愛で力は増幅しない!!
以上
「というわけです。」
「あー、なるほどね。」
体育祭がまだ遠いある日、俺は神崎から呼ばれてBクラスの教室に来たわけだが、そこにいたのは一之瀬帆波だった。どうも用向きがあるのは彼女らしいので話を聞くことにしたのだが…
「どうしたの?何かわからないことや不満でもあった?」
「いや、別に言ってることは理解しているつもりだし、不満という不満もあるわけではない。」
「?じゃあ交渉は成立ということかな?」
「あー、もうちょっとだけ待ってほしいかな。」
別に一之瀬から競技の出走表を渡せと言われたわけではないし、わざと負けて欲しいなんて要求されたわけではない。ならば何故俺はこのような渋る態度をとっているか?答えはただただ困惑しているのだこの状況に、この交渉に……
「こちらの側にも来てもいいんだから対等だと思うんだけどなぁ。」
「あぁ、まあ対等ではあるなぁ……わかったこの話を受けよう。」
「やったぁ、やっぱり黒凪君は話がわかるなぁ。」
ひとまず受けることにしたわけだが……とりあえず俺のこの行き場のないモヤモヤな困惑をどうにかしよう。
「なぁ一之瀬。この話を受けるにあたっていろいろと聞きたいことがある。」
「えっ?もう一通り話したと思うけど。」
「まあそうだなこの交渉事についておそらくすべてを聞いたであろうな…だから今から聞くのは裏話だ。」
「うん…まあいいけど…面白くないよ?」
「それでも俺の中の何かを解消できると思っているから聞かせてもらう……
何故、偵察するためのアポイントを取る交渉を行った?」
そう俺はずっとこれが第一に聞きたかった。一之瀬の今回の交渉を簡単にまとめるとこうだ。
「Dクラスの実力を見たいから数日後のこの日に偵察を行っていいですか?」
……なにがどうしてこうなった?
「いや、それはそちらに伺うのだからこうやって数日前にアポイントとるのは常識でしょ?」
「ああそうだな仕事なら先方にアポイントとることは非常に大切なことだろう。だが君がやろうとしていることは…相手のデータを秘密裏に探るための偵察だ…」
「うんそうだね……でも勝手に行くのは人としてダメだよね。」
「偵察の意味をご存知だろうか?ひそかに探ることなんだ…こんな大っぴらに『この日に行きますので心の準備をしといてください。』なんて交渉をしないんだよ。」
「でも交渉をしたうえで行ったら相手が不快な思いをしないからwin-winじゃないかな?」
「なんだろうなぁ、この育ちのいいバカは。」
「そんな黒凪君、育ちがいいだなんて…お世辞が上手なんだね。」
「半分けなしていたはずなんだがな、ものの見事に抜け落ちているな。」
ここの世界の一之瀬帆波とそう関わることもなかったから今まで何も思わなかったが、ここの一之瀬…まあまあおバカちゃんだよな?
「とりあえず今日はありがとうございました。」
「あぁどういたしまして。」
交渉事は終わったわけだし、今日はもう帰るとするか…愛里に報告してデートでもするか。
「あっ黒凪君待って。」
「どうした?」
教室から出ようとした俺を一之瀬が止める。もう用はないはずだが…
「はい。」
「…これは?」
なにか包装紙にくるまれた箱をもらった…何これ?
「なんだこれは?」
「えっ菓子折りだけど?」
「菓子折りぃ!?」
「まあ中身は私の自作なんだけど…」
「自作ぅ!?」
「Dクラスのみんなで食べてね♪もしまた欲しかったらまた作るからね。」
「あ、あぁ……」
だから偵察に行くクラスやる行動ではないんだよなぁ……やはり一之瀬帆波は育ちのいいバカである。
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「えーというわけでBクラスの生徒たちは気にせず練習するように。」
あの交渉から数日たち俺たちがグラウンドに集合していたところを遠巻きにBクラスの生徒たちは見ているのを発見した。本当に彼らが偵察に来ていたのだ。いやまああんな交渉をしたのだから来るのもわかっていたんだけど…なんだかなぁ……
ああいう交渉しておきながら結局来ないという選択をして俺たち…主に俺の精神を揺さぶるようなことをしてもよかったんじゃないかとも考えてしまう。そんなことをやられてもこれも戦術の一つと割り切ることもできたであろう。だけどBクラスは一之瀬との交渉で指定した今日の日に偵察にやってきた。
なんというか…真面目というべきか…ただ堂々と見ているわけでなく、建物の影とかから覗き見しているような状態だ…偵察という形はちゃんと取っているのをみると本当にあの交渉は必要だったのかなんて思うが…
「絢都君…あの人たちは……」
「ほっとくんだ洋介、それもまた愛だ。」
「なるほど。適度な放置も愛なんだね。」
やはり気になるのは仕方ないとして…平田は本当にちょろいな……俺だからこんなに簡単に話を聞いてくれてるのだろうか……なんとなくだがこの世界の綾小路が同じことを言っても平田は納得しないだろう。
「では…各々好きなように運動してくれ。」
俺の言葉で一人で走るもの、二人三脚の練習をするもの、みんなが体育祭に向けて練習を始める。まあ多少Bクラスの偵察も気にはなるが運動を始めたらそちらのことなど気にもしなくなるだろう。
「なあ黒凪!」
「どうした須藤?」
「ニニンサンキャクってどこ結んで走ればいいんだ?」
「脚だよ。」
いきなりアホなことを聞くんじゃないよ須藤君。もしや二人三脚をご存知ではない!?いや茶柱先生の説明の時の資料にも書いてあったでしょうが……あれが読めなかったのか?
