時間は流れ、放課後となりオレは黒凪の部屋に行った。
「よし、来たな。」
「ああ、この世界でのこれまでのことは聞きたいからな。」
四月から現在に至るまでの数ヶ月、どのような歩みがあったのか。
「まず俺たちの出会いは…」
「それはあの教室でだろ?それほど細かく言う必要はないが…」
「いやその前に会っている。詳しく言うと、俺とお前の出会いはここの正門前になる。」
「?バスが一緒だったのか?」
「いやお前がどうやって来たかは知らん。だけど俺が正門前に来た時お前は父親と口喧嘩というか両者譲らない押し問答をしていた。」
「そうか…は?」
今こいつはなんと言った。オレが父親と喧嘩していただと。そんなことがあり得るのか…いやまて重要なのはそこじゃない。もしかしたらこいつはオレの過去を知ったのではないか。
「黒凪…お前はもしかして…」
「綾小路の過去、ホワイトルームについてならある程度は理解したさ。そもそもあんたの親父さんは言葉にしていたわけだしな。」
「そうか…その後はどうなったんだ?」
「そこを通ろとしたら親父さんと俺が口喧嘩して、最終的に松雄さんっていう人が親父さんを羽交い締めにしてくれたおかげでなんとかここに入ってこれたわけだ。」
「待ってくれ、松雄は生きていたのか?」
「ああ、そりゃ亡霊が生者を羽交い締めにするなんてわけはないだろうからな…その口ぶりだとそっちだとまるで死んだみたいな言い草だな。」
「オレ自身が見たわけではないが、そう聞かされたからな。」
「そうか。」
入学式初日だけでとんでもないことが起こっているんだなこの世界は。あいつはオレを連れ戻すために行動しているがまさか初日からそんなことをするなんてな。
「先に聞いておきたいことができたんだがいいか?」
「予想できているがどうぞ。」
「あいつは何度来た?」
「お前の親父さんなら俺が知る限りでは三回だな。」
「そんなにきているのか…というか黒凪はそこまで知っているんだな。」
「その初日の時に目をつけられたようなものだよ。」
「それは…ご愁傷様だな。」
「だがお前の帰還がメインなんだからな。」
黒凪もどうやら苦労しているようだな。どうにもできないが心の中で応援はしておく。
「初日はもうこれくらいか?」
「そうだな…特段これと言ってないな。」
「そうか。」
あいつ以上の出来事はもうないか。ならば次に聞くべきは、四月の出来事についてだろうな。
「何か四月の内に大きな出来事はあったか?」
「綾小路個人なら、堀北と付き合った以外ないな。」
「そうか。その詳しい経緯をきかせてくれないか?」
「ああいいぞ。だがその前に聞いておきたい。」
「何をだ?」
「お前は櫛田の過去をどのくらい知っている?」
「…それは必要なことか?」
「納得するためにはある程度必要であるな。」
「そうか…黒凪は櫛田の過去を知っているのか?」
「ああ、こっちの世界での中学生活でのやらかしと趣味嗜好の目覚めた話なら聞いているぞ。」
「そうか…じゃあとりあえずこちらの世界で聞いたことだが…」
オレは櫛田本人から聞いた過去を一通り話した。これが堀北とオレが恋人になることに繋がるとは思えないが…
「こんな感じだな。」
「そうか…似てる…というべきなのか…嗜好の扉が開くまでは同じといって問題ないだろうな。」
「そうなのか?黒凪の話だとどうだったんだ?」
「そうだな…まずブログというものはやっていなかった。」
「やっていないのか。」
櫛田個人での分岐点はおそらくその行動なんだろうな。しかしそうならいったいどうやって櫛田はストレスを解消し、どんな問題を起こしたのか…
「こちらの櫛田も同じように中学時代は一番になろうといろんなことしてみんな櫛田桔梗であろうとした。だがストレスも溜まりそれを吐き出すすべもないままに過ごしていたある日、彼女が家で見つけたものがあった。」
「それが首輪だったと?」
「そう、それで何かできないかとこっちの櫛田は考えたわけだ。そしてやったことは秘密をばらさないことを条件として同じクラスの女子たちに首輪をつけてもらいそれを撮影することだった。」
「そうか……それってその相手の女子たちはそう簡単に了承するものなのか。」
「俺も聞いたさ、その返答はごねて了承させたとのことだった。」
「そうか…」
「その撮影の時に何とも言えない支配感という愉悦を味わいその時に嗜好の扉を開いたんだと。」
「そうか」
なんだかこちらの世界よりもやっていることとしたらヤバイような気がするが…
「それでどうなったんだ?」
「ある時に女子の一人が他のクラスメイトに相談した結果櫛田の魔女裁判が始まってしまってな。その時に写真をばらまいたが非難轟々だったから我慢の限界で秘密を暴露したとのことだ。」
「なる…ほど。それ…写真をばら撒く必要あったのか?」
「さあ櫛田曰くみんな見たいのかなと思ってばらまいたらしい。ああ一応言っておくが写真は保存用とか布教用とかで複数あったからな。」
「そう…か。」
結果としては同じはずなのにこうも変わるものだな。さてここから入学してからに繋がるのか。いや一応堀北との関係を聞いておくべきか。
「一つ聞いておきたいが。櫛田と堀北は同じ中学だよな?」
「ああ、堀北はいつ認識したのかは知らないが櫛田は、入学初日のバスの中で認識し、ショックをうけたらしい。」
「ショックって?」
「…曰く、同じ中学校にいたのにこんな極上の素材を見逃していたなんてってな。」
「おう…」
