執筆をしても間が空いてしまい、話の構成が無茶苦茶ともいえます。
こんな私の作品を読んでくれる皆様、本当にありがとうございます。
私がこの作品を続けることができるのは、皆様のおかげです。
『組織』地下実験室。
その場所は荒れ果てた大地に変り果て、未だに跡形もなく大地を変える闘いが、たった二人によって発生させられ続けている。
一人は『組織』最高戦力の隊長。
もう一人は帝具によって鬼となってしまった少年。
それぞれ自身の拳や脚などの肉体を振るい続け、互いに激しい死闘を繰り広げていた。
「■■!」
「くぅっ!」
隊長は自身に向かって力任せに殴り付けられた拳を交差した腕で苦痛を堪えながらも受け止めた。
―――本当に、強くなっているな!
それだけに残念だった。
彼がこの力をコントロールし、戦士として戦うことができたら……どれ程心が躍っただろう。
「っ……!」
振るおうとした両腕は防いだ痛みによって、僅かの間、痺れによって止まってしまう。
その隙を見逃すことはせず、鬼の渾身の力を込めた右腕が振り抜かれる。
「動きが……単調過ぎるぞ!!」
叫びと共に身体を僅かに横に動かし、右腕を避け、カウンターの蹴りを腹に叩き込む。
直撃によって地面にバウンドしながら鬼が離れる。
―――確かに帝具によって凄まじい力を得ている。だが、その反面理性的な動きは行うことがないな。ただ、殴るか蹴るかの単調な動き、防御行動さえもしない。
本能に任せた攻撃。その名の通りものだ。
「どうした!それでは鬼どころか獣の類だぞ!」
鬼が跳ぶ。
力強い跳躍だったが、直線的で単純な動きで鬼が向かってくる。
隊長は余裕でかわした……はずだった。
「なっ!」
鬼が隊長の両肩を掴み、力を込めて放り投げ、壁に叩きつけた。
壁は粉砕され、鉄骨はねじ曲がり、隊長の身体は二部屋分の空間を吹っ飛ばされた。
もうもうと湧き上がる砂煙の中、隊長は立ち上がった。
―――技だ!今、少年は技を使った!
力任せの投げにしか見えなかったかもしれないが、隊長は技だと理解した。
掴む際の腕の力が肩を握り潰すこともなく、軍服を確かに掴んでいた。
今まで力任せに攻撃してきた彼が技術を見せたのだ。
―――こんなところで終わらせない!可能性が生まれたんだ!!
拳を握り、構える。
それは彼女の決意の証だった。
「そんなものか、少年!」
声が聞こえた。
声の主を見てみると、そこに人がいた。
名前は、思い出せない。
あれは、『敵』か?『味方』か?
どっちだ。どっちでもいい。
『あれ』を倒せば、きっと、この、忌まわしい熱と痛みから、解放、される、だろう。
倒せば、解、放……。
コウマは跳んだ。
再び、掴み掛り、思い切り放り投げた。
だが、痛みと熱が治まることはなかった。
突き出される拳を体を僅かに横に動かし、攻撃を避けるが―――
「はっ!?」
拳を振り抜く前に鬼に懐に入り込まれ右腕を押さえられた。
理性的としか言えないその動きに、隊長は目を見開きながら自身の懐に居る鬼を見つめるが構わずに右腕を隊長に向かって振り抜く。
「■■―――っっ!!」
「くっ!」
振り抜かれた右腕を自身に直撃する直前に、左腕で受け止めた。
それと共に押さえられている右腕を引き抜こうとするが、万力のような圧力で握られ、ピクリとも動かなかった。
「やはり!」
「■■■っ!!」
「がはっ!!」
確信した声を上げている途中で、勢いよく振り抜かれた右足で胴体を蹴り飛ばされる。
その反動で吹き飛ばされるが、すぐさま体勢を整えて地面に着地し、唸り声を上げながら構えている鬼を睨む。
「■■■■っ!!」
「その動き……明らかに修練を積んできた者の動きだ。今まで蓄積した経験が体を動かしているのか……それとも、外部からの痛みで意識が浮き上がり始めたのか……願うなら後者であってくれよ!!」
きつく握り締められた拳を構えると、鬼に向かって猛然と走る。
規格外の力を持つ両腕をかいくぐり、胸に拳を打ち込んだことで、ぎっと悲鳴を上げて、鬼は吹き飛ぶ。
壁に叩きつけられるはずだったが、空中で体勢を立て直し、両足を壁につけ突撃してきた。
「■■っっ!!」
右手を貫手の形にした鬼に一気に間合いを詰められた。
―――速過ぎる!
