前回のあらすじ
試験始まるよー
以上
夜が明け特別試験の一日目となった今日。もうすぐ8時を迎える朝。俺はある意味異色かもしれない集まりの中にいた。
「それで池君は篠原さんとどんな愛を育んでいるんだい?」
「ぶっ!?ひ、平田俺!?は、さつk…いや篠原とはそんな…」
「こういう時は素直なのが美徳だよ池君。名前で呼び合えるほど仲良くなれたんだね。」
「いやまあ…そうだけど…」
「諦めろ寛治。平田は止めらねえよ。」
「そういう須藤君はどうなんだい?小野寺さんとは上手く行っているのかい?」
「んなっ!?い、今俺の話題はいいだろ!今は寛治のほうだろう?」
「大丈夫だよ。池君の愛も須藤君の愛も僕は聞いて理解してもっと愛を深めたいんだ。」
「…黒凪。」
「なんだよ須藤?」
「なんとかならねえか?」
「俺にどうしろと?」
平田に池に須藤という集まりで朝食をとっていた。主に平田が池や須藤に恋の進捗を聞いて他の人の愛の形を理解しようしている。須藤に助けを求められたがどうにもできないのが現状だ。というか平田をどうにかするなんて不可能だろう。
「ところで黒凪くんは、ここ最近だと佐倉さんといつ愛の旅行をしたんだい?」
「デートなら無人島試験の隙間時間にやってたな。」
「あれ、この船ではやってないのかい?」
「俺が一昨日までバタンキューでしたのでねえ。そんで復活したと思ったらこの試験だ。さっさと終わらせたいものだよ。」
今度は俺のほうにもきたが普通に返答する。なんだかんだ平田の扱いには慣れたつもりだ。なのでこの辺で平田の勢いをなくすことにする。
「ところで平田。お前は軽井沢とキスの一つくらいしたのか?」
「えっ。」
思考停止したな。静寂が訪れちゃったよ。早く再起動してくれませんかね。
「な、ななななな何を言ってるんだい黒凪君////!?きききき、キスは確かに愛の一つの在り方でもあり証明方法でもあるけれどそそそんな軽々しく一つくらいなんて…今のは恵の苗字の『軽井沢』と『軽々しく』をかけたつもりはないからね!?だ、だいたい僕がよくても恵がよくなかったらそれは愛とは呼べないし、ただの欲望の背負わせになるんだからそう簡単に…」
「相変わらずすげぇ喋るな。」
「こ、こんなにうろたえてる平田は始めて見るかも…」
「お、俺も…」
いつもは愛がどうとか言い続けている平田だが、こと自分の恋愛ごとになると一気に弱体化するような気がするな。ほら、恋愛だって一つの「愛」だろ?お前にもちゃんと愛があるって一種の証明になるじゃないか。何を慌てる必要があるのかね?
「だ、だいたい黒凪君は佐倉にしたことはあるのかい?」
「えっあるよ。」
「えっ。」
「口づけ、接吻、キス…まあ言い方はなんでもいいが何度かやってはいるな。」
「「「えっ」」」
みんなの見てないところでそういうことはやっていることを説明しておく。ほんとはそれ以上のこともやったが…聞かれたのはキスの有無なのでキスだけを答えておく。三人とも固まっちまったよ。
「そ、そうか進んでるんだな。」
「やっぱ伝説に勝てねえな。」
「伝説やめろ須藤。で平田はどうなの?」
「うぐっ。」
反撃は忘れない。ここで平田に聞いておかないとこいつは逃げるだろうからな。
「え、えーと…僕も一度だけしたよ。」
「「おー。」」
「なんだその賑やかしは。」
「僕だって勇気を出してき、キスをしたんだ…髪に…」
「「あー。」」
「なんだお前らの落胆は…というか平田はあれだな、自身の恋愛には奥手になるのな。」
「うぐっ。返す言葉も愛もないよ。」
「いや愛は今じゃないだろ。」
朝から何を話しているんだと考えてしまうが、こういうの話題も謎の盛り上がりも高校生特有のものだろうとを思う。チラッと端末を見ると、7時59分になっていたもうすぐメールが届くのだな。
キーン
そう思うや否や端末から甲高い音が鳴り響いた。まあみんながどんな状況であれ、気づくための措置だと思うがやかましいな。そんなことを考えながら届いたメールを確認する。
『厳正な審査の結果、あなたは優待者にえらばれませんでした。
…まあ、頑張れ。』
とまあこんなメールが届いていたわけだが…軽いなおい。もっと何か格式ばった言い方があるでしょうよ。
