遊戯王GX-砂の魔女-   作:あぬびすびすこ

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TURN 06-2 大人たちの焦り

 十代たちが帰り、明日香をブルー寮へ送った後。

 三日月とタイタンは誰にも見られないようコソコソと隠れながら波止場までやってきていた。

 

「このボートで帰るつもりだ」

「相変わらず準備がイイね」

 

 こっそりと隠してあった1人乗りのボートを見て、三日月は苦笑いだ。

 そもそもこんな仕事を受けないでほしかったというのが本音ではある。

 

「もうすぐプロ試験なんだからさぁ、変なことしないでよ」

「フッ、悪かったなァ……だが、仕事をしている大人のプライドというものだ」

 

 そんなプライド……と思うところだが、三日月はまだまだ子供だ。

 タイタンのような大人たちには色々あるのだろう。プロの世界に居る彼は、なんとなくそういったものを理解はしていた。

 

「ところでタイタン。さっきのデュエルだけど」

「ほう? いつものリプレイか」

 

 タイタンは慣れたようにデッキからカードを抜き出してディスクにセットしていく。

 三日月の感想戦が恒例行事であるということがよくわかる。

 

「最後のほうに《デスルークデーモン》を攻撃表示で召喚したでしょう」

「ああ……ム、確かにこれはない」

 

 指摘を受け、タイタンは思わず口元がへの字に。

 《ダーク・カタパルター》を戦闘破壊した後、闇のゲームらしきものの焦りからプレイミスの召喚を行っていた。

 出すにしても守備表示だし、そもそも有利だから出す必要もなかった。

 

「手札に《デスルークデーモン》がいるのはバレてるから出してもいいけど、戦闘後に攻撃表示でっていうのはね」

「そうだなァ……遊城十代の《スパークガン》を加味すれば、召喚をしないほうがよかったのだろう」

「いやぁどうだろう。十代もプレイミスしてるからアリといえばアリだったよ。結果論だけど」

 

 ほう、とタイタンが三日月を見ると、《デスルークデーモン》の隣に出ている《迅雷の魔王-スカル・デーモン》を指さした。

 

「ほら、スカル・デーモンの守備力が1200でしょう。スパークマンは攻撃力1600だから、《デスルークデーモン》を出してそっちに誘導しなかったらがら空きになってたし」

「……ぬぅ」

 

 タイタンは思わず唸る。

 まさか自分のプレイミスがあったと気づいたら、相手のプレイミスを誘う事態になっていたとは思わなかった。

 意図せずレベルの高いやりとりとなっていたようだ。無意識にいいプレイができたのか……というと首を傾げざるを得ないが。

 

「どうなんだろうと思ったのはそこぐらいかなぁ……ああ、ルーレット目を間違えて宣言したところもか」

「……それについては大いに反省しているところだ」

 

 動揺が激しかったせいか間違った宣言をしてしまっていた。

 闇のプロとか受験を控えているとかそういう話ではないミスである。

 指摘されると流石に凹んでいた。

 

「まあ、5が出たわけじゃないから大丈夫だよ! ネ!」

「……ああ、そうだなァ」

 

 ぼんやり朝日を見つめるタイタンを必死に励ます三日月。

 なんとか気持ちを落ち着かせてボートへ乗り込ませる。

 

「じゃ、試験頑張ってきてね。いい報告を待っているよ、僕は」

「無論プロになる、必ずなァ……そしてアヌビスプロと戦わせてもらおう。プロの場で、だ」

 

 ニィっと笑顔を見せ、タイタンはボートで去っていった。

 朝日と共に出ていく彼の背中を見ながら、三日月は大きくあくびを1つ。

 そして融合デッキから《砂の魔女(サンド・ウィッチ)》を取り出して見つめる。

 

「今日はありがとね」

 

 カードの中にいる魔女が柔らかく笑ったように見えた。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「セニョール三日月?」

「クロノス先生?」

 

 ぐっと体を伸ばして眠気をなんとか覚ましつつブルー寮へと帰る途中で、懐中電灯を片手にうろつくクロノスと出会ってしまった三日月。

 お互いにどうしてここにと見つめ合ってしまう。

 

「こんな朝早くから、何をしているノーネ?」

「いやぁ、すみません。朝日を見てました。講義のことでちょっと……」

 

 半分嘘で半分本当だ。

 元々褒められたことをしていない自覚はあるので、三日月はかなり困った様子で笑っている。

 

「フーム、セニョール三日月は講義もお願いしてるノーネ。しかーし、アナタはデュエルアカデミアの生徒デスーノ。あまり危ないことはしないでほしいノーネ」

「はい、すみません」

 

