デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。


第23話 豪華客船『ビー・シンフル号』

 

「真緒! 例の懸賞に当たりましたわ!」

 

「え、嘘!? 倍率がやたら高かったアレに?

 誰が応募していたの?」

 

「なんでもペペロンチーノさんが、チーム扱いで応募しておくように指示して下さったそうですわ」

 

「……え? 何が当たったんです?」

 

「ない世さん、ご存知ないのですね?

 ジプス大阪本部で開催される『エステ・シンデレラ』の出張全身エステの参加権ですわ!」

 

「うわ、それは羨ましいです」

 

 

 8月に入ったお盆前のある日、希流子が慌てて真緒の家に走ってきた。

 

 何でも、大阪にあるジプスの本社で行われたハンター協会に登録している女性メンバーを対象にした懸賞に三人分が当たったというのだ。

 

 それはジプス社内の福利厚生の一環として行われるイベントで、日本国内では有名な『エステ・シンデレラ』を経営するエステティシャンのペルソナ使い『辻彩』の出張全身エステであった。

 

 本来の店は関東にあるらしいがこの時だけは格安の値段で大阪に来て施してくれるもので、ジプストップの妹で補佐役の【峰津院都】に技術部の【菅野史】、医術部の【柳谷乙女】や実働部隊の【迫真琴】や【飯綱ミサキ】といった主要な女性幹部が主導して、あの【九頭竜天音】も資金を出して毎年招いていると噂がある高い倍率を誇るものであった。

 

 朝食を終えてそれぞれ家事や護符作成の日課に行こうとしていた真緒とない世は、家に来た希流子の発言に彼女を家に上げるとさっそく尋ねた。

 

 

「…こう言ってはなんですけど、二人はまだ未成年でしょう?」

 

「もちろん、わたくしと真緒は未成年ですからエステは親の同意書が必要ですわ。

 しかし、この催しは本社近くの港に豪華客船を借り切って3日かけて行われるのです。

 仮にエステに参加しなくても、豪華客船の2泊3日旅行がタダで出来るのですわ」

 

「……なるほど。それはそれで参加したいです」

 

「希流子、パンフを見せて。……ふんふん。

 泊まれるのは、豪華客船『ビー・シンフル号』。

 料理は、『割烹処ローエングラム』を始めとした一流の店の数々。

 最上階にある高級バー『ようこそ、男の世界へ』で夜景を見ながらお酒も楽しめる。

 さらに、本家業魔殿の主が直々に予約無しで悪魔合体も請け負ってくれる、か」

 

「しかも、今回はジプスのお盆休みに合わせているので、ホテル内で普段会えない相手にコネを作るのもよい機会ですわ。

 期日は、お盆前の最初の週末ですわ。真緒はどうしますの?」

 

 

 希流子から期日を聞いて真緒は自分の予定を思い出して、残念そうにため息を付いた。

 

 

「ごめん、その日は家の用事があって行けないよ。

 この辺の家のお墓は管理会社に管理委託しているけど、経を読むのは父さんだから。

 集落時代からの古い家の盂蘭盆会の法要もお手伝いしないといけないしね」

 

「それは仕方がないですわね。

 それでは……」

 

『お嬢。ない世殿と行ってきなさい』

 

「有定さん?」

 

「……え!? いいんですか?」

 

 

 自分もその法要のお手伝いかなと考えていたない世は、有定のその発言に驚いた。

 有定としては、ここ数ヶ月のない世の努力に何か褒美をと思っていたのでちょうどいいとも言えた。

 

 

『ここ数ヶ月の間、色々頑張っていたし褒美代わりにいいでしょう。

 郁夫さまには私の方からも言っておきます。

 お嬢や希流子殿も大人の付き添いなら、よく知ってるない世殿がいいでしょうし』

 

「わ、わ。

 エステ・シンデレラって、予約が一年待ちで云十万も掛かるのにいいんですか?」

 

「父さんには、ボクからも言うから大丈夫。

 今回は懸賞でタダなんだから、羽根を伸ばして来ようよ。ない世さん」

 

「うわぁ、ありがとうございます!」

 

「そういう事だから、希流子お願いね? 一緒に出かけよう」

 

「しょうがありませんわね。

 それじゃ、ない世さん。よろしく頼みますわ」

 

「はい!」

 

 

 こうして真緒と希流子とない世の3人は、盆休みに入ってすぐに2泊3日の旅行に大阪へと旅立って行った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…やばい。わりと精神的に来る環境だったよ、ここ」

 

「大丈夫ですの、真緒?」

 

「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。希流子。

 “無知は罪なり”って言うけど、救いでもあるんだなって思っただけだから」

 

