遊戯王GX-砂の魔女-   作:あぬびすびすこ

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TURN 07-1 翔の乗り物(ビークロイド)デッキ

「制裁タッグデュエルぅ?」

 

 タイタンと十代がデュエルしてからしばらくして。

 何やら慌てている明日香から聞いたのは、何やら査問委員会とやらが特別寮に侵入して内部を荒らした十代と翔を退学にさせようとしている。

 そしてタッグデュエルで勝てば不問とするということだった。

 

「つまり……廃寮に行ったのがバレて、校則違反でってこと?」

「そうなの。それで、十代のタッグが翔くんなのよ」

 

 十代と翔でタッグを組むらしい。

 まあ、一緒にいたから不思議ではないが……。

 

「隼人はどうなるのさ。それに僕と明日香も」

「……それが、不問みたい。制裁があるのは十代と翔くんだけなの」

「それはまた」

 

 作為的だなぁ。三日月はクロノスのいやらしい笑みが思い浮かんだ。

 いつもなら十代らしいトラブルだなと思うが、退学となると話は別である。

 

「査問委員会かぁ……アカデミアから独立した警察みたいなものかな」

「近い……のかしら。私、中等部の時はそんな委員会聞いたこともなかったわ」

「明日香は真面目だからね。そもそも普通は聞かないと思うけど」

 

 どれだけの問題が起きれば召集されるのだろうかという委員会だ。

 今回は校則違反と器物損壊によるものだからだろうが。

 

「私、十代とタッグになれないか校長に言ってみるわ」

「僕はクロノス先生に聞いてみるよ」

 

 よく知ってるだろうから。

 三日月は困ったように笑うと、明日香は不思議そうに首を傾げた。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「で、結局ダメだったんだね」

「ええ……そっちも?」

「うん。査問委員会もアカデミアも納得してるみたいで、何もできないんだって」

 

 何故か非常に焦りながら説明するクロノスを思い出しながら三日月は肩をすくめる。

 ストレートに退学させるのを止めたのがクロノスで、タッグデュエルを了解したのは十代。

 査問委員会がそれを了承しているため、アカデミア側ではどうしようもないのだとか。

 

「決まったことだからしかたない。それに、十代たちは納得してるんでしょう? デュエルのサポートをしてあげよう」

「……そうね、そうしましょうか」

 

 やれることはない。そう結論付けて、三日月と明日香はレッド寮まで足を運んだ。

 たどりつくと、崖の上でポツンとたたずむ隼人の姿が。

 

「隼人ぉー」

「お? 2人とも来てくれたんだな」

「ええ。制裁タッグデュエルが決まったから落ち込んでるかと思ったけど」

 

 隼人の隣に並んで崖下を見ると、十代と翔が対峙していた。

 どうやら今から特訓のデュエルをするようだ。

 

「大丈夫そうね。十代と関わると、変になるみたい」

「そうだね。面白いやつ」

「圭とも関わると変になるんだぞ」

「えっ、僕ぅ?」

 

 三日月は思わず自分を指さして目を丸くする。

 それを見て2人はクスクスと笑った。

 

 準備ができたらしい十代と翔は、デュエルディスクを起動してデッキをセットした。

 

「腕試しなんか考えず、楽しいデュエルにしようぜ!」

 

 十代は楽しそうにしている。対して翔は最初からナーバス状態。

 ぶつぶつとなにがしかを呟いている。

 

「なんか言ったか?」

「な、なんでもないっす」

「じゃあいくぜ! デュエル!」

「はぁ、デュエル……」

 

十代 LP4000

翔 LP4000

 

「俺の先行だ! ドロー! 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》を攻撃表示で召喚! カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》

星3/風属性/戦士族

攻1000/守1000

 

 ヒーローたちの切り込み隊長その1、フェザーマン。

 軽やかに登場し、十代の前に立って翔を見据える。防御も整えつつ、先行のターンを終了した。

 

「僕のターン、ドロー。あ、やった!」

 

 翔がカードをドローすると、いいカードを引けたのか小さく喜ぶ。

 そして何故だかだらしない笑みを浮かべながらエヘエヘ笑い出す。

 

「翔くん?」

「なにしてるんだな、翔のやつ」

 

 デュエル中に気を抜くなど笑止千万。

 三日月は眉尻を下げて腕を組む。

 

「おーい翔! なにしてるんだ!」

「あっ!? えっと、ボクは《パトロイド》を召喚! 攻撃表示!」

 

