遊戯王GX-砂の魔女-   作:あぬびすびすこ

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TURN 06-1 ハネクリボーの奇跡

 闇のデュエリストタイタンの強力なデーモンたちに圧倒されている十代。

 融合召喚した《E・HERO(エレメンタルヒーロー) サンダー・ジャイアント》も簡単に止められてしまった。

 かなり苦しい状況である。

 

タイタン LP4000 手札4枚

 

《インフェルノクインデーモン》

星4/炎属性/悪魔族

攻900/守1500

 

《ジェノサイドキングデーモン》

星4/闇属性/悪魔族

攻2000/守1500

 

万魔殿(パンディモニウム)-悪魔の巣窟-》

 

十代 LP3000 手札2枚

 

「まだまだこれからだぜ! 俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

 十代は手札を全て使い切りターンを渡す。

 また攻撃に反応するカードかとタイタンは予想しながら、デュエルコートに手を添える。

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズ、《インフェルノクインデーモン》の効果により、《ジェノサイドキングデーモン》の攻撃力を1000ポイントアップゥ!」

 

 《インフェルノクインデーモン》はデーモンを強化する力を持つ。

 今までのターンと同様に、《ジェノサイドキングデーモン》の攻撃力を飛躍的に向上させる。

 

《ジェノサイドキングデーモン》

攻2000 → 3000

 

「バトルだァ! 《ジェノサイドキングデーモン》で小僧、貴様にダイレクトアタック! 炸裂! 五臓六腑ゥ!」

 

 胸が張り裂け、内臓が蟲へと変わる。十代にめがけて無数の蟲たちが殺到していく!

 

「リバースカードオープン! 罠カード《聖なるバリア-ミラーフォース-》! 攻撃モンスターを全て破壊するぜ!」

 

 蟲たちが十代の周りに発生したバリアにかかり、そのまま跳ね返されていく。

 デーモンたちは眩い光を浴びてそのまま吹き飛んでいった。

 

「そうか! ミラーフォースは対象にとらない!」

「デーモンの効果が発動しないんだな!」

 

 十代の切り返しに盛り上がる一同。

 しかしタイタンは一切動じていない。

 

「この程度で私が動じると思うなよ。《万魔殿(パンディモニウム)-悪魔の巣窟-》の効果を発動する。デーモンが戦闘以外で破壊された時、デッキから新たなデーモンを手札に加える……それにチェーンして、私は手札にある別の《デスルークデーモン》の効果だァ」

 

 十代に見せるのは新たなデーモンだ。思わず身構える十代たち。

 

「このカードを墓地に送ることにより、今破壊された《ジェノサイドキングデーモン》を特殊召喚するゥ!」

 

 《ジェノサイドキングデーモン》が破壊され墓地に送られた時、身代わりとなって復活させるデーモン!

 破壊したはずの《ジェノサイドキングデーモン》がフィールドへと舞い戻る。

 

「万魔殿で手札に加えるのは新たな《デスルークデーモン》だ。攻撃は終わっていない……征け! 《ジェノサイドキングデーモン》! 炸裂! 五臓六腑!」

 

 再びデーモンによる攻撃を行うタイタン。

 ミラーフォースを乗り越えた蟲たちは今度こそ抵抗を受けずに十代へと殺到した。

 

十代 LP3000 → 1000

 

「くっ! まだまだ!」

「フン……忘れてはいないだろうな。これが闇のゲームだということを」

 

 タイタンは気丈にふるまう十代に対して、千年パズルを掲げる。

 ウジャト眼から光が放たれると、十代の体がまた消えていく。

 

「ああ! 兄貴の右腕が!」

「いや、右足なんだな!」

「「え?」」

 

 翔と隼人はお互いに見つめ合う。

 消えている場所が違く見えるらしい。

 

「……私はこれでターンエンドだ」

「俺のターンドロー! よし、俺は《天よりの宝札》を発動するぜ!」

「ヌゥ!? 最強の手札増強カードだとォ!?」

 

