特級呪詛師天内理子   作:宝生永夢ゥ

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深夜テンションのまま書いていてアラが目立ったので一回消して加筆修正しました
1.5倍くらい長くなってます


特級

呪霊退治を終えてから一週間後、上層部への報告から解放された。

 

「ん〜〜」

 

凝り固まった体を伸ばす。あの場であった出来事を問い詰められて監禁まがいの事をされていた。まだ上層部的には縛りを続けてる気でいるから無視することもできない。

あの時見つけた指は両面宿儺の指、まさかの特級呪物だった。

平安時代に最強だった呪いの王らしい。

最強…今の私とか悟が戦ったらどっちが強いのだろうか?

 

一番長引いたのは領域の件だ。

私の開いた領域は世界を侵食した。

本来は領域を解除すれば侵食が元通りになるはずだったが、ティンダロス側から魔力を流すことで領域は維持され続けた。

これは流石に予想外だった。これから安易に領域を利用することができなくなってしまった。

今は私が命令できる範囲の子達しか出られる大きさじゃないけど、このまま侵食を広げたら取り返しがつかなくなる。

上層部には私自身も完全に理解してないからそれなりのことを言って誤魔化したら解放された。

 

考え事をしながら建物の外に出ると見知った顔があった。

 

「よ、お疲れさん」

 

悟だ。この場にいるということは今日は任務がなかったようだ。

 

「わざわざ迎えにきてくれたの?」

 

「まあな、真っ先に天内に会おうと思ってな」

 

「そんなに私に会いたかったの〜」

 

「…ああ」

 

揶揄うように言葉を投げたら予想外の返答が返ってきた。

 

「悟?」

 

「……追いついたんだな…俺に」

 

この一言で悟が何が言いたいか理解できた。

今なら理解できる覚醒してからの悟はずっと一人だったのだ。

今までと変わらぬ関係であるはずなのに自分だけが浮いている感覚。

みんなのことは大好きだが生物としての明確の一線を引いている。

私の場合は、もう人間から遠ざかっているが…

 

「追いついた…っていてもいいのかはわからないけど、侘しさは感じることはなくなるんじゃないかな」

 

「そっか…それならいいな」

 

「もし私が先にいっちゃったら(人でなくなても)追いついてね」

 

「あ?天内のくせに言うじゃん」

 

頭の上に手を置かれ髪がぐちゃぐちゃにされる。

監禁されていて整っていたわけではないが髪が乱されると思うところがあり文句の一つでも言おうと思った。が

 

「何すん…」

 

「大丈夫、俺はお前の前にいるから一人にさせねぇよ」

 

そんな文句が言えないほど心からの言葉を送られる。

悟は嬉しそうに笑っていた。

 

二人で場所を移動し帷をおろす。

隠すためと防音のために貼られた帳はきちんと機能している。

 

「悟はさ、そう(最強に)なった時はどんな感じだった?」

 

やんわりとした質問になってしまったが意図に気づいた悟は少し考えてから口を開く。

 

「俺か?最初に感じたのは圧倒的な全能感。あの男が俺の前に来た時、天内が死んだと思ってたけど死んだことよりもリベンジできる喜びの方が大きかったんだ。俺を一度殺しかけたあいつなら今の俺を満たしてくれるって。今思えばあの時から周りに生き物としての線引きをし始めてたんだと思う」

 

「私そんな扱いだったの?酷くない?」

 

あの時の私はただの人間。悟の線引きをすり抜けていなかったとはいえこの扱い…地味にショック

 

「それは悪いと思ってるよ。そんときは全能感でハイになってたのもあるし…話を戻すよ。みんなのことは好きさ…でも別にみんなに俺のことを理解してもらいたいとも思わない。ただ一方的に愛でるだけで良かったんだ」

 

悟から見た人は花みたいなものなのだろう。花は愛でる存在。綺麗な花が咲くのは、他人に勝手に摘み取られたら怒るし、枯れたらショックだけど新しいの育てようって立ち直れる。唯一例外だったのはあの時、対等だった夏油くらいだろう。

 

自分の感じていた感覚を話し切った悟はこちらに話を

 

「天内はどんな感じだったんだ?」

 

「私はね…悟と同じ領域にたどり着いた実感と人間の枠組みから明確に外れた感覚。あとは価値観の変化かな」

 

自分の中にあった思いを言葉として明確にして発する。

 

