前回のあらすじ
事件なんてない。
以上
須藤の暴力…違うな。Cクラスのカバディ事件から数日が経過したとある日の放課後、俺はまた一人で買い物をしていた。毎度毎度愛里と一緒にいるわけじゃねえぞ。互いに一人の時間だって大切だからな。
誰かに言うわけでもない語りを考えながら歩いているとどこからか叫び声が上がった。元気な奴がいるものだと思い帰路につこうとしたが、叫んでいたであろう人が『雫様の----』なんてしゃべっていたのが聞こえた。
うん?今雫と言ったか?もしかすると今の声は原作でいうところの愛里のストーカーの声なのでは?俺はそう思い声のしたところに向かったのである。
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「雫様のブログ、今日も更新されてますぞ。」
「雫様は今日もかわいらしいな。」
「昔から変わらぬ可愛さもありながら、新たな美しさも手にいれておりますな。」
「ヒョエーーー。」
…うん、あのー、そこそこ地獄じゃね?一人だと思っていたら四人もいたよ。みんなして各々の携帯で愛里がやっているであろう自撮りブログを見てみんなして狂喜乱舞ですよ。あと最後の人は某オタク勇者のウ〇娘みたいな反応するのね?
「最近の雫様は、今まで以上に輝いておられますな。」
「そうだな。なんというか幸せいっぱいって感じがするな。」
「然り、この輝き、ダイヤモンドの如く。」
「ヒョエーーー。」
…まあ、ここで聞き耳を立てているわけだが、別にストーカーというわけではなさそうだ。それがわかっただけでも一安心かな。あと四番目の奴はそれしか言えんのか。
まあ、無害だとわかればここにいる理由はないな。早く帰るとするか。
「しかし…この定期的に写る、この男と思わしき黒髪はいったい誰であるか…」
…俺の足が止まった。そういや愛里って時折俺の近くで自撮りをやっていたことがあったが、もしかして俺の顔を写さないように写真に収めていたというのか!?
俺は音を出さないように自分の端末で検索すると確かに俺の顔は写ってないが俺の後ろ姿とか手とか髪だけとか写っていた。
「3号、何か情報は?」
「ふむ、恐らくその男は、雫様の幼馴染であるな。」
「ヒョエ?」
「…3号、情報の詳細を。」
「『黒凪絢都』雫様と同じクラスで席は隣、離れ離れだったのか、ここで再会をしたのちすぐさま、愛の告白をしたという現在一年の間で伝説と称され続けている男である。」
「っ!?」「なんだと!?」「ヒョエーーー!?!?!??」
なんでそこまで知っているんだよあの3号と呼ばれたあいつはよ。いやそこまで一年の間で言われているのなら、生徒を相手にしているスタッフが気づくのは当たり前か。しかしここまでくるとなんだか嫌な予感がするな…
「つまり、雫様にはもう心に決めた男がいたのか!!」
「なんということだ!!おのれ黒凪いいいいい!!」
「如何する?処す?処しますか?」
「天誅。」
はい予感的中でございますね。ただ標的は俺か…まあ、愛里が狙われないだけマシだと考えるべきか…いやよくねえな。俺が危機的状況にさらされているんだからな。四番目の奴も『天誅』なんて言い始めたし…さてどうしましょうかねえこれ。
「やめんか!!お前ら!!」
「「「「た、隊長!?」」」」
おいおいおい、一人増えたぞ。
ん?今、隊長と呼ばれたオッサンもしかして原作で愛里にストーカーしてたオッサンじゃね?アニメ版の顔と同じだし。
「お前らがやろうとしていることは、ファンとしていけないことだ!」
「し、しかし隊長。その…すぐに現実を受け入れられませんよ。」
「隊長だって雫様と付き合ってみたいとか思ったことはあるでしょう?」
「うぐっ。」
隊長の注意に対して、二名ほど反論しているが、さて隊長さん。どう切り抜けるのだ?
「…確かにそういう妄想をしたことはあるさ。でもそれは自分の頭の中だけに留めるものだ!それを現実のものには大抵できないのだ。」
「隊長殿…」
「ひょえぇ。」
…一応考えたことはあったんだな。しかし、妄想は大抵現実にできないものか…そう考えると俺は転生前から佐倉愛里と恋人関係なりたいと考えていたのだからかなりの幸運なのかもしれないな。
「それに俺たちは、雫様の写真に活力をもらい毎日生きてきた。そんな昔から応援してきたアイドル様が、自分の幸せをようやく掴めたんだ。……俺たちのやるべきことは、自分の嫉妬心を内に隠してしっかりと祝福するべきなんだ。」
「た、隊長うううう。」
「俺たちが間違ってました。」
「雫様が幸せならそれで良し。その心を忘れぬようにします。」
「ヒョエーーー。」
…解決したのかな?まあ、この調子ならストーカー事件も起こらないだろう。
「よしお前らいつもの行くぞ。」
「「「「はい。」」」」
うん?いつものって何だ?