「そうか、ペアと肩組んで走ればいいってわけじゃないんだな。」
「それだと四脚のままだからな。」
本当に知らないみたいな感じだな…須藤のいた中学校では二人三脚はなかったのかもしれないな。
「よっしゃありがとな黒凪、頑張ってくるわ。」
「おういってらっしゃい。」
そう言って須藤は池のところに行き足を結んで……池を地面から浮かせて走り始めた……いやルール上問題はないんだけどさぁ…もはやただの徒競走なんだよなぁ。まああれで勝てるのならいいか。
「きゃっ。」
「うん?」
小さな悲鳴の方を振り向くと堀北が転んだ様子だった。堀北の近くに綾小路がいて足を結んでいることから男女での二人三脚の練習なのだろうが…また綾小路がなにかやらかしたか?
「大丈夫か堀北?」
「え、ええなんとかね。けがはないから問題ないわ。」
「本当に問題ないの堀北さん?」
「えぇ大丈夫だからいきなり現れないで頂戴櫛田さん。」
俺の後ろからひょこっと現れた櫛田が救急箱を持っていた…堀北のことになると行動が早いな。
「それでも私に見せて欲しいかな。もし私のそz…アイドルな堀北さんに傷が出来たら……」
「今素材って言いかけたな。」
相変わらず欲望が駄々洩れな櫛田である。この世界の堀北と櫛田の問題はいつ頃解決できるのだろうか…
「と、ともかく保健室に行くから。」
「あっ待って堀北さん私もついていくよ?」
「いいわ一人でいけるから……それじゃあ。」
「あっ待って堀北さん。」
堀北は自分の足に結ばれていた布を外して猛ダッシュで保健室に向かった。それを櫛田は負けじと猛ダッシュで後を追った……ぽつんと残った俺と綾小路。
「で?お前は今回何をやらかしたんだ?」
「やらかしたって……なんだろう、オレと決めつけるのやめてもらってよろしいですか?」
「普段の行いがひどいものかご存知ないですかね?」
どこぞの論破してくる人のまねをしているっぽいがそこまで似てねえよ。
「じゃあ何があったんだよ?」
「ただ二人三脚の練習をしていただけだぞ。」
「まあそれはそうなんだろうけどなぁ……」
たしかに二人三脚は息が合わなかったり勝つために速度上げた時に転んだりはするだろう。ただ綾小路がなにもやらかしてないのはこの世界線的におかしいはずだ。
「ちなみに掛け声はどうしていたんだ?」
「1と2しか言ってないが?」
「……同じ数字を連続で言ったりとか…」
「していないな。」
「そうか……」
ほな違うか…綾小路でも真面目になる時はあるんだな。
「ただ真面目にやるのも少しつまらなくてな。」
「ようやく本性が出てきたな。」
はい、綾小路君のやらかしが確定しました。
「堀北とは逆の数字を言っていたら堀北が勝手に混乱しただけだ。」
「つまり、堀北が1と言ったらお前が2を言って、2と言ったら1と言う……そんなの集中している時にやってみろよ…頭バグるぞ。」
「オレはバグらなかったぞ?」
「お前は最初からバグってんだよ。」
まあ堀北のケガもそうたいしたことはなさそうだから問題ないからいいけどな…こういう事をやった後はおそらく体育祭本番では一位とかだして実力でもの言わしそうだからなんだか始末に負えないような気がする…まあ綾小路の教育は平田の担当だから任せるとしよう。
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「では頼んだよ。」
みんなが各々走ったり運動部からアドバイスを門羅っていたりするなか、高円寺は誰かと電話をしていた。なんだか高円寺が誰かと電話してる風景が珍しく感じる。
「おや、何か用かなブラックボーイ?」
「いや特に用はないが…高円寺は万全か?」
「無論だとも、私はパーフェクトで美しいからね。パーフェクトな人なら汗も美しくなるとはよく言ったものだろう?」
「聞いたことも言ったこともないな。」
