特級呪詛師天内理子   作:宝生永夢ゥ

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敵が安易に領域使わないようにしてる理由わかった


人外邪神代理戦 下

展開された必殺の領域。だがそれに対応する術を彼女は持っている。

居合の構えを取り展開する。

 

「シン・陰流『簡易領域』」

 

あの場で払えなかったのは誤算だったがそれでも問題ない。

簡易領域で領域の必中効果を無効化しミゼーアを呼び出し内部から破壊する。

領域にどれだけの硬度があろうとミゼーアの影の完全顕現をすれば国ですら消し飛ぶ

 

展開した簡易領域が数瞬間も持たずに崩壊する。

 

「…は?」

 

神話生物の要素を取り込んだ領域展開がただの呪術と同じわけがない。

本来の領域は生得領域を結界という形で体外に創り出して敵を閉じ込め、その結界に術師本人の生得術式を付与する。

この領域は結界内の世界そのものを侵食し自身の概念で塗りつぶす。

この領域の前では全ての領域が一方的に塗りつぶされる。

 

「!!ミゼーア」

 

自身を起点として別次元から王の影の呼び出しを行おうとするが反応がない。

この空間には120度以下の角が一つも存在しない。ゆえにとがった時間からの来訪がこの領域内では起こらない。

彼女は援軍を呼ぶことができず領域内で完全に孤立した。

 

 

呪霊の手元がブレる。

直感的に後ろへ仰反ると顔の上を何かが通過する。

瞬間、何かに四肢が落とされた。

四肢に攻撃が放たれた可能性が具現化して鎖が四肢を切り裂いたのだ。

 

術式で足を戻して後ろに下がった瞬間、心臓が何かに貫かれた。

その鎖を破壊しようと黒閃の手刀を放つが鎖が切れることはない。明らかに鎖の強度が領域展開前よりも上がっている。

 

そのまま無数の鎖は体を何重にも締め上げそのまま純白の炎が上がるまで瞬く間に加熱していく。

その純白の炎が私の身を包み込み何もかもを燃やし尽くす。私の痕跡が消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『理子ちゃん』

 

『理子様』

 

「二人とも…」

 

そこには二人がいた。あの日共に行った沖縄に。

頭で考えるより早く体が走り出す。

勢いをこのままに二人をできしめる。

二人は優しく抱き返してくる。

 

「傑、黒井…あいたかったよ」

 

『私も会いたかったです。理子様』

 

『私もだよ。ここに悟もいたらって思っちゃうね。でも同時に悟には生きていてほしいって思う。複雑な心情だね』

 

その言葉で理解する。

死んだのだ。ついに。短い人生だった。

 

「そっか。私死んじゃったのか」

 

みんなにお別れくらいは言っておきたかった。

悟に硝子さん、七海さん、灰原くんに夜蛾先生。付き合いは一番長くて一年くらいしかなかったけど会えなくなるのが未練になるくらいにはみんなのことを好きになっていた。

結局生きる意味を見つけることもできなかった。未練はないとは言い切れなかったけどただ思ったよりも悪くない最後だった。

 

『正確には理子様は死んでいません』

 

「え?」

 

まだ死んでない?こんな走馬灯みたいなもの見てるのに?

 

「本当?」

 

『本当です』

 

「ならなんで」

 

『今、理子ちゃんの生きた証の全てがこの世から消えようとしているからだと思う』

 

『死ぬ間際に思い浮かべた妄想ですね』

 

妄想、妄想って

 

「死に際の妄想で出てくるとか私二人のこと大好きじゃん」

 

『それは嬉しいですね夏油様』

 

『そうだね』

 

黒井は嬉しそうに傑はニヤニヤとしている。

 

「茶化さないでよ」

 

『すみません理子様。』

 

『そうだね。でも本題に戻そう。理子ちゃん今君はこのまま死んでいいって思ってるでしょ』

 

「そんなことは…」

 

図星をつかれて言葉に詰まる。

それは二人を失ったあの日から抱き続けてきた後悔。

生きる理由を探しながら一緒に自分の死場所を探してきた。

 

「……辛かったんだよ。二人が私のせいで死んで高専の人たちと仲良くなったけどそれでも心の穴は埋まらなくて、死にたくても私のことを殺し切れる存在はいなくて、でもやっと精一杯やったけど仕方がなかったって死ねる状況なのにそれでも生きなきゃダメなの?」

 

『それでもだよ理子ちゃん。それでもなんだ』

 

『理子様が死んだら私たちの死も守り切った意味も無くなってしまいます』

 

黒井と傑の死を無意味にするわけにはいかない。

それだけは絶対にあってはいけない。

黒井は私のことをよくわかってる。

 

「ずるいよそんなこと言うなんて」

 

『それだけ理子ちゃんに生きて欲しいと思ってるってことだよ』

 

二人から距離をとり、覚悟を決める

 

「まだ生きなきゃいけない理由ができちゃった。そっちにいくのはもう少し先になりそう」

 

『私たちはいつまでも待っていますよ』

 

『頑張ってね。理子ちゃん』

 

「頑張るよ。いってきます」

 

『行ってらっしゃい』

 

『行ってらっしゃいませ』

 