 十代に声をかけられた翔は慌ててモンスターを召喚する。

 現れたのは目がついたパトカー。ホビーアニメにでてきそうな、コミカルな自動車だ。

 なんと後輪で立って前輪を腕のように振り回している。

 

《パトロイド》

星4/地属性/機械族

攻1200/守1200

 

「バトル! 《パトロイド》でフェザーマンを攻撃!」

「えっ?」

 

 三日月は思わず声を上げる。

 《パトロイド》は意気揚々とフェザーマンへ突っこんでいく。

 

「シグナルアターック!」

「罠発動! カウンター罠《攻撃の無力化》!」

 

 十代は伏せカードを発動。《パトロイド》はフェザーマンの前で急停止すると、フェザーマンの手前で発生した渦にエネルギーを吸い取られていく。

 攻撃を無効にされて、すごすごと翔の元へ帰っていく。

 

「ああっ! 《パトロイド》! そんなぁ……」

「ちょっと、大丈夫かなぁ」

「やっぱり翔くんにとっては、十代のタッグは重荷なのかも」

 

 翔は自分の目論見が失敗したことにショックを受け、しゃがみこんで地面にのの字を書き始めてしまった。

 三日月はあまりの醜態に思わず声が漏れ出て、明日香も心配そうにしている。

 翔は小心者であるとみんな思っているため、退学を賭けたデュエルだと気落ちしてしまうと思っているのだ。

 

「翔、もしかしてモンスターの攻撃力しか見てないんじゃないか?」

「そんなことないよ!」

 

 十代の指摘に翔が声を荒げて否定する。

 確かにその通りと三日月と明日香は思っていた。

 

「《パトロイド》は相手のセットカードを確認できる効果を持つ。それなら、俺が《攻撃の無力化》を張ってるのもわかったはずだろ?」

「やめてよ! アニキだからってお説教はナシだよ!」

 

 あまりにも怒る翔に、みんな目が点になる。

 いつもは大人しく気の弱い翔が、デュエルが始まってから挙動不審だ。

 思わずどうしたんだとみんな心配し始めた。

 

「あぁ、ごめんねアニキ。僕おかしいよね、アニキがアドバイスをしてくれてるのに」

 

 自分がよくないことはわかっているようで、肩を落として俯いてしまう。

 どうやらデュエルだと感情的になりやすいようだ。《パトロイド》のミスも、フェザーマンを倒せると思ったからだろう。

 三日月はメンタルのコントロールは難しいよねと頷いた。

 

「にゃ~ん」

 

 デュエルを見ていると、なにやら太い猫が隼人の足元へすり寄っていた。

 レッド寮の飼い猫だ。ファラオというらしい。

 隼人は抱きかかえて2人の様子を見守る。

 

「ま、確かにお説教くさかったかもな。デュエリストに上下なしだ! アドバイスなしでやっちゃうぜ!」

 

 十代は楽し気に宣言すると、カードを1枚ドローする。

 

「俺のターン、ドロー! よし、お前に頼むぜ。俺は《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》を召喚! 攻撃表示だ!」

 

 十代の切り込み隊長その2。スパークマンの登場だ。

 フェザーマンの隣に現れると、《パトロイド》を敵とみなしてじっくり見据える。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》

星4/光属性/戦士族

攻1600/守1200

 

「スパークマン……!」

「いくぜ、バトルだ! スパークマンで《パトロイド》を攻撃!」

 

 スパークマンは《パトロイド》へと接近し、電撃を放つ!

 必殺のスタティック・ショックウェーブにより1台のパトカーは丸焦げになってしまった。

 

翔 LP4000 → 3600

 

「うわぁ!」

「続けてフェザーマンでダイレクトアタックだ!」

 

 追撃のフェザーマン。翼から羽を撃ちこむ。

 フィールドは丸裸、翔までの障害物は存在しない。

 

翔 LP3600 → 2600

 

「うう……」

「俺はターンエンドだ!」

 

 十代の猛攻を受け、翔は尻もちをついて苦しむ。

 一気にモンスターもライフも奪われてしまい、また気落ちした翔はぶつぶつ何かを呟き出す。

 

「翔くん……」

「これは、難しいなぁ」

 

 三日月と明日香は、タッグデュエルで勝利するのが極めて困難だろうと感じていた。

 たとえ上手にデュエルできても、あれほど気持ちが上下するのは……。

 そう思っていると、隼人が一歩前に出た。

 

