コウマが討つ!   作:兜割り

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今回は前半グロイ描写があります、注意してください。
それとようやく原作キャラが登場です。



第七話

『女王』はいそいそと巣を移動していた。壁には『兵士』たちが捕まえてきた少年少女が貼り付けられている。

『女王』の姿を見ても叫ばなかったのは、恐怖のあまり悲鳴も出なかったのだろう。『女王』が黒い腕で一人の少女の顔を掴むと、少女の目から涙がこぼれ出た。すぐ顔の近くで顎を開くと、ようやく少女が高い声を漏らした。

だがもう遅い。

 

『女王』は少女に情熱的な口づけを与えた。そして彼女の舌を引き裂いて“第三の器官”を喉の奥へと差し込んだ。息を詰まらせ、足をばたつかせて少女は悶絶した。『女王』の喉が膨らみ、その中の塊が前方に動いた。“受胎”が始まった。

その光景を見て、他の子供たちは叫んだ。そのけたたましさに囚われるより、まだ飢えを感じる繁殖行動に満足を与えようと、『女王』は歓喜の行動に専念した。

 

少女の身体が震える。

その腹部は、妊娠した女性のそれよりもさらに大きくなっていた。まるで別の生き物のように、腹部が小刻みに上下している。

揺れはリズムを持って大きくなり、そして最後の衝撃で腹は内部から破裂した。赤い血液と内臓が床に飛び散る。

その破片に追いすがるように、腹部の孔から胎児が顔を覗かせた。ブレイドホーネットだ。

だが、そのブレイドホーネットは普通のとは違い、一回り大きかった。胎児はあたりをうかがうように、血と自分のぬめりにまみれた頭部をゆっくりと巡らせた。

首をもたげあたりを伺うとブレイドホーネットは、自分の母の姿を確認して満足したかのように、カッと口を広げて奇声を発した。

自然によって作られた洞窟にブレイドホーネット……いや、『女王』は壁に貼り付けられた自分より小さな、か弱い生物を見ていた。すでに殺戮と受胎の快感を味わった個体、人間の少女だ。

 

―――この小さな個体はメスの腹部から生まれ出て、人間という個体に成長する。

 

本能的に『女王』は妊娠と出産という繁殖のシステムを学習して、種の存続の力強さを知った。そして自らが本能的になし得た結果についても、すべてを理解したのだ。

群生コロニーの中で選ばれた1体の『女王』が卵を何らかのホストに寄生する。ホストの内部で成長した複数の『兵士』が外へ飛び出、脱皮を繰り返して成体となる……そんなブレイドホーネットの繁殖過程を、この『女王』は工夫を加えた。

 

『女王』の臓物というロイヤルゼリーを与えられて、自らも知らず、人間のメスを利用した新しい種の生み出し方を本能的に試みて、成功したのだ。『女王』は少女の体内に生殖器官を植え込み、複数の『兵士』ではなく、一体の『強化兵』を誕生させた。

『兵士』よりも速い驚異的な成長能力を持つ『強化兵』は、少女の身体から飛び出し、獲物を『女王』に捧げるために洞窟を出ていった。

『女王』はある種の“知性”をして、この事実に驚喜した。そしてもう一度繁殖を試みたい本能にうち震えて、種の存続に義務感のようなものを抱いた。

 

 

 

 

「こいつは……トリケプスだよな」

 

折れた木の場所にたどり着いたコウマたちは目の前の人間の数倍もある生物の姿に驚愕していた。

トリケプスはこの樹海に住む危険種で、特級に分類されている。その巨体から繰り出される突撃はそこらの木など簡単にへし折ってしまうだろう。

だが、コウマが注目しているところはトリケプスが死んでいるという状態だ。身体のいたるところを鋭い刃物で斬られたり、刺されたり、肉を噛み千切られた後があるのだ。

 

「ブレイドホーネットの群れに襲われた……ということでしょうか?」

 

「まぁ、そうだろ。この傷はあいつらの尻尾と大顎にしかつけられないし、この樹海でこいつを倒すことができる奴なんていないからな」

 