何ともまあ反応に困るものだな。何か一つ掛け違えただけでここまで変わるものなのだな。
「で、そこから櫛田からのちょっかいに辟易していた堀北が相談にきたところ、愛里の一声で綾小路がボディーガード兼彼氏になったということだ。」
「そ、そうか…」
「でもお前は櫛田の色仕掛けに毎度負けているけどな。」
「…反応に困るのだが。」
「まあそのくらいこちらの綾小路君は思春期真っ盛りなのです。」
「そうか…」
オレもこのくらいはっちゃけることができたならばよかったのだろうか…いやオレにはできないことだな。
「そういえばここの堀北学はこのことについてどう思っている?」
「未だに認めて無いね。この前の合同合宿でもひと悶着あったのだから。」
「…なにがあったか聞いてもいいか?」
「いや事情はわからないけど…俺が二人を見た時はだいたい君が土下座してた。」
「オレは何をやったんだ…」
オレが堀北学に土下座をするようなこと…ろくなことではないだろうが、この世界のオレは全くの別人と言っていいだろう。
「君に関しては四月はこんなものだろう。」
「何かほかにあったのか?」
「いや基本的に俺が櫛田、平田、軽井沢から相談をされたり。各クラスのリーダー格と話す機会があったり、まあいろいろとな。」
「そうか…信頼されてるんだな。」
「平田曰く、俺には大きな愛があるらしいが…大きな愛って何なんだろうな。」
「…平田がよくわからないな。」
「俺もわからない。」
───────────────────────
四月のことはこのくらいでいいだろう。次は五月に入ってから、いわばクラスポイントと中間テストについてだな。
「このクラスは五月にクラスポイントはどれくらい残っていたんだ?」
「およそ300は残っていたな。」
「それほどまでに…」
「それほどって…少ない方ではあるだろうよ。そっちは?」
「0だ。」
「あっお疲れさんです。」
「ああ。」
正直な話、世界が変わったからといってこれほど残せるとはあまり思わない。何かやったのだろうか。
「いったいどうやって300程のクラスポイントを残すことができたんだ?」
「それに関しては平田の理論的な愛の説得のおかげといっておくよ。」
「なんだ理論的な愛の説得って。」
「なんと言ったか…ここの平田曰く、授業とは、先生の無償の愛だからそれを無駄にしてはいけないとかそんなことを言っていたな。」
「…それで、みんなはどうしたんだ?」
「大半納得してそこからマトモになったかな。」
「そうか…」
平田の説得も訳が分からないが、それで納得して行動を替えれる他のみんなも何かしらおかしいと言わざるを得ない。
なんだか一つの宗教が出来上がってしまったような気がする。
「しかしそれなら、もう少し残っているものだと思うが…」
「まあみんな注意していたとはいえ、居眠りや遅刻とかなくせるものではないし、それに…月末の小テストの結果はよろしくなかったからな。」
「そんなにひどいものだったのか。」
「赤点はお前含めて10人もいたからな。」
「ちょっと待て。オレも赤点をとったのか?」
「ああそうだよ。というかお前0点だよ。」
「はっ!?」
オレが0点をとった?何故?
…理由も動機もわからん。聞いたところで黒凪はわかるのだろうか。
「黒凪…」
「お前が0点を撮った理由は…取ってみたかった。誰もやらないだろうから面白いかなとそれはこの世界のお前が言った理由だ。それにテスト用紙を見せてもらったがご丁寧に『その問いかけに意味はあるのか?』なんて書いてあったわけだからな。俺も茶柱先生も頭抱えたよ。」
「……オレが聞いても理解できないんだが。」
「俺だってわかるかよ。でもここのお前にとってはそういうバカやるのも青春の一つだって思っていたんじゃないのか。」
「そうか。」
どうもオレは世間の一般常識がないから奇特な行動をとるのだろうか。オレの過去の居場所が何かしらの足を引っ張っているというべきなのだろうか…
あるいは解放されたからこその反動で意味のないような行動をとったか…
「まあテストに関しては、過去問のおかげで誰も赤点取らなかったわけだしな。」
「過去問の存在に気づいたんだな…ん?」
「一応な。」
待て今誰も赤点が出ていないのか?あの須藤も赤点を回避したと言うのか。
「まて、赤点が出なかったのか?10人も小テストで赤点出たのにか?」
「そのうちの一人君なんだがな…ああ、出てないぞ…誰かいたのか?」
「こちらだと須藤だ。1点足らなかったから。10万ポイントで点数を買ったんだ。」
「貧乏な0円支給なのに頑張ったんだな。」
「ああ、堀北と折半してなんとかなった。」
「そうか。まあこちらは平和に終わってよかったよ。」
「そのようだな。」
「変な奴らばかりだとは思うがマナーとモラルの良さはそちらの以上だと俺は思っている。」
「そうだろうな。」
こちらだと仮に平田が説得しても池や山内、須藤は聞かなかっただろうし、まじめになることはなかったと改めて思う。
「あっそうだ。5月1日も大変だったんだよな。」
「そうなのか?」
こちらだと茶柱に呼ばれて堀北とのやり取りを聞かされて、それから堀北にいいよう使われて…今思えば茶柱は最初からオレと堀北をどうにかして利用しようと画策していたわけだな。
「いったい何が起こったんだ?」
「まず俺とお前が茶柱先生に呼ばれて、お前の0点をなんとかしろとは言われたな。お前は中間テストでも0点を取るつもりでいたからな。それに関しては、外にいるお前の親父のことを引き合いに出して事なきを得た。」
