デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。
やっと書けた。


第24話 襲撃

 

『ジプス大阪近くの〇〇という家族客に媚びた店は最低。

 自立した女性の居場所を奪うな。ライフステージの選択はそれぞれ。

 子供の奇声が響くファミリー層に媚びて、女性の居場所を奪うような店は長続きはしない。

 失った自立した女性の客は戻らない。もう2度と行きません』

 

『☆★★★★

 露骨に性を売り物にしている女や、変態に媚びを売る姿の子どもを起用するマギウスのモデルを起用したブランドの服はもう買いたくない』

 

『先着50名限定の例のエステイベントに参加した。

 やっぱり、容姿に優れた若い女性しかいないルッキズムの権化である集会でしかない。

 この企画を考えたであろう男性幹部を想像すると寒気がして身震いする。

 この場には、日本のオスに媚びて性的搾取されるのを望む名誉男性しかいない。 

 思わず、ハッとして言葉を失う。この国はいつまでこんな事を続けるのだろう。

 呆れて眩暈がし、怒りに震えて涙が止まらない。

 恥を知れ、ジプス。もうこんな国、終わりだよ』

 

 

 真緒が食堂ホールで頭を抱えている頃、宿泊用の三等船室の一つでこのイベントの参加店舗の職員であった地味な容姿の女性がため息を付き、捨て垢でジプスを罵倒する文章をSNSにいくつも打ち込んだ使い捨て携帯を部屋のベッドに放り投げた。

 そして、その女は懐からスマホを取り出しブツブツと予定を確認し始めた。

 

 

「まったく、上にアピールできるだけの成果を上げてこいとはラプラス様も人使いが荒いわ。

 こんなあからさまな動機づけの文章まで書かされるなんてたまらないわ。

 ええと、この成り代わった地味女は始末済みだからまあいいわね。

 持ち込みのアイテムの方は私の仲魔が持ちこむ予定、だけど。

 ……ああ、やっと予定の時間ね」

 

 

 そう呟いた女の顔がヌルリと変化し、前の事件で逃亡した『原本黒実』の顔に変わる。

 そして、スマホの時計を見ていた彼女の姿が揺らめくと、そこにはカバンを持った原本が顔を変える前の姿の女が立っていた。

 

 

『【キャスリング】。

 アハハハ、マスターの言った通りだ。

 ジプスの連中、【トラポート】系の術だけを阻害して転移対策は万全と思っているのが笑えるわ。

 後はこれを開放して送還されれば完了ね』

 

 

 アナライズを使える者が見れば、この女性は【外道ドッペルゲンガー】だと見破れるだろう。

 

 そして、この悪魔の持つチェスのそれを語源とするスキル【キャスリング】の効果は、『マスターと仲魔の位置を入れ替える』である。ただし、効果距離が港近くの船外の待機場所にまで及び『トラポート』とはまた別系統の転移系のスキルなのが問題だった。

 

 自身の顔を変えるスキルとアナライズを阻害するスキルで成り代わって潜り込み、逃亡する際には離れた場所の仲魔と入れ替わって送還すれば転移したのと同じ結果になる使い続けてここまで磨き上げたこのスキルと手段は、原本黒実の切り札とも言える手札だった。

 

 そのドッペルゲンガーは、持ってきたカバンを開くと中から布に包まれた物を取り出すと床に置いてそっと布を外した。そこには、金色に光る一神教特有の雰囲気を放つ酒坏があった。

 

 

『うえ、天使臭いなぁこれ。

 どこで手に入れたのか知らないけど、ろくなものじゃないでしょう?

