デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。


第20話 変態カルトと筋肉の変態

 

『ブフゥゥゥッ!』

 

『はっ、回復させてもらうよ。【デスタッチ】」

 

『ブホォ!』

 

『ほらほら、【両腕落とし】!』

 

『ブフゥ!』

 

『足元がお留守なのよねぇ。【暗殺拳】!』

 

『ブヘェ!』

 

 

 ボス部屋の前では、ここの異界の悪魔達と攻め込んだカジュアルサマナーの仲魔である【妖鬼オーク】達との戦闘が続いていた。

 

 異界側は【怪異カシマレイコ】と【悪霊クチサケ】が前衛を務め、【怪異メリーさん】が遊撃と撹乱のために走り回っては小柄な体を活かして不意を突くような攻撃を続けていた。その後ろには、暫定ボスの【魔獣ウシオンナ】と生き残った都市伝説系の悪魔達が時々支援に魔法を飛ばしながらそれを見ていた。

 

 対して、10人いる「ヲタクで優しいギャルを創造する会」の精鋭会員のCOMPサマナーとその仲魔の【妖鬼オーク】が10体が代わる代わる攻めているにも関わらず、狭い入り口で物理耐性持ちのクチサケとメリーさんにやたらと戦い慣れているカシマレイコが厄介で攻めあぐねていた。

 

 

「……おかしい。何で勝てない? 数の差は歴然なのに」

 

「リーダー、大丈夫なんですか?」

 

「それなりのレベル差も、この数で攻めたなら関係ないはずだ。

 アイツラを倒さないとギャルの女悪魔は手に入らないぞ?」

 

「分かりました。でも、元はあれですよ?」

 

「贅沢を言うなよ。リリムとかモー・ショボーとかデビオクだと高価なんだよ」

 

 

 不甲斐ないオーク達の様子に、リーダーの男は苛立っていた。

 

 兄の作った団体から出ていったこの男は、独自に作り上げた魔法を使って『大金持ちになり好みのギャル系の少女を侍らす生活』を送るべく大阪に出ていた。程なく、彼独自の魔法と実力から古巣から付いてきた同志達をまとめ上げて巫山戯た名前だが自分の団体を作り上げた。

 

 彼は、廃れたアイテム修復魔法の【レバイル】を『その物体の状態を変更する』効果から『対象の女性の容姿をギャルの姿に変更する』彼独自の【レバイル】に作り替えていた。

 女性の男性経験に干渉する【アムリタ】を使う男の弟に相応しい変な才能である。

 

 大阪では細々とアルバイトとナンパをして過ごしていたが、業を煮やして強引なナンパをして日本橋で誘拐騒ぎを起こしてハンター協会と警察に追われてしまった。

 そこで取引のあった同じダークサマナーの「原本」という女と交渉し、有馬温泉近くのビルのアジトに10人分の廉価品COMPと仲魔、それに呪殺対策の色々に幹部メンバーとその仲魔のレベル上げのための手配などを手持ちの資金の殆どを溶かして購入していた。

 おまけに、表で騒ぎを起こして注意を引かせるためにゴロツキ達も大勢雇った。

 

 それだけの投資をしたのに、異界を潰すどころかこの異界にいる希少な都市伝説系の悪魔を捕獲して手に入れる事すら出来ないと兄の二の舞いになる。

 そう判断したリーダーの男も自分の仲魔を召喚し、攻撃に参加することにした。

 

 

「俺の仲魔も出すから、邪魔なオークは引っ込めろ!」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 誰もいない異界の中を後から来る者のために目印を付けながら、真緒たちは最奥へと移動していた。

 

 

『ねえ、応援は何時ぐらいになるかな?』

 

「……判らないよ。

 向こうからこっちに来て、もう1時間位経ったかな?

 ない世さんから連絡が行って手隙の人が来てくれるかも分からない。

 希流子が合流してくれたら、頼もしいのだけど。

 それまでは、ボクたちで時間稼ぎをする必要もあるかも」

 

『ワン』

 

「…………!」

 

「何、ティコ?

 ……男の人の声? まだ戦っているの?」

 

 

 しばらく移動し最奥のボス部屋に続く通路の曲がり角へと近づいた時、男の声が聞こえてきたために真緒たちは走るのを止めて物陰に隠れその先を覗いてみた。

 

 

「くそっ、上手く当たらん」

 

「リーダー、俺のオークを金髪にしてどうするんですか?」

 

「うるせぇ。こうすりゃ、アイツラも気が散って戦いにくくなるだろ?」

 

『マスターってば、へッた~。ウケる~』

 

 

 そこは真剣に戦っている様子ではあったが、お互いの一部の容姿がおかしくなっていた。

 

 ボス部屋の入り口で立ちふさがるようにして戦う金髪の長い髪を振り乱して刃物を振るう褐色肌のカシマレイコ、その隣で同じように戦う金髪で裂けた口まわりもツルツルの肌になっているクチサケ、オークの周囲で走り回るようにして入口の前以外のオークを牽制しているメリーさんがいた。