「そうか。」
オレの行動は理解が出来てないがあいつが外にいるからこそここに残ることを選んだわけだ。それに関してはこの世界のオレはよく踏みとどまってくれた。
「次にあったのは堀北の相談だが…あれに関しては解決してないし、解決できないからな。」
「櫛田との因縁か…」
「結果として俺が注意喚起して様子見になったということぐらいだな。」
「ちなみに聞くが…その問題は。」
「未だに解決してないぞ。手っ取り早く解決するなら堀北が首輪をつけることだが…そうなったら櫛田の欲望が抑えられないだろうからな…」
「難しい問題だな。」
「ああ…」
なんというかこちらの世界と櫛田と堀北の立場が反対というべきなのだろうか。形が変わってもあの二人には何か縁というべきものが存在するのだろうな。
二人からしたら溜まったものではないだろうが。
「茶柱に呼ばれたのはそれで以上か?」
「いやここからが本題。なんせあんたの親父二度目の襲来なんだから。」
「はっ!?」
オレは思わず声を荒げてしまった。もう来たというのか。
「…さっき言ったことは忘れてないよな?三度来たって。」
「あ、ああそれはそうだが、早すぎないか?」
「それは俺に言われても知らん!!」
それはその通りであるな。しかしあいつにも仕事とかあるだろうに…いや考えるのはやめよう考えるだけ無駄なことだ。
「それでどうなった?」
「まあ理事長もなんとかして止めようとしてくれていたが、最終的には松雄さんが来て持って帰ってくれたからな。」
「そうか…」
すごすぎないかこっちの松雄は。どうしてここまで戦えるのか聞いてみたいな。
「どうして松雄さんは俺たちの為に戦ってくれたのだろう…」
「そっちの松雄さんはどうか分からないが、こっちの松雄さんはお前のことも、息子同然に思っていたみたいだからな。家族愛とかいうやつじゃないか?」
「黒凪、お前もやはり平田の影響をうけているのか?」
「違うわバカタレ。他人であっても本当の関係になることもあるだろうし、種族を越える愛だってある。犬が猛獣の赤ちゃんを育て上げることだってあるからな。」
「…オレは猛獣なのか?」
「猛獣だろうよ。他人を容易に屠れる牙があるけど、それを使わないだけなのが君だろうに。」
「そう…かもな。」
松雄…あんたの死すらなんとも思ってないオレを息子のように見ていてくれていたのだろうか…
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「まあ一学期はほかに特別試験もなかったから次は無人島試験かな。」
「待て黒凪。」
「うん?」
こいつはさらっと事件を飛ばしやがった…いやここでそんな事件が起きてないのか…
「いや待ってくれ黒凪。夏休みに入る前に事件とかなかったのか?」
「事件?」
反応的になかったと見ていいのか。いやそれでも何かしらあるはずだ。
「須藤とか愛…佐倉とか。」
「あーそういやあったなあ…ところでなんで愛里を言い直したの?」
「こちらでは名前で呼び合う仲ではあるがここだとそうでもないからな。それに黒凪の彼女ならそういうのをやめておいたほうがいいだろうと思って…」
本当はオレが愛里と呼ぶ度に、黒凪はわずかに嫌な顔をしていたからな。これで少しでもいろんなことを聞くための必要経費だと思うことにしよう。
「つってもあれを事件と呼ぶべきか…まあ須藤のは一応事件か。」
「こっちでも須藤が何かしらの問題を起こしたのか?」
「いや?どっちかというとあいつが被害者だし。」
須藤が被害者?こっちの須藤は体育祭を越えるまでどうしようもない問題児であったはずだ。特に一学期の頃なんて振り返れば目も当てられないほどの奴だったせどな。ここだと須藤以上の問題児がいたのか…
「…何が起こった?」
「あれをどう呼べばいいんだろうな…カバディ事件と言うべきか…」
「カバ…なんて?」
「いやでもやっていた動き的にかごめかごめだからな…かごめ事件か?」
「黒凪…勝手に話を勧めないでくれ。」
「いやでもなあ…かごめカバディ事件だな。うん、これがしっくりくるな。」
「いったい何がどうなったんだ…」
「綾小路、カバディは知ってるか?俺もうまく説明できないスポーツだが…」
「いやカバディは知っている。ルールもある程度把握しているつもりだ。」
「じゃあかごめかごめはしっているな?」
「ああ知っているとも。知識を得ているからな。」
「そうかでもやる奴いなかったんだろうな。」
「…俺だって友達を作ろうと思えば……」
「あらかたの過去を知っている俺にそんなウソはやめておけ。虚しくなるだけだぞ。」
「……そうだな。」
黒凪のちょっとした毒吐きで少し話がそれたが続きを聞こう。
「それでその…かごめカバディで何があったって?」
「まあCクラスの奴らが須藤のバスケのレベルを下げるために特別棟に呼んで、『カバディ』と言いながら須藤の周りをかごめかごめの如く周っていた。それ以上のこともなく、暴力もなけりゃ喧嘩もしてないそんな事件とも呼べるかわからない出来事だった。」
「そうか…なんというか、平和…なんだな。」
「平和だな。事件と呼べるものはないがある意味で飽きない毎日だな。」
こちらの須藤だったら、かごめカバディをされただけでもキレて手を出してしまいそうな気がするな。ただ須藤は平行世界をまたいでもバスケをするのだな。そこまで打ち込めるものがあるというのは少しばかり羨ましく感じるな。