「特級危険種を倒せるほどに増えている……考えただけでゾッとします」

 

想像してしまったサキは身体を振るわせて嫌悪をあらわにした。

 

「そもそもなんでこんな樹海に子供がたくさんいるんだ、おかしいだろ……」

 

コウマはさっきから疑問に思っていたことを口にする。子供たちの姿は自分たちのような十分な装備もしておらず、ナイフ一本と身体を包む布きれだけ、そんな姿で危険種が住むこの樹海にいるのは自殺行為に等しい。

 

「あーもう、急ぐぞ!早く女王を倒さないと子供たちを使ってどんどん増えていく!このままだと危険種にまで、卵を植えるようになるぞ!」

 

「あ、はい!」

 

悪化していく状況を嘆いてコウマは怒りの叫びを上げ、先に進もうとする。すると、死んでいるはずのトリケプスが揺れた。中になにかがいて、外に出ようとしているかのように動いて……。

 

「あー……本当……嫌になる」

 

トリケプスの異常に気付いたコウマは腰につけた携帯炸裂弾を一つ掴み、それをトリケプスに投げつけた。トリケプスの身体から無数のブレイドホーネットの幼体が顔を出したのと、炸裂弾が爆発するのは同時だった。

 

 

 

炸裂弾の爆発によりトリケプスの身体はバラバラに吹き飛んだ。その威力にキバは目を大きく開いて、サキは地面に尻もちをついて驚愕していた。そして、コウマは炸裂弾の性能を見て頷いた。

 

「驚いたか?もしものためにと思って作っておいたんだよ。破壊力は見ての通り、この戦いの切り札として十分使えると思うんだが……」

 

「コウマ様!!」

 

「な、なんだ?」

 

「なんて危ないものを作っているんですか!それ最初、リュックの中から取り出していましたよね!なにかの弾みで爆発したらどうするつもりですか!あと、爆発させるならちゃんといってください!それと……」

 

「あ、待ってサキ」

 

「何ですか!」

 

「……お客さんだ」

 

コウマがサキの後を指で指すと離れたところにブレイドホーネットの群れがいた。一体や二体なら簡単に対処できるが、今その場にいるのは尋常な数ではなく、少なく見積もっても二十はおり、サキも目線を移して群れの存在に気づきそちらの方を向く。

 

「いい感じに集まってるな……。もう一発使うとするか。サキ、キバ、走るぞ!」

「は、はい」

 

走る。

こちらに向かってきたコウマたちにブレイドホーネットたちは驚いたようだが、構わずに接近する。先頭のブレイドホーネットが尻尾を横なぎに振るうが、コウマたちはジャンプして避け、キバはそのままで、コウマたちはブレイドホーネットの頭を踏み台にして高く跳んだ。

その先には二十以上のブレイドホーネットが固まっている。その注意は上空に跳んだコウマ、サキ、キバに向けられていた。その中心に炸裂弾を落とす。

コウマたちが反対側に着地した時、群れの中心で爆発が起こり、ブレイドホーネットたちはバラバラに飛び散った。

 

 「まだ……いるのか」

 

コウマの言葉にサキは周りを見た。自分たちの周囲をブレイドホーネットが取り囲んでいるのだ。

取り囲むブレイドホーネットのうちの一体が、飛び出してくるがその瞬間にキバによって頭を噛み千切られた。キバはそのまま咀嚼せずに、地面に吐き出す。その光景を見た他のブレイドホーネットが大きな叫び声をコウマたちにぶつける

 

「怒っているな、怒っているな。そりゃそうか、自分たちの兄弟がバラバラの肉片にされてるからな……。けどな、こっちも腸が煮えくり返りそうなんだ……」

 

コウマは視覚を守る仮面を付け、『鋼爪』を出して構える。

 

「お前たちは繁殖のために人間を捕まえて増えていく。本能と言ってしまえば、そういうものだと言えるかもしれない」

 

サキは腰から鉄扇を取り出し広げていつでも応戦できるようにする。

 

「だが、ただ殺されるだけの理不尽、絶望の中から殺される理不尽には吐き気がしそうなほどの怒りが湧いてくるんだ。だから―――」

 

