許して
対面するだけで悪寒が走る。
この呪霊に取り憑いてるのは影とはいえ間違いなく神。
私達の王であるミゼーアほどではないが人の理から外れた外宇宙の異形。
呪霊に憑依する形で本当に良かった。もし影がそのまま出ていたら対面しただけで私は殺されていた。
相手が手に持つのは一つの鎖。かの神話生物に象徴とも言えるもの。
たかだか呪霊ごときには不釣り合いな代物。
なぜこんなものを持っているのかはわからないが確実にこの場で祓わなければいけない。
開幕速攻。
時間加速で相手が術式を使う暇を与えないようにタコ殴りにする。得体の知れない相手への最善策は相手に行動させないこと。
猟犬達と共に自身を加速させる。呪霊が鎖を振るうが加速している私たちが一歩先を行く。
打撃を与えようとした瞬間、右腕が吹き飛んだ。猟犬達が吹き飛ばされて霧散し消えていく。
「は?」
何もされていない。何もされていないにも関わらず猟犬達が消し飛ばされ、わたしの右腕が吹き飛ばされた。
状況は理解できていないが反射的にその場から飛び退く。
先ほどまでいた場所を鎖が通過し、その余波で周囲にあった木々が薙ぎ倒される。
「っ!!」
倒れた木々から津波の如く鎖が飛び出し襲いかかる。
根拠や理屈を抜きにして第六感が体に流れるこの血があの鎖に囚われてはいけないと警鐘を鳴らしている。
「どういう理屈なの?全く」
自分の腕を戻し、押し寄せる鎖を呪力で強化した拳で受け流し受け流せないものは回避する。
黒閃を引き起こした拳が複数本の鎖をまとめて吹き飛ばす。
呪霊が持つ鎖を掴み渾身の力で引き寄せる。
鎖を封じて距離を詰める引き寄せられたことで崩れ体勢を起こす暇を与えず蹴りを放つ。その攻撃を防ごうとガードする腕は黒い火花をちらす蹴りに触れ抉り取られ吹き飛ばされる。
腕を弾いたことによってできた完全な隙、守るものも無くなり空になった胴に向かって渾身の一撃
その一撃は相手の胴を貫いて確実なダメージを与えた。
呪力による肉体の復元が開始した瞬間に完了する。呪霊が反転術式なしで呪力だけで回復できるのは知っているがあまりにも早すぎる。
先ほどのように鎖を対処する。
波状攻撃の裏、死角から飛んできた鎖を掴み引きちぎる、そうした瞬間。左目の視界が暗くなり体が後ろにのけ反る
激痛が走り視界が封じられ動きが一瞬鈍る。
自身の残った視界に鎖に絡みつかれる未来が見える。
「来なさい。住人よ」
強くなったことでティンダロスから呼び出せる影たちのレベルの上がっている。
目の前に現れた人形のシルエットがその鉤爪を振る。
視界を埋め尽くすような鎖の滝が寸断されて切り裂かれる。
ティンダロスに住まう住人。
猟犬以上の残虐性を持った怖ろしい存在。
猟犬たちの上に立つ主人。
このレベルの敵になるともう猟犬だけでは手に負えないなら一つ上のレベルを呼べばいい。
「いくよ」
術式の予想はなんとなくだができた。おそらく可能性の具現化。
最初のは先制攻撃が決まったという可能性を具現化させた。
術式を連続で発動したり殺した可能性を具現化してこないのは術式発動に何かしらの制限があると見ていい。
対処は不可能なら攻撃が当たった後に次の発動までの間に攻撃を当てればいい。
住人とともに走り出す。瞬間…
『オ、オマ、オマエハナンダ』
呪霊が言葉を発し足を止める。
言語を解すことは不思議ではない。等級が高い呪霊になれば話せるのはそこそこいるが神が人間の言語を使うのはそういない。
『ニクイ!ダガナゼダ?ナゼニクイ?』
「それは私も同じだよ。私たちは相容れない存在。文字通り表と裏」
憎いのは当たり前だ。生まれながらに相容れない存在。不浄を押し付けられたティンダロスの住人と清浄で生まれた。汚いものは綺麗なものを憎悪し、綺麗なものは汚いものを嫌悪する。
それに加えて私は時間操作まで行っている嫌悪が憎悪に変わってもおかしくない
「その力どうやって手に入れた?」
『ヒトガキタ。ナニカヲトナエタ、ワタシノナカニナニカガハイッタ』
これは招来の呪文の応用だろうか?
