「と、言う訳で新しく仲魔になってくれた二人と友人を紹介しますね。ない世さん」
「……えーと、そっちの悪魔の二人は変態の集団を退治するのに意気投合したのが切っ掛けでしたよね?」
『そうですよ。あ、怪異赤マントの“ルビー”です、よろしく。
せっかく女の子の姿なんだからって、ルビーって可愛い名前をマスターに貰ったんだ」
『あたしもそうだね。怪異ハナコこと花子さんだよ、よろしく。
あそこのトイレにいるの有名になって見物人が面倒だったから、ちょうど良かったよ』
「二人には家の方式の契約書類に同意して来てもらっているから、よろしくねない世さん。
それで、こっちがボクの幼馴染で親友の希流子ね」
「この町で唯一の神社である、八幡神社の宮司の娘の岩崎希流子ですわ。
あなたが最近、真緒が連れて来たという運のない従業員の方ですわね?」
「……運のない……。ええ、はい、その従業員の生江ない世です」
変態集団を倒してから数日後。
ちょうど日曜ということもあり、真緒の付近の関係者の顔合わせと親睦会を兼ねた昼食会が真緒の家で行なわれていた。
部屋着のシャツとスラックスの真緒と藍染の着物を着込んだ希流子が、リラックスした様子で白いブラウスとスカート姿のない世に話しかけていた。
テーブルの上には、有定さん手製昼食の親子丼とデザート代わりに真緒の父宛ての贈答品のクッキーの詰め合わせがジュースと一緒に並べられていた。
『このクッキー、美味しい』
『うーん。少女の姿になったからか、甘いものがとても美味しく感じる』
『そういえば、元の赤マントの時はどんな姿だったの?』
『1m位の大きさの丸坊主の男の頭が、赤い布を周りに漂わせて宙に浮いている感じ?』
『うわ。その姿になって正解かも』
悪魔の娘二人は、真緒の向かいに座って美味しそうにジュースや食べ物を堪能していた。
一人は、【怪異赤マント】の『ルビー』。
元々は本物の赤マントであったが捕獲されて、とある技術者に霊基をさんざん弄られた末にレベルが一桁まで弱体化し美少女の姿に変貌させられた個体であった。その後飽きられ、彼女はデビオクに放出されてあの変態集団の男の一人に落札されたという過去があった。
もう一人は、【怪異ハナコ】こと『トイレの花子さん』である。
もちろん、この花子さんは日本中に何体もいる内の1体であり、ただその容姿は黒髪のおかっぱ頭に白いブラウスと赤い吊りスカートという基本は昭和の頃と変わらず他と同じであったが、比較的に新しい個体であるためかとても現代風な美少女でスタイルも良くなっていた。
具体的には、ゲ◯ゲの鬼◯郎の第2期と第6期のねこ娘の絵柄の違いとでも言えば解るだろうか?
恐怖の対象も形骸化し“萌え”へと変化させる恐るべき日本人の業の証左とも言えるし、昨今のデビオクが悪魔たちの就職の場となった時代の変化の結果とも言える彼女らである。
甘い菓子やジュースを楽しんでいる悪魔娘の二人を余所に、人間の3人の方は親子丼を食べ終えて先日の話をしていた。
「それで、その人達は捕まったんですね?」
「そうだよ。かなりの人数がいたから、実入りも中々だったよ。
報酬とは別に、彼らの持ってたCOMPと悪魔カードは換金しておまけしてくれたし」
「確かに、そこそこのお金にはなりましたわね。
それにハンター協会はまだ鷹揚な組織ですから、彼らもある意味幸運でしたわよ」
「……ある意味幸運、ですか?」
「ダークサマナーなら、皆殺しにして死体は異界に放り込むとか、裏の奴隷売買に売り飛ばされるとか普通にありますわ。
酷いと、男でも完全に女性にされて売り飛ばされる事例もありましたわ。
そういう意味では、真緒に負けて保護して貰った貴女は幸運とも言えますわね」
「もっとも一番酷かったメシア教とガイア教は、10年前に1度起き上がれないくらいにヒーローたちに殴り倒されて今だに立て直し中だったっけ。
ハンター協会なら呪的に拘束されて労役で済むんだから、かなり穏当だよ。
だから、ない世さんも強くなって家で働いてね?」
「……はいぃ」
ふと、向かいで雑談しながらお菓子を食べている悪魔娘たちを見て、希流子は真緒に尋ねた。
「真緒って、複数召喚が出来るのね。
戦闘の時はどうしてしないのかしら?」
「そういえばそうですね。COMPじゃないから?」
「ボクのやり方は“管”とかの方に近いから、2体までなら出来るよ。
だけど連携とかまだまだだし、何より指揮しながら術を使うって大変なんだよ?