キバは地面に爪を立てて、グルルと唸り声を上げた。

 

「さっさとくたばれ蟲どもが!!」

 

コウマの怒りの叫びとともにブレイドホーネットの群れが襲い掛かった。

 

 

 

樹海の中を二人の少女が進む。

 

「お、お姉ちゃん……。もう走れない」

 

「もうすぐゴールだ。頑張れクロメ」

 

少女―――アカメは妹のクロメを励ます。

 

両親から帝国に売られて、今は『選定』という地獄の中に落とされた。大人たちに渡されたのはお粗末なナイフと布きれ一枚、生きるためにスタートからずっと走っており、樹海のゴールを目指している。

クロメがアカメの背後を見てビクッと震えて、アカメも背後を見る。そこには肉食植物型危険種メランザーナが少女たちを捕食している光景だった。花弁が動き、クチャクチャと肉を喰う音が聞こえた。

 

「……こっちはだめだ!あっちから行こう!!」

 

「……た、食べられてる……」

 

アカメはこれ以上、進むのは危険だと別の道を進もうとするが、クロメは目に涙を溜め、身体を震わせて動けなくなっていた。アカメはそんなクロメを立ち直すため手を強く握る。

 

「大丈夫、お姉ちゃんがついてるぞ」

 

「……うん」

 

アカメの言葉にクロメは頷きゴールを目指すため進むが、林の影から犬型の危険種が飛び出してきた。危険種は背後からクロメに体当たりをし、押し倒す。

 

「クロメッ!!」

 

アカメはクロメを助けるために危険種の首にナイフを突き刺す。急所を刺されたことで、危険種は血を噴き出して倒れるが、今度はアカメに別の危険種が襲い掛かる。アカメは危険種にナイフを刺したままで反応出来なかった。

 

「お……お姉ちゃんに触るなぁああ!!」

 

飛び込んできた危険種に気付いたクロメがアカメを守るために自分のナイフを突き刺す。危険種は悲鳴を上げて倒れた。

 

「クロメ、大丈夫か!」

 

「う、うん。襲われた時、足を捻ったけど大丈夫……」

 

「そうか、なら私が背負うから……」

 

アカメが言葉を続けようとした時、クロメの左肩に水滴が落ちて、纏った布きれに黒い一点を作るのを見た。クロメもそれに気づいたようで、肩の一点を見た。再び水滴が落ちて、肩を濡らした。

二人は自分たちの上を見た。そこには木にしがみついてこちらを見てる、大きな蜂の化け物がいた。

 

 

 

「う、うわあああぁぁ!!」

 

クロメは化け物、ブレイドホーネットの姿を見て恐怖した。自分たちが先ほど退治した危険種は犬の形をした危険種であり予想の範疇にいたが、上にいるブレイドホーネットは完全に想像を超えた存在だった。

巨大な身体、蜂を思わせる頭部、カチカチとなっている大顎、骨を剥き出しにしたような手足、先が鋭い剣のような尻尾はまるで人の恐怖を固めて作り出したような姿をしていた。

ブレイドホーネットは地面に降りて、その黒い目で二人をじっくりと見る。そのまま骨のような手で動けないクロメを掴む。

 

「クロメに触るな!!」

 

アカメはナイフをブレイドホーネットの身体に刺すが、ナイフは身体に刺さらずに止まってしまった。それでもあきらめずに、ナイフで斬ろうとするが硬い甲殻によって、とうとう折れてしまった。

ブレイドホーネットは自分に攻撃するアカメをちらりと見るが腕を軽く振るって、纏わりつくアカメの腹部に当てて吹き飛ばした。

 

「ガハッ!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

吹き飛ばされるアカメを見てクロメは悲鳴を上げる。自分の手を掴む腕を離そうとするがビクともしない。

 

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃぁぁぁぁん!!」

 

そのままブレイドホーネットはクロメを抱えて走る。連れ去られたクロメは姉に必死に声を掛けるがその声は届かず、ドンドン距離を離されていった。

 

「いやぁぁぁ―――っっ!」

 