須藤のことはこのくらいにして次は佐倉のことを聞くとするか。
「須藤はこの辺りでいい。次に佐倉のことだが…」
「どうした?何か言い淀むことでもあるのか?」
「いや…オレのところではストーカーがいてな…佐倉に近づいたところをなんとか取り押さえることが出来たという事件があったんだ。」
「そうか…まあアイドルというものにはそういう奴が現れるのは避けて通れない道というようなものだろう。別段、特に気分が悪くなることはない。ただ一つ気になるのは、その事件に関して学校側からなにかお詫びとかはあったのか?」
「どうだろうな…オレにはなかったし、佐倉にもそういう話は振らなかったから詳細は不明だが…」
「そういう事件があったのなら謝罪の一つは必ずあると思うし、せめて事件を黙ってくれみたいな口止め料が発生してもおかしくはないだろうよ。お前も当事者なんだからなにか詫びの一つでも求めりゃよかったのにな。」
「そう…かもな。」
そういう考えはなかったな。何かひとつでも詫びとして交渉権を持っていれば茶柱にもいいように使われなかったはずだ…こんなたられば話を考えても仕方ない。そろそろここの出来事を聞くとしよう。
「それでここではどんなことがあった?」
「そうだな…ファンが四人くらいいて親衛隊が出来てたな。」
「はっ?」
「いやだから親衛隊。わかるか?アイドルの熱烈なファンの集まりを差す言葉だが…」
「いやそういうことではなく…四人もいたのか?」
「そうだ…いや隊長を含めたら五人か…そんな人らがただ路地裏で愛里がブログとかに投稿していた写真をただ見ているという状況を目にしてな。」
「何故路地裏に行ったかはさておき、それで俺が愛里の恋人であるということがバレていてな。生の雫を会わせてくれと頼まれた。」
「どうしてそうなるのかが理解しがたいが…黒凪はどうしたんだ。」
「了承した。」
「了承したのか…それはまたなんでなんだ。」
「なんというか…自慢したかったみたいな感じだな。あとはお礼に割引券とか
貰えないかなって。」
「…なんというか現金なやつなんだな。」
「そうかもしれないな。」
「けれどこちらみたいに危ないとは思わなかったのか?」
「少しは考えたが…それでも大丈夫だと思った。それに俺が守れれば問題ないともおもったわけだし。」
「そうか…」
誰かを守るか…オレはそういう感情をもってないからわからないものだ。いや今のオレにとっては恵がその守るべき存在というものだろう。もっと恵とすごしたら、そう言ったら感情も理解できるのだろうか…
「それで会わせてファンサービスを愛里にしてもらって、お礼に俺が胴上げされた。」
「そのオチはよくわからない。」
「俺もわからない。どうしてこうなったんだろうな…」
平和とは思ったが黒凪もなんだかんだ苦労しているのかもしれないな…
「あとは……あぁそうだ。お前と堀北が生徒会に入ったのもその時だったな。」
「オレと堀北が?いったいどういう経緯でそうなったんだ?」
「あー…生徒会長が生徒会に人が来ないと嘆いたから俺が紹介した形になっている。」
「生徒会に誰も入ろうと思わなかったのか?」
「まあ…ある意味そうなのかもな。そもそもが生徒会長の瓦割りのせいで…」
「ちょっと待て、瓦割りと生徒会長にどんな関係性がある。」
「えっとな…入学式二日目にあった部活の説明会で最後に生徒会長の挨拶があったんだが、あの人新入生を黙らせるために瓦割りを実行したんだよ。」
「えー…そうか…」
どうしてその行動を選んだのか…この世界では生徒会長さえもいろいろとぶっ飛んでいるのだな。
「その結果、生徒会に入るには瓦割りをしないといけないという噂が広まり、そして本当に瓦割りを見せた人も何人かいたということになった。」
「な、なんというかこの世界はその…あれだな…」
「濁さず言っていいんだぜ?アホなやつが多いってな。」
「いやそれは…」
「でもさあ、俺自身としては、こういうアホなことが出来る方がある意味では健全な学校だと思うけどな。」
「そう…なのかもな。」
確かに少なくともこちらではそういう話はなかった。男子高校生というのはアホな行動をとるのが一般的なのだろうか…
「さて話を戻そう。それで生徒会に入る人がいないことと、妹の恋人が信用ならないことの二つを相談された俺は、監視という名目で入れたらと進言したところあっさり採用されましたとさめでたしめでたし。」
「めでたしかは置いといて、この世界のオレは生徒会長から目の敵にされているのか?」
「ああされてたな。ここの生徒会長は結構なシスコンだしな。」
「それは…関係あるのか?」
「大いにあるだろうよ。生徒会長からしたら目に入れても痛くないような可愛い妹だ。そんな妹に恋人ができた。しかしその男は何に引っかかったのか生徒会長的には信用できないらしい。」
「そうか…」
「そして生徒会に行ったとき橘先輩をみて口説いていたし、そんな光景をみたら、信用なんてマイナスだしな。」
「この世界のオレ…なんか節操なしすぎないか?」
「それは俺に言われても……閉塞的なところで育った反動だと思っておけばいいんじゃないか?」
今のオレはそういった欲望がないわけではないが、そう表立ってだすことなんてない。オレもそれくらいなにか行動をおこせば何かが変わったのか…いや事なかれ主義だったオレにはできないかもな。
───────────────────────
