コウマが討つ!   作:兜割り

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第九話

爆発音を出して突撃してきた『女王』に驚きながら、コウマは両手の手裏剣を『女王』めがけて投げた。

回転する刃は『女王』の頭と喉を切り裂くと予想していたがその期待は裏切られた。

 

「なっ!」

 

『女王』はたくましい腕を盾にしてそのまま突っ込んできたのだ。手裏剣の頭を狙った物は飛び出ている刃の部分が食い込んだだけで、喉に放ったのは腕の外殻に弾かれてしまった。

防御を解いて、そのままの勢いで突っ込んできた『女王』を何とか避けると、『女王』はそのまま後の木に激突した。

樹齢十年は軽く超える木がメキメキと悲鳴を上げる。次にボリボリとその大顎で木を噛み砕く音が響かせながら、コウマの方へ振り向く。

 

「こいつは……ヤバい!」

 

『女王』の恐ろしさを感じ取ったコウマはすかさず牽制として残った手裏剣を投げた。そのまま背中に背負った槍と腰の残った切り札の炸裂弾に手を伸ばすが……。

 

「――――!!」

 

再び突撃してきた『女王』の動きに目を見開いた。

『女王』は突撃しながら横に尻尾を薙ぎ払ったのだ。

遠心力のついた勢いで放たれた太い尻尾は牽制として投げられた二枚の手裏剣を粉々に砕いて、そのまま先の部分がコウマに届こうとしていた。

 

「う……おおおぉぉぉ!!」

 

相手の予想外の行動に驚愕しながらもコウマはしゃがむことで尻尾を避けることに成功した。

だが、『女王』は突撃をやめようとせず、コウマを踏み砕くつもりで向かってきた。

しゃがんだ状態という不利な状況では満足に避けることが出来ないため、手に取った両端に刃を持つ伸縮機能付きの槍を地面に向かって伸ばし、その反動を合わして跳ぶことで突撃を避けることができた。

コウマがいた場所に刺さった槍は『女王』の走りによってへし折れてしまった。

 

(槍が邪魔をしてそのまま転んでくれれば良かったのに!!)

 

槍の妨害で転ぶことを期待していたが、『女王』の突撃は遅くなることはなかった。

思考を巡らせながら弾かれて地面に落ちていた手裏剣を拾う。

 

(突撃が速すぎる!炸裂弾を投げようとした時にはこっちはもう轢かれてる!どうにかして隙を作らないと……)

 

コウマの現在の距離は『女王』に炸裂弾をギリギリ投げられる所まで下がっている。だが、『女王』まで炸裂弾を投げるには大きく振りかぶらなければならない。炸裂弾を掴んだ瞬間には相手の攻撃が始まっており、回避に専念しなければならなくなる。

 

(……それなら)

 

コウマは背中に背負った小太刀と手に持った槍を腰に引っかけると振り向きと同時に放たれた『女王』の巨大な尻尾が見えた。

その尻尾は目標を叩くものではなく、切り裂くものへと進化している。

 

(……来るか!!)

 

コウマは走った。

加速しながら身を低く、尻尾の下を潜ったのだ。

恐ろしい速さで尻尾が頭上を過ぎるが更なる加速をつけて『女王』に接近する。

『女王』がこちらに体を向けた時にはコウマは懐に入り込むと、そのまま両の腕を振って、その動作で上着を『女王』の顔に投げ捨てた。

上着が抱きしめるように顔に巻き付いて視界を防がれたことにより、腕を振り回すがお構いなしにコウマはその大きく開いた足の間を潜り抜けた。

 

(ただの時間稼ぎだ……!)