腹部に激痛を抱えたアカメはクロメの悲鳴に応えることは出来なかった。

 

 

 

 

「おおおっ!」

 

コウマが『鋼爪』をブレイドホーネットの首を切り裂く。切り裂かれた首から体液が飛び散ったことで身体を汚すが、そのまま独楽のように周り、隣のブレイドホーネットの顔も深く切り裂く。首と顔を斬られた二匹は絶命した。

 

「はぁ、はぁ……これで最後か……」

 

周りを見るとそこには、ブレイドホーネットの死体が所せましと倒れている。サキとキバも見る限り健在で、ホッと息を吐く。

 

「コウマ様……無事ですか……?」

 

「ああ、大丈夫だよ。サキも怪我がなくてよかった」

 

「これぐらいで傷を負う実力ならコウマ様と一緒にはいません。けど……」

 

「けど……?」

 

コウマに怪我をしていないことをアピールするサキだが、途中で顔を暗くさせた。それに疑問を持ったコウマにサキは腰の物を取り出した。

 

「鉄扇が一つ、開かなくなってしまいました……」

 

サキが取り出した鉄扇は閉じている状態だが、ブレイドホーネットの粘着液を浴び、固まってしまったことによって閉ざされてしまっていた。

 

「ああ……、こいつらの液は最初の方は対処すれば何とかなるけど、固まると剥がすのに時間がかかるからな……」

 

粘液の状態であれば先日、タンゴの足にかかったのを薬品を使ったように消すことができるが、固まってしまうと硬いものにぶつけて砕くという方法しかなくなるのだ。サキは母親代わりのマイから貰った鉄扇を使えなくしたことで、精神的ダメージを受けている。

今も顔を暗くしているサキの頭にコウマは手を置く。

 

「大丈夫だよ。母さんもサキの身を守るためにその鉄扇を譲ったんだ。サキの身を守れて本望だと思うよ」

 

「……はい」

 

コウマの言葉によって自信を取り戻したのか、サキの顔は先ほどより明るくなった。

 

「キバは……無傷だよな」

 

コウマは鼻を鳴らして周りを警戒しているキバをよく見るが、その身体には傷一つついてなく、返り血も浴びておらず、精々毛並が少し乱れていること以外、異常はなかった。

 

「金剛餓狼の戦闘力の前にはブレイドホーネットも無力ですか……」

 

「速いし、堅いし、賢いっていう反則な存在だからな……。体毛なんて生まれて一か月で鉄と同じぐらいの硬さになったし、これで『大丈夫か?』って聞けば怒ると思うぞ」

 

二人は自分たちが育てたキバが改めて超級危険種に分類されていることを思い出して、その存在の頼もしさを感じていた。

 

「……それにしてもよくこんなに倒せたな。サキは何匹くらい倒せた?僕は十五だけど」

 

「私は……十を超してから数えてません」

 

足元にあるブレイドホーネットの残骸も見るが、どれも大人を超える大きさに育っており、それを金剛餓狼の存在があったとしても、子供二人で倒したなど信じることは難しいだろう。

 

「ウォフ!」

 

そんな中、キバが近づいてきた。キバは前足を使ってコウマとサキを指したあと、自分を指して再び前足を上げて爪を一本出し、鳴いた。

 

「えっ、え~と……」

 

サキはキバの行動をすぐに理解することが出来なかったようで戸惑うが、コウマは理解したようで苦笑を浮かべた。

 

「あ~、つまりキバ、こう言いたいんだな。『自分の方が二人より多く倒した!』って……」

 

コウマの通訳でサキはさっきの行動に納得したように頷いて、キバは首をコクコクと上下に振っている。

 

「まったく……お前はすごいやつだよ」

 

「はい、キバは強いですね」

 

「きゅ~ん」

 

コウマとサキはキバの頭や喉を撫でると甘えた声を出した。大きさは成人男性を超えるキバたち金剛餓狼はまだ四歳なのである。自分を育ててくれた二人に褒められることが嬉しいようで大きな尻尾をぶんぶんと振っている。

 

「じゃあ、ここまでにして……。キバ、女王の居場所は分かったか?」

 