 

 また、彼女らと相対して戦うのは、何体かが黒い体毛がふさふさの金色に変わったり鼻の部分がツルツルテカテカしている個体が混じっている5体ほどのオーク達であった。

 

 そして、怪しげなビビットピンク色の光線を放っているリーダーらしい男の横には、白い羽を背中から生やしミニスカJK制服を着てギャルコーデもバッチリ決まった【天使エンジェル】が浮かんでいる。

 

 真緒が見る限り、カシマレイコとクチサケはレベル13でメリーさんがレベル12と、レベル10のオーク達よりは強いもののかなり傷が深くそろそろ倒されるのも時間の問題のようだった。

 

 

「よし、不意を突くよ。1、2の3!」

 

『ワン! グォォォォッ!』

 

「「うわあぁぁぁ!」」

 

『弱っちゃえ、【ラクンダ】!』

 

「みんな、電撃弱点! 雷神符、急々如律令!」

 

『『『ブモォォォ!』』』 

 

『ちょ、やば。ダメージ、えぐいって!』

 

 

 メリーさん達に意識が行っていたのか、真緒たちの不意打ちが決まった。

 ティコのファイアブレスが人間達を中心に吹き付けられ、花子さんの魔法がオーク達やエンジェルの防御力を下げ、真緒のマハジオの札の電撃が電撃弱点であるエンジェルとオークに放たれた。

 大きなダメージを受けた仲間たちを見て振り返ったリーダーの男は、真緒たちを見て仲間に向かって叫んだ。

 

 

「不意打ちとは卑怯だぞ! 

 …! お前は、兄貴達を倒した巨乳巫女の片割れの貧乳札使い!

 兄貴の仇を討つぞ! 半数は向こうに当たれ! 

 エルっち、回復だ!」

 

『オッケ~、【メディア】』

 

「「分かりました、リーダー。召喚!」」

 

『『ブモー!』』

 

 

 リーダーの男の指令により、エルっちと呼ばれたエンジェルは全体回復魔法を放ちオーク達も殴りかかるやつ以外はディアを使って仲間の傷を癒やしている。

 こちらに向かってくる新たに喚び出された5体のオークを見て、思わず引きつった笑みを浮かべながら青筋を立てた真緒は札を抜くと仲魔に指示を飛ばす。

 

 

「ティコ、ルビーと交代。花子さん、援護よろしく。ルビー、来て!」

 

『ワン』

 

『出番だね、いくよ!【毒串刺し】!』

 

『まかせてー、弱くなれ、【ラクンダ】!』

 

『ブモ、ブモー!』

 

 

 花子さんの防御力弱体化魔法がまた掛かり、こちらに来る先頭のオークにルビーが斬りかかった。

 オーク達が一斉にルビーに殺到して殴り掛かり、残りの2体はディアを使い火傷をした幹部サマナー達を癒やしている。

 

 

『『『ブモー!』』』

 

『きゃあ!』

 

『『ブモモ』』

 

『【メディア】!』

 

「おっ、傷が治るぞ」「痛ってぇ、助かった」

 

(ヤバいなー。このままだとジリ貧だ。

 こいつら、ディアとかメディア使うから思ったよりしつこいぞ)

 

 

 向こう側の方もこのままでは負けるだろう。

 父や友人はいい顔はしないだろうが、また無理をする必要があるだろうと真緒は護符を2枚引き抜く。

 そこへ、後ろの通路からない世と男性の声が響いた。

 

 

「真緒さん、良かった。間に合った!」

 

「とおっ! クロスアウッ!」

 

「…えっ!? きゃあああっ!」

 

 

 かなりのスピードで走ってきたのだろうか、ない世の側で服を脱いだ黒のブーメランパンツを履いた大根顔のマッチョの大男が、小脇にない世を抱えて天井スレスレに宙を舞って真緒たちを飛び越えて行く。

 そして、メリーさん達が戦っている辺りへとニコヤカな笑顔をしつつ落下していった。

 

 

「【マッスルチャージ】、【メガトンプレス】だろ!」

 

『『『ブモーーッ!』』』

 

『『きゃあああ!』』

 

「「うわぁぁぁ!」」

 

「いやあぁぁっ!」

 

 

 その男の落下は、大量に舞う砂埃で見えないが落下地点付近に大きな床の凹みと周囲にいたオークやカルトサマナー達に大打撃を与えたらしい。その証拠にオーク達の断末魔の叫びと、余波を食らったメリーさん達の悲鳴にカルトサマナー達の悲鳴と、ついでにない世の悲鳴も響いている。

 

 こちらに来ていて被害を免れたリーダーとエンジェルに、残りの配下たちとオーク達はそれを見て浮足立っていた。

 ハッと我に返った真緒がそのまま2枚の札を繰り出し、ルビーと花子さんもそれに続いた。

 

