デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。
変態カルト集団、再び。


第19話 ヲタクで優しいギャルを創造する会

 

「うげっ、何であの変態馬の反応が移動しているのよ!?」

 

「ねえ? 高い金を払ってアレを手に入れたのよ?

 あんた、どういう事よ!?」

 

「知らないわよ! あ、街から出ていく! どうなってんのよ!?」

 

 

 真緒たちが変態駄馬を丸め込んで、さくらの町のガイア教支部に駄馬の入ったCOMPを届けに町へ帰っていた頃、7月初頭の暑さも関係ないクーラーの効いた有馬温泉のビジネスホテルのある一室で二人の女が騒いでいた。

 

 彼女らの一人は名を【花村典子】と言う40近い年齢のビジネススーツのゴシップ記者の中年女性で、20代半ばくらいの目付きの鋭いケブラーベストを身につけた如何にも裏稼業という雰囲気の【原本黒実】と言う名の女性が言い争いをしていた。

 相手の発言に怒り心頭の花村が、手に持ったタブレットの画面を見ている原本に食って掛かった。

 

 

「どうなってんのは、こっちのセリフよ!

 あのCOMPをあそこの異界の中に置いておけば、化け物がいなくなると言ったのはそっちよ!?

 あれだけ高い金を払ってあんたの所から買ったのにっ!

 これじゃ、あのホテルの廃墟を盛大に燃やして記事に出来ないじゃない!」

 

「ちょっと待ってなさいよ。

 今、見張らせていた奴に連絡するから。……もしもし?」

 

 

 食って掛かる今回の仕事のクライアントでもある花村にそう言うと、原本はこういう時の手足代わりに飼っていたカジュアルサマナーグループの一人に電話をした。

 コールから少し経って、相手の男から連絡がやっと来た。

 

 

『はい。原本さんですか?』

 

「ちょっと?

 あのCOMPの反応が移動しているみたいだけど、どうなってんの?」

 

『どうなるもこうなるも、俺等の仇敵があのCOMPを持って行っているんですよ!

 さくらの町の札使いのあの少女ですよ!

 別れたとはいえ、かつての仲間だった「純潔守護騎士団」を壊滅に追いやったあの女ですよ!』

 

「そんな仇敵とか、あんたらの主義主張とか知らないわよ。

 あんたらが変態行為をした大阪から逃げて来て匿ったのは、使えると思ったからよ!

 実力のあるサマナー集団の癖に、何よ【ヲタクで優しいギャルを創造する会】って?」

 

『逃げて来た俺等にアジトを用意してくれたのは感謝していますけど、俺等の信条には何も言わないでくれませんか?

 ねえ、年齢範囲外の原本さん』

 

 

 前に、真緒たちが潰した変態的な主張をするカジュアルサマナーカルト『純潔守護騎士団』。

 彼らはそこの団長の弟が、兄と性癖の違いから袂を分かって結成したカルト『ヲタクで優しいギャルを創造する会』。

 彼らは『ヲタク“に”優しいギャル』を探すのを諦め、『ヲタク“で”優しいギャル』を創り出す事を目指した団体である。そのため、大阪の日本橋にある女性のオタクが集まる場所で騒ぎを起こして追われている集団であった。

 

 不安気にこちらを見る花村の視線を無視し、原本は怒鳴りたくなるのを我慢して電話の向こうの彼に話しかけた。

 

 

「……その辺はもういいわ。

 あの駄馬で異界の悪魔達を排除させるプランは失敗したと見るわ。

 幸い、化け物の中で一番手強かったデカ女は神戸に留まらせるのには成功している。

 いい? あんたはその女の後をつけてこっちに戻るのを邪魔しなさい。

 その間に、別プランを開始するわ」

 

『了解です。それじゃ、追跡を続けます』

 

 

 ピッと連絡を終えると、花村が話しかけてきた。

 

 

「ちょっと、別プランだとかこれからどうするのよ?」

 

「決まっているじゃない。向こうの戦力は割れているのよ?