「次はあれか、夏休みの特別試験か。」
「やはり行われていたか…無人島か?」
「ああまずはその試験だな。」
平行世界とはいえ、試験くらいは同一のものだあって欲しいと思うがさて…
・
・・
・・・
「とまあ基本ルールはこんな感じだったか。」
「ほぼ同じだな。」
黒凪から一通り説明を聞いたがオレがやってきた無人島試験と同じようなものであることに安心を覚えた。しかし、いろいろとおかしいこの世界が何もないことはないはずだ。
「本当にこれだけか?」
「まあ…追加ルールとして二つほどあるけどな。」
ほらやはり出てきた。しかし、二つかいったいどのようなルールになるのか…
「まず一つ目は、各クラスでチーム名を決めろと言うものだった。」
「チーム名……いるかそれ?」
「俺も思ったさ。だけど決めないと、ペナルティとして試験で使えるポイントが全没収なんて言われちゃどうしようもないだろう。」
「……ペナルティが重すぎないか。」
なんというかしょうもないルールだな。これを追加ルールとして入れたやつはどんなことを考えていたのだろうか…
「ちなみに俺たちのクラスはなんてチーム名になったんだ?」
「…『魔境』」
「…そうか。」
少しばかり納得してしまった。
「二つ目のルールはいったいなんだ?」
「簡単に言えば『宝探し』だな。無人島のなかに20個の宝箱があってその中から各クラス一つだけ試験最終日の結果発表の時に開けれるというルールだ。」
「なんというか夢があると言えばいいのか…」
「まあこっちに関してはロマンともいえるルールだからな。」
ロマンか…オレにはあまり馴染みのない感性だな。それでも漫画とかに出てくるような宝箱を見つけたらすこしはワクワクするだろうか…
「ちなみにどういう宝箱を見つけたんだ?」
「……葛と寄木細工。」
「……そ、それは宝箱と言えるのか?」
「俺もわからん。だけど寄木細工の方を開けてポイントが増えたのだから宝箱であったんだろうさ。」
「そうか…黒凪が見つけたのか?」
「いや…どっちがどっちだったか忘れたが…高円寺と須藤が持ってきた。」
「そうか…」
高円寺も須藤も変なものを持ってきたものだ。そしてそれを拒まなかったこいつもすごいと言うべきか…うん?そういえばここの高円寺はどうなったんだ?
「そういえば、高円寺はリタイアしなかったのか?」
「その言いぐさだとそちらはしたようだな。こちらはリタイアすることなかったな…あいつ曰く、一週間ターザン体験ツアーだったみたいだからな。」
「……どういう意味だ??」
「俺に聞かんでくれ。あいつの考えていることなんてわかるわけねえよ。」
「そうだな…」
高円寺…どの世界であってもやつは自由なんだな。
・
・・
・・・
「次は船上試験だな。」
「そっちにもあったんだな。」
ここも一緒となると、基本的にやってきた試験は同一のものであると考えてもよさそうだな。そこに何かしらのルールが追加されなければだが。
「一応聞いておくが、その試験は、優待者を探し当てるシンキングの試験であってるか?」
「ああ、その通りだ、結果も4通り、優待者を全員で回答できるか否か、さっさと指名して正解するか否かの形だな。」
「…他にはなかったのか?」
「特に追加ルールもなかったな…まあそうそうおかしなルールが追加されることもないだろう。」
「そうか。」
変化がないならないでつまらなく思ってしまうな。だがこういう時は何かしら違う出来事が起こっているはずだ。
「なにかおかしな出来事はなかったのか?」
「ないな…強いて言えば、俺が愛里とデートしたいがために一回目の話し合いで全て終わらせたくらいかな。」
「はっ?」
マトモだと思っていたがこいつも少しおかしいのかもしれない。この世界にマトモなやつがいるのだろうか…
しかし、一回目の話し合いで終わらせたということは、黒凪は短い時間で優待者の法則に気づいたということだ。それは評価すべきものだろう。
「すごいんだな黒凪。すぐに優待者の法則に気づくなんてな。」
「あっ、あぁ。まあうまくひらめけてたと思うよ。」
何故か歯切れが悪いものだな。なにかしらの反則手を使ったのか?そうだとしてもバレていないのならば特に問題はなさそうだが。
「どんな風に立ち回ったんだ?」
「俺は辰グループだったけど、とりあえず櫛田が優待者であることを暴露して、そこから優待者の法則を説明したうえで、クラス間の撃ち合いにしてcptを変動させない形にした。」
「すごい立ち回りをしたものだな。その場で指名されていたらどうしたんだ?」
「その場合は櫛田を指名したクラスの優待者を撃ち抜いてDクラスだけはマイナスにしないように立ち回ったさ。」
「そうか。それはうまく行くと思っていたか?」
「Dクラスの動きだけはなんとかできるはずだ。一応クラスリーダーだし、あの平田を説得出来たらどうとでもなるはずだ。」
「……それもそうだな。」
平田を説得か…あの愛とよく言う平田を説得するビジョンが今のオレには見えない。改めて考えるとこいつすごい奴じゃないのか。
そういえばオレの世界ではこの辺りから軽井沢と関わり始めたがここだとどうなのだろうか。
「なあ黒凪、この試験中軽井沢はどうしていた?」
「軽井沢?知らね。どうせ平田といちゃらぶチュッチュしてたんじゃないか?」
「そ、そうか。」
この世界では軽井沢は本当に平田との恋人関係になれているんだな。
それで軽井沢が幸せなら別世界のオレは特に何も言わなくていいな。