「……はあ?」

 

 

 真緒たちは無事に到着し、大阪港で開催されていたエステイベントに参加していた。

 

 ソウルハッカーズで登場した業魔殿のあった豪華客船ビー・シンフル号だけあって内装や施設も豪華であったのだが、一日目だけでとても見覚えがある人々のお陰で真緒としては頭がクラクラする様な環境であったのだ。

 

 例えば、業魔殿では館の主のヴィクトルとゼロ姿のルルーシュが一緒に高笑いしているのをそっと見なかった事にして立ち去ったり。

 例えば、エステ参加後に東京有明の夏の祭典に突撃する前哨戦として、エステルームに話しながら向かう沙条愛香と御国織莉子を見かけたり。

 例えば、エステ参加組にゲーム機の画面越しによく見ていたデビサバ女性陣や対魔忍の『井河姉妹』がゾロゾロと談笑しながら歩いていたり。

 例えば、ウィッチーズの『ミーナ・ヴィルケ』が特務六課の『八神はやて』に“旦那マウント”を取っていたり。

 例えば、マギウスのエースだった『フェイト・テスタロッサ』が幼馴染の考古学者の男性と寿退職をしたという噂で近寄りたくない空気になっていたりと、色々とあった。

 

 二日目の朝、参加を見送った真緒と希流子とは別に、ない世はそういうものは我関せずと初めての豪華客船のエステを堪能しているようだった。

 

 

「真緒は今日はどうなさいますの?」

 

「部屋にずっと居てもしょうがないし、船内を彷徨いてみようかなって考えてる」

 

「わたくしは、天津神と国津神の女神も参加されているようなので挨拶に行ってきますわ」

 

「分かった。気をつけてね」

 

 

 希流子とも別れ、真緒は船内をブラブラと散歩を始めた。

 

 まず、父や友人へのお土産を買おうかと、真緒は買い物ができるエリアに向かった。

 商店エリアでは、ブランド物のブティック『ロサカンディータ』や霊装を売る武具店『バラベラム』に各種のアイテム店『デラマンチャ』など、様々な覚醒者向けの店に色々なものが売っていた。

 

 その中の土産屋『時間城』で、土産を選ぶ一人の前世でとても見覚えのある女性を見つけた。

 

 

「…間桐桜?」

 

「あれ? どこかでお会いしましたか?」

 

「ああ、いえ。こちらが一方的に知っているだけです」

 

「そうですか。

 えーと、事務所の関係者の方かな?」

 

「…あー。実はネットの記事でお見かけした事があって…」

 

「うーん。思い当たる節はあるけど、何かご用ですか?」

 

「マギウスに所属されていますよね? お話を聞かせて下さい。

 ボク、神戸の近くのさくらの町に住んでいる伊月真緒っていいます」

 

「…! 神戸の近くに住んでいるんですね!?

 その付近の事でお聞きしたい事があるんです!

 あ。私、クラン・マギウスに所属している【遠坂桜】と言います」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「こちら、アイスティーとアイスコーヒーになります。ごゆっくりどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

(なんで、◯イエンタールがボーイをしているの??)

 

 

 真緒は彼女の話を船内の食堂ホールで話を聞くことにした。

 

 食堂ホールの食事は主にバイキング風となっていて、和食コーナーでは見覚えのある金髪と赤毛の男性が包丁を振るっていたのが見えたり、ホール内で食事を運ぶウェイターにはこれまた見覚えのあるやたらと動きの素早い金髪の男性や両目の色が違うニ枚目の男性がいたりもした。

 

 そのうちのニ枚目のボーイが運んできた飲み物を一口飲むと、彼女は真緒に話を切り出した。

 

 

「私は今、人探しのために故郷を出てマギウスに所属しているんです」

 

「…えーと、あの“魔法少女”を集めたクランの?」

 

 

 『マギウス』。

 

 それはもともと、ジプスが自社の霊装を女性異能者に宣伝するためのモデル事務所が元になった大規模クランである。

 

 女性の異能者は覚醒すると肉体の強度が増して老化が遅くなるという研究結果が出ているが、いわゆる『魔法少女』と呼ばれる分類に属する異能者はとみにそれが顕著であるとされる。そして、それに目をつけたレジェンドの3人が目をつけていた事務所を買い取り、後輩に当たる彼女らを表向きにはモデルとした異能者の少女たちをスカウトして大きくなったクランである。

 

 もっとも女性異能者のバトルヒロインなチームは多種多様に存在するため、ウィッチーズのように必ずしもここに所属しているわけではない。

 

 