二人に背を向けて現実に向かって歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

倒れ伏した少女の体が動き出す。

純白の炎により体は蝕まれその存在は消失の一途を辿っている。

 

「………い」

 

四肢に力を込める。感覚はほとんど感じぬほどの責苦。

それを意地だけで振り切り立ち上がる。

 

「……ない」

 

「まだ死ねない!!」

 

術式で自身の体を復元させる。炎に存在が消されるのを止めることなんてできない、ただ少しでも遅らせることはできる。

 

この炎により私の生きた痕跡の何もかもが消えようとしている。

私の痕跡がこの世から跡形もなく消えたら誰が傑と黒井の死を価値あるものだった言えばいいんだ。

私は生き続けなければいけない。二人が命をかけた意味があると証明しなければいけない。

それほどの何かを起こさなければいけない

 

ただがむしゃらに走り出す。

炎は私に死を刻み続け

何かができるわけではない。この炎が消えることもなければ、この領域を突破することもできない。

それが諦める理由にならない。

 

「あああああああッッ!!!」

 

らしくもない雄叫びをあげて拳に呪力を込める。

術式を併用するほどの余裕はない。拳に呪力を集めて呪霊に放つ。

 

当たっても自身にダメージを与えることすらできない避ける必要のない一撃。瀕死の人間の最後っ屁。

だから呪霊は回避はしなかった。

 

一矢報いる為に放たれた拳は黒き稲妻の如く迸り呪霊の頭部を仰け反らせる。

それは黒閃。打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み。

彼女がこれを放つのは初めてではない。だが自分の力だけで放つのはこれが初めてだ。

 

諦めずに生きるために駆け出した彼女が放つのは必然だった。

天内理子は運命に愛されている。

 

 

 

呪力の核心に触れる、

死に際に放った黒閃は彼女を上のステージに進めさせた。

 

それでも灰燼と帰して消え去る運命は変えられない。

だから彼女は呪詞を呪文を紡ぐ。

 

「因果は輪廻し万物は流転する」

 

「星の流れは逆行し、過ぎ去りし過去は改竄される」

 

「私は現在過去未来を統べる者」

 

「呪魔複合術式『永劫回帰』」

 

それは魔術と呪術の融合。人智を超えた超常的な事象の知識を持った彼女の土壇場の思いつき。

その場に魔法陣が展開し体を包み込むように展開される。

彼女の瞳に黄金の時計が浮かび上がり反時計回りに回転していく。

世界から色が消え去り、世界が後退していく。

そして

 

 

 

 

 

 

展開された必殺の領域。飛来してくる鎖に追従する可能性の鎖。

彼女はこの過去を知っている。

可能性の鎖が攻撃を当たった可能性を彼女は回避する。

至った境地。悟が辿り着いた頂に今たどり着いた

悟があれだけすごくなったのが理解できる。

 

「これが悟の見ていた世界か…」

 

 

飛来する視界を埋め尽くすほどの鎖。

全てを破壊する神の鎖は背後から現れた触手なようなものによって全てが消し飛ばされる。

天内理子の背から現れたのは蠢く触手。

 

「これは…彼らの舌と似たような感じか」

 

背から現れた六本の触手を触って確認する。

それはティンダロスの猟犬が持つ舌、触れた相手の精神力を奪う器官に酷似している。

 

「完全に人間の枠組みから外れちゃったな」

 

そう考えながら掌印を結ぶ。

長々とこの領域にいるわけにはいけない。

 

「侵食領域展開」

 

イメージするのは彼らが住む都市ティンダロス。

私の生得領域は彼らの住む世界そのもの。

 

「『█████』」

 

展開されるは別時空とのゲート。

閉じずに広げられた空間からは禍々しい角ばった都市が顕現する。

呪霊の領域が拮抗することなくあっさりと飲み込む

この領域は彼らの世界でこちらの世界を上書きする。

 

この瞬間、領域内の時間は彼女の手中にある。

呪霊の時が進んでいく。

一年、十年、百年、千年、一万年、一億年、一兆年

加速し進み続ける時間の中、体は崩れ果てて塵と化していく。

崩れ果てた塵の中に四本の指が落ちていた。

 

「これは指?一応高専に持って帰ろ」

 

呪物らしき指をポケットにしまうと塵が消えてなくなった。

 

「これで終わり…か」

 

初めて命の危機を感じたが妄想でも二人に会えたのは嬉しかった。

 

「私頑張るよ。二人の死が意味あったものだって証明するため」

 

生きる意味を見つけた少女は前に一歩足を進める。

自分のために命をかけてくれた二人が無駄死にじゃないと証明するために。

 

その場には維持し続けられている領域が残った。

 




弱みを吐露し覚悟を決めて理子ちゃんはやっと生きる意味を見つけました。みんなが無駄死にじゃないと証明するために。
次回は九十九由基との遭遇です。あっ…


インフレが加速して理子ちゃんは神話生物に格段と近づいちゃった。


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俺が喜ぶ

理子ちゃんの戦闘スタイルどれがいい?

  • 刀剣
  • 打撃武器
  • 長柄武器
  • 連結武器
  • 射撃武器
  • 銃火器
  • ステゴロ
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