いつも通りの高円寺である。握力の時は軽井沢に負けじと頑張っていたが、今回の足の速さに関しては軽井沢が女子の中で上位ではあるものの、高円寺の敵ではなかったようだ……いやそこもヤバかったら俺は軽井沢とマトモに話せる自信がない。
「そういえばどこかの業者にでも電話していたのか?」
「そうだねぇ。権利は自由に購入できるからね。」
気になったことを聞いたらあっさりと答えてくれるみたいだ。ただ一応今体育の授業の名目で練習しているから少しばかりペナルティものではないのだろうか。
いや権利を買ったのなら問題ないな。
「何か買ったのか?」
「ふむ……まあ購入とは違うが…体育祭のお楽しみというやつだよブラックボーイ。」
「そ、そうか。」
購入とは違うというとレンタルとかそういう意味になるのだろうか。何をレンタルしたのかは分からないがまあ楽しみにはしておこう。
「さて、二人三脚に付き合いたまえブラックボーイ。」
「俺がか?」
「君以外に誰がいるのかね?」
「いや今ここにはいないが……本番も俺と走るつもりか?」
「愚問だねぇ。無論そのつもりだとも。」
「俺お前よりも足遅いぞ。」
「心配はいらないさ。君が私に合わせればいいだけの話だ。」
「……うん?無茶言ってるって自覚あるか?」
「君みたいな暴れ馬を見事乗りこなしてみせるとも。」
「暴れ馬はどっちかというと君の方だろう……」
仕方がないが高円寺と二人三脚することになった……が彼が満足するまで走り続けることになった。1キロメートルも走るとか聞いてないんだが
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「あぁ……疲れた。」
なんとか高円寺との二人三脚から解放された俺は、グラウンドから少し離れて木陰で休むことにした。
「はふぅ。」
「お疲れだな愛里。」
「絢都もお疲れ。」
休んでいた俺の横に愛里がやってきた。先程から一人で走っているのは見ていたから頑張っていたことはわかる。まあスピードと体力はあれだが……
「愛里はどうだ?体育祭は頑張れそうか?」
「……次のテストに期待してくれないかな?」
「おーい?」
一応運動も頑張ってほしいものだが……まあ良い思い出になるのならそれでいいかもしれないな。
「しかし本当に暑いね。」
「そりゃまだ夏の暑さ続くなか、日の下で運動しているからな。」
「ねえ絢都…お茶とか持ってない?」
「あぁここにあるが…俺の飲みさしだぞ?」
「うんありがとう。」
「おーい愛里さんや全部飲むつもりじゃないだろうな?」
「えっ?もう飲んじゃったけど?」
「はやいな。」
俺が持参してきたお茶を愛里に飲み干されてしまった……まあいいか。
「絢都は大丈夫?」
「何がだ?」
「二人三脚が高円寺君と走っていたけど?」
「あー……まあどうとでもなるんじゃないかな。ちなみに愛里は誰と走るんだ?」
「波瑠加ちゃん。」
「それは…まあなんというか……息を合わせろよ?」
「波瑠加ちゃんが合わせてくれたら考えるね♪」
「不安だな…」
なんだかんだうまくいきそうな気もするし、何かの拍子に一触即発なことにもなりそうだ…
「ねえ絢都?」
「どうした?」
「ここで眠っちゃダメかな?」
「ダメだろうよ。」
そんなやりとりをしながら愛里は俺の肩に頭を乗せ始めた。
「うんいい夢見れそう。」
「ガッツリ寝る気か。」
「うんおやすみー」
「まてまてまてま…」
「邪魔するぜ黒凪。」
「邪魔をするなら帰ってくれ龍園。」
「そうか、じゃあ別の挨拶でもう一回来てやるよ。」
「わかった…いや帰れよ。」
いきなり俺のところに野生の龍園が現れやがったしかもアルベルトを引きつれて、何しに来たんだよこいつら。というかもう一回来るってなんだよ帰れよ。
そう思っていると龍園とアルベルトがこの場から離れてまた戻ってきたアルベルトが何かを手に持っているが…暖簾?
