デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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遅くなりました。


第27話 遠坂桜と星見山の異界の試練

 

「先輩、お久しぶりです。故郷に戻られないから探しに来ちゃいました」

 

「ねえ、士郎さん。この人は誰なのかな?」

 

「オーケー、二人とも。落ち着いて、まず話し合おう」

 

 

 家に戻ったその翌日、家に泊めた遠坂桜を連れて真緒がアーチャーの開店したばかりの店に連れて行った彼女らの最初の会話がこれだった。

 

 神戸での事件に巻き込まれて家に帰ってまずやるべきは父や周囲への報告と挨拶であったが、そちらの方は事前に向こうから連絡していたこともあり、真緒や希流子も親に叱られはしたが何とかなった。

 そして、それを熟して次にやるべき事柄になったのは、霊能者用の装備店店主のアーチャーと現在の同居する恋人である岸野白乃、彼を追いかけて故郷から来た遠坂桜の3人の仲裁である。

 

 真緒が手を出すことではないかもしれないがこれでもし彼の装備店が無くなる事になったら、デビオクのネット通販がコノザマくらいいまいち信用が出来ずハンター協会の売店には本当に基本的な消耗品しかない現状、1時間以上を掛けて神戸まで買いに行かなくてはならなくなる状態なのはわりとこの町の異能者的には切実である。

 

 

(さて、どうしよう。ボク、まともな恋愛経験って無いんだけど。

 流石に、ギャルゲや少女漫画の知識だけとか言いたくないからどうにかしないと。

 前はアラフォーまでで、今も15まで女の子をしていて経験0だけどそんな事は言えないし。

 ……ええい、しょうがない。なんとかひねり出そう)

 

 

 異能者どうしの修羅場の刃傷沙汰などゴメンであるし、一応はこの町の霊地の一つを預かる家の人間として真緒は何とか言い含める事にした。

 そのため、一人ずつ別々に少し離れた場所で話しかけてみた。

 

 まずは、遠坂桜にではあるが。

 

 

「この町の霊地を預かる家の一人としていうけど、いい? 遠坂さん。

 男性って、目の前で女性の本気の喧嘩が起きたら思い切り引くからね。

 でも、『あの人ではなく、先輩は私だけのものにしたい』?

 逆に考えよう。『自分が許容できる女性を仲間にして共用しよう』って。

 だって、遠坂さんのお父さんも古い霊能の血筋だから他にも相手がいるはずだよ?

 ……そういう節は見えなかった。証拠は、だって?

 自分の聞いた話(前世知識)が本当なら、中東に金髪碧眼のお姉さんにそっくりの女性(Extraの凛)がいるはずだから家に帰ったら調べてみればいいと思いますよ?

 とにかく失敗すると彼、また逃げますよ?」

 

「…………分かりました。そちらにも立場がある以上、気をつけてみます」

 

 

 次に、岸野白乃。

 

 

「岸野さん。

 熱くなった方が話し合いでは負けるから、とにかく冷静にね。

 くれぐれも、彼の前で怒りのままに争わないようにしてくださいね。

 あの手の男性は、自分に手に負えないと考えると逃げる事を意識しますから。

 ……なんでそんなに詳しいのか、ですか?

 それは毎年、お盆に帰ってきてた母からあの世の井戸端会議で聞いた話からですよ」

 

「……うん。参考になる。頑張ってみるね」

 

 

 最後に、アーチャー。

 

 

「……くれぐれも、逃げないでくださいね?

 まあ、どうしようもなくなったら、これを飲んで頑張ってください」

 

「なんでさ。

 俺は……みんなを幸せにしたかっただけなんだ!

 ……あっ、待ってくれ。引きずらないでくれ、白乃、桜。まっ……」

 

 

 そう言うと真緒は媚薬成分増し増しの【ハッスルドリンコ】を彼を引きずって行く桜に手渡すと、話し合いのために自宅に戻る彼女らを見送った。

 

 その二日後。

 

 危惧された刃傷沙汰などはなく、げっそりと痩せたアーチャーが肌をツヤツヤさせた二人の女性と仲睦まじく買い物をする姿が駅前商店街で見られた。

 その後にペペロンチーノは、誘った酒の席で彼からこんな事を言われたそうだ。

 

 