 

上着を剥ぎ取る前に、コウマは『女王』の左足に槍を突き込んだ。分厚い筋肉を貫いて血が噴水のように噴き出してコウマにかかる。

それでも槍は放そうとしなかった。むしろ、いっそう深く傷口にねじ込んだ。

前の『女王』を倒すための策を応用して使ったのだ。

暴れている以上頭に狙いをつけるのは難しい。

 

「このまま一気に……!」

 

槍を貫通させよう力を込めるが、視界に何かが映る。

 

「あ……」

 

顔を防がれた『女王』が痛みを感じ暴れたことによる腕と認識した時には遅かった。

横からによる打撃でコウマの小さな体は吹き飛ばされた。

 

 

 

「ひっ!」

 

隠れて戦いを見ていたクロメはコウマが吹き飛ばされたのを見て小さな悲鳴を上げた。

コウマと危険種の戦いは見ているだけで、クロメの精神をすり減らしている。

コウマの戦いは一言でいうとギリギリであり、見ていて安心感を抱くことが出来ないものなのである。相手の一撃必殺といえる攻撃をかわし続けるのは見ている側にも、精神的疲労を与えるものだ。

 

そんなクロメの視線は吹き飛ばされ、ピクリともしないコウマと顔に掛かった上着を破り捨て、槍を刺したまま足を引きずりコウマに近づく危険種に向けられてる。

コウマは動かない。

危険種が尻尾の届く範囲まで近づけば、コウマは串刺しにされる。

 

今、自分が動けば助けられるかもしれない。

動くしかない。

だけど、動けなかった。

恐怖で足が震えている。今までもずっと、怖いことに襲われると動けなくなる。

クロメは考えた。何か、いい方法がないのかを。自分を救ってくれた彼を助ける方法を必死に考えた。

 

(ダメっ!)

 

思い浮かばない。自分の無能さを知って苦しむ中、視線の先に動きがあった。

倒れているコウマの指がピクッっと動いたのだ。

 

(生きてる……!)

 

クロメの顔に喜びが生まれる。だが、その喜びも近づいてくる危険種によってかき消される。

 

(あ……)

 

倒れたコウマは手で何かを探していた。

クロメはコウマの動きを見て、理解した。

まだ戦おうとしている。

生きるためにまだ戦おうとしていると、そう思った。

その時、危険種がかすかに体を震わせた。何かをしようとしている。それが尻尾を動かす動作か、それとも別の動作かは判断が出来なかった。

 

「だ、ダメだよ……!」

 

口から悲鳴にも似た声が漏れつつも、動くことが出来なかった。見れば、足だけでなく腕も震えていた。どうしようもないほどに。

 

「立って!コウマ!!」

 

叫びと共に、目から涙がこぼれる

その涙がどんな意味を持っているのかはクロメには分からない。

直後、コウマに向かって尻尾が放たれた。

 

 

 

 

あれからどれだけ経ったのか……コウマはよくわからなかった。

一瞬、一瞬だけコウマの意識は打撃をうけた時、消えていた。

空はまだ青いので、そんなに時間が経っていないのははっきりとしていた。

今、この場所には時間の経過を教えてくれるものはなにもない。

意識がぼんやりと回復した時には地面に寝転がっており、体も最初は動かなかった。

すると、体に痛みを感じた。

何でどうして痛いのか、一体どうしてこんな苦しいと感じているのかそういった理由すらも最初は分からなかった。

じわじわとじわじわと痛みが体中を駆け巡ると自分はまだ生きていると分かった。

腹に力を入れて呼吸をすると痛みと共に体の感覚も戻ってきた。

 

(そうか……僕、あいつに殴られて……)

 

指に力を込めるとピクリと反応があった。

そのまま痛みを感じる脇腹に指を触れさせる。

触れると脇腹からより一層の激痛が走った。

 

(骨に異常はないな……。どうやらあいつの一撃の直撃だけは避けられたらしい……)

 

元々、不利な体勢から放たれて、偶然当たった一撃である。強い踏み込みを入れた一撃であればコウマの腹はぶち抜かれているだろう。

指を動かして武器を掴もうとするが、力が入らなくなってきた。

吹き飛ばされた衝撃で頭の中がまだぼんやりとしていたのだ。

 

(痛いな……苦しいな……どうしてこんなことしてたんだっけ?)

