デビルサマナー 転生召喚符術師の日常   作:塵塚怪翁

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続きです。
すみませんが、後編でなく中編になります。


第9話 伊月家の醜聞と災難(中編)

 

「ここだね。地図に書いてある廃ビルって」

 

「……うわぁ。ボロボロの旅館ですね。潰れたのは、ずいぶん昔みたいですね?」

 

「……うん。この旅館、営業していたのは昭和みたいだよ。

 確かに、こんなのがあったら景観の邪魔になるか」

 

 

 真緒とない世の二人が今いるのは、町の南にある幹線道路の国道沿いにある目的地の高さ3階建ての廃旅館の正面入口が見える道路の端の隠れた場所だった。

 日が暮れる少し前の時間なので、この辺も暗くなり始めている。

 

 この町は、町の中央にある私鉄の駅を境に北と南で別れている。

 駅の北側は神社に集落の頃から住む家々と昭和に建った住宅街があり、南には町の南西から北東に貫くように通る国道とゴルフ場に繋がる道を通る相手を客とする商店街と中小の地元企業の集まるエリアがあった。

 

 この旅館はその南側にあり、老朽化と20年ほど前のバブル崩壊による経済的影響により潰れた旅館だった。今回、表向きには、国道の拡張工事計画のために取り壊し前の事前調査という形で依頼が出されていた。

 しかし、サボる事しかしないあの日ノ本所長が、こんな内容の案件を持って来るのが逆におかしいと織莉子が気が付く理由にもなったのだ。

 

 

「……それでこのまま入るんですか?」

 

「さすがに、希流子に応援を頼めなかったのは痛かったなぁ。

 でも、その分いろいろと持てるだけ持ってきたから大丈夫。

 そっちの装備とアイテムの方は大丈夫?」

 

「はい。それは何度も見ました」

 

 

 改めて、真緒は彼女を見た。

 

 ない世は頭にライト付きの工事用ヘルメットを被り、上半身に霊装防具の長袖のケブラージャケットを羽織って下は厚手のジーンズに運動靴、ウェストポーチにはCOMPのスマホと真緒が作った防御用の神符を入れてある。

 真緒はと言うと、厚手の服とズボンの上に袖なしのケブラーベストを身に着け、バイク用のヘルメットを被って腰に付けた札用の革ホルダーとアイテムを入れた革カバンを肩がけに掛けている。

 

 幸いにも雨は降らず星の見え出した空を見上げ、乗って来たママチャリに鍵をかけて置くと真緒はない世に声を掛けた。

 

 

「それじゃ、行こうか」

 

「……はい」

 

 

 そう答えるない世を連れて、真緒は護符を手に取ると林の中を進み始めた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 一方、彼女らの後を下っ端につけさせていたギャラナイ夫は、自分の考えた通りに物事が進んでいるのを「俺ってば策士になれんじゃね?」とニヤニヤ笑いつつ、下っ端からの報告用の会話アプリを閉じた。

 

 ホテルの2階にあった一番マトモだった大広間に運び込んだいくつかのソファや灯りの近くでは、ギャル夫を始めとしたグループのチンピラたちが持参した食い物や酒で思い思いに寛いでいた。

 ギャラナイ夫が振り返り、真緒たちがここに向かう脇道の道路を登っているという報告があったと知らせるとスマホで甘ったるく話し込んでいたギャル夫が通話を切り立ち上がった。

 

 

「よし。じゃあ、お前らは言った通りの場所で隠れて襲うっス。

 厄介な巫女の方は、別の依頼でこっちには来ないそうっス。

 いかない夫、仲魔のいないお前はここで待機してるっス。いいスね?」

 

「ああ、分かった。

 お前ら、くれぐれも妹じゃない方の味見はするなよ?」

 

「分かってるって。

 おい、お前ら。捕まえたからって変な気は起こすなよ、たたじゃ済まさねえぞ?」

 

「「は、はい、ギャラナイ夫さん」」

 

 

 6人ほどの手に手に鉄パイプや警棒に懐中電灯を持った下っ端の男達がぞろぞろと部屋を出ていくと、ギャラナイ夫がギャル夫に話しかけた。

 

 

「なあ、さっき話していたのスケの長谷川か?」

 

「ああ。いかない夫の妹を嵌めると言ったら金出してくれたっス。

 同じ学校だったとかで、個人的な恨みがあるみたいっス。

 まあ、成功したら思う存分遊ばせろってのが条件スけど」

 