「大将、二人だがやってるかい?」
「居酒屋のノリでやってくるんじゃねぇ。」
このギャグをやりたいがために暖簾も用意したのか…無駄遣いが過ぎるぞ。
「というか何しに来たんだよ?」
「ハッ何ってそりゃあ偵察よ。」
「堂々と来るんじゃねぇよ。」
なんでBもCもこう変な形で来るんだよ。お前ら偵察って言葉の意味を辞書で引いてこい。
「なるほどなぁ。Dクラスはなかなか強そうだな…出走順は決めたのか?」
「言うかよそんなこと…というか龍園、お前自分のクラスはいいのかよ?王様なんだろ?」
「クックックッ、聞いて驚け…ハブられた。」
「お前王様だよな?」
クラスリーダーがハブられることってあります?もはや龍園から椎名ひよりに王政が変わりそうだな…もう変わっているのかもしれないな。
「……アルベルトは付き添いか?」
「ソノ通リデス。龍園ハ寂シクナルト亡クナッテシマイマス。」
「龍園は兎かなんかか?」
もはや近くの奴でさえ人という扱いをされてませんが大丈夫なのかな…
「ククッ前の試験ではやられたわけだが今回は俺たちが勝つぞ。」
「そうか…まあ頑張って。」
「ククッ余裕だな。」
「いや別に余裕という「ねぇ?」愛里?」
「ねぇ…帰ってくれない?」
愛里を見るとハイライトオフな目になって龍園たちを見ていた。ある種、イチャイチャを邪魔されたとはいえ怖いよ愛里さん。
「ま、まあ待てよ。宣戦布告くらい許してくれよ。」
龍園も少しは怯みはしたが、そこまで恐怖はしてないようだ。だがアルベルトはガクブルと震えている。
「おい、サングラスマン。」
「ハイ!!サングラスマンデス!!!」
「連れて逝け。」
「ハ、ハイ!!龍園チャン、オ帰リノ時間デスヨ。」
「おい、アルベルト離せ!首根っこを持つんじゃねえ!!俺は猫じゃねえぞ!!!」
……なんだか嵐のように去っていった。愛里は落ち着いたかに見えたが彼らが帰った方向をまだ見て小さく「ガルルルル」などと威嚇していた。
「なあ愛里、今日の放課後デートしようか?」
「えっ?いいの!?でも生徒会の仕事があるって。」
「あー……綾小路か、Cクラスの人に押し付けるとするよ。」
すまない椎名。まあ龍園のせいと言ったら向こうのクラスでなんとかしてくれるだろうし仕事も変わってくれるだろう。
後日、このことについて椎名ひよりから謝罪のメールが届いた
『申し訳ございません。彼は折檻をしといたのでご安心ください。』
そこまでの罰則を求めたわけではないが…強く生きろ龍園。
───────────────────────
あの偵察から数日が経ち、俺たちは教室で順番を決めていた。
「よしこんな感じだな。みんなも問題ないな?」
一通りの出走順が決まり、みんなもそれに同意してくれた。後はこれを提出すればこのクラスの出走順は確定となる。
「よっしゃあ勝つぞおおおおお。」
「おおおおおおおおおお!!」
「盛り上がるのはいいがまだ体育祭まで時間があるからな…みんなメモが出来たのなら俺は茶柱先生に提出しに行くがいいか?」
「おういいぜ!」
須藤が先んじて了承した。他の奴らも問題なさそうなので提出するために教室を後にした。
「というわけでこれがクラスの出走順です。」
「ああ、ちゃんと期日までの提出だな。これ以降は変更できないがいいな?」
「はい大丈夫ですよ。それでは」
「少し待て黒凪。」
職員室に行き出走表を提出して帰ろうとした時に茶柱先生に止められた。なんだろうなにか嫌な予感がする。
「なんですか?」
「今のうちに言っておくべきなんだが……という役割が君に与えられた」
「は?」
「受ける受けないの話をすっ飛ばして決定したのは申し訳ないが、君ならこの職務をうまくこなしてくれると信じている。では任せたぞ。」
「はあ…」
なかなかにおかしなことを聞かされて思考がまとまらないまま職員室を後にした…なぜこのような職務が存在するのかわからないが頑張るしかないのか…いやそれでもずっと疑問符が出続ける。
どうしてこうなった?
あとがき「最近ヒトリエの曲を聞いてます。」
というわけで次回から体育祭に突入します。黒凪に与えられた役割とはなにか…それは次回明らかになります。
それと番外編も書いていますのでどっちが先に投稿できるか分かりませんがお楽しみに。
次回もお楽しみに。
他ヒロインというIFルート…見たいのは?
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堀北鈴音
-
櫛田桔梗
-
軽井沢恵
-
長谷部波瑠加
-
椎名ひより
-
伊吹澪
-
一之瀬帆波
-
坂柳有栖
-
その他