 まっとうに注意され、小さくなる三日月。

 十代たちへのあたりは強いが、やっぱりいい先生なんだよなぁと内心思っている。

 

「セニョール三日月はとてもいい先生をしているノーネ。自信をもっていいデスーノ。もし講義で相談があるなら、いつでも話を聞くノーネ」

「ありがとうございます、クロノス先生」

「ところーで……」

 

 ありがたい話だなと感心していると、クロノスは何やら周りをきょろきょろと見回し、三日月へとにじり寄る。

 そして、顔を近づけて小声で話し始めた。

 

「何か怪しい人を見なかったノーネ?」

「怪しい人?」

「例えーば、黒ずくめの大男デスーノ」

 

 黒ずくめの大男など、タイタンぐらいしかいないだろう。

 確かに見たし会ったが、そんなこと言えない。

 見ませんでしたと正直に答えようとしたところで、ん? とおかしな部分に気づいた。

 

「……怪しい人がアカデミアに?」

「あああいやいやそんなことはないノーネ!? ただ、私は巡回中だから気になっていたノーネ!」

 

 怪しい。タイタンではなく、クロノスが、だ。

 そもそもタイタンがここにいるのを知っているのは三日月や十代たちのみ。

 それでいて、彼の依頼が十代との闇のゲームである。ピンポイントに、名指しで。

 まさか……三日月はクロノスをじぃっと見つめる。

 

「な、なんデスーノ?」

 

 何故だか妙に目が泳いでいる。こ、この先生は……!

 

「クロノス先生、まさか変な人を雇ったりしてないですよね?」

「し、知らないノーネ! 闇のデュエリストなんて雇ってないノーネ!」

「闇のデュエリストぉ?」

「ナポリターナ!?」

 

 墓穴。思いきり掘ってしまったようだ。

 三日月は大きくため息をついて、ポケットから名刺を取り出す。

 

「これ、もらいませんでした?」

「こ、これーは!?」

 

 手に持っているのはタイタンが闇のデュエリスト時代だったときの名刺である。

 身に覚えがありすぎたのか、飛び上がってポーズをとっている。

 

「クロノス先生だったんですか、タイタンを呼んだの」

「バ、バレテーラ……ヌ? もしかして知ってる人ナノーネ?」

「ええ。タイタンは僕がプロに推薦しているデュエリストですよ」

 

 何でスート!? クロノスはまた飛び上がる。

 

「じゃ、じゃあ闇のデュエリストでもないノーネ!?」

「ええまあ、そうです」

 

 以前はインチキしてましたけどというのは口の中で封印した。

 バレたらややこしいからである。

 

「グヌヌ……騙されたノーネ! インチキナノーネ!」

 

 憤るクロノスだが、まあちょっと間が悪かったよねと三日月は思う。

 

「ところでなんで呼んだんです?」

「パスターニャ! そ、それーは」

 

 さっきから随分変な声を出すなと思っている三日月だが、あまりにも焦るクロノスを見て首を傾げる。

 クロノスは外部から闇のデュエリストを呼び込んだ上生徒にけしかけているという極めて悪質な行為だと認識していた。

 しかし、三日月はタイタンが現在普通のデュエリストだと知っているため、いつも通り十代にちょっと痛い思いをさせてやろうとしていただけだと考えているのである!

 デュエルの経験にもなるし丁度いいだろうぐらいの認識なのだ!

 

 特に問題だと思っていない三日月と、すわ停職かというクロノス。

 なんとも言えない空気間となってしまっていた。

 

「んー、クロノス先生のことだから色々考えてのことでしょうけど」

「フヌヌ……!」

「あまりやりすぎないでくださいね? 今回はちょっと危ない目にもあったので」

「うー……そうデスーノ。反省するノーネ」

 

 クロノスの反省と三日月のいうやりすぎはなんとなくすれ違っているが、会話が成立しているので問題はない。問題はあるが。

 

「僕は寮に戻りますね……クロノス先生も帰りますか?」

「そうするノーネ」

「じゃあちょっとお話しながら帰りましょう。ほら、この前のデュエルで……」

 

 三日月はクロノスを伴って寮へと帰宅する。

 帰るまでに話したデュエルタクティクスの談義は、大いに盛り上がったのであった。




 今日の最強カードは、《迅雷の魔王-スカル・デーモン》!

《迅雷の魔王-スカル・デーモン》
星6/闇属性/悪魔族
攻2500/守1200
強力な攻撃力と、効果を無効にできる……かも?

 効果の対象になったとき、サイコロを振って無効にできるんだ!
 他のデーモンと同じでライフを払わないといけないけど、強力なパワーを持ってるぜ!
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