戦う時に複数とか無理無理」
「わたくしはまっすぐ行って斬るだけですから、割りと楽ではありますわね」
「……えーと」
「ない世さんはボクと同じ召喚士なんだから、いずれ慣れないとね。
COMPサマナーだって仲間を揃えて切り替えるのは、サマナーの判断次第なんだから」
「……頑張ります。これでも一番年上ですし」
ふんすとガッツポーズを取るない世を見て、年上には見えないなと希流子は思ったが口に出さないだけの優しさはあった。
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午後から用事があるために家に帰る希流子を除いた真緒とない世は、臨時収入もあった事であるしない世の防具を買うために出かける事となった。
4月に入って徐々に暖かくなった今の季節に真緒が今着ているコート型の霊装防具は辛くなる上に、予備のベストをない世に貸しているため彼女用の防具も買おうという話になったからであった。
目的地である駅前商店街に向かうために、二人は歩いていた。
「真緒さんはあの娘と中学は同級生だったんですよね?」
「そうだけど」
「何故、高校に進学しなかったんですか?」
「え? あー、それはね……」
突然、そう聞かれて真緒は返答に困った。
彼女が高校に行かなかったのは経済的・家庭的な理由もあるが、一番はもう一度高校に行くのが面倒だったからだ。
前世での、恋愛も友達も無いいじめだけは少しあった灰色の小中高と過ごしたあの学生生活の記憶が脳裏に有ったのが最大の原因だろう。
もっと言えば、現世でも中学時代は色々とあったので人間関係もだが、高校の勉強をもう一度したくないというのもあった。
もちろんそんな事を正直に言う訳にもいかないので、真緒は家庭的な理由の方を説明した。
「……なるほど。
小学生になってから修行を始めて、中学を出たら正式にお父さんの後を継ぐと決めていたんですね。
立派ですね、真緒さんは」
「そ、そうなんだよ、あははは。…あ、ここだよ。目的のお店は!」
「ここですか? 『アンティーク・錬鉄堂』?」
ない世の見る先には、入り口のショーケースに色々な物が積まれた新しめに改装された店舗があった。
真緒はその店のガラスの扉を押して中に入って行った。
「こんにちは、誰かいます?」
「あれ、伊月さんいらっしゃい。ここに来るなんて珍しいね?」
「岸野さん、アーチャーさんいます?」
「あ、そっちの用事ね。彼なら奥だから」
そう言って、奥の扉を指差すTシャツにジーンズ姿の栗毛の長髪の女性。
それをない世が真緒の服の裾を引いて聞いた。
「……真緒さん。説明して下さい」
「あ、そうか。
こっちの人は、【岸野白乃(きしのしらの)】さん。
いつもは御国さんみたいにハンター協会の受付しているけど、ここに彼氏と住んでいるんだ。
岸野さん、こっちは生江ない世さん。
協会に登録した資料で見た通り、うちで働くことになった人だよ」
「貴女が生江さんか。よろしく」
「……はい。よろしくお願いします」
「そうか。彼女の装備を見に来たんだ。これから頑張って」
そう言うと彼女は、ハタキと雑巾を持つと店内の掃除に戻ってしまった。
真緒はない世の手を引くと、奥の金属の扉を開けて地下に降りて行きその先にあった扉を開けた。
その部屋は六畳間ほどの広さがあり、その先には金網が上部分を覆うカウンターが置かれていてその向こうには褐色肌と白髪の作業服を着た若い男が座っていた。男の背にある商品棚には、銃や刀剣に防具に衣装と色々な商品らしい物が並んでいた。
彼はニヤリと魅力的な笑みを浮かべると、真緒とない世に話しかけてきた。
「やあ、お嬢さん方いらっしゃい。異能者の装備店『錬鉄堂』へ。
私は店主のそうだな、弓兵、アーチャーとでも呼んでくれ。
新顔のお嬢さん、許可をいただけるなら貴女の心も射抜いてみせよう」
「……は、え、えええ? わ、私の事ですか? こ、困ります!」
「何を言っているんですか、諏訪部さん。岸野さんに報告しますよ?」
「それは待とう、伊月くん。軽いジョークだ、ジョークだとも。はっはっは」
真っ赤になって立ち尽くすない世の横で真緒が彼の発言にそう答えると、慌てたように笑って誤魔化そうとするアーチャー。
彼の名はアーチャーこと、【諏訪部士郎】。
免許持ちの刀匠であり、ここで異能者向けの装備を取り扱う店を開いている男である。
女性関係で何かやらかして故郷から逃げ出したらしく、数年前にこの町のハンター協会で白乃と出会い彼女と同棲を始めるのを機にここで自分の打った刀を売る装備の店を開いたとの事らしい。
この辺の事は、真緒は白乃自身から惚気と一緒に聞かされて知っていた。
「そうだ! うちに来たという事は装備を新調するんだね!?