 

「決める! 雷神符、雷神符、急々如律令!」

 

『死んじゃえ、豚たち!【マハムド】!』

 

『動けなくなれっ、【パニックボイス】! アアアアアッ!』

 

 

 反動で傷つく真緒の両手から中威力の範囲電撃魔法のマハジオンガに相当する電撃が彼ら全体に降り注ぎ、ルビーの範囲呪殺魔法が生き残りのオーク達に放たれ、花子さんの甲高い悲鳴でサマナー達が混乱に陥った。

 

 

『『『ブモーーッ!』』』

 

「「「ぎゃあああっ!」」」

 

『こんな殺られ方、マジサイテ~!』

 

「エルっち!? ぐおあああっ!」

 

 

 こちら側にいた電撃弱点であったオークとエンジェルはこの電撃と呪殺魔法で全滅し、カルトサマナー達も魔法による混乱と電撃のダメージで戦闘を続けられる状態ではいられなかった。

 

 

「【マッスルパンチ】!【マッスルパンチ】!【マッスルパンチ】!」

 

「……もう、いい加減にして下さい~!」

 

「ムハハハっ、今日も筋肉が調子いいだろっ!」

 

 

 向こうも背中から縋り付いて止めるない世を振り回しつつ、暴れるない世が連れて来た応援らしい筋肉大根男が残りのカルトサマナーを殴り飛ばして沈黙させていく。

 あっけに取られて見ていた異界側の悪魔の中から、メリーさんが真緒に走り寄ってきて聞いた。

 

 

『ねぇ? 助けに来てくれたとはいえ、友達は選んだほうがいいと思うわぁ』

 

「あの筋肉男は初対面ですっ!」




後書きと設定解説


・関係者

【悪霊クチサケ】
レベル13 耐性:物理耐性・破魔弱点・呪殺無効
スキル:シバブー(敵単体・中確率で緊縛付与)
    デスタッチ(敵単体・小威力の呪殺属性HP吸収)
    パララディ(味方単体・麻痺状態回復)
詳細:
 都市伝説で有名な「口裂け女」の怪異
 忘れられつつあり、種族が「悪霊」になっている
 男性整髪料の臭いが嫌い

【怪異カシマレイコ】
レベル13 耐性:火炎弱点・破魔弱点・呪殺吸収
スキル:両腕落とし(敵単体・小威力の物理攻撃。
          低確率で緊縛付与)
    ムド(敵単体・低確率で即死付与)
    スクンダ(敵単体・命中と回避率を1段階低下する)
詳細:
 ある男性の所に現れた片足の美女の姿という怪異
 謎掛けをして相手の体の一部を持ち去るという都市伝説が元

・敵対者

【教祖カルトサマナー】
レベル13 耐性:破魔無効・呪殺耐性
スキル:COMP使い
    レバイル(敵単体・容姿変化付与)
    交渉術(主に詐欺などの言いくるめ話術)
装備:COMP(アナライズ)
   呪殺耐性のお守り 
詳細:
 カルト「ヲタクで優しいギャルを創造する会」の代表
 解釈違いで「純潔守護騎士団」を脱退した
 実は「純潔守護騎士団」の団長の弟
 本来はアイテム修復魔法を独自の魔法に変化させた

【天使エンジェル】
レベル12 耐性;電撃弱点・破魔無効・呪殺耐性
スキル:コウハ(敵単体・小威力の破魔属性攻撃)
    メディア(味方全体・HP小回復)
    呪殺耐性(スキルカード)
詳細:
 教祖サマナーの女性天使のCOMP悪魔
 割りと大事にしているらしく呪殺耐性も持っている
 その代わり姿も中身も完全にギャル化している

【精鋭カルトサマナー】
レベル10 耐性:破魔無効・呪殺耐性
スキル:COMP使い
    一分の活泉(最大HPが少し上昇する)
装備:COMP(廉価品)
   呪殺耐性のお守り 
詳細:
 「ヲタクで優しいギャルを創造する会」の精鋭会員
 総勢10名のCOMPを与えられた幹部たち
 古巣からリーダーに付いてきた同じ性癖の同志

【妖鬼オークの群れ】
レベル10 耐性:銃弱点・電撃弱点・破魔耐性
スキル:ディア(味方単体・HP小回復)
    突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
詳細:
 精鋭カルトサマナーのCOMP悪魔
 皮の鎧と棍棒を持った猪の頭部を持つ人身の男性型悪魔
 全部でサマナーと同じ数の10体がいる

レバイル:本来は昔に廃れたアイテム修復の魔法
     彼はギャル化という容姿変更魔法に変化させている
     主に“ギャル化”ビームや光線の形で放射する
     効果は染髪・褐色化・美白化・メイキャップなど
     人間にも効果があり、効果時間は永続となる


次回は出来れば早目に。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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