───────────────────────
「じゃあ次は体育祭か…」
「その前に夏休みは何もなかったのか?」
オレ自身夏休みを振り返ってみるといろいろとあったようななかったような…葛城とのやり取りや堀北の水筒事件、占いとかプールとか…いろいろとあったわけだが、こちらで何か面白いことがあったならいいんだが…
「夏休みかあ…お前自身に起こったことが特にないわけだが…とりあえず俺が生徒会に入ったのがそのタイミングだったな。」
「そういえば黒凪はただ生徒会にオレと堀北を紹介しただけだったな。なんで入ることになったんだ?」
「お前と生徒会長の喧嘩が原因。」
「そ、そうか。なんかすまない。」
何がきっかけなのかはわからないが、ここの世界だとオレと堀北兄は相容れない仲なのかもしれない。それを取り持つ役割をこいつに与えられたのだろうな。
「ほかは……堀北と一緒に水筒を手に突っ込んで俺の部屋に突撃してきたのは驚いたというか呆れたというか…」
「……お世話になったみたいだな。」
あの珍事件はこちらでも起こっていたのか…しかもオレと堀北が同じように…なんというかこういうことは変わらないみたいだな。
「あとは…プールか……」
「なんだ、言いたくないことでもあったのか?」
「いやそういうわけではないが…まあ、自業自得だと思ってこれから頑張って生きてくれ。」
「ちょっと待てオレは何をしでかした。」
「いや犯罪的なことをやっていたわけではないぞ。ただお前はカメラで撮影をしていただけだ。」
「いったいカメラで何を撮っていたんだ?」
「……主に堀北だよ。」
「堀北以外にも撮っていたのか?」
「…いや堀北を撮っていたともうん。」
「いったい何をしでかしたんだこの世界のオレは…」
「知らないほうがいいことだってあるさ。」
黒凪はこれ以上語りそうにないな。主に堀北を撮っていたということはそれ以外も撮っていたということか…オレがやっていたのは盗撮まがいな行動ではないのだろうか…
これ以上考えるのはやめておいたほうがいいのかもしれないな。次に行くとしよう。
───────────────────────
「次は体育祭になるわけだが、ここは追加ルールもなかったしおそらく競技も同じものだと思うが…」
「そうかもしれないな。ただ、何も起こらなかったわけじゃないだろ?」
「それはまあそうだな…ただお前自身の出来事なんて俺は覚えていないぞツッコミ席にいたんだし。」
「ちょっと待て、今なんと言った?」
「いやだからツッコミ席と…」
知らんワードがいきなり出てきたツッコミ席とはいったい…
「そんなものがあったのか?」
「あったよ。実況席、解説席、ツッコミ席という具合に。」
「それは…本当に必要か?」
「それはわからん。けど役割は常に果たしていたと思う。」
「役割って…そんなにツッコミが多かったのか?」
「まあいろいろとあったななんせ最初にしたのが開会式での校長先生の挨拶で漫才していたんだ
からな。」
「何をやっているんだ…」
開会式で漫才…情景を思い浮かべることはできたが、なんというか場違いなことだけはわかるな。
「そして俺は基本的に自分の競技しないときは、ツッコミ席にいてそこから離れられなかったわけだし、お前自身に何が起こっていたかはほとんど知らないからな。」
「そうか…何か体育祭で起こったか?」
「競技中なら…騎馬戦がある意味本当に騎馬戦とか、障害物競走がデスレースみたいな恐ろしさがあったり、借り物競争…はいいか。」
「騎馬戦…障害物競走…借り物競争…どれもひと悶着があったんだな。」
「まあクラスでのトラブルというわけではないからそれでも平和でもあるけどな。」
「そうか…」
龍園が何かしら策略でもあったのかと少し警戒していたがそこは問題ないようだ。この世界は本当に平和なんだな…
腑抜けているなとも思うし、羨ましくとも思うな。
───────────────────────
「そういえば、今の生徒会長は黒凪、お前だったな。」
「そうだな。体育祭が終わってからひと悶着あったからな。」
そう言って遠くを見る黒凪。こいつはこいつで多くのトラブルに巻き込まれているのかもしれない。こいつが元の世界にいたら、面倒事を押し付けてオレは平穏に過ごせたのかもな。
しかし、生徒会長なんて一年でなれるものなのだな。
「いったい、なにがあって生徒会長になったのだ?」
「……まあなんというか懇願された結果だったというべきか。」
「懇願…誰にだ?」
「それはまあ…いろいろとだ。生徒会のメンバーに教員に……恥も外聞もかなぐり捨てた人は恐ろしいね。」
「どうした急に?」
おそらくいろんな人にお願いされたのだけはわかる。そして何か想定のできないような形で交渉されたのかもしれない。
「でもまあ…多少の融通は利かせた以上しっかりと務めないとな。」
「そうか…」
「安心しろ、お前も堀北もこき使ってやるから。」
「それは勘弁願いたいな。」
どの世界線のオレであっても平穏はないのかもしれない。
「で、次はペーパーシャッフルか。」
「そうだな。」
黒凪から説明されたルールに変更点はない。こちらと同じように行われたのであるのならば、こちらではおかしな出来事があるはずだ。それを期待しておこうじゃないか。
「いったい何があったんだ?」
「そうだな……土下座が流行った。」
「はっ?」
何を言っているのだこいつは…というか土下座って流行るものなのか?