 十代が発動した凄まじいパワーカードに思わず声を荒げてしまうタイタン。

 アカデミアで生活する1生徒が持っているカードではない。

 

「圭から借りて返し忘れてたけど助かった!」

「何ィ! 貴様、なんというカードを!」

 

 何故かタイタンは背後に向けて怒り出す。どうどうと小声で聞こえる気がした。

 十代たちは何だと首を傾げつつも、デッキからカードを大量にドローする。

 

「お互いに手札が6枚になるようにドローするぜ! 俺は6枚!」

「くっ、私は2枚だ」

 

 十代はとんでもないレベルのドロー、タイタンは《強欲な壺》程度。

 流石にやりすぎである。

 

「リバースカード、《戦士の生還》を発動! 墓地の戦士族モンスターを手札に加えるぜ! 俺は《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》を手札に!」

 

 墓地から戻すのは十代がよく使用する風のヒーロー。

 そして手札がいまだ6枚。勢いそのままに、十代は手札をむんずと掴みタイタンへと見せた。

 

「《融合》を発動するぜ! 手札の《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》と《E・HERO(エレメンタルヒーロー) バーストレディ》を融合! 現れろ! 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》!」

 

 十代のHEROたちが融合され、光があふれだす。

 光の中から現れたのは、相棒、マイフェイバリットカード、フレイム・ウィングマンだ。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》

星3/風属性/戦士族

攻1000/守1000

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) バースト・レディ》

星3/火属性/戦士族

攻1200/守800

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》

星6/風属性/戦士族

攻2100/守1200

 

「行け! フレイム・ウィングマン! 《ジェノサイドキングデーモン》を攻撃! フレイムシュート!」

 

 フレイム・ウィングマンが《ジェノサイドキングデーモン》へ向けて炎を放つ。

 伏せカードのないタイタンに抵抗はない。そのまま炎が吸い込まれていき、爆発!

 デーモンが崩れ去る。

 

「この瞬間、フレイム・ウィングマンの効果が発動! 相手モンスターを戦闘で破壊したとき、そのモンスターの攻撃力分のダメージを受けてもらうぜ!」

 

 デーモンへのダメージはとどまることをしらない。

 そのままタイタンへ向けてダメージが飛んでいく。

 

タイタン LP4000 → 1900

 

 ダメージを受けたタイタンは、体が消えていく。

 翔と隼人はそれを見て、思わず声を上げる。

 

「タイタンの右腕が」

「左足なんだな」

「えぇ? 右腕じゃない?」

「いや、見間違えじゃないんだぞ」

 

 何故か消えている部分が違って見えるようだ。

 タイタンは無表情だが、その背後からほんのり笑い声が聞こえるようなそうでないような。

 

「フン、私は手札の《デスルークデーモン》の効果を発動。《ジェノサイドキングデーモン》を再び特殊召喚!」

 

 何度でも甦る《ジェノサイドキングデーモン》。超攻撃的なデュエルの姿勢だ。

 十代はグッと真剣な表情で手札を1枚抜き取る。

 

「俺は《ダーク・カタパルター》を守備表示で召喚! ターンエンドだ!」

 

 カブトムシのようなモンスターが登場し、雄たけびを上げながら腕をクロス。

 守備の体勢となる。

 

《ダーク・カタパルター》

星4/地属性/機械族

攻1000/守1500

 

「私のターンドロー! 私は《ジェノサイドキングデーモン》を生贄に捧げる! 出でよ! 《迅雷の魔王-スカル・デーモン》!」

 

 八面六臂の活躍をしたデーモンがその身を捧げ、現れたのは雷を体に纏った強烈なパワーを持つデーモン。

 かの決闘王が使っていたデーモンにも似たモンスターは、凄まじいプレッシャーを放っている。

 

《迅雷の魔王-スカル・デーモン》

星6/闇属性/悪魔族

攻2500/守1200

 

「バトルだァ! スカル・デーモンでフレイム・ウィングマンに攻撃! 怒髪天昇撃!」

 

 スカル・デーモンから繰り出される稲妻がフレイム・ウィングマンを襲う!