「今の私からしたら人間って動物とか虫みたいなものなんだよ。一緒に触れ合ったりして大切な存在になったりするのもいれば、殺してもなんともないのもいる」

 

高専で知り合ったみんなが前者で盤星教本部にいたような悪意の人間が後者だ

ティンダロス特有の人間に向ける憎悪はないがそれでも別に殺してしまっても何も感じない。価値観は人間と相対差ないのに明確に何かがズレている感覚。

 

 

「みんなには悪いけど同じ人間としてのカテゴライズにいるのが悟だけなんだよね」

 

唯一の例外は黒井と傑だけだ。

 

「俺も似たような感じだわ。やべぇよ、こんな会話みんなに聞かせられないって」

 

「防音対策の帳は立ててるから大丈夫だよ」

 

「それもそうか」

 

その後も人から外れた私たちの会話は続いていった

 

 

 

 

 

 

 

悟と別れた後術式を試した。今高専には暇な呪術師が一人もおらず十分試すことができた。

呪魔複合術式『永劫回帰』魔術と呪術を組み合わせという初めての術式ということもあり

そして次の術式使用には巻き戻した時間と同等のクールタイムが発生する。

術式を試したことで一つの可能性が脳裏によぎる。

今の私なら過去に遡り二人を救うことができるのではないかと。

結果は理論上は可能だった。

 

だが必要な物が多すぎる。

時間逆行に必要な呪力は指数関数的に増加していく。

その呪力は私一人では到底足りず一般人を襲うとしてもどれほどの被害が出るかわからない。

そのレベルの呪力を使うとしたら適した土地を利用し大規模な魔法陣を使った儀式を行う必要がある。

そのためにはかなりの時間がかかり、時間がかかったら犠牲者は増えていく。

だからこのプランは却下だ。

 

一般人を犠牲にすることは何も感じないから大した問題じゃない。

だけど二人の死を意味あるものにするためには、それだけの善行を積まなければいけない

 

「難しいな」

 

一人で悩んでも考えに詰まる。一度頭に浮かんでしまったらこの考えが頭から離れない。

かといってこんな話を他の人にするわけにもいかない。

一人で悩んでいると不意に後ろから声がかけられる。

 

「君が天内理子ちゃんだね?」

 

ライダースーツのジャケットを片手に持って、黒のノースリーブとジーンズパンツ。

長い髪を下ろしている、前髪を真ん中分けにした背の高い女性。

 

「君は、どんな男が好みかな?」

 

「どちら様ですか?」

 

本当に知らない人だ。それにずいぶんと馴れ馴れしい。

私と関わり思っていない人たちは初日の件で大なり小なり警戒はしているものだ。

 

「そんなに警戒しないでくれないか?」

 

「警戒はしてませんよ…する必要もないですし」

 

「お!言うねぇ。で、私が誰かだったかな?」

 

目の前の女性は自信満々に名乗りをあげる。

 

「特級呪術師 九十九由基、って言ったらわかるかな?」

 

「?」

 

聞いたことがない。現状、特級呪術師は悟だけだったような?

 

「え?まってほんとに知らないの?」

 

「はい。初耳です…なんかすみません」

 

ここまでショックを受けられると流石に申し訳なくなる。

 

「まあいいや。今日はね、君に会いにきたんだよ。同じ特級としてね」

 

「特級?」

 

私の記憶が正しければ特殊一級呪術師であって特級ではなかったはずだ。

 

「少し前に君は特級呪術師に任命されたんだ。三人目だね」

 

私の知らないところで勝手に決められていたらしい。

等級なんてそんな気にすることでもない。

 

「そうだったんですね。よろしくお願いします」

 

出された手を握り返して握手をする。

 

「何か考え事をしていただろう?同じ特級としてのよしみだ。相談くらいのるよ?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

突然の提案に驚きつつももう会うこともないだろうし相談してもいいだろうと口を開く。

 

「もしも九十九さんが大切な人を失った過去を変えようとしていて、変えるためにはたくさんの犠牲が必要だとしたらどうします?」

 

九十九さんは少し考えた後、ゆっくりと口を開く。

 

「それはなしだよ」

 

「どうしてですか?」

 

「私には君の想定している大切な人がまだ居ないというのもあるが、時間を戻してその犠牲になった人達も元に戻ったとしてもその罪悪感の中昔と同じように接することができるわけない。戻ったとしてもきっとどこかで罪悪感から精神的に限界が来る」