「ま、うちの地元じゃ一番大きい会社のお嬢様だしな。お前の彼女」

 

「それじゃ、ゴブリンも貸すっスから上手くやるっスよ?」

 

「けけっ、いつものやり方だ。任しとけ」

 

 

 ギャル夫にそう言われ、俺にかかれば常識的に考えても女二人くらいどうにでもなるとギャラナイ夫はそう考えて広間を出ていった。

 しかし、単なる不良の考えがそうそう思い通りに進むはずはなかった。

 

 

「……いてぇ……痛ぇよぉ」

 

「……話が違うじゃねぇかよぉ」

 

「…ゴホ、ケホ。何だこれ、見えないなんかに殴られたぞ」

 

『ワン、ワン!』

 

「…こっち! レベル7、妖魔ゴブリン! 電撃弱点で、1体だけ!」

 

「カソ! やっちゃって!』

 

『チュウ(【アギ】)!』

 

『せーの、【毒串刺し】!』

 

『グギャ!』

 

 

 一階の階段のある広場で周囲に隠れて手に持った武器で不意を突いて真緒たちに殴りかかった6人の下っ端達は、ない世の持つCOMPの新しいアプリの【エネミーソナー】と【マッパー】、それと真緒の仲魔のティコの【敵感知】と【警戒】によって既に見つかっていた為に返り討ちに合い転がっていた。

 さらに、未覚醒の下っ端達を囮にして階段の上から飛び降りて奇襲した【妖魔ゴブリン】も、ティコに気づかれて躱され逆にカソとルビーの集中攻撃を食らっていた。

 それらを、階段の上からギャラナイ夫は見ていた。

 

 いつもなら、これでたいていの2、3人で動いている連中なら潰せたやり方が通用しない。

 なんでいかない夫の妹は、COMPもないのに札で2体も悪魔を呼んでいるのか訳が分からない。

 不意を突いて相手より多い人数で全員別方向から殴り掛かるやり方は彼らの十八番の戦法だったはずだと、ギャラナイ夫は逃げながら考えた。

 こうなれば、あの強いギャル夫と一緒にやればいつものように負けないだろうといつもの結論に落ち着く。

 

 

『グギィィィ!』

 

 

 ギャル夫の仲魔だったゴブリンの断末魔の悲鳴を聞きながら、ギャラナイ夫はギャル夫のいる元の広間へと逃げ込んだ。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 真緒たちが奇襲を警戒しつつ、ギャル夫たちが待ち構えている元は宴会用の大広間だったボロボロの畳敷きの部屋へと入っていった。

 

 そこには部屋の隅で不安そうにギャル夫を見るいかない夫、野球用のヘルメットにケブラージャケットを着て手に有刺鉄線の巻いた木製バットを持ったギャラナイ夫、ケブラージャケットにドルフィンヘルムを身につけ特徴的な木刀を持ち薄ら笑いのギャル夫、そして褐色肌の少女の姿をした悪魔の【鬼女アチェリ】が待ち構えていた。

 

 彼女たちが部屋に入ってくると、ギャル夫が二人を舐めるように眺めながら話しかけた。

 

 

「……へえ。いかない夫の妹にしてはなかなか可愛いっスね。

 まあ、いいっス。

 そこの女全員、全裸で土下座すれば許してやらないでもないっスよ?」

 

「…ふへっ!?」

 

『グルルルル』

 

「クソ兄貴の仲間にふさわしい下衆さだね。そっちこそ、武器捨てて土下座すれば?」

 

「生意気な女を躾けるのもいい男の甲斐性っスから、後で可愛がってやるっス!」

 

「冗談! 火神符、急々如律令!」

 

 

 戦闘は、真緒のマハラギの札を切っ掛けにして始まった。

 

 ギャル夫たち全員を巻き込むように放たれた火炎の中を、火炎耐性を持つルビーとカソが突っ込んで行く。

 そして、事前の打ち合わせの通りにアチェリに向かって魔法を放つ。 

 

 

『チュウ(【アギ】)!』

 

『【アギ】!』

 

『あ、熱いぃぃ! ギャアアァ!』

 

「あ、アチェリが!」

 

 

 火炎弱点であったギャル夫の虎の子の仲魔であった鬼女アチェリが、火炎魔法を立て続けに食らって消えてしまった。

 これで残るのは人間の3人だけである。

 

 真緒とない世たちは、この部屋に入る際に打ち合わせをしていた。

 