 連中総出で潰させるのよ」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『わぁ、ユニコーンだ。かわいい!』

 

『フゥフゥ!』

 

『何だこいつ、やけに鼻息が荒いな?

 …………ふん、時期を見て処分するか』

 

 

 ニヤニヤと笑う開店前のBAR失楽園にいたベリアルに駄馬の入ったCOMPを手渡す際にこいつの未来が見えた気がした真緒だったが、店長のジライヤが真緒をつけて来た男を捕まえた事から事態が急変した。

 

 

「オーナー。

 うちの店の近くでウロウロしていた男を捕まえましたけど、どうしますか?」

 

「面白いものを貰ったし返礼代わりだ。

 さっさと片付けよう。リリム、魅了で聞き出せ」

 

「はい、オーナー。じゃあ教えてね、【マリンカリン】♥」

 

「…ああ、教えるよぉ。俺はね……」

 

 

 嬢の一人に魅了されたその男が言うには、自分は『ヲタクで優しいギャルを創造する会』なるカルトの一員であり、今頃はカルト団員とゴロツキを集めたあの異界への襲撃を始めている頃だろうと語った。そして、あわよくば隙を見て小娘である真緒を捕まえて献上し、COMPを貰うつもりでもあったとも語った。

 

 

「ハハハッ、なかなか愉快なことになっているじゃないか。“星の浄眼”?

 急いで戻った方がいいんじゃないか?」

 

「ご迷惑をかけてすみません、赤井さん。

 ない世さん、ぺぺさんと希流子に伝えに行ってくれる?」

 

「真緒さんはどうするんです?」

 

「タクシーを呼んで急いで先に戻るよ。それじゃ行こう」

 

「真緒さん、うちの店で客を送るためのタクシーならすぐ呼べるっすけど使います?

 オレや店の者は店を開くんで車で送るのは無理っすけど」

 

「ジライヤさん、ありがとう! お願いします!」

 

 

 それを聞いた真緒は、ない世に声をかけジライヤに礼をすると慌ててタクシーで有馬温泉へと戻って行った。

 なお、つけて来た男は真緒とない世が居なくなった後に何処かに消えていた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 既に日が暮れた時刻に真緒が目的地に着いた時には、そこにはチンピラ風の男達がたむろっていた。

 

 建物自体は廃墟となっているそこのホテルの敷地では、入口の前にある駐車場は広いこともあり、来訪する観光客のために有料駐車場となっているはずだった。しかし、観光客の物らしい車は全て無いそこには数台の車とバイクがが停められ、彼らの車の荷台のスピーカーから出る爆音が鳴り響き酒盛りをしていた。

 

 

『~~~♪~~♪』

 

「「イェーハッハァァッ!!」」

 

「そこに集まっているお前たち! 直ちに騒ぎを止めて解散しなさい!」

 

 

 真緒はタクシーを駐車場の入口で停めて降りて大回りすると、近所の通報から来たのだろう解散を命じているパトカーと反対側にそちらへと近づいて行った。ただ、連中も馬鹿じゃないようで、表にいる非覚醒者のゴロツキ達とは違い入り口を見張っているのは同じ様な格好だが覚醒している男が数人ほどいた。

 物陰からそれを見ていた真緒は、入口に入るべく札を腰から抜くと術を掛けた。

 

 

「……見える範囲では3人。禁呪符、急々如律令」

 

「…? あ、あれ? あばばば」

 

「おい、どうし……あべべべ」

 

「あろろろ?」

 

 

 しばらくの間、複数人をBIND(緊縛)状態にする札で動けなくなり倒れる彼らの横を通り、真緒は入り口に走り込んだ。

 

 入り口から案内された廊下を通ってしばらく走り抜けると、異界の入り口になる扉が見えてくる。

 その前には、表にいた覚醒者の連中と同じくらいの強さの男達3人がいて、走り寄る真緒を見つけて武器を構え声を掛けてきた。

 

 

「おい、どこから入り込んだ。お前!?」

 

「あ。この女、例の符術師?」

 

「ティコ、花子さん。来て!」

 