「「「「「我ら雫様の親衛隊、雫様の笑顔が我らが幸せなり。」」」」」
…うん、聞かなくてもよかったかもしれないな。もう帰るとするか。ストーカー事件編も終了かな。
「さて、さっきからそこに隠れている学生さん、俺たちは不審者ではないから出てきてくれないか?」
…なんでバレてんの?櫛田の時もそうだったがこの世界線の住人は、気配察知の能力に長けているのか。
考えてもしょうがないので俺は大人しく親衛隊の前にでるしかなかった。
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「さっきは怖い思いをさせて申し訳なかったね。コーヒーはいるかい?」
「あっはいいただきます。」
…なんで俺は、ここにいるのだろうな。この場に出てきたときに隊長の人に庇われる形になったから隊員四人とは向かい合うことになったわけだが…本当に大丈夫だよな?
「き、君が黒凪君か?」
「あっはいそうです…」
「そ、そうか…うむ。」
「だ、大丈夫であります。嫉妬心は呑み込みましたので。」
「ヒョエェ。」
「あっはい。」
さっきまでのやり取りを聞かれていたからなのか随分と大人しくなったというか、勢いがなくなるというか…というか四番目はもうそれしか言わないのな。
「というか俺が見ていたのもあれだが、なんで俺をこの場に呼んだの?」
「うむ、それはだな、ここにいる雫様親衛隊たる我らが安全で健全なファンであることを証明するためだよ。」
「…さっきまで俺を処そうとしてた奴が健全なのかな…」
「うぐっ、さっきのはその…本当に申し訳なかった。」
そう言って隊員たちは、俺に土下座をした。あの止めて貰っていいですかね…さっき気が付いたんだが、ここにも監視カメラがあるんだが、大人四人が学生一人に対して土下座しているというわけわからん状況が撮られているわけなんよ。これを映像として見たものは何を思うだろうか…
「……まあ実害が出たわけじゃないので別に構いませんよ。」
「っ!ありがとう、本当にありがとう。」
「こういう優しさがある奴がハートを射止められるんだな。」
「こういうのを今の流行り的に愛が大きいというのであろうな。」
「ヒョエーーー。」
…いろいろと言ってるが愛が大きいなんて流行りじゃないと思うぞ。まさか平田の愛理論が職員まで届いたというのか?
平田洋介…恐ろしい奴かも……
「まあ、安全なファンであることはわかったから俺は、この辺で帰るとするよ。」
「黒凪殿待ってはいただけないか?」
「えっ?なんです?」
ようやく解散かと思いきや隊員に声をかけられる。もう用件なんてないと思うんだがな…
「あのー……お願いがあるのですが…」
「はあ、いったいなんですかねぇ。」
隊員のほうに向き直るとゴマすりの手つきで申してきた。これはもしかして…
「もしも可能であるのならば雫様を一度だけ、生でご拝見したいのですが…」
「やっぱりか。」
「おい!?お前何を言っている!」
まあ、予想はしていたけどな。隊長さんは叱責しているがこの人も内心連れて来てほしいんだろうな…
「そんなことをしたら雫様にも黒凪君にもご迷惑だろうが。」
「でも隊長も生の雫様をみたいんでしょう?」
「それは……………だとしてもダメだ。」
「随分と悩んだな。」
悩んだにしても欲望を口にしなかったのはだいぶ大人だと思うけどな。こんな人が原作だと普通にストーカーやっているんだものな。この世界線の変化は斜め上であれど、良い方向には行ってるとは思う。
だからこそなのか、願いを叶えてあげようかと思ってしまった。
「…あい…雫本人が了承したらな。」
「お、おおおおおおありがとう黒凪君、いや黒凪閣下!」
「今日は記念日だ。」
「これから雫様と黒凪様を推していくことを心に決めましたぞ。」
「ヒョエーーー。」
隊員四人の狂喜乱舞っぷりがすごいなぁ。というかもう帰ってもいいですか?