 

人からしたらそういう視点もあるのかと理解する。

 

「こんなところかな。君が求めていた答えに近づけたかい?」

 

「まだわかりませんが参考にはなりました」

 

「なら良かったよ。後輩の悩みを解決するのも先輩の役目だからね」

 

話がひと段落着くと彼女が本題に移る。

 

「本題に移ろうか」

 

彼女は真剣な顔で言い放った。

 

「あの時もう一人の星漿体がいたのか、すでに新しい星漿体が生まれたのか。どちらにせよ天元は安定しているよ」

 

「………は?」

 

反射的に襲おうとしたのをかろうじて残った理性がストップをかける。

 

「星漿体?どう言うことですか?」

 

「そのままの意味だよ。天元が安定していると言うことは逆説的に同化したってことになる」

 

もう一人の星漿体がいたにしても、すでに新しい星漿体が生まれていたにしてもどちらの可能性でも私の扱いは変わらなかった。

天元様からしたらどちらでも良かったのだ。生きていようと死んでいようと。

それなら私の自由にするように言っていたのにも納得がいく。

 

「それって私天元様には囮に使われたようなものじゃないですか…」

 

「それはない。天元は星漿体が同化を拒めばそれを受け入れるよ。現に私がそうだった」

 

「星漿体?星漿体」

 

星漿体が複数いるその事実が重くのしかかる。

私の中にある得たばっかの大切な物が音を立てて崩れ落ちていく。

無意味だったのだ何もかもが星漿体となるべく過ごした十四年間も、私のために死んでいった

私を守ろうとしなければ二人が死ぬことはなかった。

そもそもスペアが複数あるのならば私のために二人を

 

「大丈夫かい?」

 

突然の様子の変化に九十九さんは心配そうにこちらを見ている。

 

「大丈夫です」

 

平然を装い彼女に向き合う。

 

「九十九さん」

 

「ん?どうしたんだい?」

 

「星漿体の件、悟に伝えないでくださいね。もし伝えたら殺しますよ」

 

「怖い怖い…そんな脅さなくても伝えないよ」

 

そう言って九十九さんは去っていった。

 

 

目に見える距離からいなくなったのを確認すると足の力が抜けてその場にへたり込んだ。

突きつけられた二人の無駄死にという現実。

あの戦いの中で見つけた私の生きる理由は最初から存在すらしていない空虚な願望だった。

目から溢れる涙が頬を伝って流れていく。

悔しくて、悲しくて、虚しくて、そして何よりこんな自分が憎くて、ごちゃ混ぜになった感情を抱きながら少女は一人で泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

2007年9月

■■県■■市(旧■■村)

任務概要

村落内での神隠し、変死

その原因と思われる呪霊の祓除

 

「これはどういうことですか」

 

そこにいたのは監禁された少女たち。

顔にはアザが浮かんでおり日常的に暴力を振られていたことは容易に想像できた。

 

何か喋っているが聞く意味はない。

 

二人の少女を閉じ込めている檻を触手で破壊する。

驚いている少女二人を抱きしめ入り口を見えないようにする。

 

「もう大丈夫だよ。辛かったね」

 

二人にこれから起こる凄惨な現場を見せないようにギュッと抱きしめる。

この子達は哀れな被害者でそしてあそこにいるのは生きてる価値のない加害者。

 

「殺すのは精神力を吸い上げてからにしなさい猟犬どもよ」

 

次の瞬間村のあらゆる場所で悲鳴が上がり、猟犬により血溜まりが出来上がる。

もう引き返せない引き返すつもりもない。

 

これが私の選んだ道、何百万、何千万の人間を犠牲にしようと私は過去を変え黒井と傑が幸せに生きている過去を作る。

 

 

 

 

担当者(高専3年 天内理子)派遣から一週間後、旧■■村の住民112名の死亡が確認。

それ同時期に民間人約164人の死亡が確認。

 

現場に落ちていた痕跡により天内理子の式神だと断定

 

呪術師規定9条に基づき、天内理子を呪詛師と認定。以後処刑対象とする。

 

 

 

 




ついに一線を超えて呪詛師堕ちしました。
これから理子ちゃんは普通に虐殺をするのでそういうのが苦手な人はリタイアした方がいいです。






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