「それは…どういうことだ?」
「この世界の学校ってさ、ゆるいように見えてもテストの赤点一つで退学なわけだろ?」
「この世界の事情は今一つわからないが…そうだな。テストは赤点一つで退学、それはこちらでも付きまとう事柄だな。」
「だろ?だからそれを回避するために土下座が流行ったみたいな感じだな。」
「いろいろとざっくりとしてないか?」
たとえ流行ったとしても土下座一つでなにができるだろうか…赤点回避をできるわけじゃないだろう。そもそも教師たちはそれを取り合うことはないだろう。しかしそれほどまでにうちのクラスはヤバいのか…
「あっちなみに言っておくが、土下座をやっていたのは俺たちのクラスじゃなくて龍園のところのCクラスだからな。」
「そうなのか…それも何かおかしいような…」
いやおかしいは、その土下座が流行るというその状況であるが…まあこの世界は最初からおかしいようなものだからな…
「なあ綾小路。」
「なんだ黒凪?」
「石崎曰く、下手なプライドはすぐに捨てたら飯にありつけるらしいぞ。」
「なんだその格言とも言えない発言は。」
黒凪は、楽しそうに語る。なんだかんだこのおかしな世界をこいつは楽しんでいるようだ。別世界からきたオレにできないような気がする。それはここかオレにとって本当の世界ではないからなのかはわからない。
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次の試験は合同合宿になるわけだが、冬休みに入る前に何か起こらなかったのだろうか…こちらでは龍園との決着をつけたわけだが…ここのオレは欲望に忠実ながら青春を楽しんでいるし、黒凪は…特に誰かとトラブルを起こすようなことはなさそうだし。平和に過ごせたのか聞いてみるか。
「なあ黒凪。」
「なんぞ?」
「ペーパーシャッフルが終わってからはなにか事件は起きてないのか?」
「そうそう起こるもんじゃねえだろ。生徒会の仕事におわれていたんだよ。」
「そうか大変だなあ。」
「…お前もメンバーなんだからな…いやこの世界のお前だけどな。」
生徒会か…オレは結局入らなかったからな。入っていたら青春を楽しめていたか…いや無理だな。あの生徒会長にこき使われる未来しか見えないな。
「あっでもあれは事件じゃないしな…」
「何かあったのか?」
黒凪の発言に少し期待する。なんだろうオレもこの世界の出来事を楽しんでいるのだろうか…
「屋上で宴会やってた。」
「……誰が?」
「龍園のクラスが。」
「……そうか。」
やはり斜め上のことが起こっている。平和と言えば平和だが、こうも変化すると面白いものだな。
「それでそのあとは?」
「諸々の道具を片付けさせた後、帰ってもらっただけだぞ。あとはもう特にないな。」
「そうか。」
こうなると冬休みもとくになさそうだな。なんだかつまらないな
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ついに合同合宿まで来てしまったな。これを聞いて終わりになるのか…ところでオレはどうやったら元の世界に帰れるのだろうか…まあとりあえず話を聞くとするか。
「まあ次が最後となる合同合宿だが…ルールは問題ないよな?」
「まあこちらでも最近やっていたわけだから覚えているが、追加ルールとかないのか?」
「追加ルールか…多分ねえな。退学もない試験なわけだし。」
「退学がない?道連れルールとかなかったのか?」
「道連れ?そんなのねえよ。というかそっちはそんな物騒なルールがあったのか?」
「ああ、グループのリーダーとリーダーに指名されたやつが退学になるものだ。」
「そうかぁ…なんだかそちらは常に殺伐としていそうだな。」
「まあ…否定はしない。」
この世界のことを聞いていると時々オレのいた世界はおかしいのではと思うことがある…いやこの世界も大概か。
しかし、退学のルールがないのは、生徒会長の違いなのだろうな。こいつがそういうことをやりたがらないのはなんとなくわかっていたが。
「合同合宿も特に事件と呼べるものなんてないかもな…サムライみたいな奴が増えただけで。」
「その一文がよくわからないんだが。」
サムライと言えば外村がよく「ござる」口調であったが、オレのところでは、合同合宿にて矯正されたわけだが…ここだと矯正もされずにむしろ増殖したとでもいうのか。少しばかり面倒な感じがするのはオレだけか。
「まあ…大変だったな。」
オレが体験したわけでもないから月並みの言葉しか出なかった。
「まあな…それでもなんとか試験5つ乗り越えたわけだし。」
「うん?試験は4つだろ?」
「いや5つ…まああれは急遽入ったようなものだからあれは試験ではないのかな。」
「試験を全部言ってみてくれないか?」
「あぁ、『禅』だろ?『駅伝』だろ?『スピーチ』だろ?『学力テスト』だろ?『狩猟』だな。」
「知らないのが最後に出てきたな。」
確かに山に泊まったとはいえ狩猟か…高円寺がイノシシを狩っていたようなことはできないけど罠とか使えば何とかなるか…
というか追加ルールはなかったけど追加試験はあったな。
「なあ、ちなみに聞いておくが…オレは何かやらかしたか?」
「いや特に、強いて言えば元生徒会長とちょっとしたことがあっただけだ。」
「やはりこの世界のオレは嫌われているようだな。」
オレ自身、少しばかり羨ましくおも……うことはないな。嫌われたとしてもおそらく面倒事は回避できないような気がした。
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「もう話すこともないな。」
黒凪はそう言ってコーヒーを飲んでいる。確かにこの世界の出来事を聞き終わったわけだが…オレは元の世界に戻れるのだろうか…
≪聞こえるか人の子らよ≫
突如としてあの夢で聞いた声がどこからともなく響いてる。オレも黒凪も辺りを見渡している。
すると窓の方から夢で見た神なる存在が現れた。
≪綾小路とやらよ。お主はこの世界を堪能したであろうし、元の世界に戻すこととする。≫
神なる存在はこちらの返事を聞かずに話を進めている。なんだかオレに関わる奴はどうもこちらの意志を無視するのが多いらしい。いや今回の場合は別に問題ない…のか?