 

コウマの頭に過去の記憶が流れてくる。

父親のタイガからシナモ村に行けと頼まれてサキとキバと一緒に向かったこと。そこで村の人たちを救うためにブレイドホーネットを退治したこと。ブレイドホーネットの死骸を追ってこの樹海に入ったこと。それから……。

 

(ああ、考えるのも億劫になってきたな……。なんかもう疲れたし……)

 

この樹海ではコウマを苦しませることが多すぎた。

ブレイドホーネットの連戦の疲労、ブレイドホーネットによって殺された子供たちの亡骸、そして体に響いている痛み。

これらが重なり、幼いコウマの精神の臨界に達してしまった。

ズズズと何かを引きずる音が聞こえてくる。

それは『女王』が近づいてくる音だった。槍で片足を貫かれながらも、コウマに止めを指そうと近づいてくる。

 

(ああ、そっか。僕はお前からしたら子供たちの仇だっけ?)

 

そんなことをまだはっきりとしない頭で考える。

こいつのことはサキとキバに任せよう。サキでは倒すのに少し厳しいかもしれないが、超級危険種のキバなら手負いの『女王』を倒すことができるだろう。

 

(さぁ、殺れ。それで気が済むなら、そうすればいい。お前たちの相手はもう御免なんだ)

 

コウマがそう考えていると耳にはっきりと……聞き覚えのある人の声が届いた。

 

「立って!コウマ!!」

 

声の主がクロメであることがわかった。

 

(クロメ……そうだ。この樹海で……僕が……唯一、助けることができた……女の子だ。守ると……約束した子だ!)

 

頭の中でカチリという音が入るのが聞こえた。

頭から熱が生まれる。その熱が体の痛みを塗りつぶし、力に変わっていく。

 

(なにを……なにをしてるんだ!俺は!!)

 

 

 

熱で覚めた意識を働かして、コウマの身体が地を蹴って跳ねる。

発射された尻尾は、コウマに当たらず地面に深々と突き刺さった。

地面に着地してすると脇腹に激痛が走る。だが、その痛みは熱とともに体を動かすための燃料になっている。

距離をとったコウマは熱を持った体と冷えた心で冷静に相手を見据えていた。

 

「いいか、『女王』。俺はあんたを……苦しませて……殺す」

 

コウマを知る者がこの場所にいたら我が耳を疑うだろう。今のコウマの声は今までにない程、冷え切っていた。

明確な殺意を持った目で腰の小太刀を抜き払う。

敵対するもの急激な変化。『女王』もそのことに本能で気が付いたのだろう。

戸惑いを持ちながらも尻尾を発射させた『女王』は危険種の王といえた。

巨大化した尻尾は空気を切り裂いて矢となり、コウマを襲う。

 

クロメは目を瞑り、『女王』は笑った。

風を浴びただけで吹き飛ばされ、直撃でもすればコウマの腹から上は原型を留めない。人に対して過剰といえる威力を持った尾はコウマの身体を、一撃の元に砕くだろう。

そう信じて疑わなかっただけに、自身の尾が空振りに終わった現実に、『女王』は簡単に受け入れることは出来なかった。尻尾がコウマに当たる直前、小太刀が光ったように見えた時には尻尾は外れていたのだ。

 

再び尻尾を振り、追い打ちを掛ける『女王』。持っている小太刀ごと身体を木端微塵にするために発射する。

そう意気込んだ技が、またもあらぬ方向に逸れていく。コウマの小太刀に触れた途端に、流されるように逸らされていく。

 

「グギャァッ!!」

 

怒りの声を叫びつつも、休まずに『女王』は尻尾を振るった。左右から縦横から様々な軌道に変えて尻尾を連続して放った。

コウマは動かない。ただ小太刀を振るって向かってくる尻尾を受け流していく。そのたびに『女王』の攻撃は、見当違いの方向へと導かれていき不発に終わる。

 