「翔! 諦めんなぁ!」

 

 大声で翔に活を入れ始める。

 いつもはこんなに声を張る人ではないのに。

 

「ここで諦めたら、1年留年してるおれよりカッコ悪いぞ! 気張れー! 気張れェー!!」

 

 隼人の渾身の活。

 翔は少し俯くと、気合をいれた表情で立ち上がった。

 少し持ち直したようだ。

 

「気合いが入ったみたいだね」

「ええ、隼人くんの応援で持ち直したみたい」

「へへ……おれ、自分がダメなヤツだから、ダメになった時の気持ちが何となくわかるんだ」

 

 隼人はギュッとファラオを抱く力を強める。

 留年してくさっていたと十代から聞いていたが、三日月や明日香と会った時はそんな印象はなかった。

 十代と出会って、隼人もまたいい効果を受けたのだろう。

 

「それはあなたが、自分が思っているよりダメじゃないってことよ」

「そうだね。隼人はいい先輩をしているよ」

「にゃ~ん」

「そんな……」

 

 隼人は2人からの称賛に思わず顔を赤くする。ファラオもそう思いますとばかりに鳴き声を上げた。

 全員で翔を見つめ、真剣な表情の彼がどうなるかを見守る。

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

 翔は手札と十代のフィールドを何度か見比べると、手札のカードを1枚魔法・罠ゾーンへセットする。

 

「魔法カード、《強欲な壺》を発動! カードを2枚ドローする!」

「おっと、強欲だ」

 

 手札を2枚ドローすると、ドローカードを見てハッとする。

 翔の反応は決して悪いものではないが、いいものでもない。

 

「ん? どうしたんだろう」

「いいカードを引けなかったわけじゃなさそうだけど」

 

 手札をじぃっと見つめている姿を心配そうに見つめる3人。

 十代もどうしたんだと首を傾げている。

 

「翔、大丈夫かー?」

「あっ、大丈夫っす! ボクは魔法発動、《融合》!」

 

 ここで《融合》だ! 三日月たちはほうと息を漏らす。

 逆転の目が来たのだ。

 

「ボクは手札の《ジャイロイド》と《スチームロイド》で融合召喚! 来い! 《スチームジャイロイド》!」

 

 ジャイロコプターと蒸気機関車がやるぜやるぜと目を光らせて融合する。

 現れたのはプロペラがついた蒸気機関車。腕をジェットを噴射しながら振り回しての登場だ。

 

《ジャイロイド》

星3/風属性/機械族

攻1000/守1000

 

《スチームロイド》

星4/地属性/機械族

攻1800/守1800

 

《スチームジャイロイド》

星6/地属性/機械族

攻2200/守1600

 

「これがボクのフェイバリットカードだよ、アニキ!」

「おお! こいつが翔の!」

 

 自分のエースを召喚したことで自信を取り戻したのか、翔は得意そうにしている。

 十代も新たなモンスターにワクワクしているようだ。

 

「バトルだ! ボクは《スチームジャイロイド》でフェザーマンに攻撃!」

 

 《スチームジャイロイド》が首のプロペラを回転させると風が噴き出る。

 フェザーマンに風が直撃し、えふんえふんとむせていると、風の中から《スチームジャイロイド》が突撃していた!

 プロペラがフェザーマンを切り裂き、戦闘破壊した。

 

十代 LP4000 → 2800

 

「どうだ、見たか! これでターンエンドっす!」

「へへっ……」

 

 翔が勝気に笑っていると、十代も静かに笑う。

 俯いていた顔を上げると、好戦的な笑みと視線が翔に突き刺さった。

 

「ワクワクしてきたぜ! 俺のターン、ドロー!」

 

 十代は勢いよくカードをドローすると、ニンマリ笑って翔に見せつける。

 

「俺は魔法カード、《融合》を発動! スパークマンと、手札のクレイマンのパワーで、新たなパワーを呼び出すぜ!」

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) クレイマン》

星4/地属性/戦士族

攻800/守2000

 

 スパークマンとクレイマンが融合の渦の中へと飛び込むと、そこから現れたのは黄色が眩しい巨人。

 

「現れろ! 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) サンダー・ジャイアント》!」

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) サンダー・ジャイアント》

星6/光属性/戦士族

攻2400/守1500

 

「サンダー・ジャイアント!」

「でも、まだ翔のライフは残るんだぞ!」

「いえ、でも……」

 