『ワン! グルルル!』

 

「痛ぇ! この野郎!」

 

『混乱しちゃえ! アアアアアッ!』

 

「「あああっ!?」」

 

 

 彼らの誰何の声を無視し真緒が喚び出した花子さんの【パニックボイス】が炸裂し、うちの二人が混乱し正気の男の足にティコが噛み付いた。

 ティコに噛みつかれた男が手に持ったナイフを構えたのを見た真緒は、そのまま男の前に走り寄り右足を振り上げた。

 

 

「このっ!」

 

「…!!! おおう、おおおう!」

 

『ワウン』

 

『うわっ。酷いことをするね』

 

「こういう男を黙らせるのって、これが手っ取り早いだけだよ。

 そっちの二人も黙らせよう?」

 

 

 股間を押さえて転がりまわる男を見て引くティコと花子さんの二人に、このくらい魔法で何とかなるでしょうとばかりに残りの二人を指差す真緒。

 その様子に正気に戻り、ガタガタ震えて命乞いを残りの二人が始めた。

 

 

「「降伏するから、それだけは勘弁してくれませんか?」」

 

「そうして欲しかったら中はどうなっているのか、簡潔に言って?」

 

「COMPを持ったリーダーと幹部の連中がボス部屋に着いている頃だと思います!」

 

「どうやってそこまでの道が分かるのよ?」

 

「中の地図は、前に襲撃の時にいた女のサマナーがCOMPでマッピングしていたんです!」

 

「その女は来てる? あと、容姿は?」

 

「来ていません! マスクとサングラスに帽子をしていて分かりません!」

 

「こんな所かな? それじゃ、禁呪符、急々如律令」

 

「「「あばばばば」」」

 

 

 必要な事を聞き出した真緒は緊縛の札で男達を動けなくすると、花子さんに手助けして貰いながらカバンから取り出した結束バンドで両手両足を拘束すると廊下の端の方に転がした。

 真緒のその手慣れた手付きに花子さんが聞いてきた。

 

 

『ねえ、そんなのどこで習ったの?』

 

「前に、漫画を描いていた頃に調べたんだ。

 変な集団に会うのも2度目だし、コツもペペさんから聞いておいたんだ。

 ……これでよし」

 

『漫画なんて描いていたの?』

 

「イラストが趣味だし、時々ね。

 ティコの絵なら帰ってから見せて上げるから、行こう」

 

『ワン!』

 

 

 こうして、真緒たちは都市伝説の悪魔達がいる異界へと入って行った。




後書きと設定解説


・仲魔

名前:ティコ
性別:オス
識別:魔獣イヌガミ
職業:真緒の使い魔
ステータス:レベル6→10
耐性:火炎無効・破魔弱点・呪殺耐性
スキル:ファイアブレス
    (敵複数・1~4回の小威力の火炎属性攻撃) new!
    噛みつき(敵単体・小威力の物理攻撃)    
    敵感知(半径50mの嗅覚による敵感知)
    警戒(奇襲や先制攻撃を受けにくくなる)
    忠義の励み(経験値の取得量が増加する)
リザルト:
 レベル6→8(+2、忠義の励み増加分)→10
 スキル追加、ファイアブレス

名前:花子さん
性別:女性
識別:怪異ハナコ
ステータス:レベル7→10
耐性:破魔弱点・呪殺耐性・精神耐性
スキル:ラクンダ(敵全体・防御力を1段階低下する)
    スクンダ(敵全体・命中、回避率を1段階低下する)
    パニックボイス(敵全体・低確率で混乱付与)
リザルト:
 レベル7→10

・敵対者

【カルト団員】
レベル5 耐性:破魔無効
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
詳細:
 「ヲタクで優しいギャルを創造する会」の団員
 十数人ほどいる魔法とCOMPのない一般会員の一人
 殆どはCOMP目当ての覚醒したチンピラ

『ヲタクに優しいギャル』なんて希少種、現実では想像の産物だよな。
本当は、その女性が『オタク“にも”優しい』だけなのだから。


次回は出来れば早目に。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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