 1,まず、真緒がアナライズで悪魔の属性を見切り護符で魔法を放つ。

 2,それが火なら続けてアギを、違うなら物理攻撃、悪魔を倒せたら人間は死なない程度に叩きのめす。

 3,ない世は真緒の近くで防御し、カソがやられたら女幽霊と交代。

 4,連携はこちらで合わすので、誤射だけ気をつけて後は流れで。

 

 これはもともと星見山の異界で戦う時に真緒が考えていた手順を応用したものだったが、上手く嵌ったようだ。

 

 破れかぶれか、奇声を発して突進するギャラナイ夫。

 そして、アチェリを倒されたギャル夫はギリッと歯ぎしりをすると、後ろのいかない夫に叫びながら木刀を振り上げて突進して来た。

 

 

「ヤラれてたまるかぁ! 【突撃】!」

 

『チ、チュウ!』

 

「くそぉ、よくも殺りやがったっスね!

 いかない夫、お前も早く召喚するっス!」

 

『おっと、マスターの所には行かせないよ!』 

 

 

 レベルが上のギャラナイ夫の攻撃でカソが大きく傷つき、ルビーは大鎌でギャル夫の攻撃を受け止めた。

 恐怖に震えているない世の前で、真緒は新しい符を取り出す。

 

 

「ティコ、交代!

 花子さん、お願い。援護の後はお任せで!」

 

『ワン』

 

『まかせて! 【スクンダ】!』

 

『それなら、【パララアイ】!』

 

「そんなもの、効かないっスよ!」

 

『うそっ!』

 

 

 指示している暇が無いなら任せればいいとばかりに、真緒はハナコも呼び出した。

 相手の命中と回避を下げる魔法を撃つハナコに続いて、ルビーも金縛りにする視線をギャル夫に放つが被っているドルフィンヘルムの精神無効の効果でレジストした。

 

 一方、いかない夫はと言うと、ギャル夫に叫ばれてから懸命にCOMPを弄っていた。

 自分に躊躇せずに火炎を放つ真緒やハナコの体が鈍くなる魔法を受けて、さらに懸命に弄っていた成果があったのかCOMPが反応した。

 

 

『保護プロテクトの解除、……確認。

 悪魔召喚プログラム、……起動。

 マグネタイトの不足、……確認。

 保持悪魔に対する使用者のレベル不足、……確認。

 不足分を補うために使用者のマグネタイト使用、……確認。

 悪魔召喚プログラム、……再起動』

 

「う、動け、動け。……あれ、体がががあがががががぺぺぺぺp」

 

 

 ギャル夫たちと真緒たちが戦うその様子を他所に、COMPから召喚された悪魔の足元を見ながらスマホを持ったまま干からびて倒れたいかない夫はそのまま意識を失った。




後書きと設定解説


・敵対者

名前:金本ギャラナイ夫(かねもとぎゃらないお)
性別:男性
識別:異能者・18歳
職業:高卒フリーター
ステータス:レベル7
耐性:破魔無効
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    逃走加速(戦闘からの逃走率が上昇)
    恐喝(敵単体から金品を要求する技術)
装備:鉄芯入り木製バット(有刺鉄線付き)
   ケブラージャケット(霊装)
   野球用ヘルメット  
詳細:
 ギャル夫の舎弟でコンビを組んでいる異能者
 ギャル夫に付いて好き勝手するのが目的
 両親とは家出の末に縁を切られ勘当されている
 「ウイッシュ」「ガチで考えて」が口癖のギャル男口調
 容姿は2chやる夫派生の「ギャラナイ夫」

【鬼女アチェリ】
レベル8 耐性:火炎弱点・呪殺耐性
スキル:吸血(敵単体・小威力の万能属性HP吸収)
    ポズムディ(味方単体・毒状態回復)
    毒引っ掻き(敵単体・小威力の物理攻撃。
          低確率で毒付与)
詳細:
 ギャル夫の切り札になるCOMPの仲魔
 ピクシーから悪魔合体で変化した
 忠誠度はそれなりに高い

【妖魔ゴブリン】
レベル7 耐性:銃弱点・電撃弱点
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    奇襲(敵単体・小威力の物理攻撃。
       先制攻撃時、威力増加)
詳細:
 ギャル夫のCOMPの仲魔
 妖精でなく妖魔となり邪悪で残忍な性格に変化
 相手をいたぶるのが好きな緑色の肌の醜悪な小鬼


続きは早めに。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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