 隼人は攻撃力の差で希望を見出していたが、明日香は静かに否定する。

 

「サンダー・ジャイアントは、手札を1枚捨てることで相手モンスターがサンダー・ジャイアントの攻撃力より低い時、破壊できるの」

「ああっ」

 

 隼人はこの後の展開を理解して、思わず声が漏れる。

 ぎゅうっと抱きしめられたファラオもにゃごと潰れた声を出した。

 

「俺はサンダー・ジャイアントの効果を発動するぜ! 手札を1枚墓地に送り、サンダー・ジャイアントより攻撃力の低いモンスターを破壊する! 《スチームジャイロイド》を破壊だ!」

 

 《スチームジャイロイド》の攻撃力は2200。サンダー・ジャイアントの2400を下回っており、効果の対象だ。

 雷の巨人から放たれた稲妻により、《スチームジャイロイド》はジャンク品へと姿を変えた。

 

「ああ! ボクのフェイバリットが!」

「俺はさらに《E・HERO(エレメンタルヒーロー) バースト・レディ》を攻撃表示で召喚!」

 

 翔の悲痛な叫びが響くが、十代はそのままダメ押しのヒーローを呼び出す。

 サンダー・ジャイアントの隣に浮かびあがって登場した紅一点。

 翔へのトドメには十分な攻撃力だ。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) バースト・レディ》

星3/炎属性/戦士族

攻1200/守800

 

「バトルだ! 翔にダイレクトアタック!」

 

 サンダー・ジャイアントの稲妻とバースト・レディの炎。

 一気に翔へと殺到していき、そのままライフを削り切った。

 

翔 LP2600 → 200 → 0

 

 デュエルを終えて十代が意気消沈している翔に駆け寄っていく。

 

「ちょっと下に行ってくる」

「私も行くわ」

 

 三日月と明日香は急いで崖下まで降りていく。

 すると、言い争う声が聞こえてきた。

 下についたときには翔はおらず、いたのは少し沈んだ様子の十代1人。

 

「どうしたの、十代。貴方らしくない顔よ」

 

 明日香が気づかって声をかけると、十代は海を見つめながら答える。

 

「デュエルってさ、楽しいもんだろ。翔のデュエルは、なんか苦しそうなんだ」

「……確かにね」

 

 三日月は翔が不自由なデュエルをしていると感じていた。

 頷いていると、十代は2人を見て翔のことを説明してくれる。

 

「あいつ、《パワー・ボンド》っていうキラーカード持ってるのに、お兄さんに封印されてるとか言ってさ」

「ああ、《パワー・ボンド》か」

「……!」

 

 《パワー・ボンド》は機械族モンスターの融合にのみ使用できる融合カードで、そのモンスターの攻撃力を倍にして融合召喚できるのだ。

 代わりに召喚したモンスターの攻撃力分のダメージをエンドフェイズに受けることになる、リスクとリターンが大きいカードである。

 一撃で逆転できるため、かなり強いカードだと言えるだろう。

 

 封印か、と三日月は今まで見せたことがないほどに険しい表情を見せるが、隣の明日香が妙に困った表情をしていることに気づいた。

 

「明日香?」

「……実は、翔くんには実のお兄さんがいるの。それも、このデュエルアカデミアに」

 

 衝撃の事実だ。三日月も十代も目を見開いて明日香を見た。

 

「オベリスクブルー3年生の丸藤亮。アカデミアでは帝王、カイザーと呼ばれているわ」

「カイザーか……どんな人なんだ」

 

 カイザーと言われて、ああ、と三日月は思い出す。

 ブルー寮ですごい人気の先輩がいるというのを聞いていたし、何度か遠目で見た時があった。

 あの人が……と1人で納得していた。

 

「よし! じゃあ俺、カイザーとデュエルするぜ!」

「えっ?」

「デュエルすればどんな人かわかるだろ! 楽しみだな!」

 

 十代はワクワクするぜと笑顔で海を眺め始めた。

 相変わらずだなぁと三日月は笑い、明日香も本当に面白い人ねと笑顔を見せるのだった。




 今日の最強カードは、《パワー・ボンド》だ!

《パワー・ボンド》
通常魔法
機械族モンスターを融合召喚できる。攻撃力は2倍になる。

 機械族専用の融合カードだ!
 融合召喚したモンスターの攻撃力が2倍になるぜ!
 ただし、エンドフェイズに攻撃力分のダメージを受けるから要注意だ!
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