「ちょっと待ってくれよ。神様。」
≪なんじゃ黒凪。≫
勝手に進めていたところを黒凪が水を差す。まさか黒凪、オレのいた世界に来たいとでもいうのか?
「今回のことに関して俺はどうなる?別世界の綾小路を知ってしまったから記憶を改竄でもするのか?」
≪安心せえ、今日一日の出来事はお主にとって夢という扱いになるし、寝て起きたら、時が戻っているだろう。≫
「そうか…まああんたがそう判断したならそれでいいよ。」
≪まあお主はこっちの綾小路も知っておったと思うが。≫
「神様。」
≪ふぉっふぉっふぉすまんな。しゃべり過ぎたか。まあよい綾小路よ帰るとするかお主の本来の世界へ≫
「ああ。」
黒凪はこちらの世界に来たいわけじゃないのか。まあ黒凪はオレのいたところの世界は合わないような気がするからそれでいいのかもしれない。しかし、オレのことを知っていたというのはどういうことだろう…
≪さて帰還の時じゃ。≫
「ああ。」
そうしてオレは光に包まれていた。これもまた貴重な体験だなと思ったと同時に意識がなくなった。そういえば、黒凪と別れの挨拶を済ませていなかったな…
・・・・
「帰ったか?」
≪あぁ、目を覚ませばあやつは元の世界にいるだろう。≫
俺は光に包まれて消えていった綾小路を見送り、いまだにいる転生させた神とやり取りをすることにした。
「あっちの記憶は消えるのか?」
≪まあ、夢という形で残るかもしれんな…なぜそれを気にする。≫
「そうだな…あいつが原作のやつだとしてこの記憶が残ったら、原作から離れるなあと思ってなんてな。」
≪ふむ…確かに分岐点になるだろう。だが決めるのはあやつじゃろ。≫
「……それもそうだな。」
記憶は残るか……まあ綾小路なら問題ないだろう。何が起こっても対処できるだろうし。
≪ところで原作で本物の綾小路に会った感想はないのか?≫
「まあ特にないかな。転生直後なら確かに喜んだだろうが今の俺にとっては原作のあいつもこの世界線のあいつもどちらも本物だってことだ。」
≪そうか…じゃあ儂もお暇するとしよう。≫
「ああ、ではさようなら。」
そう言って神様も消えた。俺の不思議な夢は終わりを迎えた。
・・・・
オレは目を覚まし、顔を洗う。何か長い夢を見ていた気がする。ふと端末を操作する。自分のクラスポイントがどうなっているか唐突に気になったからだ。確認してみるとポイントは少ないものの自分たちがCクラスに上がったこと確認できた。
本当に元の世界に戻って来たんだな。
あの夢のような他世界のことを考えておきたいが、今日は平日であるためにオレは学校へ向かうことにした。
「あら綾小路君、変な偶然ね。」
「堀北か。」
奇遇なことに堀北と会ったので、共に向かうことにした。
改めて堀北を見る。他の世界ではオレと恋人関係になる可能性もあるのだな……
「何?」
「あぁいや別に何もない。」
堀北の顔を見すぎたせいか怪訝な表情をされた。この世界ではただの隣人だからな。
「なあ堀北。」
「なにかしら?」
「もしもAクラスになるために本気を出すから彼女になってほしいといったらどうする?」
つい聞いてしまった。堀北の性格として頷くとは思わないが、どのような回答をするか気になった。
「……却下するわ。それであなたが本気になるとは思わないし、それにあなたもそういう欲なんてないでしょ?」
「酷いいいようだが、オレにも人並にあるぞ。」
「だったら猶更却下よ。せめて何かしらの実績をだしなさい。」
「ああ、わかったそれなりにがんばってみるよ。」
「……そういうところよ。」
オレの夢の話はこれでおしまいだ。オレの学園生活はこれからも続く。せめて卒業まで平和であればいいんだがな…
あとがきみたいな
というわけで番外編後編です。
なんだか後半が雑になったような気がしますが書きたいことはかけたかなと。
本編でどのようなことがあるか期待しておいてください…まあクオリティは保証できませんが。
次回もお楽しみに
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