「大規模で力のあるクランですから、情報も集まりやすいと思って。

 ……この年で恥ずかしながらですけど」

 

「今の代表とトップエースは同年代の人ですから、それは言わない方が…」

 

「あ! そうですね。

 それで、この人が神戸の付近に潜伏しているはずなんです」

 

 

 ちなみに、マギウスの今の代表は『特務六課』というチームを率いる「八神はやて」で、トップエースは「高町なのは」である。両名共に、現在は絶賛エステ中である。

 

 そう言うと、バッグから彼女は写真を取り出した。

 そこには、赤毛の朴訥そうで家庭的な雰囲気の高校生くらいの男性が写っていた。

 

 

「この人は衛宮先ぱ……ではなくて、『衛宮士郎』と言います。

 故郷で起きた悪性の異界の攻略を成し遂げて、私や姉さんや大勢の人を救ったんです」

 

「…もしかしてこの人、あなたの恋人ですか?」

 

「はい、もちろん。

 姉さんや友人の外国の女性の方も好意を持っているようでしたけど、“絶対に負けませんから”」

 

 

 そう言って、ヌルリと湿度の高い鎌首をもたげた黒い蛇のような笑みを浮かべる彼女。

 

 彼女の語る所によると、「マキリ・ゾォルゲン」と名乗る老人の邪術師が故郷の霊地の要に悪性の神が降臨した異界を作り上げ、己が願いを叶えようとしたのだそうだ。それを、その地の霊地を管理していた遠坂家とたまたま来訪していたアインツベルンとエーデルフェルトの後継の少女たち、それに巻き込まれ覚醒した一人の少年が力を合わせて悪性の神と邪術師、それに協力をしていた地元のメシアンの神父を討ち果たしたらしい。

 

 その事件を経て、遠坂桜の探す彼は周囲の女性の好感度を上げまくってのらりくらりとアプローチを回避した上で高校を卒業し、

 

『自分の夢を探しに行きます。探さないで下さい』

 

 との、メモを残して姿を消したのだそうだ。

 

 それから、10年。

 

 今だに彼を探している諦めきれない彼女たちはたびたび家族宛てに送られるハガキ以外の情報がない中、確度の高い占術の情報を手にした遠坂桜が用事で動けない他の女性を出し抜いて今回のイベントに乗じて関西へと来たのが今ここにいる理由らしい。

 

 

(聖杯戦争が男性向けの現代異能バトルみたいになっているのは、あの作品のファンとしては少し複雑だなぁ。

 うーん、なんか黒いけど教えて大丈夫かな?)

 

「一人、心当たりがあるんですけど、この人に見覚えはないですか?」

 

 

 そう言うと真緒は、弓兵の似顔絵を持っていたメモ帳にサラサラと描いた。

 その絵を見て、彼女は笑みを深くした。

 

 

「ええ。先輩で間違いありません。

 髪型や肌の色が変わっても、私が先輩を見間違う事はありませんから」

 

「彼、ボクの地元でお世話になっている異能者向けの武具のお店の店主なんです。

 真っ当なお店で無くなると困るので、刃傷沙汰とか迷惑な行動をするようなら教えられません。

 貴女の信望する神さまに誓って言えますか?」 

 

「はい、もちろんです。

 先輩に会えるなら、いくらでも誓えます」

 

「あー、じゃあ。

 明日、このイベントが終わって地元に帰る時に着いてきて下さい」 

 

「ありがとうございます。

 それじゃ、これから準備するので失礼しますね」

 

 

 ニコニコ顔で飲み物を飲み終えると、彼女は一礼して去って行った。

 それを見送り、真緒は思わずテーブルに顔を伏せた。

 

 

「どうするのよ、これぇ!?」

 

 

 嘆いても、イベントはまだ二日目です。




後書きと設定解説

・関係者

名前:遠坂桜(とうさかさくら)
性別:女性
識別:転生者(鬼女ジャヒー)・25歳
職業:モデル事務所「マギウス」所属モデル
詳細:
 故郷を出るためにジプスのモデル事務所で働いている美女
 姿を消した想い人の男性をずっと探している
 ジプスの装備宣伝のモデル事務所「マギウス」所属
 周囲が魔法少女だらけの事務所では年齢的に肩身が狭い模様
 本気の時の容姿はFateの黒い「間桐桜」

※この世界の冬木市で起こった事件は、ヘブンズフィールに近い流れでした。
※ちなみに、魔法少女のレジェンドは「サリー」「アッコ」「メグ」の3人です。


次回は、ネタが浮かび次第早めに。
読んで下さった方がいるならありがとうございます。
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