だが外なる神を呪霊の許容範囲を越えさせないで憑依させられるようにするなどただの人間には間違いなく不可能だ。
ならこの背後にいるのは…
いや、そんなことは後でいい
雑念を振り払い構え直す。考え事は今やらなければいけないことじゃない。この予想が正しかったとしても結局私にはどうすることもできない。なら今やれるべきことを最優先で行うべきだ。
私が構えたのと同時に呪霊も構えを取る。
お互いが同時に走り出す。背後から飛び出すのは無数の鎖。回避する隙間をなくすような広範囲に広げられた鎖が周囲の木々を貫通し地面を抉り取る。
一点に狙いを定めていないまばらな攻撃。濁流の如く飛び出す鎖を住人が斬り伏せ道ができる。周囲に転がっている木を呪力で強化しできた道にぶん投げる。術式で急加速したそれは音速を越え呪霊に向かって飛んでいく。
呪霊に直撃する直前真っ二つに斬り裂かれ呪霊の横を通り過ぎていく。
術式を切らせた。次までのクールタイムまでに術式を使えないように畳み掛ける。
左右からの挟撃。鎖が十分に振えないように距離を詰め続ける。
時間加速で撃ち込まれる黒い連撃。一撃で致命傷を与えるわけではないがそれでも無視できない威力の打撃の嵐。
反対側からは住人の鉤爪による一撃。一撃一撃が確実に大ダメージを与えられる。
どちらも対処しなければいけない猛攻に隙ができる。
抉り込むような回転を加えた回し蹴りが呪霊の腹部に直撃し、続く一撃は足が突然吹き飛ばされ不発に終わる。
動けない私を無視し住民への攻撃に対処した瞬間、残った足で飛び上がり膝から先が無くなった足を振り上げる。
「逆行再編」
吹き飛ばされた足が振り上げられた足に戻っていく。
そのまま振り下ろされる踵は黒い火花を散らし呪霊の頭部を抉り取る。削り取られたことでできた一瞬の隙に住民の鉤爪が呪霊を切り裂く。
術式は切らせ確実にダメージを与えた再生速度は遅い。
とどめを刺そうと走り出す。瞬間、背筋に悪寒が走る。あの鎖に感じたのと同種の感覚。自身の命を脅かすという確信。
理屈を抜きにしたその感覚に従い反射的に上空へと飛び上がる。
刹那、何もない空間から火炎状の電光が吹き上がる。
地面を埋め尽くしあたり一体が純白の炎に包まれる。住民はそれを避けることができずに灰となり霧散していく。
地上に居たら確実に巻き込まれていた、だから躱すには飛ぶしかなかった。
反射的にその選択肢を選ばされた。その結果が身動きの取れない空中で無防備を晒すという最悪の状況。
この隙を逃すはずもなく体が鎖で縛り上げられる。
「しまった!!」
身体に何重にも巻きついた鎖が、純白の炎が上がるまで瞬く間に加熱していく。
それはアフォーゴモンの裁きの炎。
裁かれた者に関するあらゆる知識、記憶、記録までを消滅させる神の怒り。
「つっっ!!」
動けない、声が出せない。
首を刎ねられる、腕を吹き飛ばされる、目が貫かれる。そんなことが些細なことに感じるようなかつてないほどの苦痛。
術式がうまく回せない。身体中から感覚と言う感覚がなくなっていく。死を感じる暇すらなく自分自身が焼却されていくような喪失感。
虚空から巨大な脚が現れて私の体ごと鎖が切り裂かれる。
体から消えていく激痛と喪失感、新たに加わった衝撃で覚醒した意識で反射的に傷ついた体を元に戻す。
この攻撃を受けたのが人であったら即死していた。
人でなくなりかけていたから何とかなったが次くらって耐えられるかがわからない。
呪霊を見ると様子何かがおかしい。
呪力の質が違う。おどろおどろしい魔の力。