 早く回収してくれないかな、マスター。…あっ、これでさよならね』

 

 

 ドッペルゲンガーが送還されその場から消えると、その場に残された酒杯は周囲の空間のマグネタイトを急速に吸い込み始めると異界を形成し、無数の美形だがマネキンのような容姿の天使を吐き出し始めた。 

 そして、不審に思った客室係の通報で来た警備員がその部屋の扉を開けた事で、天使たちが廊下に飛び出し惨劇が始まった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 それが起きたのは、昼食後しばらくしてからだった。

 

『異界発生情報。異界発生情報。

 当地域に異界が発生した可能性があります。

 周囲の状況を見て、落ち着いて避難行動を取って下さい。繰り返します……』

 

 それは、船内に異界が発生したという警報のアナウンスであった。

 

 

「やばい。荷物を取りに戻らないと! ボクは護符が無いとまずいよ!」

 

「わたくしも、刀が無いと威力が出ませんわ!」

 

「現金や身分証も部屋の金庫の中ですよ?!」

 

 

 周囲の女性達も慌てて行動を始める中、一緒に食事をしていた真緒たちは立ち上がり船室においてある荷物を取りに走った。船内で寛いでいたため真緒は数枚の魔法符と仲魔の召喚札を、希流子とない世はCOMPを持ち歩いていたが、真緒は魔法符が希流子は得物が無いのは戦いでかなり不利になるからだ。

 

 真緒たちが客室に走ると、船外にとにかく連絡を取ろうと携帯を使うも繋がらないと叫んでいる女性や非戦闘員を船外に誘導を始める船員などが走り回っており、船底にある業魔殿のへの入り口がすでにシャッターで閉じられているのが見えた。非常階段を駆け上り自分たちの部屋がある二等船室のある階に着くと、トップ層が泊まっていた上階の一等船室の方では既に叫び声や爆発音などの戦闘音が聞こえ始めていた。

 

 それらの音を聞きながら部屋へと走る真緒たちの前に、3体のレベル12【天使エンジェル】が立ち塞がった。

 

 

「メリーさん、花子さん来て」

 

『やっと出番かしら』

 

『来たよ! …うわっ、天使がいる!?』

 

「カハク、お願い!」

 

『はーい』

 

「しょうがありませんわね。えい!」

 

 

 素早く仲魔を召喚する真緒とない世に、手近な手すりを引っこ抜いて得物にした希流子を見て天使達が騒ぎ出した。

 

 

『異教の悪魔を使うなど、極東の人間はやはり信心が足りない』

 

『然り。されど、地霊はまだしも人形の悪魔など少女らしく可愛らしいものだ』

 

『異教の神に多少穢されているようだが、まだ間に合うだろう。

 汝らは、主の聖名の元に帰依するべきです。さあ、従いなさい』

 

 

 その発言に顔を見合わせる真緒と仲魔たちだが、お互いに視線を交わし合いそれに押し出されるようにして真緒が話しかけた。

 

 

「その前に、一つ聞きたいんだけど?」

 

『何かな? 少女よ』

 

「あなた達はザ・ヒーローに負けた後に、ロウヒーローの説得で膝を屈して大人しくしているはずだよね?

 それが何故、ここにいるの?」

 

『『……!!!』』

 

 

 真緒がそう答えると、その問いは彼らには劇物だったようで天使たちはたちまち激高した。

 

 

『みだりにその名を出すな。口を慎め、少女よ!』

 

『我らは間違ったのではない! 上が結果を急ぎ過ぎただけなのだ!』

 

『そもそも! 主の右に立つあの方が降りて来て説教をするなど誰が分かるものか!!』

 

『それに何なんだ! あのザ・ヒーローを名乗る見た事もない悪魔は! 

 あの方々の攻撃を容易く防ぎ躱し、3撃で7大天使の一角を屠るなど信じられるかっ!』

 

『おまけに、殺したはずのクズノハの黒い剣士を連れて我らを蹂躙してくるなどっ!』

 

『ただの小妖精がメギドラオンを使うな!

 なぜ、凶鳥風情が能力低下魔法を打ち消せるのだっ! しかもっ…』

 

「霊活符、霊活符、急々如律令。攻撃開始」

 

 

 天使たちが勝手に激高し捲し立てている間に、後ろ手で取り出したタルカジャの札を使って重ねがけをしていた真緒は合図を出した。

 

 

『【ラクンダ】! 今です!』

 

『【マハラギ】!』

 

「【デスバウンド】、ですわ!」

 

『『ひ、卑怯なアァァ!』』

 

『残りはお前だけねぇ。【暗殺拳】!』

 

『ひぃ、助け……。ゲボっ!』

 

 

 花子さんの魔法で天使達の防御力を下げ、カハクの範囲火炎魔法と希流子の範囲物理攻撃が2体を倒し、残った1体をメリーさんの持つナイフが天使の首を後ろからかき切りマグネタイトの霧へと変えた。

 その消えていく天使を真緒は眺めながら、気になる事があってふと考え込んだ。

 

 

(……んんん? なんかとんでもない事を口走っていなかったかな?