「どうだったみんな?」
「俺は違うってさ。」
「俺もだ。」
「俺も違うみたいだ。」
「黒凪君。」
「今情報収集している。」
会話しながら俺はクラスのグループチャットに優待者の人に個人メッセージで名乗って欲しいと書き込んだ。すると一分もたたぬうちに櫛田と軽井沢ともう一人の子からメッセージが届いた。こういう時にちゃんと連絡が来るんだから連携はできてるんだよな。
「黒凪君、君の手に入れた情報は君の戦術で使ってほしい。そこに愛があればなお良いからね。」
「愛の戦術がどうなるかは分からないが…まあやるだけやるさ。」
───────────────────────
そう言って別れてもうすぐ一回目の話し合いなわけだがどうしたものかねぇ。特段戦術を思いついたわけでもなく、ただボーっと過ごしていた。どうも俺は本調子じゃないような気がする。
というよりもこの試験はやる気が起きてない。無人島試験で頑張ったからなのか、終わってから体調を崩して愛里とデートが出来なかったからなのか、どうもこの試験へのモチベーションが低い。
答えも知っているようなものだからな……
よし、もうこの試験は今日で終わらせるように立ち回ろう。となるとみんなに損のない立ち回りにしないといけないからな。そう考えると結果1を目指したいところだが、高円寺がそれに協力してくれるとも限らないし、なにより一日二時間の拘束時間が面倒だ。ならば結果3でなんとかしよう。互いに指名しあうように仕向ければ、クラスポイントは増えないがプライベートポイントならそれで増えるんだから文句は出ないだろう…多分。
そうと決まれば何を話すかを考えておくべきか…いやどうとでもなるか。
「ククッ随分と遅いじゃねえか。女と離れ離れはつらいか?」
俺が部屋に到着すると龍園が不敵な笑みを浮かべながら俺にそんなことを聞いてきやがった。なんだかこの世界の龍園は俺が相手だと生き生きとしてるね。
「まあそんなところだよ。お前も出来たらわかるんじゃないかな。椎名とかが相手でどうよ。」
「…人選に悪意を感じる奴を選びやがったな。」
龍園なら椎名さんとうまくやれると思いますよ。ただ気を付けないと股間に辞書が飛んでくるだけで。
どうやら俺が最後らしい。櫛田と堀北は首輪の攻防戦を繰り広げているし、平田はこれも愛かなと訝しんでいるし、神崎は一之瀬のいない解放感に打ち震えているし、葛城は誰かに電話している。まあお兄ちゃんという単語が出てきている以上、相手は坂柳だろう。
これがこの学年の代表格か…ただただ混沌としているだけだな。
そんなことを考えていると「これより一回目の話し合いになります。」という放送が入った。俺も空いている席についた。
「さてどうするべきか。」
「まずは自己紹介だね。」
「ククッ今更だな。」
櫛田の提案に龍園が呟いたが俺もそう思う。ただ面と向かって名乗りあったわけでもない人もいる以上改めてするべきだろう。
「じゃあまず私からだね。私は櫛田桔梗って言います。好きなものは可愛い女の子。首輪をして写真を撮らせてくれるとなおいい。首輪をつけたくなったらいつでも私に言ってね♪」
誰が性癖暴露しろと言ったよ。他のクラス女子が反応に困っているじゃないか。
「それじゃあ次は僕の番かな。僕は平田洋介。好きなものは愛だね。友愛でも博愛でもありとあらゆる愛が好きかな。見るのも自ら育むのも好きだね。みんなも愛を大切に過ごしてほしいんだ。」
もはや教祖だなって思えてきた今日この頃。他のクラスの女子たちは平田のイケメンにやられて拍手しているが男子どもは、苦笑いが大半である。
「…堀北鈴音よ。よろしく。」
「堀北さん、もう一声。」
簡素にすませた堀北の自己紹介に櫛田が待ったをかける。いやもう一声ってなんだよ。自己紹介で聞いたことないわ。
「えっ、えーっと…好きなのものは…読書…かしら?」
「もう一声!」
「もういいだろ。」
櫛田は何を言わせたかったんだろうか…ただただ堀北の声でも聞きたかったなんて理由さえもありえそうな気がする。
「じゃあ次は俺か。」
「あっ黒凪君は最後にしてほしいかな。」
「えっ?四月の件みたいにまたすんの?」