 強烈な攻撃によって、相棒のヒーローが破壊された。

 

十代 LP1000 → 600

 

「さあこれで貴様のライフも残りわずか……受けてもらおうか、闇のゲームの制裁を」

 

 タイタンは千年パズルを取り出し、十代へと見せる。

 その光を浴びた彼は、だんだんと意識が遠のいていく。

 

「十代! 十代!」

「や、やべぇ……落ちる……」

 

 そのまま膝をつき、十代は動かなくなってしまった。

 タイタンはその結果に満足して頷いている……何度か膝崩れになりながら。

 

 丁度その時、十代のデッキがふと光る。

 意識の底、闇の中にいた十代は気づかなかったが、声が聞こえてきた。

 

「クリクリ~!」

「……えっ?」

 

 そこにはふよふよと浮いている光が。

 その光によって、タイタンが立っているのが見えた。

 すると意識が戻り、目を開く。

 

「……そういうことか! 俺のターン、ドロー!」

 

 十代は立ち上がり、思いきりドローする。

 タイタンはハッと驚いた。まだ意識があるのか、デュエルができるのかと。

 

「隼人! あいつが消えてるのは左手だよな!」

「え? 違うんだな」

「嘘ぉ?」

 

 やはり全員見え方が違う。

 翔たちは目を見合わせているが、十代はカラクリがわかったようだ。

 

「スタンバイフェイズ! 《ダーク・カタパルター》の効果だ! このカードが守備表示なら、カウンターを1つ乗せる。そして、カウンターと同じ数のカードを俺の墓地から除外することで、除外したカードと同じ枚数の魔法・罠カードを破壊する! 俺はカードを1枚除外して、《万魔殿(パンディモニウム)-悪魔の巣窟-》を破壊するぜ!」

「何ィ!?」

 

 《ダーク・カタパルター》の頭部に1つの光がともると、そこから眩く光が放たれる。

 それはフィールドを駆け巡り、万魔殿を破壊してゆく。

 

「タイタン! お前には除外したカードを確認してもらうぜ!」

 

 十代は墓地からフェザーマンを取り出すと、なんとタイタンに向けて投げた! カード手裏剣である。

 それはタイタンの掲げている千年パズルに直撃して刺さった!

 

「ヌゥ!? しまった!」

 

 フィールドが元に戻り、千年パズルが破壊されると、十代とタイタンの消えていた体は元に戻った。

 翔と隼人はどういうことだと思わず目を擦る。

 

「俺たちはあいつの催眠術にかかっていたのさ! だから、消えていた場所が違ったんだ!」

「ぐ……」

 

 タイタンが苦しそうに一歩下がると、背後からため息が1つ。

 

「見破られちゃあ、おしまいじゃないかタイタン」

「え!? 圭! 明日香も!」

 

 後ろから出てきたのはなんと三日月だ。そしてその隣には捕まっていたはずの明日香も。

 タイタンはバツが悪そうに口をへの字にしている。

 

「なんでそっちにいるんすか!?」

「そうなんだぞ! 心配したんだな!」

「いやぁ、ごめんね。でもちょっと事情があってさぁ」

 

 三日月は苦笑いしつつ頬をかく。

 ――遡ること数十分前。

 

『こんなところで何してるのさ。プロ試験はどうしたの』

『ム……これはだな』

『ちょっと、どういうこと?』

 

 謎の大男と三日月が明らかに知り合いの雰囲気で、明日香は思わず聞いてしまう。

 タイタンはバツが悪そうに、三日月も不思議そうにしている。

 