『女王』は追い詰められていた。我が子の血肉を喰らい鍛え上げた最強の武器が、まるで意のままにならない。相手は子供、それも武器は自分の腕の長さ以下の短い刃だ。だが、刃が振るわれて光を放つと強い衝撃を受けたわけでもないのに、まるでそれが正しいといわんばかりに逸れていく。

弾き返しているわけではない、絡めとるようにと、神技といえる技を使っているコウマはただ『女王』を分析していた。

 

(もうすぐビビるな……)

 

向かってくる刃、黒々と煌く金属の光沢のような尻尾を目で見ながら、横に釣る。小太刀を介して、尻尾が通り過ぎる感触が襲い掛かってくる。

少しでも力を抜けば小太刀ごと身体を切り裂かんとする驚異的な一撃だ。

死んでもおかしくないそれを見て、感じて、凌ぐ。

シナモ村で倒したブレイドホーネットと戦った時は、手甲の爪を回転させて威力を減退し受け流したが、今、手甲はない。

 

本来、コウマの獲物は手甲と装備された爪である。様々な武器に触り、一通りの使い方を学んだ後、両手を空けるという利点で手甲を選んだ。

長年、手甲による戦い方を訓練した結果、回転させ攻撃を受け流すという技術を身につけた。

コウマは小太刀も使うことができる。だが、最低限の技量しか身につけておらず、こんな技ができるほど経験はない。

そんな技を行えるのは、コウマに起こっている異常が原因だった。

 

(あつい――咽が乾く、髪が燃える、肉が炙る、血が沸騰する……)

 

間近に炎があるわけでもないのに。だが、コウマは確かに身体に感じる熱を味わい続けていた。

暑い。いや、熱い―――。

しかし、そんな熱さを感じながらも、コウマの意識ははっきりとしていた。

 

(だが、この感覚はなんだ?)

 

五感が鋭くなったという問題ではない。

コウマの感覚が広がっていく。それによって、襲い掛かってくる尻尾がゆっくりと感じられたのだ。

これがおかしいと感じていたが、身体の奥底から湧き上がってくる熱は違和感を塗り潰してしまう。

襲ってくる尻尾に小太刀を絡めて、引っ張る。敵の攻撃にこちらからも勢いを加えるように。

尻尾がよりいっそう速度を増していくが、そのたびに小太刀によって力が加わり、結果、コウマを逸れて大きく外れていく羽目になる。『女王』が、焦っていることが動きから理解できる。

怒涛の猛攻に襲われながらもコウマの小太刀は、いっそう軽く、速く、柔軟に攻撃をこともなげに捌き続ける。

 

(ここだ……)

 

攻防に変化が訪れる。

ただ一つの風切音。鋭く速いそれが繰り出された尻尾に触れた時、断じて小太刀が尻尾に弾かれる音ではなかった。

『女王』の尻尾が視界の外へと飛び去った。まるで尻尾そのものが『女王』の身体を見捨てたかのように。

斬り飛ばされた尻尾が勢いのまま、巨大な矢となり木を破壊する。

刀術に自信がある方ではない。だが、時間を掛けて、感覚の広がりをさらに拡大させた今なら斬ることができる確信があった。

 

『女王』は放心した様子で、木に突き刺さった尻尾と切断された部分を交互に見ていた。突き刺さった木を貫通している尻尾はあれほど硬く、力強く、しなやかで、復讐をするために犠牲の上に作られたもの。

あの尻尾で我が子の仇をとり、喰っていった『兵士』たちの無念を晴らすための必殺の武器だったはずなのに……。

 

キンという軽い音が響く。

『女王』が精神を追い詰められている間にコウマは小太刀を鞘に収めて、軽い足取りで近づいている。

近づくコウマに警戒して身体を傾け前傾姿勢になる。片足に槍が今も刺さっているので、走ることは出来ないが、この巨体で体当たりすれば、バラバラにすることはできるだろう。