下ろされた神はアフォーゴモン一欠片とはいえ外なる神、呪霊のキャパシティ大きく越え溢れ壊れ始めている。
『コ、コ、コ、コレデ、オワ、オワリ』
膨大の呪力が吹き荒れる無限と感じる程大量の鎖が吹き荒れ周囲一体を包み始める。
結ばれたのは手印。今まで結ばれなかったもの。確実に大技がくる。
1日一回の切り札をここできる。
「終わりと始まり、正気と狂気、刹那と永劫」
呪詞を口づさむ。掌印を結ぶ。
一説の省略を行わないことで術式の効果を120%に引き上げる。
「極の番『永永無窮』」
瞬間、私を除く世界の総てが変質する。
音は消え去り、空気が凍り、私たちを包み込もうとしている鎖が停滞する。
これから一秒間、天内理子を除いたすべてが1000の1倍速に変わる。
たかが1秒されど1秒。
彼女の術式がこの刹那の時間を永劫のものにする。
肉体の負荷を無視して極限まで自身を加速させる。
鎖が相手の動きが世界が私を捉えられない。
術式なんて使わせない可能性を具現化する時間なんて与えない。
この1秒の間に確実に祓い切る。
黒い火花が爆ぜる。
2.5乗の威力で放たれる打撃の嵐。
一発一発が爆撃機に匹敵する必殺の一撃。
一撃が当たるたびに呪霊の体を削り確実に最期に追いやっていく。
その瞬間
呪霊の真下から純白の炎が吹き上がる。範囲が広いわけではない。ただ呪霊の全体が入れる範囲ってだけだ。
それが今は致命的。追い討ちができない。祓いきることができなかった。
あの炎に触れられない。触れたらそれでおしまい
「やられた」
時間と一体であるが故に、アフォーゴモンは人間の理解を超えた速度で動く事ができる。
アフォーゴモンに過去、現在、未来なんて意味をなさない。
たとえ時間が遅れていたとしてもそんなの関係がない。
ただ相手の術式が完成するのを見ていることしか出来ない。
鎖が周囲全てを包み込む。内側に呪力とそれと似て非なるエネルギーが満ちる。
『領域展開『鎖縛曲円可』』
本来呪霊が持つ可能性を引き寄せる術式に神下ろしによって時間干渉能力を得た領域。
術式の押し合い以外では五条悟ですら何もできない、あらゆる可能性を支配する領域が展開された。
「天内理子。君の物語はここで終わりじゃないだろう」
離れた位置からこの戦いを見守るものがいる。
それは褐色の肌をもつ美男子であり白い髪をたなびかせた美少女でもある。
子供であり大人であり女であり男である。
決まった貌がない故に千の貌を持つ
+でありー、善であり悪、まさに混沌そのもの。
「これは一つ目の試練だ。君が一つ上に至れば倒せるように調整もした」
彼女が狂気と混乱もたらすもよし平穏と安定をもたらすのもよし。
仕込みは済んでいる。彼女には試練が訪れる。
そんな中、彼女がどんな道を選ぼうと楽しいことになるはずだ。
だって彼女は唯一、かの王に認められている人間なのだから。
メロンパン「仕込みと違う。こわ」
???「頑張ってね」
今作品の神話生物の指標
下級 呪術師なら倒せる
1d20級 相性有利なら上位の一級術師なら倒せる
旧支配者 呪術界全勢力でのレイド戦で万に一つ
外なる神 諦めろ
理子ちゃんが神話的事象がわかるのはクトゥルフ神話技能によって天から知識が降ってくるから
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俺が喜ぶ
理子ちゃんの戦闘スタイルどれがいい?
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ステゴロ