『いや、知り合いなんだ。昔色々あってね。僕の推薦でプロ試験を受ける予定だったはずなんだけど……』

『私のケジメだァ……最後に受けた仕事なのでな。これで足を洗おうと思っていたのだ』

 

 自称闇のデュエリスト……実際は催眠術を使うことで相手を屈服させるという仕事をしていたのがタイタンと言う男。

 三日月に嫉妬していたプロ手前のアマチュア選手から依頼を受けてデュエルしたが、返り討ちにあい。

 実力は高いデュエリストだったために、マネージャーと相談してプロ試験を受けられるようになんとかした……というのが、入学前の話。

 それを聞いた明日香は胡散臭い人なのだとタイタンを冷ややかな目で見る。

 

『で? 仕事って?』

『……恩のあるアヌビスプロだからなァ。教えよう。遊城十代という生徒に闇のゲームをしろというのが依頼だ』

『なんですって!?』

 

 明日香は驚くが、三日月はなんとなく察していた。タイタンの仕事とはそういうものだから。

 しかしちょっと都合がいいか、と三日月は思った。

 現在廃寮にいる3人にタイタンをけしかければ、今後はそうそう悪いことはしなくなるだろうと。

 明日香もそれは……と思ったが、廃寮に行かれるのも嫌だということもあって了承した。

 結果、明日香が誘拐されたという設定でタイタンがデュエル。

 ただし、やりすぎだと思ったら逐一三日月が止めるというインチキデュエルになったということだ。

 

 全ての話を聞いて、翔と隼人は思わずホッと息を吐いた。

 

「なんだ、じゃあ闇のゲームはないんすね」

「それにしてはデーモンの効果が当たりすぎなんだな」

「それは私も思ったわ。でも、運が良かっただけよ」

 

 デュエル内容ではイカサマはしていない。

 流石にプロ試験を受けようとしているデュエリストだ。よくないことをしていたとしても、そこにプライドはあった。

 

「上手くいかなかったなぁ……タイタンもごめんね」

「いいや。私も引退ということで詰めが甘かったのもある……よくない仕事だったなァ」

 

 思わず反省する2人。

 それじゃあこれで終わろうかという雰囲気になったところで、十代から一言。

 

「よし! じゃあ続けようぜ!」

 

 デュエルバカである。思わず全員が笑ってしまった。

 

「フッ、いいだろう遊城十代。ここからは闇のデュエリストではなく、1人のプロ候補タイタンとして戦おう」

「よっしゃー! じゃあ俺は手札から……」

 

 お互いに気合を入れ直してデュエルしようと言うところで、床が光り出す。

 思わず全員がハッとした。

 周りをよく見れば、ヘビの像の口に光がともっている。床の光はウジャト眼だ。

 黒い霧があふれ出し、十代とタイタンを包み込んでいく。

 

「ッ! まずい!」

「圭?」

 

 咄嗟に三日月はその黒い霧の中へ入っていく。

 明日香、翔、隼人は突然の展開に目を見合わせた。

 

「タイタンの道具が壊れたんすかね?」

「わからないんだな」

「……大丈夫かしら?」

 

 先ほどまで使っていた千年パズルは、十代のカード手裏剣で壊れていた。

 何か問題が起きたのかと外から見守る3人。

 

 しかしその霧の中では、すさまじい問題が起きていた。

 

「ヌゥ!? こ、これはァ……!」

「何だ一体!? タイタン、何かしたのか!?」

「違う! 私は何もしていない!」

 

 闇の中にいるような状態で取り残されている2人。

 そこに黒いカビのようなものが大量に発生してタイタンと十代に殺到していく!

 

「クリクリ~!」

「ハネクリボー!?」

 

 しかし十代の前にはハネクリボーが出現した!

 ハネクリボーがむっと睨みつけると、黒い何かは後ずさる。

 十代は大丈夫だ。しかしタイタンにはハネクリボーがいない。

 

「う、うおおぉぉ!?」

 

 タイタンに向けて殺到したその時!

