引きしていた。

 ただ、真緒が見る限り性格は最悪だが、アレはレベルが高い上に種族が『聖獣』であるので破魔系の魔法を持っている可能性が高い。

 そして、都市伝説系の悪魔は【破魔弱点の悪魔が多い】。何気にルビーに花子さんに魔獣だがティコもそうであるし、あそこにいてこの異界で戦力になると名前の上がった者の内、メリーさん以外全員がそうであった。

 現状が解らずに引いているだけのない世と仲魔にいたっては、レベル差が10以上と酷すぎる。

 

 事態を打開するため、真緒はユニコーンを懐柔するべく話しかけてみた。

 

 

「ねえ、聞いてもいいかな?」

 

『何だ? 魂まで年季の入った純潔のような処女よ』

 

「……ふぅ。ここに来た理由や方法を聞いていいかな?」

 

 

 ユニコーンの呼びかけにこめかみが引きつった真緒だったが、何とか我慢して話を続けた。

 

 

『そうだな。

 俺はこことは違う異界にいたんだが、ある日純粋そうな乙女が入ってきて仲魔にならないかと誘ってきたんだ。

 俺はOKを出して彼女のCOMPに入ったんだが、次に召喚されて出てきた時にはCOMPごとこの異界に置かれていたんだ』

 

「……それって捨てられたんじゃ?」

 

『違うぞ、それは違うぞ。喪女になりかけそうな処女。

 この異界に入った時に、あの中古共に追われて落としただけだろう。

 待っていれば、直に取りに来るだろうさ』

 

「……本当に性格が悪いですね、この駄馬。それじゃ、そのCOMPはどこにあるんです?」

 

『もちろん、俺が大事に保管しているとも』

 

 

 思わず話しかけたない世も、馬面でニヤリと笑うユニコーンにカチンと来たのかスマホを取り出して怒り顔で押し黙った。

 話しかける気力がどんどんと減っているが、頑張ってまた話しかける真緒。

 

 

「それじゃ、その女性の顔は憶えているの?」

 

『もちろんだ。あの純真無垢なようでいて小悪魔的な処女の顔を忘れるものか』

 

「じゃあ、ちょっと特徴を言ってみてくれる?」

 

『ああ、いいとも。例えるならそう金髪の……』

 

 

 まだ泣いているメリーさんをない世に渡してメモと鉛筆を取り出した真緒は、変態駄馬の言う妙に独特な特徴の表現を何とか理解できるものに落とし込み似顔絵を描いてみた。

 数十分後、出来上がったものを駄馬に見せてみた。

 

 

「こんな感じかな?」

 

『……おお! 彼女だ。間違いなく彼女だ!』

 

「……これって来日中の歌姫のアリス・リデル?」

 

『知っているのか!? ぜひ、彼女に会わせてくれ!』

 

「コネがあるから会わせてあげても良いけれど、条件があるよ」

 

『言ってくれ!』

 

 

 駄馬の反応を見て真緒はニコリと笑うと、条件を言ってみた。

 

 

「彼女に会うまでなら、COMPの中に居てくれたら連れて行ってあげられるよ?

 君を保持するためのマグならボク持ちでもいいよ」

 

『本当か!? それを守れば彼女に会わせてくれるのか?』

 

「もちろん。約束するよ」

 

『よし、少し待て』

 

 

 そう言うと変態駄馬は、離れた場所の木の根元を足で掘り返してCOMPを取り出してみせた。

 そして、真緒にCOMPを確認させると声を掛けて中に入っていった。

 

 

『くれぐれも、約束だぞ。彼女に会えるようにしてくれよ?』

 

「もちろん、約束は守るよ。彼女の元に届けるようにするから」

 

『約束だぞ!』

 

 

 駄馬が中に入ったのを確認した真緒は手早くCOMPをロックすると、カバンにしまい込んだ。

 それを見ていたない世が真緒に尋ねた。

 

 

「……真緒さん、本当に会わせてあげるんですか?

 あんな有名人がこの辺をウロウロしているとは思えないんですが?」

 

「もちろん。

 まともに戦った時のリスクを考えると、手間じゃないよ。

 失楽園のオーナーがアリスのプロデューサーと知り合いみたいだから、彼に頼んで送ってもらうよ。

 性格は悪いけど、ユニコーンだから受け取っては貰えると思う。

 ただ、コレが会ったのがおそらく偽物なのが難点かな?」

 

『偽物なのぉ?』

 

「だって、あれほど彼女を過保護にしているプロデューサーが一人で行動させるはずがないもの。

 どうやって化けてコレを騙したのかまでは解らないけど」

 

「う~ん、それでいいのならいいんですけど。

 ソレがいなくなるならOKですよね」

 

『アレがいなくなるなら、どうでもいいわぁ』

 

「そうそう。それじゃ、ウシオンナさんに報告に行こう」

 

 

 そう言うと、真緒たちは報告をするためにウシオンナのもとに向かうのだった。




後書きと設定解説


・関係者

【魔獣ウシオンナ】
レベル11 耐性:火炎弱点・破魔弱点・呪殺無効
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    シバブー(敵単体・中確率で緊縛付与)
    ムド(敵単体・低確率で即死付与)
詳細:
 神戸市六甲山付近に出没するという牛頭人身の妖怪
 赤い着物を着ていて出会うと事故に合うと言われている
 戦前に生まれたという「体の一部が牛の子」の噂が元
 戦後には怖いもの見たさの連中に追いかけ回された
 牛だけにスタイルは抜群の身体をしている

・敵対者

【聖獣ユニコーン】
レベル21 耐性:電撃弱点・破魔無効・呪殺耐性
スキル:マハンマ(敵全体・低確率で即死付与)
    マハブフ(敵全体・小威力の氷結属性攻撃)
    体当たり(敵単体・小威力の物理攻撃)
詳細:
 欧州の伝説に出てくる一本角のある白い馬の聖獣
 日本生まれのためスラングの「コーン」な性格
 男性と男性経験のある女性を激しく嫌う


次は早めに。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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