避ける判断を放棄し、隊長は右腕に力を込め、盾にした。
鬼の貫手が右腕に突き刺さる。
二人を中心として衝撃が生まれ、まるで螺旋を描くように隊長の右腕の軍服を引き裂いてしまった。
「るぁぁぁぁ――――――!」
隊長が吠えると左腕が大きく震える。
その左腕から人の肌とは思えない色の、鱗か外殻を思わせる質感の物体が軍服を破り、飛び出してきた。
すぐさま突いた状態の右手を掴む。
鬼が慌てて右腕を引こうとするが、異形の腕により握り潰される。
「■■■――――――――っっ!!」
激痛に襲われているだろう鬼を振り回すようにして投げた。
空中で身を翻す動きを取るよりも速く、隊長は右足を掴む。
「らぁっ!」
そのまま一気に自分の方に引き寄せ、なす術もなく空中に身体を投げ出された鬼の仮面とともに顔面を渾身の力を込めて左腕を叩きつける。
床が大きく陥没し、頭部がそこにめり込む。
それでも隊長は顔面を殴り続けた。
右腕も異形の形を成して振るわれている。
「悪いな!」
立ち上がる隙も与えず、拳を振り下ろす。
「こんなやり方でしか、伝えられない!」
本能的に鬼が両腕で顔を防御したが、どこに当たろうが構わず、拳の雨を降らした。
「少年!君を飲み込んでいるはこれだ!」
「痛みと暴力だ!」
「その二つが恐怖になり、飲み込まれるのが嫌で暴れている!」
「だが、痛みと暴力はコントロールできる!」
「恐怖は乗り越えられる!」
「強さを求めたことがある者なら慣れたことだろ!」
「抗え!戦え!拳を握れ!」
「理不尽に立ち向かうために!」
「絶叫を挙げろ!」
夢なのか、現実なのか分からない。
体を動かそうとしても熱と痛みが襲い、ただ自分を痛めつけ体などないと錯覚させられ、曖昧な意識だけしか分からない。
ただただ苦しい。
この熱と痛みが怖い。
この二つが混ざり、自分というものを飲み込もうとしている。
だが、体に走った衝撃が意識を無理矢理目覚めさせた。
「う、あ……」
衝撃は様々な場所を打ち、新たな痛みとなってコウマに感覚を取り戻してくれた。
まだ熱と痛みが体を蝕んでいたが、以前よりも意識ははっきりとしていた。
この苦しみから解放されていないということは、恐らく自分は生きているのだろう。
目をうっすらと開けると光景に呆然とした。
「な、に……?」
目の前の場はあの広い部屋ではなかった。
唾を無意識に飲み込んだ。
自分が今いる場所は広大な洞窟。
だが、酷く狭苦しく感じ、この場は人ではないものが支配する空間であることを直感した。
不意に、巨大な気配を感じた。
視界に収めたわけでもないのに手足の先が痺れるような恐怖に押しつぶされ立ちすくむ。
本能が動いてはならないと、それどころか見たら死ぬと告げている。
肌に当たる生臭い吐息を、努めて意識しないようにする。
だが―――相手には、確実な悪意が存在した。
―――勝てるわけがない……!!