 

砂の魔女(サンド・ウィッチ)ッ!」

 

 どこからともなく現れた赤い魔女が砂嵐を起こし、黒い何かを弾き飛ばしていく。

 同時に駆け込んできたのは三日月だ。砂の魔女は彼を見て優しく微笑む。

 

「圭!」

「アヌビスプロ! これは一体……!」

「話は後! さっさとデュエルを終わらせるんだ!」

 

 三日月と砂の魔女がタイタンにつくと、黒い何かはその周りを囲んでいく。

 いつ食らいつくかとチャンスを待っているようだ。

 

「デュエルを?」

「デュエルが終わればこれもなくなるさ! ほら、続き続き!」

 

 三日月が必死に説得すると、勢いに押された十代は驚きながらもデュエルを再開する。

 

「なんか嫌な雰囲気だぜ……俺は魔法カード《死者転生》を発動! 手札を1枚墓地に送り、墓地のモンスター1体を手札に! 俺は《E・HERO スパークマン》を手札に加えてそのまま召喚! 守備表示だ!」

 

 手札のカードを墓地に送り、スパークマンを回収した十代。

 そのまま防御を固めるべく、腕をクロスさせたスパークマンが登場する。

 

「俺はこれでターンエンド!」

「ヌゥ……私のターンだ、ドロー」

 

 タイタンは十代以上にビクつきながらカードを引く。

 三日月と十代がどっしり構えているだけで、普通はタイタンの反応が正解である。

 この隣にいる砂の魔女は一体何なのだとチラチラ視線を向けるが、三日月は早くしろと目で訴えていた。

 

「スタンバイフェイズ、スカル・デーモンの効果だァ……万魔殿がないため、ライフポイントを支払おう。私は500ライフポイントを払う」

 

タイタン LP1900 → 1400

 

 タイタンのライフが減った瞬間、ぞわりと黒い何かたちは詰め寄ってくる。

 思わず身構えるタイタンだが、三日月が黒い何かを睨むと砂の魔女が光を放つ。

 はじけた光に当たって消えていく黒い何か。近寄ってきたものたちはすぐさま後ろへと下がっていった。

 

「大丈夫。デュエルを続けて」

「わ、わかった……バトルフェイズだァ! スカル・デーモンで《ダーク・カタパルター》を攻撃ィ!」

 

 タイタンは及び腰になりつつ十代の守りを崩していく。

 リバースカードを破壊して来る《ダーク・カタパルター》を優先したようで、攻撃はそのまま吸い込まれていった。

 

「私はカードを1枚セット……《デスルークデーモン》を攻撃表示で召喚して、ターンエンドだ」

 

 リバースカードをセットしつつ攻撃の手を進めるべく追加のモンスターを召喚した。

 《ジェノサイドキングデーモン》のサポートカードの《デスルークデーモン》だ。これで3枚目、最後のカードになる。

 

《デスルークデーモン》

星3/光属性/悪魔族

攻1100/守1800

 

 三日月は一瞬眉をひそめるが、すぐに黒い何かの牽制に戻る。

 十代は特に気にしていないようで、勢いよくドローした。

 

「俺のターン、ドロー! スパークマンを攻撃表示に変更! 装備魔法《スパークガン》を発動して装備するぜ! こいつはスパークマンにだけ装備できる!」

 

 スパークマンの片手に小さい銃が出現する。

 しかし攻撃力はそのままだ。攻撃補助ではないらしい。

 

「バトル! スパークマンで《デスルークデーモン》を攻撃!」

「ヌゥ!」

 

 スパークマンの銃撃が《デスルークデーモン》にヒット。

 そのまま破壊され、タイタンへダメージが向かう。

 

タイタン LP1400 → 900

 

 ぞわりと動く黒い何かだが、今度は近づかない。

 しかし、勢いが増しているのは事実。じりじりと包囲を狭めようとチャンスをうかがっている。

 