「黒凪君は僕以上に大きな愛を持っているからね。」
「いや、今愛は関係ないだろ。」
「関係あるとも、だってこの試験はどうやっても愛を分けるかの試験でしょ?」
「優待者を当てる試験なんだよ!!……まあいい俺が最後でいいよ。」
結局、平田の言う流れに身を任せてしまったがもういいや。そして龍園はこれ見よがしにニヤニヤしてやがる。
「ハッ苦労してんだなお前も。」
「うるせぇ。お前は自分のところのリベリオンを何とかしとけ。」
ある意味では龍園も俺と同類なのかもな。クラスメイトに苦労しているという点では。まあ俺の場合、制御とか考えてないし、協力もしてくれるから龍園よりはマシか。
「俺は龍園翔だ。」
「えっ?それだけかい?」
「あっ?」
「好きなもののひとつくらい言っておかないと自己紹介とは言わないよね♪」
「はっ?」
自己紹介って最低限、名前だけでいいと思うんだがな…平田と櫛田の発言に目がテンになっているぞ。
「…好きなものは…筋トレだ。」
「なんか無難だね。」
「自分を更なる高みへ上るための愛だね。追い込み過ぎには注意だね。」
「おいこいつらどうにかしろ黒凪。」
「俺に頼るな。」
どうにかできるわけないだろうが。しかし、好きなものは暴力とか言うかと思っていたんだがな…もしかしてそう言ったら平田に何か言われることを予見したのか。すげーな龍園。
…そしてCクラスの他の自己紹介が終わり。
「次は俺か…神崎隆二だ。好きなものは…一人で過ごす穏やかな時間だ。」
「あーBクラスって元気な子いっぱいいるもんね。」
「自己愛を確かめる時間は確かに必要だね。だけどそのために他からの愛を蔑ろにしてはいけないよ。」
「あっああ…」
なんというか…ごめんな神崎。うちの奴らが茶々いれて。というか君ら二人は全員に一言コメントをいれるのか。
…そしてAクラスの番となり。
「葛城康平だ。好きなものはもちろん妹だ。有栖もそうだが外に本当の妹がいる。どちらも好きだ。いや有栖も本当の妹のように思っている。」
「妹想いなんだね。ちょっと坂柳さんにおめ…」
「他クラスにも君みたいな愛の持ち主がいたことに僕は安心したよ。」
「そ、そうか。俺にもちゃんと愛があるんだな…」
まあここの葛城の好きなものはわかりきっていたようなものだな。櫛田よ何を言おうとした?お目通りか?首輪をつけてくれる相手を貪欲に探しているんだな。
平田と葛城はなんか分かり合えたみたいだなというかここの平田ならAクラスでもうまくやっていけそうだな。家族愛というか兄妹愛、姉妹愛のあるクラスだからな…
そんなこんなで俺以外の自己紹介が終わり俺の番が回ってきたわけだが…ホントに俺が最後である必要あった?まあ考えても仕方ないか…
「俺の名前は黒凪絢都だ。好きなものは…彼女の愛里だな。」
「流石黒凪君。わかってるね。」
「わかってるってなんだ平田。」
「嫁じゃねえのか?」
「それは…数年後の話だ龍園。」
「それは…おめでとうでいいのか?」
「まだはえーよ神崎。」
「流石伝説の男だ。」
「なあ葛城、Aクラスは俺のことをまだそう呼んでいるのか。」
俺の自己紹介での発言が盛り上がってしまったせいで落ち着きを取り戻すまで十分少々かかったことをここに記しておく。
───────────────────────
落ち着きは取り戻したはいいがもう俺は疲れました。なので本当に今日で終わらせようと思うわけだがさてどうしたものか…
「・・・・・・・・」
早く終わらせるなら、結果3なわけだがこのグループの場合櫛田なわけだから狙ってもらわなきゃだめだしな…
「・・・・・・」
あえて結果3を狙いに行く以上誰かに指名してもらうわけだからな…
「・・・・・」
裏切り行為になってしまうような気がするから自他のクラスが納得するような説明ができるならいいが。
「・・・・・おーい。」
…何かしらの衝撃的な発言をして相手の思考力を少しでも奪い、こちらのペースに乗せるというのはいけるだろうか。
「おーい黒凪君?」
何かみんなの思考力を奪えるような発言なんてあるだろうか…いやまてちょうどいいのがあるじゃないか。そうとなればタイミング次第でいけるか?