「おい、お前ら、少しくらい落ち着け。」
「よしみんなで胴上げするぞ!!」
「「おー」」「ヒョエー。」
「はっ?いやそれは必要な…」
「「「「そーれ、ワッショイ、ワッショイ…」」」」
「えー。」
俺が遠慮というか拒む前に胴上げが始まってしまった…どうすんのよこれ。
胴上げされながら考えるのは…この映像を見ることになるかもしれない警備員とか何を思うのだろうと酷くどうでもいいことであった。
しかし、どうしてこうなった…
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「ということが本日の出来事なんですよ。」
「そんなことがあったんだね。」
時間は流れて夜になり、俺の部屋で愛里とご飯を食べながら、今日の出来事を最初から最後まで報告したのである。
「あんな事を勝手に言ってしまったのは申し訳ないと思う。」
「うーん。ファンに直接会うのかぁ…」
「いやならそう言ってくれて構わない。次にその親衛隊とやらに会ったときに言っておくから。」
「でも会うくらいならいいかなって思っているよ。何かあったら絢都が守ってくれるんでしょ?」
「あぁ、それはもちろんだ。」
「それなら…明日にでも行こっか。」
「ああ、わかった明日だな。」
「でも、どうして絢都自身は、了承したの?」
「それは…」
そう問われると解答に困るな…俺の内心を言ったところでどうしようも無いわけだし、信用してもらえるかもわからない、だからこそ俺は…
「少しばかり自慢したかったのかもな…」
誤魔化すしかなかった。これ以外の納得して貰える答えが見つからないから。
「そうなんだ…絢都って意外と腹黒系になっちゃった?」
「どうだろうな、あと割引券とかも貰えないかなとかは考えた。」
「じゃあもし割引券とか貰えたら私が使っていい?」
「ああ、構わんとも、」
「あと、これから一週間は、私の言うことを聞いてね。勝手に約束しちゃったわけだし。」
「…仰せの通りにお嬢様。」
今回のこの出来事は確かに俺のエゴみたいなものだからな。愛里のワガママにもしっかりと付き合うか。
「お、お嬢様なんて///そうやって絢都はいろんな言葉や行動で私を喜ばせるんだから///」
俺のお嬢様発言に頬を真っ赤に染めてしまった愛里。
うーん…ちょっとチョロくない?
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時は流れて次の日の放課後となり、昨日親衛隊と遭遇した場所に行くと昨日と同様に集まっていたので了承をとれたことを報告するとみんな涙を流し、土下座をして感謝してきたんだが…まだ愛里来てないのにこの状態は大丈夫か?本人を目の前にしたらどうなることやら。
「昨日の今日で了承がとれるとはな。」
「俺もオッケーしてくるとは思わなかったですけどね。」
隊員が今か今かと待ちわびているなか俺は、隊長と話していた。
「なにか、お礼をしたいんだがな…ポイントだと足がつくしな。」
「その言い方するとなにか犯罪的な感じがしますよ。」
「おっとそうか、まあなにか電化製品で困っていることがあったら言ってくれや。」
「ありがとうございます。何かあったら、頼りにさせてもらいます。
ほんとこの世界線だと、光サイドなファンになったなぁ。いったい何があってこうなったのだろうか。
そして俺の端末に愛里から『準備できたよ。』との連絡が入った。
「あっ準備できたみたいですよ。」
「おっそうか、お前ら、雫様が来るってよ。」
「「「はい!!」」」「ひょい!!」
「いいか、興奮してさわりに行こうとするなよ。」
「「「はい!!」」」「ひょい!!」
…大丈夫なんだと思うんだけどなぁ…少しばかり不安だなあ。あと四号さんはもうずっとそのスタイルでいくのね。
「みんな初めまして、雫です。応援ありがとうね♪」
「「「「…っ!?!!??!」」」」
愛里がグラビアアイドルの『雫』としてみんなの前に登場した。俺も雫という状態を生で見るのは初めてかもしれない。ただ、隊員四人がずっと沈黙してるのが気になる。狂喜乱舞で奇声でもあげるものかと思っていたんだがな。
「うおっ雫様、こんな日が来るとは夢にも思わず…おい、お前ら?何か反応したらどうだ?」
流石に俺も無反応のが気になったので隊員の一人の顔の前で手を振ってみたり肩を揺らしてみたりする。しかしそれでも無反応である。
「えっ?タヒんでる?」
まさかの無反応の正体は、アイドルの登場によるキャパオーバーでの昇天というものだった。俺も隊長もなんなら愛里までもが隊員たちを復帰させるのにあれこれした。
「いやーまさか生で見れるとは思わなかったので。」
「ホントに飛びましたな。」
「あの世の花畑は美しかったですな。」
「ヒョエーーー。」
「あ、あはは…」