「《スパークガン》の効果だ! このカードは3回までフィールドのモンスターの表示形式を変更できる! 俺はスパークマンを守備表示に変更するぜ!」

 

 スパークマンが自分にスパークガンを撃ちこむと、そのまますっとしゃがんで防御の体勢に。

 攻防をうまく切り替えられる装備魔法のようだ。

 

「これでターンエンド!」

「エンドフェイズ、罠発動! 《血の刻印》! 私のフィールドにいるデーモンを1体選択するゥ……そのデーモンが支払うライフコストは遊城十代、お前にも払ってもらうぞ」

「なにっ!」

 

 攻撃以外でもライフを減らす戦法。十代は思わず声が漏れる。

 タイタンは追込みをかけつつ、自分のターンへ。

 

「ドロー! スカル・デーモンの代償だァ……お互いに500ライフポイントを支払う」

「くっ……!」

 

タイタン LP900 → 400

十代 LP600 → 100

 

 黒い何かのざわめきがさらに強くなっていく。

 三日月は目を細めて辺りを見回す。砂の魔女も警戒を怠らない。

 

「バトルだァ! スカル・デーモンでスパークマンに攻撃ィ!」

 

 スカル・デーモンの雷はスパークマンを凌駕する。

 強大な一撃に、感電して破壊されてしまう。

 

「スパークマン!」

「これでフィールドはなくなった……私は手札から永続魔法《デーモンの宣告》を発動するが、すぐさま速攻魔法《非常食》を発動する。フィールドの魔法・罠カードを墓地に送ることで1枚につき1000ライフポイントを回復できる。私は《デーモンの宣告》を墓地に送る」

 

 デッキの1番上のカードを宣言すると手札に加えることができる《デーモンの宣告》。効果を使わずに《非常食》でライフを回復した。

 もっとも、デーモンカードのため使用するのにライフコストが必要になるので使えないのだが。

 

タイタン LP400 → 1400

 

「これでターンエンドだァ。次のターンがお前のラストターンとなるだろう」

「上等! 俺のターン、ドロー!」

 

 十代は自信満々にカードをドロー。

 引いたカードを確認すると、満面の笑みを浮かべた。

 

「よっしゃー! 俺は《E・HERO バブルマン》を攻撃表示で召喚!」

 

 現れたのはマスクをつけた水色のヒーローバブルマン。

 力は強くないが、その分サポートに優れているヒーローだ。

 

《E・HERO バブルマン》

星4/水属性/戦士族

攻800/守1200

 

「いくぜ! 速攻魔法《バブル・シャッフル》! バブルマンがいる時に発動できるぜ! バブルマンと相手モンスター1体を攻撃表示から守備表示に変更! そしてバブルマンを生贄に、手札から別のヒーローを特殊召喚する!」

「表示形式の変更だと!?」

 

 スカル・デーモンは攻撃力が高いものの、守備力は1200と低い。

 ここで新たなヒーローを出されると戦闘破壊され、押し切られる可能性が高かった。

 しかし、スカル・デーモンは【デーモン】だ。

 

「デーモンの効果を忘れてはいないだろうなァ……」

「ああ。効果の対象になったとき、サイコロを振るんだろ?」

「そうだ……いくぞ、遊城十代! スカル・デーモンは1・3・5の目がでたら無効となるゥ!」

「タイタン、1・3・6だよ」

「……1・3・6だァ!」

 

 タイタンはやや恥ずかし気に効果を宣言する。

 ルーレットがフィールド上に出現し、炎が動く。

 固唾をのんで見守る中、出た目は、2。

 

「ヌゥ!」

「へへっ、やったぜ! スカル・デーモンは守備表示! 俺はバブルマンを生贄に、手札から《E・HERO(エレメンタルヒーロー) エッジマン》を攻撃表示で特殊召喚だ!」

