前回のあらすじ
船上試験、最速終了。
以上
第32話 これは俺に起こった不思議な出来事なんですが…
豪華客船から高度育成高等学校に戻って来て数日が経過した。もう8月の中頃とはいえまだ夏休みである以上、休みを満喫するためにいろんな友人と遊んだり、愛里とデートしたり、自己鍛錬したりと充実した夏休みは遅れているとは思う。
ここ最近は、どうしてこうなったというような事件は発生してないので、心落ち着いているし、青春というもの謳歌出来てると思う。
そんなこんなで今日はまた一人で学校の敷地内をうろつきながら自販機で缶コーヒーを買ってベンチに座って休憩しつつ飲む。なんだかんだ俺は一人でいる時よく缶コーヒーを飲んでいるものだな。
「よっこいしょ。」
「?」
隣から声が聞こえたのでそちらに向くと作業着をきたおっさんが座ってきた。どこかで改修工事でもやっていたのだろうか。
「お疲れ様です。」
「おう学生君か、元気にやっているか?」
「ああはい…元気に過ごしていますよ。まあ、今は夏休みですけど。」
「おうそうか…ガハハハッこの暑さはやはり夏か!!」
「いや暑さで気づくことあります?」
声をかけたわけだが、なんというか元気というかテンション高いなあ。
「いやあこういう日は、キンキンに冷えたものを飲みたくなるな!!」
「昼間からビールはどうなんですかね…」
「いや、缶コーヒーだね。」
「缶コーヒーかい!!」
いやいやキンキンに冷えたとなる連想できるのはビールでしょうが。この人カ〇ジとか知らない感じか?
「ああ…そうだ。財布、事務所に置いてきてしまったんだったな…」
「あの…よろしければ、一杯奢りましょうか?」
「いいのかい!?いやっでもなあ…」
「まあここで会った縁ということで。」
「そうかぁ…じゃあ、いいか?」
「ええ、じゃあ買ってきます。」
買い物のための端末を忘れたみたいだし俺が奢ることにした。オッサンは俺に奢られるのは申し訳なさそうだが缶コーヒーの一本くらい気にしてない。というわけで一度立ち上がり、自販機に向かい、自分が買った物と同じコーヒーを買うのであった。
───────────────────────
「今日の出会いに乾杯!」
「随分元気ですね。」
買ってきたコーヒーを渡して一緒に飲む。なんというか不思議な休日だな今日は。
「くぅー。いいねこの冷たさ。これは罠だな!!」
「だとしたら自販機すべてが仕組まれた罠になりますね…」
本当に元気なオッサンだな。しかし…この人はどこで工事の作業をやっていたのだろうか…この辺りには、ほかに作業着を着た人を見ていないし、工事の音も聞こえてこない。少し聞いてみるか。
「そういえばオッサンは、どこの工事やっているんですか?」
「俺か?俺はこの学校の工事をやってんだ。」
「いやそうだと思うけどそうじゃねえよ。」
この学校の敷地内を工事しているという意味では正しくあるが、どの辺りを工事しているか聞いたつもりだったんだがな…まあいいや。
「いやあ、夏の暑さはいつも驚くね。」
「そうですね。なんだか毎年少しずつ、温度が上がっているような気がします。」
「君も気を付けないとぶっ倒れて、氷水を頭にかけることになるからね?」
「それは何の対処法ですかね?熱中症の対処ならもうちょっと何とかならなかった?」
愉快な発想の持ち主だな。しかしこの人は暑くないのだろうか…作業着はともかくヘルメットを外さないというのはどうなのだろうか。こういう休憩の時くらいは外しても大丈夫だと思うんだがな…いざとなったらすぐに作業に戻れるようにという職人魂か?いやこれはブラック企業的な根性にも思えるが。
「しかしあれだな。こうも暑いと食欲なくなるよな。」
「そうですね。ですけど食べないと元気も出ませんからね。」
「そうだな…こうも暑いとアレを食べたくなるな。」
「どれです?」
「ほらあれだよ…麺類でさ。」
「…そうめんとか冷やし中華ですかね?さっぱりしてますから食べたくなりますね。」
「いや鍋焼きうどん。」
「……まあ、ガッツリ食べられるなら夏バテとかの心配はなさそうですね。」
「あとあの飯もいいよな。」
「飯…冷やし茶漬けとかですかね。まあサッといけますし、手頃に作れますからね。」
「いや、石焼ビビンバ。」