「これが俺の忘れていたかった(過去の女性関係という)ものだ。

 確かに、始まりは(女性にモテる父への)憧れだった。

 けど、根底にあったものは(俺もモテたいという)願いなんだよ。

 そして、この(迂闊に手を出したら人生の墓場に一直線の)地獄を覆してほしいという願い。

 ただ、(魅力的な女性の)誰かの力になりたかっただけなのに。

 ────結局、(女性との出会いも)何もかも取りこぼした男の果たされなかった(花の独身生活な)願いだ」

 

「それってあなたの自業自得よね? それとも、お父様によく似たという事かしら?」

 

 

 あなたによく似た人の名台詞に変な意味を持たせないで欲しい。

 ペペロンチーノからそれを聞いた真緒はそう思った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『ワン!』

 

「遠坂さん!

 レベル13【地霊スダマ】2体、レベル15【妖樹サンショウ】2体来ていますよ!」

 

「まかせて下さい! 【魔性の乱舞】!」

 

「ティコ、燃やしちゃって! 【ファイアブレス】!」

 

『ワオーン!』

 

『『ああああっ!』』

 

 

 桜のスキルで放つ黒い粘性の波とティコの放つ炎の息で、火炎弱点だったスダマとサンショウはボロボロになり次いで放たれた真緒のマハラギの札で倒され消えていった。

 

 あれから、数日後。

 

 マギウスのクラン寮を引き払いここのハンター協会にも登録し、アーチャー達と同居する形で故郷に戻らずにちゃっかりとこの町に腰を落ち着けた遠坂桜は協会の依頼とモデル業をこなす事で日々の生活の糧を得ている様だった。

 

 そして、今回は真緒の家の裏手にある星見山の異界の間引きと“星見山の試練”に挑戦するために、夜間の山道を真緒とともに登っている最中であった。ここの間引きの依頼は、ハンター達の修練も兼ねる意味合いで地元の八幡神社から度々出されているもので、それに応募した桜の案内を“試練”もあるために真緒が申し出た形になっていた。

 

 ティコに警戒をさせながら山道を登る真緒たちは、少し話しながら登っていた。

 

 

「遠坂さん。あれから上手くいったみたいですけど、この町はどうですか?」

 

「故郷の町のように落ち着いた町で安心しますね。

 ああそれと、名字で呼ばれると姉と重なってしまうので『桜』と呼んで下さい。

 こちらも真緒ちゃんて呼びますね」

 

「分かりました、桜さん。それでどうなんです?」

 

「食べちゃいました」

 

「は?」

 

『クゥン?』

 

 

 その答えに思わず動きを止めて、桜を見る真緒とティコ。

 それを見て、クスクスと輝くような笑みで桜は答えた。

 

 

「私、中東の【鬼女ジャヒー】の転生体なんです。

 故郷で仲魔にしていたメドゥーサから色々と手ほどきを受けていて、それを思い出したんです。

 おかげで男性とだけでなく、女性相手もこう色々と広がったんですよ。

 よくよく考えたら、姉さん達に知らせる必要はないかなって考えまして。

 それで、白乃さんと先輩があまりにも可愛いからこうパクっと押し倒して。はい」

 

「……説得、出来たんですか?」

 

「説得、“意味深”ですけど。クスクス」

 

「…わぁ」

 

 

 鬼女ジャヒーとは、中東ゾロアスター教の悪神アンラ・マンユの愛人にして母親とされる女悪魔である。

 その名は『性悪女』という意味を持ち、女性の月経をもたらした月の女神でもあるらしい。

 そして、【鬼女メドゥーサ】は性的に奔放なギリシャ神話の出身である。

 この二つの結合した結果が、両方イケる様になった現在の彼女の有り様である。

 

 

「こっちですよ、桜さん。ティコ、先頭でね」

 

『ワン』

 

「真緒ちゃん、お姉さんともっと仲良くしませんか? クスクス」

 

 

 スススッと彼女と距離を取りつつ先を急ぐ真緒と、ニコニコしながら距離を詰める桜の二人はそのまま早足になり山頂へ向かう。その様子を湧いた悪魔が嫌な予感から茂みの中から見ている中、かなりのスピードで二人は山道を登って行った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 星見山の頂上、そこには妙見菩薩を祀るお堂が建っており、その前にはこの山の異界の主である牛頭天王こと【魔神ゴズテンノウ】への謁見を試す役割の門番が立っていた。

 