何を探しているのかね!? 相談に乗ろうじゃないか!」
「はあ、まあ防具なんですけど。何かありますか?」
「そうだな。伊月くんはセーラー服とブレザーはどちらが好みかな?
符呪されたスキルにも寄るが、デザインは世界中の学校が揃っているぞ」
「今回はボクじゃなくて、ない世さんのものですよ。
相変わらず、ジプス製の霊装はコスプレみたいなそういう物ばかりですね?」
「まあ、基本ハンドメイドだし作製者もほとんどが男性の術者だからな。
趣味の延長とモチベーションを考えるなら、こうもなるだろう。
ただ、現代社会に溶け込むとういう意味では鎧やボディアーマーよりは警戒されない利点もある」
「じゃあ、あれは何ですか?」
真緒が指差す先には、金属製の銀色に光るバニーガール風アーマーや某ペルソナ風ハイレグアーマー、どこかの大天使が身に着けていた金色のハイレグアーマーにそっくりなものまで飾った防弾ガラス製のショーケースが壁の片面を埋めている。
付属しているプレートには、高性能な詳細が記されているがその値段は吊るし売りのボディアーマーより2桁は高い。
アーチャーは真緒の方をちらりと見ると、視線を商品に向けて話し出した。
「言っておくが、あれは私の趣味ではないという事だけは主張させてもらう。
値段が示す通り、量産品におざなりに込められた魔法防御力を上げただけのものとは違い、それらは制作者が本気になって作ったものだ。
あと、サイズの調整も付くから心配はしなくてもいい」
「最後の発言は、どこを見て言ったんですか???
それに恥ずかしくて着れそうもないのに、何でそんなに勧めるんです??」
「今この街にいる女性のハンターで、あれを買えるくらい強くなれるのは少ない。
たぶんそうなのは、君らと神社のお嬢さん位だろう。
これらが倉庫の肥やしにならないように早く強くなってくれ。
出来れば早めに買ってくれると、私の小遣いが減らされなくて済む」
「それが本音か!」
「そうだとも、悪いかな?」
「……あの」
真緒とアーチャーが言い争っていた所に、ない世が声を掛けた。
「何かな、お嬢さん?
これはただの魅力的な女性との会話だけだとも。
それとも、君も混ざりたいのかな?」
「……いえ、そうではなく」
「ねえ、士郎さん。お客が女性だといつも接客が長くなるんですね?
何でですか、ねえ士郎さん?」
「……!?」
ない世の後ろから、白乃がニコニコと笑いながら現れた。
よく見ると、こめかみに青筋が立っている。
それを見て「しまった!」という顔になったアーチャーが弁解するも、彼女の説教が始まってしまった。
なお、真緒たちはない世に合うサイズの吊るし売りのケブラージャケットを買って早々に逃げ出したそうな。
後書きと設定解説
・仲魔
名前:ルビー
性別:女性
識別:怪異赤マント(変異個体)
ステータス:レベル8
耐性:火炎耐性・破魔弱点・呪殺無効
スキル:毒串刺し(敵単体・小威力の物理攻撃。
低確率で毒付与)
パララアイ(敵単体・中確率で緊縛付与)
アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃)
ムド(敵単体・低確率で即死付与)
詳細:
主人公と契約した「怪異赤マント(変異個体)」
本人は割りと乗り気で契約に承諾し今の姿も気に入っている
主人公に対して忠犬のような性格になっている
容姿は『RWBY』の「ルビー・ローズ」
・関係者
名前:岸野白乃(きしのしらの)
性別:女性
識別:異能者・21歳
職業:人外ハンター協会事務員
ステータス:レベル4
耐性:破魔無効
詳細:
神戸の霊能組織の生き残りで名家出身の女性
元の組織はかなり前に宗家脱落後に離散し消滅
残った資料などを売却しハンター協会に就職した
アーチャーに口説かれて同棲中
容姿は、Fate/EXTRAの岸波白野に似ている
名前:諏訪部士郎
性別:男性
識別:異能者・27歳
職業:「アンティーク・錬鉄堂」店主
ステータス:レベル26
耐性:物理耐性(装備)・破魔無効・呪殺無効(装備)
精神無効(装備)・毒無効(装備)
装備:自作の刀剣と弓いろいろ
女難除けのお守り多数(物理耐性と呪殺無効、毒無効など)
詳細:
さくらの町で異能者用の装備店を開いている刀匠
表向きは古物商の店だが、裏は武器防具の店
刀剣などの武器の扱いは一流の戦士でもある刀剣鍛冶師
本物の刀匠の資格持ちで名刀鑑賞と自作の試し切りが趣味
仕事ぶりは信用できるが、女性関係は信用できない
多数の女性を口説くだけ口説いて故郷から逃げてきた
次は早めに。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。