なんとか意識を取り戻していつもの調子になった隊員たち、一方自分の登場だけで意識がとんだ人らをどう相手したらいいか困惑する愛里、一応俺は、愛里と隊員たちの間に入れる状態で横に待機しているが、別に必要ないかもしれない。
「し、雫様。俺、いや私と握手をしてください。」
「えっ?あっはい。」
いの一番に行動したのは隊長である。握手として出した右手は、タクシー運転手がつけるような白い手袋がつけられていた。雫様を汚さないための処置なのだろうか。
「では私にも握手を。」
「では私にはこの端末の裏にサインでも…」
「わ、私にはウィンクをお願い致します。」
「ひょ、色紙にサインお願いします。」
「えっと…順番にね。」
隊長が動いたことにより、隊員たちもこぞって行動した。というか四号さん普通に喋れるのな。
そうして愛里は、それぞれのリクエストに応えていくのであった。
「いやー、今日この日をいつまでも忘れないでござるな。」
「そうですな。もう悔いはないですな。」
「ではあの花畑にでも行きますかな。」
「ヒョエー。」
「…大丈夫ですか?あの人ら。」
「あぁ、問題ないとだと思いたいが…」
本当に大丈夫ですかねぇ。俺いやですからね明日とかに彼らが救急搬送されるとか。
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「みんな、話を聞いてくれる?」
一通り隊員たちのリクエストを聞き、もうお開きになるかと思っていたタイミングで愛里からの声掛けがあった。
「なんですかな。雫様。」
「我々にご用向きが?」
「なんでも仰ってくださいな。」
「ヒョエー。」
隊員たちは、握手やサインをしてもらったからとても上機嫌であり、今ならなにか要求しても了承してもらえそうな雰囲気ではあるが…何を言うつもりだ愛里?
「私はね…ここにいる絢都と付き合っているの。」
そう言って愛里は、俺に抱きついてきた。隊員たちの空気が凍った気がする。
「私はね…アイドルをやる前から、絢都のことがずっと好きだったの。三年間離れ離れになって最近になって再会できて、今がとても幸せなの。だからみんなのガチ恋には応えられないけど…それでも応援してくれる?」
「そ、それは…」
「「……」」
「ヒョエェ。」
大好きなアイドルからの問いかけに隊員たちは戸惑う。愛里もとんでもないことを聞いてるような気がする。
「何を言っているんです、雫様。俺たちはあなたの笑顔に元気貰っていたんですよ。あなたが黒凪様と共に歩むことが笑顔で入れることならば、俺たちは全身全霊で応援するだけですよ。なあ、お前ら?」
「ッ!!そうですな。」
「隊長の言う通りですぞ。」
「困惑はあれど、我らが雫様を思う気持ちは変わらぬ。」
「ひょえええ。」
困惑していたところに隊長の一声でみんなが肯定する。たださりげなく俺も様づけされてね?
「ありがとうみんな。もし絢都になにかしたら…ユルサナイカラネ。」
「「「「「はいっ!!」」」」」
愛里の脅し?にみんなして直立して返事する。
いろいろとあったが、これにて愛里のストーカー事件編もおわりだろうな。
「よーしこうなったら、二人を祝って黒凪様を胴上げするぞ。」
「それ必要か?」
「さあさ、黒凪様遠慮なさらず。」
「いや遠慮をしているわけではないが、雫にはやらないんだな。」
「我々が雫様に触れるなど恐れ多い。アイドルに触れるのは握手会のみですぞ。」
「そういうのはきっちりしている…のか?」
「ヒョエ、ヒョエーーー、ヒョエ!」
「お前は、普通に喋れ!!」
またもや胴上げが始まろうとしてる俺は、とりあえず隊長に助けを求めることにした。
「あの隊長さんなんとかしてくれませんかね?」
「安心しろ、俺が受け止めてやる。怪我なんてさせないからな。」
「あっそういうことではなくてですね…」
「絢都、頑張れ。」
「愛里さんや、何をどう頑張れと?」
そうしてまたあれよあれよと隊員たちの胴上げが始まった。二度もいらんのだよ。
事件にはならなかったとはいえなんだこの状況は?
四人の大人は、一人の学生を胴上げして、もう一人いる大人は、腕組みして頷いているし、その学生の恋人は、ただ微笑む。
ねえ、もう一回聞くけどなんなのこの状況は?
胴上げされながら俺は空に向かって呟いた。
「どうしてこうなった…」
あとがきに願いを
これで原作2巻の内容は、ほぼ終了ですね。次回は少しオリジナルの日常回になるかな。
それと原作2巻は3話で終わるとまえに言った気がしますがネタが思いついたのでもう一、二話追加するかもしれません。
年内になんとか間に合いましたね。
それではみなさんよいお年を。
そして次回もお楽しみに。
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