 牛頭天王とは牛頭人身の姿とされる薬師如来の化身(分霊)とされる神であるが、それは伊月家の祭神の鎮宅霊符神≒妙見菩薩≒薬師如来という事でもあるので、ここにいる彼は上司から任されたここの異界を監視する異界の主であった。

 

 そもそもこの星見山はこの付近でもそこそこ有名な異界のある試練場で、一度メシア教によって滅ぼされるまでは付近の異能者が集う修業の場の一つであった。ここでは異界の主の試練に打ち勝つと、死の運命を一度だけ切り抜けられる護符を授けられたという。

 要するに、一度限りの【食いしばり】の護符であった。

 

 その試練の門番である『播磨海』と名乗る二本の角を生やす江戸の頃の相撲取りの姿をしたレベルが25になる【妖鬼モムノフ】は、久々に来た出番を前に高揚し腕を鳴らして入念に準備運動をしていた。

 彼は強さを求めて江戸の頃に鬼になった関取であり、戦後のメシア教に追われた際には真緒の祖父と一緒に逃げ回った仲だったらしい。その縁で、今はこの異界に腰を落ち着けて異界の主である牛頭天王に勝つべく修行中である。

 

 やがて、彼の前に当代の伊月家の後継者である真緒に連れられて、道中の悪魔達を退けて来た挑戦者であろう女性が二人して走るような速さの早歩きで到着した。

 その二人に、ニコニコと彼は話しかけた。

 

 

『こんたこんた当代ん。お久しぶりじゃ。

 見たところ、当代が“試練”に挑まれるにはまだ些か練磨が足りんようじゃがないか用でんあったと?』

 

『ワン!』

 

「こんばんは、播磨海関。

 今日は異界の間引きに来ていたんだけど、こちらの遠坂桜さんが挑戦したいって言うから一戦お願いできます?」

 

『おや、お主も来ちょったんか。強くなっちょうな、犬っころ。

 こんおごじょが挑戦すっとな、当代?

 失礼だが、練磨はそこそこだがわしに勝つっか疑問じゃなあ』

 

「これでもレベルは21ありますよ。

 あなたが妖鬼モムノフであるのなら、十分に勝てます」

 

『ほう。おもしてかことをゆうおごじょじゃなあ?

 それなら、一つ胸を貸すとすっと。掛かって来やんせ!』

 

「行きます!」

 

 

 真緒とティコが端の方に行き、二人が広場で対峙すると桜の方が先手を取った。

 

 

「これでどうです? 【ソウルドレイン】!」

 

『ぬ、ぬおお。体ん力が吸わるっ面妖な術を使うとは!

 ええい、こいでどげんな!【張り手】!』

 

「残念♪ 私、物理攻撃は吸収できるんです。

 お返しです、【魔性の乱舞】」

 

『ぐおおっ、そんた卑怯だぞ!

 力士に物理攻撃以外が出来っわけがなかじゃろ!』

 

「だから言ったじゃないですか。“モムノフなら勝てる”って♪

 それとも、続けます?」

 

 

 HPとMPを吸収するスキルに魔力属性の範囲攻撃を繰り出して、物理攻撃を吸収する耐性持ちの桜。

 レベルが上でも、物理攻撃スキルしか持たない彼には手も足も出せない相手であった。

 がっくりと肩を落とすと、戦っていられるかと彼は座り込んだ。

 

 

『ええい、負けだ負けだ! こげん耐性ん相手では手も足も出らん。

 久しぶりん挑戦者が、こげん理不尽な相手とは思わんやったぞ。

 人間は時々、ほんのこて弱点を突いてくっとが上手かで手に負えんくなっ』

 

「……大関も元は人間だったでしょうに」

 

『当代。覚醒し鬼にそん身を変えたとはいえ、わしは力士じゃ。

 真っ向勝負すっとが、わしら力士ちゅうものど?』

 

「そうだったね、ごめん。それで試練はどうするの?」

 

 

 座り込んだ播磨海に真緒が話しかけていると、お堂の方からひらひらと御札が飛んできて桜の手に納まった。

 不思議そうに御札を播磨海に掲げる桜に、彼は苦笑いを浮かべるとこう返した。

 

 

「あの、これは?」

 

『そんた、試練に打ち勝ったもんに授けらるっ護符じゃ。

 けしみ瀕した際に一度だけ踏み留まるっ有り難か護符じゃっで、大事に持ち帰っ事じゃ』

 