「……まあ、茶漬けよりは栄養バランスもいいと思いますし、いいんじゃないでしょうか。」
「そしてそういう飯には、グイっと一杯の…」
「氷で冷えてるお茶ですね。」
「湯気が出てるお茶。」
「何で悉く熱いものしか選ばねえんだよ。」
暑さで食欲ないって言ってる奴がチョイスするような飯じゃねえよ。もう元気だよそいつ。
「いやーいつ工事終わるんだろうなぁ…」
「どうなんでしょうね。」
何処をどう工事しているかわからない以上、こんなあやふやな返事しかできない。
「そういうのって上の人から聞いてないんですか?」
「いやー聞いたことあるような、ないような…」
「随分あやふやですね。」
「そうだ。4月までに完成させるつもりだったな!」
「随分時間のかかる工事ですね。」
「そうだな…どこ工事やっているんだっけ?」
「いや知らないですよ。あなた本当に大丈夫ですか?暑さでいろいろとやられてません?」
「そうかぁ、俺は元気だぜ。」
「そうですか…ですが一度くらい病院に行っておいた方がいいんじゃないですか?」
「そうかなぁ…まあ考えとくよ。」
「えー。」
本当に大丈夫かこの人…元気には見えるけど話せば話すほどに不安になるなぁ。
「時に少年よ?」
「どうしたんです?」
「この学校は楽しいか?」
「…ええ楽しいですよ。」
「なんか間があった気がするが本当に大丈夫か?」
「いえ大丈夫です。」
いきなりの質問で少し思考停止したが、嘘なく答える。まあ混沌とした日々を送っているのは確かではあるが、いろんな出来事を楽しんでいる。
「そうか…それはよかった。ところで恋人とかはいるのか?」
「どうしたんですかいきなり。」
「そりゃあ学生が青春出来ているか気になっているわけよ。」
「まあ…いますけど。」
「おぉ!いいね!!青春してるね!!!」
「急に元気になるじゃん…」
いきなりどうした?オッサンって他人の恋路とか興味あるのか…まあそれは人それぞれか。
「俺にも女房と子供がいるんだ。まだ小せえ子供だが可愛くてしょうがねえんだ。」
「そうなんですね。幸せそうな家庭を気づけていてなによりです。」
「君にも事実だと証明するために写真をみせたいんだが…どこやったかな。」
「安心してください疑ってはいませんよ。」
「あれ……写真を財布に入れてたんだが…どこやった?」
「さっきあなたが事務所に置いてきたっていったでしょうが。」
「ああっ!!そうだった!!」
「本当に大丈夫かこのひと…」
熱中症とかそういうのじゃないけど暑さですでにやられているような気がするな。
「しかし、しばらく会えてねえんだよな。」
「まあこの隔離されたところで工事をやっているのですからね。」
「俺…この工事が終わったら結婚するんだ。」
「いやもうしているでしょうが。」
「あっ!そうだったな!!ガハハハッ。一度言ってみたかったんだ。」
「えー…」
こんな冗談を言われるとさっきまでのボケもただふざけただけなのか、本当にヤバいやつなのかわからなくなるな。
「……なあ、少年。」
「なんです?」
「一度だけ俺を『パパ』って呼んでくれないか?」
「それは嫌ですよ。今日の仕事終わりに家族に電話して息子君から呼んでもらってください。」
「いや俺の子供は娘なんだ。」
「だったらなおさらなんで呼ばせようとしたんですか。」
「寂しさが臨界突破したんでもう学生が相手でもいいかなぁって」
「その発想はよくわからない。」
もうとりあえずこの人は、仕事終わりにビデオ通話して明日に病院にでも行った方がいいんじゃないかなと思えてきた。というか外の繋がり断たれているのは、学生だけだよな?職員の人たちは大丈夫だよな?
というかこの人はいつまで休憩しているんだろうな…大分話し込んでしまったわけだが、もうそろそろ作業に戻らなくていいのかな…他の人も呼びに来るような気配もないし…もしかして忘れられてる?
「あの…そろそろ作業に戻らなくていいんですか?」
「いや…いいんだ。」
「えーっとクビになったとかそういう意味ではないですよね?」
「ガハハハッちげえな。」
「えっと…じゃあどういう意味で?」
「なに、俺の仕事が終わってもう完成していたことに気づいたんだよ。」
「はあ…」
今一つ掴めないような言い回しだな。完成してたらなんでこの人はここにいるんだ?