 

 スカル・デーモンが膝をついて腕をクロスし、バブルマンはニッと笑いながら消えていく。

 そして現れたのは腕に切れ味鋭い刃を持つ金のヒーローだ。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) エッジマン》

星7/地属性/戦士族

攻2600/守1800

 

「バトルだ! エッジマンでスカル・デーモンを攻撃! エッジマンは、守備表示のモンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与えるぜ!」

「何だと!?」

 

 貫通ダメージとは、攻撃力と守備力の差分ダメージを与える効果。

 つまり、エッジマンの攻撃力2600とスカル・デーモンの守備力1200の差分、1400ポイントの戦闘ダメージを与えるのだ!

 

「行け! エッジマン! パワー・エッジ・アタック!」

「ぐおおーーーッ!!!」

 

 エッジマンの強烈な一撃!

 スカル・デーモンは体を切り裂かれて爆散。タイタンのライフを一気に削り切った。

 

タイタン LP1400 → 0

 

 決着がついた。ソリッドビジョンが消えると、黒い何かは敗者のタイタンへと殺到する!

 思わずヒィと悲鳴を上げるが、三日月と砂の魔女が盾となった。

 

「ハネクリボー! 道を!」

「クリクリ~!」

 

 三日月がハネクリボーに声をかけると、ふよふよと闇の中を進む。

 

「こっちに道があるのか!」

「タイタン行くよ!」

「あ、ああ」

 

 十代たちが先導し、三日月はタイタンの手を引いて走って行く。

 砂の魔女はしんがりで黒い何かを攻撃しながら寄せ付けないようにサポートをしてくれる。

 全員で走って行くと、ぬるりと闇の中から抜け出すことができた。

 

「十代!」

「圭っ」

 

 翔や明日香たちが走り寄ってくる。

 全員無事だと声をかけていると、闇が収縮して吸い込んでくる!

 

「危ないんだな!」

「うわぁ!」

「なんだこれはァ!」

 

 みんなで伏せて吸い込みに抵抗する。タイタンへの吸い込みがきつい気もするが、三日月と十代が彼を掴んでなんとか抑える。

 しばらくすると闇は消え去り、紙吹雪がぶわりと広がる。

 

「ヌゥ、これは私の……」

「おおー! すげーなタイタン! こんなこともできるのか!」

 

 どうやら十代は全てタイタンの演出だと思っているようだ。

 タイタンはいや……と否定しようとするが、三日月が口に手をやって止める。

 

「タイタンはまあ、エンターテイナーだからね。これで少しは懲りただろう?」

「へへっ、まあな。あんまり危ないのは気をつけるよ」

 

 十代からその言葉が出ただけ良しとしよう。三日月は眉尻を下げて仕方のないやつだと笑った。

 

 その後タイタンについての話をしながら廃寮を出る。

 一旦解散しようとすると、十代が明日香の兄らしき人物の写真があったと手渡していた。

 

「これ、兄さんの!」

「あったから持ってきたぜ……ってやべぇ! もう朝だ!」

 

 空を見上げると朝日が昇り始めていた。思わず目が細くなる。

 十代たちはじゃあな! と急いで走って行った。

 

「十代……面白い人ね」

「よかったね、明日香。さて」

 

 三日月はタイタンを見る。

 うむ、とタイタンも頷いた。

 

「「どうしたものか」」

 

 この男をどうやってアカデミアから返したらいいものか。

 思わず2人で息を吐くと、明日香も困ったように笑うのだった。




 今日の最強カードは、《E・HERO(エレメンタルヒーロー) エッジマン》!

E・HERO(エレメンタルヒーロー) エッジマン》
星7/地属性/戦士族
攻2600/守1800
貫通能力を持つ強力なヒーロー

 守備表示モンスターを攻撃したとき、貫通効果があるんだ!
 レベルの高い、ヒーローの切り札だぜ!
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