そう思った時、爪が服諸共に胸板を引き裂いた。
まるで紙屑のように飛び、胸からは血が噴き出す。
眼前、正面、怪物の顎が開かれる。
まるで奈落のように見えるそれは、怪物の持つ絶対の必殺技だ。
如何なる存在もこの顎に耐えられる物は存在しない。
噛み砕かれるのは嫌だなと、朦朧とした頭の中で思う。
ならば、舌を噛んで死んでしまおうとした時―――声が、聞こえた。
『恐怖は乗り越えられる!』
―――恐怖……こんな怪物を乗り越えることができるのか?
ズタズタになった精神にその声が清水のように染み渡った。
『強さを求めたことがある者なら慣れたことだろ!』
―――確かに言われてみればその通りだ。
強くなること。それは未知の領域に入ることであり、恐れが必ず立ちふさがる。
『抗え!戦え!拳を握れ!』
―――そうだ。こんなこと何度もあったではないか。
金剛餓狼。ブレイドホーネットの女王。
この二体との戦いは無様ながらも抗い、戦い、拳を緩めることはなかった。
『理不尽に立ち向かうために!』
―――そうだ。拳を握り込め。立ち上がることから始めろ!
『絶叫を挙げろ!』
「お……」
声が出そうになる。
それを止める理由はない。
今、自分を噛み砕こうとする相手に向かって口を開き、吐き出した。
叫び。
「……!」
自分に纏わりつくもの全てを振り払うように拳を怪物に叩きつけた。
咆哮と拳が怪物を砕く。
『―――そうだ。勝つことが重要ではない。抗うことが重要なのだ』
耳に乾いた……男の声が届いた。
空間が歪み、洞窟も怪物も消えて鉛色の空間が広がった。
その空間に鎧があった。
動きやすさを備えていた帝国の鎧とはまた違う、黒い甲鉄の一つ一つが城壁と思わせるほどの頑強さを備えた鎧があり、頭部にはあの鬼に似せた仮面がつけられている。
「あんたは……帝具なのか?」
『―――そう、私は帝具だ。この帝国を永遠に守っていきたいとの思いで製造された四十八の帝具の一つだ』
一拍の間を置いて、
『誕生して約千年、一度も発動されたことはないがな』
帝具の言葉にコウマは信じられないと思い、声を出した。
「発動されたことがない……だと?」
『そうだ。私は―――帝具になる前の鎧の主だ。弱者を守る、その思いでひたすらに戦った。その思いが故か、相応しくない者は拒絶反応で死なせていった』
鎧の顔が俯く。どうすることもできなかったのだろう。
『君の記憶は見せてもらったよ。過去に二回も自分よりも強大過ぎる相手に人を助けるために戦っている。理不尽に死んでいった者のために怒ることができる。今までの者にその様な者はいなかった』
「……つまり俺は御眼鏡に適ったってところか」
『ああ、私を最低でも受け止めるための体と精神……体はともかく精神は飲まれかけていたな。外部からの接触がなければ危うかったぞ』
鎧が空間に指を向ける。
何もない空間に金髪の女性―――隊長が自分に拳を振り下ろしている光景が映し出された。
「……あいつ、好き勝手やりやがって」
奥歯を砕けそうな勢いで噛み締める。
しかし、彼女の声が自分を救ってくれたのは確かだった。
―――いや、あいつのせいでこんなことになっているから……感謝する義理はないな。
『コウマ。ここまで来たのだ。……君は何を望む?敵を打ち砕くための力か?』
コウマは、帝具の問いから並々ならぬ勢いを感じた。
「……あんた、俺の記憶を見たんだろ?なら分かるよな。俺が始めて強くなろうとした日とその時の思いを」
『……』
「俺が力を求めているのは敵という……必ずいるでもない奴を倒すためにじゃない。誰かを助けたい。守りたいと願ったからだ」
コウマは胸に手を置いた。