「黒凪君!!」
「うおっ!?どうした平田?」
「どうしたじゃないよ黒凪君。さっきから呼んでいるのに全然返事をしないから。」
どうも俺は奇策の為に思考の海に潜り過ぎたようだ。彼らが話していたことを何一つ聞いていなかった。
「大丈夫か?黒凪。」
「無人島から戻ってすぐに体調を崩したみたいだがまだ本調子じゃなかったのか?」
「いや大丈夫だすまない考え事をしすぎた。」
葛城と神崎が心配して俺を見てくる。彼らはこの世界でも善人なんだよな。優しさが染み渡るぜ。
「大丈夫かい黒凪君?愛は足りているかい?」
「まあ愛は足りていると思う。」
平田の優しさはなんというか首を傾げたくなるものなんだよな。それでも心配してくれているということがわかるなこのイケメンめ。
「大丈夫?首輪付き女の子の写真見る?黒凪君の好きそうな…茶柱先生のあるよ。」
「なんでそのチョイスなん?」
いや愛里の写真はまだもってないとはいえそのチョイスは本当に何故だ?まあ櫛田なりの元気づけ方なんだろうな。それはそれとしてちょっとみたいな茶柱先生の首輪写真…いや撮影会のときに一緒にいたからいいか。
「ククッ女とどんな遊びをするか考えていたのか?」
「お前はそういう奴だよな。知ってた。」
いじると決めたらいじり倒すこれぞ龍園クオリティ。でもまあ優しい龍園とか気味が悪いからこいつはこのままでもいいや。
「えーっと何を話していたんだ?」
「どの結果に持っていきたいかという話をずっとしていたのよ。」
「そうか。」
「黒凪君はどう考えているの?結果はどうしたいの?」
堀北からの問いに俺なりの持論をぶつけるとしよう。隙があればそこで奇策を発動したいが…
「まあ、持っていくとしたら結果1か3だろうな。全グループで1になれば各クラスのプライベートポイントが合計で二千万にも届くからな。ただこれは最難関の結果だ。各クラスでの協力と牽制しあわないともっていくのなんて不可能だ。
次に結果3だが優待者は各クラス三人ずついるはずだと俺は踏んでいる。ならば何かしらの法則あるだろうと思う。この試験のテーマが『シンキング』である以上そういうのがあって然るべきだと思う。その法則を見つけて各クラスの優待者をあてて自クラスの防衛に成功したら理論上この試験で600cptは稼げるからな。
まあどっちを目指すにしても、難しいのは確かだが。」
長々と語ったがどちらにせよ難しいということだ。まあ結果3は法則さえ知れば簡単なものだが。
「どちらも理想論ではあるな。」
「それはそうだがな葛城、結果3ならどうとでもなるだろう。」
「優待者を当てるか…出来るのか?」
「自分のクラスの優待者が誰かを聞いたら法則を推理することが始められると思うぞ神崎。」
「本当に法則なんてあるのかしら?」
「この試験のテーマは『シンキング』だよ堀北。なければ隠している人や嘘をついている人を見破るという別の力が必要になると思うぞ。」
「優待者っているのかな?」
「いやそれはいるだろ櫛田。いなかったら教師たちは何をさせたいのかわからなくなるからな。」
みんなが話を聞いてくれてはいるが奇策にはまだ足りないな。なにかもう少しきっかけがあれば。
「俺やこいつらはこのグループで優待者じゃなかった…なあ黒凪、お前のクラスに優待者がいるんじゃないか?」
なんていいパスをくれるんだ龍園は。これでいけるかもしれないな。
「ああ櫛田が優待者だぜ。」
「なるほどそうか………「「「なにいいいいいいいいいいいいいいい!??!?!?」」」
みんなが呆然としているな、これでまず掴みはいい感じかな。
さてここからが頑張りどころだ。
あとがきっていうんですよ。
というわけで暴露という奇策とった黒凪君。
もしも彼が体調を崩すことなく試験が始まるまでの期間に愛里とデートできていたらこんな策はとることなくどういう結果にするか奮闘していた道になっていたかもしれません。
次回で船上試験も終了ですね。
番外編も書き進めていますので。
次回もお楽しみに。
他ヒロインというIFルート…見たいのは?
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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軽井沢恵
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長谷部波瑠加
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椎名ひより
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伊吹澪
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一之瀬帆波
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坂柳有栖
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