「そうかぁ…こんな風になったんだな…みんな和気藹々としていて…いいものを作ったな。」
「……」
なんだか周りの風景を感慨深く見ている。その表情からは誰かに対しての申し訳なさも感じ取れるし、目的を達成した安堵も感じ取れた。
「なあ少年。」
「なんでしょう?」
「ここは君にとってどう映る?いいところか?」
「そうですね…学校というのがメインではありますが、ひとたび視点を変えれば、買い物できるケヤキモールにアミューズメント施設も充実してますし、とっても楽しい所です。」
「そうか!」
「俺はまだ、数ヶ月しかいませんから全てを知っているわけではないですが、それでもここにいると飽きというのはきませんし、誰の心にも残るような場所だと思います。」
「そうか…それなら…俺は満足だ。その言葉が聞けてほんとによかったよ。」
「そうですか…」
俺の言葉にオッサンはとても満ち足りた表情をした。何かよくわからないが俺自身との雑談で求めた答えが出たのなら。それは良かったと思う。
「なあ少年。恋人を置き去りにするんじゃないぞ。オッサンとの約束だぞ。」
「それはどういう「絢都!!」愛里?」
オッサンの発言を詳しく聞こうとすると遠くから愛里が大声で俺を呼んでいた。しかし、その表情は、青く震えているように見えた。
「ねえ絢都…一体誰と話しているの?」
「誰って工事に来ていたオッサン…そういや名前聞いてません…でし…た…ね。」
愛里の質問に答えるべく愛里の方を向き、オッサンの名前を知るために横を向きなおしたが、そこに先程まで話していた人の姿はなく、俺が奢った缶コーヒーだけが置いてあった。
「あれ…さっきまでいたんだけどな…」
「い、いなかったよ!?絢都はさっきから誰もいないところに話しかけていたんだよ!?」
「えっ…そんなはずはない…と思うんだけどな…」
俺は、オッサンに奢ったはずの缶コーヒーを見た。缶コーヒーは開いているし、逆さまにして見ても一滴もおちてこなかった。さっきまでいたはずなんだけどな…でも愛里がいなかったと言っているし…俺は、誰と話していたんだろうな。
「ね、ねえ絢都。今日は帰ろうよ。」
「そ、そうだな。」
「は、はやく!はやく帰ろう。」
「わかったからそんなに引っ張らないでくれ。」
今すぐにこの場を去りたかった愛里の押し負けるようなかたちで帰ることにした。缶はとりあえず近くのゴミ箱に捨てた。
そしてその日の夜愛里は俺にくっついて寝ていた。
───────────────────────
後日談というか次の日の話なのだが。
俺は朝から茶柱先生に呼ばれて学校の職員室に向かうと一年生の担任と理事長がいた。一体なんだと思ったがやはり昨日のことだったらしい。
俺は先生たちに昨日の出来事のことを話した、そしたら先生たちは怪訝な表情をしていたからなんだなんだと思っていたら、理事長が昨日の俺の行動を映していた映像を見せてくれた。
カメラに写っていたのは、ベンチで缶コーヒーを一人飲んでいるところにいきなり俺が誰もいないはずの横側を見て、離れて缶コーヒーをもう一本買ってきてその横側に缶コーヒーを置いて、誰もいない場所に話しかけていた。
そんななか映像をよく見ると、俺が置いた缶コーヒーがひとりでに開いていた。そして数分たった後愛里が俺のところを見るなり酷く驚いて俺に声をかけ、俺がその反応した後を横をみて誰かを探しているような状態だった。
そして置いてあった缶コーヒーを逆さまにして中身が空であることを確認した後愛里に引っ張られながら帰るように写っていた。
つまりカメラには俺が認識していたはずの作業着のオッサンは最初から写ってなかったのである。
間嶋先生や坂上先生はこんなことがあるのかと驚いていたし、星之宮先生は暑さでやられて幻覚をみたと思い心配してくれていた。
茶柱先生は、俺の話を聞き、映像を見た後気を失った。倒れそうになった茶柱先生を支えたわけだが、いい匂いがしたとここに記しておく。
・
・・
・・・
さらに次の日の話なのだが、今度は理事長に呼ばれて応接室に赴くと、とある資料を見せてくれた。
それはとある作業着の男性の資料でその写真を見ると一昨日俺が話していたオッサンであった。
そこから理事長の話を聞いたのだが、なんでもこの学校を建設している時一人の作業員が熱中症で倒れそのままお亡くなりになってしまったとのことだった。
その亡くなった日が俺と話していた日で、時間帯も俺と話していた時間とのことだった。
俺はあの日の出来事をいろいろと理解できた。あの人の中では作業は終わってなかったけど俺と話してここが完成したことに気づいたこと、そしてあの人は家族に会うことなく帰らぬ人になってしまったから俺に対して恋人を置き去りにするなと発言したんだと。
俺は調べてくれた理事長に感謝をして、その場を後にして、その足で花を買いあのベンチに向かい花を置き、手を合わせた。
そして俺は部屋に帰り、部屋にいた愛里を思いっきり抱きしめた。
これが俺が体験した不思議な出来事である。
あとがきを入力
というわけでちょっとホラーな話でした。
あまり怖くはないと思いますが、それでもこういう話を楽しんでいただけたのなら幸いです。
番外編ですが…もうちょっとかかりそうです。
次回もお楽しみに。
他ヒロインというIFルート…見たいのは?
-
堀北鈴音
-
櫛田桔梗
-
軽井沢恵
-
長谷部波瑠加
-
椎名ひより
-
伊吹澪
-
一之瀬帆波
-
坂柳有栖
-
その他