そうだ。自分が強くなろうとしたのは、その思いを胸に抱いたからだ。
『そうか、ならば、強さを求める者よ』
一拍。
『どうする。―――鬼になれるか!?その姿から守るべき者たちから忌避されようと戦うことができるか!君が本気で望むのならば、私は君の鎧に、力となろう!』
言葉と同時。コウマに膨大な記憶が流れ込んできた。
鎧を纏い鬼になった男の壮絶な記憶。
鬼の背後には虐げられる弱者が必ずいた。
成程、とコウマは思う。これほどの思いならば、鎧を妖甲に変えるだろう、と。
コウマは記憶を受け止めながらも口を開いた。
「俺はあんたのようには……なれない。けど……」
絞り出したような声を喉から吐く。
「人を踏みにじる。人間の価値を勝手に決める。不要な人間を犠牲にする。不安を煽るためだけに、平気で命を奪う。それは……絶対に許されない」
目の前の仮面をキッと見る。
「多くの人が理不尽によって殺されそうになったら、俺は戦う。人を助けるために戦う。悪なんてものを倒すことなんて二の次だ。容易じゃないこともわかっている。助けられないこともあるかもしれない。けど、その失敗を理由に投げ出すようなことは決してしない」
左手に力を籠めた。
手指を完全に握り込み収縮させ、拳を生み出す。
拳の中、力の手ごたえを握りながら、コウマは叫んだ。
「俺の戦いは!絶望に取り残されて、ただ死を待つしかない者を救うための戦いだ!!」
空間の天に誓いと覚悟の打撃を叩き込む。
コウマの脳に、否、心に光が差した。
鉛色の世界を突き刺して、一条の光が走った。
凄烈な光だ。
男の乾いた、けれど満足した声だ……。
「―――ならば、この残された魂と鎧と共に―――」
そうだ。
受け継いだのだ。
男の誇り高い魂と象徴である鎧を。
―――だから。
「……だ、か、ら」
隊長の耳に聞き覚えのある声が飛び込んだ。
確かな、人間の声だった。
「……終わ、る、わ、けに、は……いかない!!」
鬼に隊長は放り投げられた。
同時に、仮面が強く激しく震えている。
ふらつきながらも鬼は立ち上がった。
「鉄鬼変生――――――
仮面が激しく揺れ、輝き出す。
そこには鋼の鬼。いや鎧だ。
腕はあらゆる物を圧潰するであろう凶器に変わっており、脚は不動を体現したかの如く巨大なものになっている。
本来、鋼が持っていた色は黒に侵され、禍々しく、澱んでいる。
全身に纏う鎧には華美、豪奢というものが細部に至るまで存在しておらず、無骨と機能性だけを追求したであろう姿。
翡翠の色を持った双眸は黒の中で唯一の煌びやかさといえた。
―――怖っ。
帝具―――防人の姿を見た第一印象がそれだった。
だが、自分が全力を出すのに相応しい姿だ。
「―――ああ、私は実に運が良い。君と戦える幸運を心から感謝しよう。だが、どちらもベストな状態ではない。再戦は時間を空けてしようか」
掛け値無しの賞賛を語る。
こんな素晴らしい相手とはお互いが全快で戦わなければ、全くもって損だ。
「また会おう。なにすぐ会えるさ。その時は全力全開で……な」
隊長はたちまちの内に壁の穴に飛び、姿を消した。
帝具が難産でした。
名前。
鬼と鎧にしようとは初期から考えていたのですが、読者様が納得できるものにするためにパソコンの前で電子辞書を使いながら調べました。
見た目。
コウマには洋式の鎧は似合いそうにないため、和風な感じと。
想像したのはいいですが、私の文才では限界が出たために、
『鬼!鎧!無骨!黒い!不気味!呪いのアイテム!子供が見たら泣く!』
そんなイメージで脳内保存を。
能力。
単純に強化系です。
近々、キャラクター設定を書きます。
そこで帝具について詳しく書くつもりです。