 『主の右に立つ』? 『クズノハの黒い剣士』? 『メギドラオンを使う妖精』?)

 

「真緒、何をしているんです? 早く部屋に行かないと!」

 

「そうですよ、真緒さん。急ぎましょう?」

 

「……あっ、ごめん。急ごう」

 

 

 壊れた手すりを隅の方に放る希流子と先を急ぐように急かすない世に声を掛けられ、真緒はハッとして彼女らと駆け出した。

 こうして、さっきまで考え込んでいた内容を彼女が思い出すのは今回の事件が終わった後になる。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 真緒たちが無事に自分たちの居室にたどり着いた頃、船外の港でも騒ぎが起きていた。

 

 機動隊が現場付近から人払いをして周囲を包囲している中、もともと船周辺の警備をしていた警官隊が乗り付けたトラックから降りてきた時代錯誤な白いフルプレートアーマーの集団が中に入ろうとしているのを押し留めていた。

 

 その部隊を率いるテンプルナイトの正装をした長身の神父に、それを引き留める寝癖と曲がったネクタイが目立つ草臥れたスーツ姿の男が食ってかかっていた。

 

 

「だ・か・ら、あんたらにはここに入れる權利はないんだよ。分かるか?

 すぐにジプスから覚醒者の応援が来るから、あんたらは邪魔なんだよ!」

 

「貴様こそ何の權利があって、我々の活動の邪魔をするのだ?

 どこよりも早く駆けつけたというのに、その態度は何だ?」

 

「態度も糞もあるかっ!

 お前らがやらかすとなぁ、僕の仕事が増えるんだよ!

 おまけに、そんな格好でウロウロしやがってここは異界じゃねえんだぞ!」

 

 

 男のその発言を鼻で笑う神父は、スーツの男性を押しのけ船へと入って行った。

 

 

「我々はここで盗まれた【天使の血杯】が使用された反応があり、それを回収に来たのだ。

 この回収任務に関してはお前らは手出し無用と、上には事前に話が通っているはずだ。

 そこをどけ。まだ来ない応援を待っていると人が死ぬぞ?」

 

「だから、ジプスの応援の到着を待てって。……ああ、クソ。

 ここには船の中以外には僕しか異能者はいないんだぞっ!

 メシア教って本当にクソだなっ!」

 

 

 警官達を押しのけて船への階段を登っていくメシア教の騎士集団を見ながら、男はパトカーの無線に話しかけた。

 

 

「こちら、大阪港の現場の足立です。

 船にメシアンの連中が乗り込んで、…はい。天使の血杯がどうとか、…はい。

 交通事故があって、ジプスの応援が到着するのに時間がかかる?

 それまで待機しろって、…はい、了解です。……ああ?」

 

 

 無線機を置き何気なくもう一度彼は船の入り口の方を見ると、船の入り口でメシアンの部隊と複数の天使が戦う様子が見られた。そうこうする内に、鈍い殴打音と共に先程まで言い争っていた“神父だった肉塊”が船から振ってきて男が乗ってきたパトカーを潰した。

 その様子にたじろいで下がる同僚に指示を出すと、男は舌打ちして船に向かって走り出した。

 

 

「おい、応援が来るまで機動隊の指揮下で待っているんだ。

 ああ、クソ。どうして僕が出なくちゃならないんだよ!

 来い、【マガツイザナギ】!」




後書きと設定解説


・敵対者

【天使エンジェル】
レベル12 耐性:電撃弱点・破魔無効
スキル:マハンマ(敵全体・低確率で即死付与)
    マハラギ(敵全体・小威力の火炎属性攻撃)
詳細:
 今回アイテムにより喚び出された天使
 全員が美形なマネキンの様な顔と姿をしている
 術式で強化されて呪殺弱点が無くなっている


次回は、リアル次第ですが早めに。
読んで下さった方がいるならありがとうございます。
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