キバを撫でるのをやめると、コウマは元凶の『女王』の居場所を聞いた。すると、キバは身体を使って巣の方向を示した。その方角はトリケプスが走ってきた道があり、木がなぎ倒されている。

 

「よし。場所も分かったのであれば、前進あるのみだ。巣は燃やすか、爆発するからいいけど、生き残った蟲どもが新しい『女王』になったらまずい」

 

コウマはこれからの行動を語り、キバに顔を向ける。

 

「キバ、お前は鼻を使って兵隊どもを片付けてくれ。いいか、一匹残らずだ」

 

「ウォン!!」

 

コウマの頼みにキバは力強い声を上げて、その場を走っていった。

 

「サキ、僕たちもいくぞ」

 

「はい、コウマ様」

 

二人は折れた木を辿って巣に向かっていった。

 

 

 

ブレイドホーネットに吹き飛ばされたアカメは動けずにいた。軽く振るったつもりだったのだろうが、アカメには強力で体を動かすことも声も出せない。

 

(クロメ……!)

 

アカメの頭の中には、クロメの連れていかれる顔と悲鳴でいっぱいだった。自分の無力を嘆いて、地面の土を力いっぱい握る。

 

(お姉ちゃんなのに、ついているっていったのに……!)

 

クロメを救えなかったことによる悔しさで涙が溢れてきた。

 

「ク……ロメェ!」

 

痛む腹から声を絞り出して、ふらふらと立ち上がる。危険種に立ち向かうための武器として、クロメが落としたナイフを拾う。あの危険種を攻撃し、傷つけ……妹を救うこと以外は頭になかった。

クロメを連れていった危険種を追おうとするが、体の力は入らず、足はがくがくと震え、走ることは出来なかった。

 

その時、アカメの背後から黒い非情な指が彼女の頭を抑え、押しやって、喉をあらわにさせた。腐った木のような不快な臭いが鼻をついた。耳にはガチガチと何かがぶつかり合う音が聞こえた。

 

「ぐっ、あぁ……」

 

アカメは自分を抑える存在を見た。クロメを連れて行った危険種と似ているが違いもあった。身体は明らかに先ほどの奴を上回る巨体、外骨格ながらも肉付きを感じさせる太い腕、肩や胸の外骨格を青白い筋肉のような腱が覆っており、尻尾は先端が鋭いどころか尻尾そのものが剣の鞭になっている。

 

彼女の頭が無理矢理左右に動かされたが、危険種の蜂のような目から、危険種がこちらを観察しているのが分かった。危険種がうなり声を上げると、彼女を暴れる彼女を黙らせるために力強い腕を引いた。

 

(……ふざけるな!私は、私はクロメを助けるんだ!!お前なんかに構っている場合じゃないんだ!!)

 

危険種に掴まれ、なすすべもないアカメは、それでも暴れており、目を逸らしてもいなかった。アカメは、死を恐れていなかった。心には妹のクロメを助けるという信念がある。彼女は目を開けて、正面の危険種の顔にナイフを突き立てた。

アカメの死を恐れない攻撃は危険種に傷をつけることはなかったが、その攻撃は危険種を戸惑わせた。一瞬、攻撃をためらったほどだった。そのためらいの間に、横から黒い影が飛び出してきて、その鋭い牙で危険種の蜂のような頭に噛みつき……砕く。

 

アカメを掴んでいた手がだしぬけに痙攣した。指が開いて、彼女の頭を放す。アカメは後ずさりして、木に背中を押し付けた。その耳に頭部を砕く音だけが、響いていた。頭部を失った身体は震えて、首の部分から体液が噴き出した。

熱い体液がアカメの頬にかかり、彼女は思わず声をあげたが、目をそらすことが出来なかった。信じられないことに危険種は、自分よりもっと凶暴で破壊的な力で殺され、なにもできなかったのだ。

 

黒い毛皮に、金色の瞳を持つ巨大なオオカミにアカメは救われたのだ。

 

 




誤字報告など文章でここがおかしいなどあれば教えてください。
よろしくお願いします。
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