「合格って事で良いんですね。ありがとうございます」

 

『そげん事じゃ。

 当代も次に連れてくんなら、まちっと真っ向勝負ん出来っ相手を頼みあげもす。

 こいでは主殿に挑んためん修行にもならんで。

 試練に打ち勝った者らは山ん麓まで主殿が送っでまた来やんせ』

 

「ごめんなさいね。

 お詫びに、明日の昼間にお堂の掃除に来るから。

 それじゃ、また」

 

「失礼します」

 

『ワン』

 

 

 そう真緒たちが挨拶をすると、彼女たちはスウッと姿が消えて麓まで転移していった。

 それを見送り、お堂を振り返って播磨海は中のものに話しかけた。

 

 

『当代が鍛え上げて挑戦してくっとが楽しみじゃなあ、主殿。

 ないせー伊月ん家に挑戦してくっ強さを持つ者が産まるっなど、ここ百数十年無かったでじゃなあ。

 ほんのこて楽しみじゃ』

 

『ああ、楽しみだ』

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 山から降りて今日はもう遅いので伊月家の客間に泊まる事になった風呂上がりにいく世に借りた夜着の胸をパッツンパッツンにさせている桜が、胸の方に視線が行きつつも少し腰の引けている真緒にクスクスと微笑みながら話しかけてきた。

 

 

「くすっ、そんなに警戒しないで下さい。

 恩人に襲いかかるほど見境がない訳ではないんですよ?」

 

「ごめんなさい。でも、普通の恰好なのにその色気は警戒しますよ。

 とりあえず、今日はお疲れ様でした」

 

「今日はありがとうございました。

 これであの人にいいお土産が出来ました」

 

「……お土産ですか?」

 

「あの人って、いきなりふらりと消えてどこかで死んでしまうような所があるので持っておいて欲しかったんです。

 だから、色々と調べて今日はお願いしました」

 

「ああ。そういう所、ありそうですね。

 じゃあ、しっかりと逃さないようにしないといけませんね」

 

「はい。明日の朝には戻ることにします。

 それじゃ、おやすみなさい」

 

「お休みなさい、桜さん」

 

 

 そう言って居間から客間に行く桜を見送ると、真緒も自室に戻りつつ考えた。

 

 

「恋愛って難しいものだなぁ。

 ボクもいずれはお婿さんを迎えないといけないのだけど、どうなるのかなぁ。

 自分の恋愛にサブカルとかの知識は当てにならないのは、前世でよく分かっただけにね」

 

 

 布団入ってからもその事をずっと考えていた真緒だったがいつしか眠りに落ちているのだった。




後書きと設定解説


・関係者

名前:遠坂桜(とうさかさくら)
性別:女性
識別:転生者(鬼女ジャヒー)・25歳
職業:モデル事務所「マギウス」所属モデル
ステータス:レベル21
耐性:物理吸収・破魔耐性・呪殺無効
スキル:ソウルドレイン
      (敵単体・中威力の万能属性HPMP吸収)
    マリンカリン(敵単体・中確率で魅了付与)
    魔性の乱舞(敵全体・中威力の魔力属性攻撃)
詳細:
 故郷を出るためにジプスのモデル事務所で働いている美女
 この町へは仕事仲間の噂を聞いて想い人を探して来た
 ジプスの装備宣伝のモデル事務所「マギウス」所属
 周囲が魔法少女だらけの事務所では肩身が狭い模様
 恋愛対象は男性だが、肉体的には女性もイケるらしい
 本気の時の容姿はFateの黒い「間桐桜」

名前:播磨海(はりまうみ)
性別:男性
識別:妖鬼モムノフ
職業:異界・星見山の中ボス
ステータス:レベル25
耐性:物理耐性・衝撃弱点・呪殺耐性
スキル:張り手(敵単体・中威力の物理攻撃)
    ぶっ潰し(敵全体・中威力の物理攻撃。
         命中率が低い)
    気合(自身の次の物理攻撃の威力を2倍にする)
詳細:
 元力士だった人間が強くなるために妖鬼になった悪魔
 2本角に丁髷を結った角の生えた力士の姿そのままの鬼
 異界の主への挑戦者と戦い、その資質を見るのが役目
 勝負事には厳しいが女性には甘い


次回は、リアル次第ですが早めに。
読んで下さった方がいるならありがとうございます。
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