それを確認したコウマは歩くのをやめる。

身体の熱は残っており、腰に装備されたナイフを二本取り出す。

 

「行くぞ、正面からだ。あんたのプライドを砕いてやる」

 

言うなり、コウマは地面を蹴って走り出した。

宣言通りに正面。

今までより速く動けるが、まだこちらの獲物が届く距離ではない。

だが、『女王』は前傾姿勢を取りつつ、左腕を振り上げた。見るからにコウマを薙ぎ払うつもりだ。

走るコウマは手に持っているナイフの内一つを投擲した。

近距離から投げられたナイフの速さは高速。

狙いは『女王』の眉間。だが、『女王』は振りかぶった左腕を使い、ナイフを叩き落とした。

下ろした左腕には最初に投げた手裏剣が今も食い込んでおり、コウマは食い込んだ手裏剣ナイフで力強く押し込んだ。

力を入れられた手裏剣がさらに深く筋肉を切り裂いていく。結果、左腕は切り落とされ、勢いよく体液が噴き出る。

左の脇ががら空きになったことで、そこにコウマは飛び込む。

すぐ横には左足に突き刺さったままの槍が残っている。槍に回し蹴りを繰り出し、杭となった槍が左足を貫通し、地面に突き刺さる。

 

「――――――ッッッ!!!」

 

『女王』が激痛で叫ぶ。倒れると槍によってさらに筋肉がズタズタにされ、地面にのたうち回った。

『女王』は追い詰められていた。走ったコウマが通り過ぎた時には、左足と左腕を破壊された。武器を使ったとはいえ、人間の子供に屈強な腕と脚があっという間に砕かれる。それは『女王』にとって信じられないことだろう。

『女王』が前を見た時には、先ほどと同じような距離にコウマがいた。

その手は、腰の納刀した小太刀の鞘と最後の手裏剣、そして、腕には先ほど回収した手甲があった。

 

「――――――ッッ!!!」

 

再び『女王』が叫ぶ。今度は痛みによる叫びではなく、怒りの色と恐怖の色を含んでいた。

コウマが走るとその動きに恐怖しながら、『女王』は残った腕を振り上げる。今度は確実にコウマを叩き潰すために。

手裏剣が投げられる。だが、それは地面との間がギリギリだった。そのまま手裏剣が『女王』の右足首を切り裂く。

足首を斬られたことで体勢を崩した『女王』の前には、すでにコウマがいた。

走りながらコウマは素早く小太刀の柄に手をかける。

空を斬る音が一度した。

抜刀された小太刀が折られると共に『女王』の右手首を切断する。

四肢を全て破壊され倒れる『女王』の目に液体が入った入れ物が映り、入れ物が倒れた『女王』の体重で潰れる。

 

「グギャァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

『女王』の胸のあたりで激痛が燃え広がる。液体は強固な自分の身体を溶かしていくのだ。

生きながら溶けていくという、本来なら決して味わうことのない激痛が『女王』の胸に拡がっていく。

達磨にされ胸を痛みで蹂躙される『女王』の背を靴底で踏み押さえる脚がある。コウマだ。『女王』を苦しめる、プライドを砕くといったことを実行した死神がいる。

その左の拳が、『女王』の後頭部に押し当てられる。冷たいその感触は、もはや人肌の温度さえも感じず、『女王』にとって振るわれた刃も同然だった。

深く、静かなコウマの呼吸が聞こえる。

『女王』は気付いた。自分はこれを知っている。まだ、自分が母である先代の『女王』と同じ殺され方をされようとしていることを遺伝子で思い出した。

体液をまき散らす腕や尻尾を動かすことも叶わない。その素振りを見せただけで、『女王』の命は消える。

 

「死ね」

 

コウマの声はまるで殺す相手を生物として認識していないような声色だった。

手甲から爪が伸びる。頭を貫かれて奇妙な物体になった『女王』を見下ろすコウマにはもはや何の感慨もなかった。

 

 

 

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